総隊長の孫娘〜その者、最凶の料理人につき…〜 作:名無しのナナ
僕の名前は痣城双也、僕の家は貴族の名家だ。
嘗ては剣術と鬼道に秀でた武力派の家だったらしいが今では武力よりも金の力で権力を持っている、僕も成長すれば周りの大人達のようになるのだろう。
だが、僕の姉は周りとは違い清廉潔白を地で行くような人だった。
「ただいま、双ちゃん。暫く見ない間に成長した?」
この人が僕の姉である、姉さんは今年から真央霊術院で教育を受けているがたまの休日に帰ってきては僕に構うのだが…最近は山本隊長とかいう教師の話題ばかりで少し面白くない。
「それでね、山本隊長の料理ってとても美味しいの。作り方を教わったから双ちゃんにも作ってあげるね」
今日も山本隊長…何でも700年前に尸魂界を救った英雄らしく姉さんが真央霊術院に行く前は少し聞いた程度だがそんな人物の事を話す時の姉上は何時も笑顔だ。
(…つまんないな…)
僕は姉の笑顔が好きだ。
だけどその笑顔の先に居る顔も知らない山本千歳という人に姉さんを盗られたように感じるのは僕の心が狭いだけだろうか…。
「ねぇ、聞いてる?双ちゃん」
「…聞いてるよ、良かったね」
「もう、双ちゃんったら何
「…別に」
なんだか悶々とするがそれもこれも姉さんが悪い。
久しぶりに帰ってきたなら僕にだけ構っていれば良いのに。
「…そうだ、私最近新しい鬼道を覚えたの、双ちゃんにも見せてあげる」
「いいよ別に…」
やめれば良いのに口を突くのは憎まれ口ばかりを叩いてしまう、僕の手を引いて庭先に出ようとする姉さんだが
「ごめんください」
鈴の音の様に綺麗な声に表情を明るくする姉上、この声の主に心当たりがあるのだろうか?
「双ちゃん、行こ」
「え、わわ…」
手を引かれ玄関まで歩いていくと腰まで伸びた黒髪が綺麗な大きな胸の女の人が立っていた。
(綺麗なひとだなぁ…)
僕は姉さんで見慣れていたが上には上がいる、とは良く言ったものだと思う、所謂美人なのだ、目の前の人は。
「こんにちは、山本隊長!今日はどうかしましたか?」
え?
姉さんの声に固まってしまう。
この人が山本隊長…?
「こんにちは、痣城さん。今日はもしもの時の為に生徒達一人一人の御自宅を訪問しているんだよ」
「なるほど、あ、良ければあがってください、大したおもてなしは出来ませんが…」
「んー…あくまで御自宅の把握の為に寄らせて貰っただけで長居するつもりは元々無かったけど、お邪魔させて貰おうかな?…初めまして、君が痣城さんが何時も自慢してる双ちゃんかな?」
綺麗な虹色の瞳が僕を見つめ目線を合わせるようにしゃがみこむ、その度に乳房が揺れるから目のやり場に困る。
「ぁ、あの…はい、はじめまして…」
自分でも情けなく感じるが消え入りそうな声でなんとか挨拶をする、誰だって急に美人な人に声を掛けられれば萎縮すると思うのは僕ばかりではないだろう。
「もう、双ちゃんたら…ちゃんと山本隊長と目を合わせて挨拶して?」
「あはは、気にしなくて良いよ。…ふむ、なるほどねぇ…」
「…?」
確かに目を合わせて話すのは最低限の作法ではあるが山本さんが僕を見る目は品定めするように真剣なもので首を傾げる。
「君次第だけど、良ければ真央霊術院で学ばないかい?お姉さんに良く似てて才能がありそうだ、きっと優秀な死神になるよ」
「僕が…?」
信じられない、という気持ちと姉さんが何時か言ってくれた言葉が重なる。
「やっぱり、双ちゃんは私よりも良い死神になるよ」
「鍛え方次第では痣城さんを守れるくらい立派な死神になれるよ」
「…僕が…姉さんを…」
姉さんを守れる、この人に指導を受ければその強さを与えてくれると思える不思議な存在感を持つ山本さん…いや、山本隊長を見つめながら。
「…やります、僕を鍛えてください。山本隊長」
「うん、分かった。
それじゃあ私の方からも推薦しておくよ、早くて来年から宜しくね?」
「はいっ、宜しくお願いします」
こうして、僕の奮闘記が静かに幕を開けた。
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それから半刻程経ち…。
「取り敢えず、二人共ボクの目が届く範囲に置く事が出来たかな」
『そーだねぇ、それで?これからどーするのぉ?』
星葉身に問われボクは少し躊躇しながらもある二人の教え子の住む家へと向かっている。
彼女もそれを知っている上で問いかけている分質が悪い悪戯っ子だ。
「そうだねぇ…少し迷惑を掛けちゃうけど、久しぶりに昔の教え子達に逢いに行こうかな?」
『あの二人かぁ、協力してくれるといいね?主』
「お互い立場があるから簡単に行くかは微妙だけどね、やるだけやる分にはタダだよ」
そう、やる分にはタダだ。
片方はボクは疎か京楽や浮竹を超える頭脳の持ち主。
片方はこの世界の五大貴族に名を連ねる少女。
「…着いたよ、久しぶりだなぁ…」
嘗ての教え子二人に逢う為に、ボクは四楓院家の戸を叩いた。