総隊長の孫娘〜その者、最凶の料理人につき…〜   作:名無しのナナ

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師の想い

 

 今頃お爺様は報告書を燃やしている頃か。

 ボクはあの戦いから三ヶ月経った、ある理由から夜番を変わって貰い部屋で星葉身との対話をしている。

 

 辺りは夜の闇が支配し人の気配も…いや、一人だけ背後から声を掛ける女性(ひと)が居た。

 

 

「“山本”隊長、今からお時間良いですか?」

 

 はい、キタァァ

 いや、来るとは思っていましたよ?だってそうなるように書いたからね。

 

 

「…えぇ、構いませんよ、卯ノ花隊長」

 

 何時になく不機嫌な…、平静を装いつつも何時でも抜けるとばかりに肉雫ロ妾の柄に手を伸ばしている八千流(お師匠)さんの隊長呼びに対し応じるように応える。

 

「……御自身の責務は理解しているようで何よりです、ですが───」

「ッ」

 

 一瞬、鋭くも速い光が走ったかと思えば身体がこの太刀筋を覚えていると言わんばかりに、振り返りながら鞘から僅かばかり刀身を見せる事で薙ぎ払われた一撃を受け視線を合わせる。

 

「今の一撃を受けますか、指導していた甲斐がありますね」

「…卯ノ花隊長、いえ、お師匠。…私が護廷を抜ける事はそれ程迄に罪ですか?」

 

 確かに、ユーハバッハが率いる光の帝国(リヒト・ライヒ)が齎した被害は甚大ではあった、死した部下達に報いるのが隊長としての務めだろう。

 

 だが、だからこそ隊長として後進の…いや、死神全体の事を慮るのは罪だろうか。

 

「…他の隊長ならばそれも良かったでしょう、然し貴女は総隊長の助力もあったとはいえ一対一でユーハバッハを打ち破った…その事実と貴女自身の存在は力の無い一般隊士や席官達の希望なのです」

「希望…」

 

 そう言われてしまえば居た堪れなくなる。

 ボク自身、自分自身を高く評価するつもりは無いからだ。

 寧ろ、前世の記憶が蘇りあの死体の山を見てから毎晩夢で魘される程だ。

 

 

 何故、助けてくれなかったのか、と…嘗ての部下達が血に塗れた姿で現れるのだ。

 

 お前さえ居なければ、と…白を基調とした生地が真っ赤に染まった嘗ての敵が怨嗟の声を上げて恨み辛みを吐いてくるのだ。

 

 

 転生し、斬拳走鬼を一通り習得している身とはいえ記憶を取り戻した中身は一般人の域を出ていないのだ、一般的な感性の持ち主なら気に病まない方が少しおかしいだろう。

 

 お師匠から見たらさぞ顔色が優れないように見えるのだろうか…手にした得物を鞘に納める動作を見て此方も星葉身を鞘に納める。

 

「……あの日からあまり眠っていないのですね、あれからもう三ヶ月は経つというのに…」

 

 ボクの意図を汲んだのか、将亦(はたまた)異なる意図があるのかお師匠はボクの頬に掌を添える。

 

「…あはは、お師匠には敵わないですね…はい、眠ってしまうと夢を見てしまうので…」

 

 それ以前に、過去のボクがどうやって寝ていたかも今となってはわからずにいる。

 ただ単純に眠る、そんな事すら出来ないでいる。

 

 それでも、…いや、だからこそ、もう誰も死なせたくないが為にボクはボクのやりたい事をすべきなのだ。

 

「…これでも四番隊の隊長ですから、…心的ストレスは流石に門外漢ですが…」

 

 意識が遠くなるのを感じる…恐らく縛道か回道の何れかを掛けられたのだろう。

 

「今宵は、貴女が眠れる迄傍に居ましょう…貴女は私の可愛い弟子なのだから…」

 

 ボクはそのまま、その微睡みの中に抱かれながら意識を手放した。

 

-------❁ ❁ ❁-------

 

 卯ノ花烈side

 

 あれから半刻程経ち、可愛らしい寝顔を浮かべる千歳をそっと寝かせつける。

 

「…身体はある程度成長しましたがまだまだ子供ですね…」

 

 無理もない、総隊長や私と違いこの娘は未だ百数年程しか生きていないのだから…死神としては十一番隊を除けば異例の早さで隊長格へと登り詰めた弊害とも言えるだろう。

 

「…ん…」

「……先程はああ言いましたが、私も貴女に期待しているのですよ…?」

 

 この言葉に嘘はない。

 

 最初は厄介なものを寄越されたとしか思っていなかったが今では私の不意打ち気味の一撃にすら反応出来る程成長している。

 

 無論、今は単純な剣術での死合(しあ)いなら私に分があるのは確かではありますが。

 後100年…いえ、環境さえ整えば割とすぐにでも私すら追い抜くでしょうね…。

 

 この娘の真価とは即ち斬魄刀の能力と本人の剣術にある、それ等が組み合わさった時の実力は…。

 

 

 想像したらこの身は昂る。

 胸元に残る傷が疼く。

 私は…。

 

「…彼か貴女…何方に私は殺されるのでしょうね」

 

 本当に、今から愉しみだ。

 

「ですが今宵は…」

 

 流石に衰弱している弟子と死合(しあ)っても面白味に欠ける。

 私は、そのまま千歳の頭を撫でながら何時か来る瞬間を夢想する事にしました。

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