総隊長の孫娘〜その者、最凶の料理人につき…〜 作:名無しのナナ
「問題は無い、と申すか…」
早朝、一番隊舎にて
「えぇ、彼女はしっかりと死神としての責務は理解しています」
自覚し過ぎて悪夢を見る程には、と卯ノ花は続ける。
本来死神は魂のバランサーとしての役割の延長上人間を気遣う事はあるが、己を害そうとする者達に於いてはその限りではない。
何より、今回の侵略戦争は両陣営多大な被害が出た。
そんな仇的を慮る孫娘の心境の変化に元柳斎は双眸を細めるばかりだ。
「…悪夢、のぅ…」
「あの娘は優しい娘です、味方だけではなく本来敵である滅却師にすら心を砕く程には…」
卯ノ花は尚も続ける。
報告書の最後の部分のみを見れば
それくらいは100年も付き合った間柄、刃と言葉を交わせば見抜けるとばかりに…そして、その
「……うぅむ…」
千年も共に護廷十三隊に所属している卯ノ花の言葉に髭を擦りながらどうするべきか、と呟く。
「…どうかなさいましたか?」
「四十六室より出向命令が出ているのじゃ…儂ではなく千歳にな」
それは数日前の事であった、被害報告書を提出し次第山本千歳の出向を命じる旨の沙汰が下ったのだ。
「…あの老害共があの娘に何を言うのかは理解出来ますが、貴方はそれで良いのですか?」
卯ノ花自体、出自が出自である為四十六室には抵抗感がある。
「口を慎め、卯ノ花隊長。…それも尸魂界に必要な事ならば仕方がなかろう」
思う所が無い訳ではないが、と言わんばかりに窘める元柳斎ではあるが普段の彼からしてみれば弱々しい。
「……唯一の血縁でしょう、貴方は…」
「………」
そんな彼の心情を察しているが故に多くは語らずに卯ノ花は一礼した後一番隊舎を後にし、元柳斎はその背を見送るのであった。
「…」
…その姿を見守る一人の男の姿が居るのにも気付かずに
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昨夜はお師匠のお陰で夢を見る事無くぐっすり眠れた。
枕元にはボク用に処方された薬が入った袋と手紙が置かれていた、…有り難い事だ。
「…さてと、御礼に何をすべきかな…?」
『ほっしーならご飯が良いー』
まぁ、
けどご飯、か…。
料理人を目指すと
「…そうだね、先ずは作って食べて貰わなきゃ」
思い立ったが吉日、早速作るとしようか。
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「た、隊長?!」
「おはよう、今日から私も朝餉を用意したいのだけど構わないかな?」
丁度朝餉を用意していた女性死神に微笑みながら既に割烹着を着た姿で小首を傾げると彼女は何度も首を縦に振る。
「は、はいっ!山本隊長と肩を並べて調理出来るなんて光栄でありますっ」
「あはは、そんなに畏まらなくて良いよ?朔間」
「お、覚えて貰えていて恐縮です!わかりました!」
うぅん、…まぁ、上司と仲良く並んで料理なんて確かに萎縮しちゃうよね。
それにしても…。
「料理ってやっぱり楽しいねぇ…」
料理に霊力を込めるのは中々に難しい。
普通に包丁で具材を切り、味噌を溶かして味噌汁を作る事は容易いがそれに霊力を込めるのは中々に難しい。
それも原作では3000人程は存在するとされる死神全体に食事を提供するならばその苦労は凄まじいものだろう。
「そ、そうですね…」
緊張もある程度解れてきたのだろう、手馴れた手付きで魚を焼く朔間の視線を受けながら首を縦に振る。
「うん、特に食べて貰う人の反応を想像するとね、それが美味しく出来たらもっと嬉しい」
前世では自炊は出来る程度には料理を趣味にしていたが誰かの笑顔に繋がる調理は矢張り心が弾む。
「さてと、お味噌汁はこれくらいかな…沢庵を切り分け「山本隊長は居られるか」この声…ちょっと席を外すね、後はお願い」
「はいっ、有難うございましたっ」
割烹着姿で逢うのは躊躇われたが待たせるよりはマシだろうと門の前で待っているであろう人物の元へと向かうとそこには
「おはようございます、山本隊長。早速ですが今から少し着いてきて貰いたい場所があるのですが…宜しいか?」
この時はまだ、まさかあんな形で“彼”と出逢うとは思いもしなかった。
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