総隊長の孫娘〜その者、最凶の料理人につき…〜   作:名無しのナナ

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違和感

 解号により生じる霊圧の解放により寄せては返す(さざなみ)の如き霊圧の中心、そこに居たのは惣闇(つつやみ)色の刀身を持った太刀を持つ千歳だった。

 

()ッ」

「…やろう…ッ」

 

 上段に構えた上で一呼吸で右袈裟、胴体を狙った一文字斬り、右下から逆袈裟、首を狙った左一文字と悉く急所ないし深く斬り込めば重傷は免れない一撃を繰り出す死神に対してそれを長年手入れもしていないであろうボロボロになった長刀で躱す男の姿があった。

 

「……」

 

 そんな男に何の感慨も持たないとばかりに切り結ぶ死神であったが、そんな死神に男は愉しみを見出す。

 

「…似てやがる」

「…」

 

 果たしてその声は今の千歳の耳に伝わっているだろうか?

 

 似ているのはさもありなん。

 此処に在るは唯の剣鬼に非ず。

 尸魂界が誇る最凶の大罪人、卯ノ花八千流の唯一の弟子であり彼女が確固たる意思を以て未だ喰わずに居る虎の子だ。

 

 だが、それを是であると伝える人物は居らず両雄は唯剣がぶつかり合う火花を以て語るのみである。

 

「おらよッ!」

「…甘い…!」

 

 力任せの振り下ろしを刃で受け流しながら心の臓を狙った片手での刺突も刀身を流血しつつも掴む事で寸前で止める剣八。

 そのまま互いを戦う相手であると定めたと言わんばかりに互いの視線と化物じみた霊圧をぶつけ合う。

 

「ちったぁ愉しそうな顔をしたらどうなんだ?」

「……戦いは私にとっては手段でしかない」

「そうかよ、だがテメェの剣筋は愉しそうで仕方がなさそうだがなァ!」

「…縛道の八“(せき)”」

 

 前蹴り…所謂ヤクザキックが鳩尾に入る前に後ろに跳躍しつつ小さな円形の盾を張る事でダメージを完全に抑える千歳、それでも体重の差からか、将亦(はたまた)剣八の霊圧が高い故か軽く吹き飛ばされる追撃を許す隙を作るも…。

 

「ッ!テメェ…ッ」

 

 それを阻止するように六つの光が剣八の身動きを完全に封じる、“まるで、一挙手一投足をつぶさに観察していたかのように”

 

雷鳴(らいめい)馬車(ばしゃ)

糸車(いとぐるま)間隙(かんげき)

(ひかり)もて(これ)を六つに(わか)

 

 縛道の六十一 六杖光牢(りくじょうこうろう)!」

 

BLEACH()の世界には鬼道という死神のみが使える高尚な呪術が存在するが実力者ともなれば無詠唱で術を発動させるのが基本だ。

 

(しか)し、千歳が今行ったのは“既に術として発動した術の威力を上げる”『後述詠唱』という高等技術である。

 

「…私に貴方を殺す意思は無い、不服かもしれないけどね」

「ふざけた真似しやがって…クソッ、こんなもんすぐに…」

「無駄だよ、貴方の霊圧は殆ど削らせて貰った」

「霊圧だと…?」

 

 言われて気付いたとばかりにまるで何かに力を“食われている”かの様に疲労感を感じる。

 

「…私の斬魄刀は高速で伸び縮みする刀でも無ければ無数の刃に分かれる訳でもない、だけど“喰らって力にする”という一点に於いては他の斬魄刀の追随を許すつもりはないよ。…暫く自分の霊力で縛られていると良い」

「チッ…次逢った時は覚悟しやがれ…!」

 

流刃若火(太陽)すら喰らう闇である事を是とする様に自身の霊力+剣八の化物じみた霊力を以て底上げした六杖光牢で身動きを封じ背中を向ける千歳に殺気をぶつける剣八。

 

「あーあ、剣ちゃん動けなくなっちゃった」

「…後はお願い出来るかな、やちるちゃん?」

 

戦い(遊び)の邪魔にならないように少し離れた場所で座っていたやちるに近付く千歳、動ける様になるまで結界を張ろうともしたが流石にこの様な手で戦いを切り上げた上に情けまで掛けたとあれば侮辱になるだろうと考えた上で止めたようだ。

 

「うん、剣ちゃんと遊んでくれてありがとうございました!」

『いーよぉ、虚だったら遠慮なく食べてたんだけどねぇ』

「わぁ、おしゃべりするんだねこの斬魄刀()

 

 草鹿やちるという存在自体も斬魄刀であると認識した上で、

 

『うん、星葉身(ほしはみ)っていうんだ〜、今度会う時は仲良くしてね?』

「はーい、二人共ばいばーい」

 

“本来稀な状況を軽く流しながら”自己紹介をし別れる。

 

-------❁ ❁ ❁-------

 

 更木剣八・草鹿やちるside

 

死神(彼奴)に妙な術を掛けられてから暫く寝ていたが辺りはすっかり夕暮れだ、クソッタレ…!

 

「…あの女、次見つけたらただじゃおかねぇ…!」

「でも剣ちゃん久しぶりに愉しそうだったよ?」

 

此奴(やちる)には愉しそうに見えていたようだが…まぁ、確かに最初は愉しかった。

 

「……途中まではな」

 

 そう、あくまで途中まで、だ。

 急に人が変わった様に鬼道とかいう死神が使う術を使ってきた事に苛つく。

 

 あんだけ強ければ剣だけで死合(しあ)えば良い、なのにそうしなかった彼奴自身が良くわからない。

 

「あのお姉ちゃんは剣ちゃんを殺したくなかったんじゃないかなぁ、“必死で藻掻いてたし”」

「あ?どういう事だ?」

 

 藻掻いていた?

 良くわからない事を口走るやちるに視線を向けるがやちるはこっちを向こうとはしなかった。

 

「なんでもなーい、あ、そろそろ解けそうだね!」

 

 名前も知らねぇ死神を庇うような奴でもないが…何となく居心地の悪さを感じながら俺はやちるを連れ(ねぐら)にしている場所に戻った。

 

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