総隊長の孫娘〜その者、最凶の料理人につき…〜   作:名無しのナナ

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予測と現実

 個人授業を終え宛てがわれた部屋で今日得た知識を文字として綴りながら私は眼鏡を掛け直す。

 

「………」

 

 私から見た山本隊長を一言で表すなら 得難い理解者 だろうか。

 

 先ず最初に言っておくと、彼女は自分自身を誤魔化すのが上手い。

 彼女の霊圧は並の隊長格の三倍はあるだろう、これは以前野外演習という形で連れて行かれた地にて偶発的に遭遇したギリアンと交戦した際に霊圧感知で瞬間的に体感しただけだが。(その際、彼女は始解すらしていなかった)

 

 次いで、彼女は自身が調理した料理に自身の霊力を込める事で教え子である私達の霊圧を向上させている。

 

 恐らく私達よりも前の教え子も同様に与え続けてきたのだろう、それも私達という器に配慮してか気付かれないように少しずつ。

 その結果、600年という永い時間気付かれ難いが優秀とされる死神達を護る要となっていた事に私や浦原喜助を除き誰も気付いてすらいない。

 

 …正直に言うと最初は侮辱されているのかとも憤慨したが、彼女の人となりを知れば理解が出来る。

 

 彼女は彼女に並び得る存在を欲しているだけなのだ、と。

 

 千年前、大敵(ユーハバッハ)を討ち滅ぼした女傑たる彼女は後進を育てるという名目上私達を品定めしているのだろう、というのが私の見解だ。

 

 私はその見解に辿り着いた時に彼女を愛おしく感じた。

 共に頂に並び立つのは彼女以外有り得ぬと理解してしまった。

 

 ───だからこそ、彼女の持つ能力は危険だとも理解出来る。

 

 

星葉身(ほしはみ)

 

 斬り伏せた虚の霊圧も糧にする事から私は最初、鬼道系の斬魄刀かと思ったが彼女が言うには放たれた鬼道や縛道、異能や己の恐怖心といった悪感情も喰らうらしい。

 

 正しく凶悪無比を体現したかのような斬魄刀。

 

 然もこれ等は始解の能力でしかないらしい。

 

 卍解したらどれ程の…否、確か彼女は卍解に至ったとしてもそれが始解よりも取り回しの利く強力なものとは限らないとも言っていたな。

 

 

 つまり、彼女の卍解はおいそれと使えるものではないという事か…?

 

 私は彼女が卍解した姿を見た事がない、それどころか始解すらギリアン程度では事が終わってからしか見た事がないのだ。

 

 取り回しが利かないのは卍解(それ)が周囲に与える影響を考慮した場合、“始解の方が被害が少なくて済むから”?

 

「…分からない」

 

 全ては予想の域を出ないのだから。

 

 だが、それこそが彼女の魅力の一つと考えれば…

 

 私は自分自身に訪れた変化に口角を吊り上げながら灯りを消した。

 

-------❁ ❁ ❁-------

 

 山本千歳side

 

 今、ボクは虚圏に来ている。

 目的は虚狩りと修行、虚圏は霊子濃度が尸魂界よりも濃い為に霊力のコントロールをするには適している。

 

『今日もやるのー?』

「うん、まだ完璧にものにした訳ではないからね」

 

 星葉身の問にすぐさま答える、600年前に編み出した技は月牙天衝の自身の霊力を喰わせ刃先から高密度の霊圧を放出することで斬撃そのものを巨大化して飛ばすヒントに鬼道を喰わせ圧縮した鬼道を斬撃に乗せるというものだ。

 

 だが、星葉身が喰えるのは鬼道だけではない。

 

 術理を同じくしてボク自身の霊力を喰わせる事も可能であるし、支援として放たれた鬼道を喰う事も出来る。

 

 まぁ、先ずはおさらいだ。

 

-------❁ ❁ ❁-------

 

 自身の圧倒的な迄の霊力により近付いただけで他の虚を滅ぼすヴァストローデ級の大虚の前に一人の死神が雷光を纏う一本の刀を携え現れる。

「おいおい、あんたか…昼寝中に何の用だ?」

「やぁ、久しぶりだねコヨーテ・スターク。取り敢えず私に狩られると良いよ」

「はいそうですか、って狩られると思ってんのか?鬼事なら他でやって欲しいもんだね、っと!」

 

 繰り出すは虚閃、然しただの虚閃ではない。

 ヴァストローデ級の虚閃ともなれば威力も絶大であり並の死神ならば死に至るだろう。そうでなくとも近距離からの虚閃ならば隊長格を下がらせる事も出来る。

 

 ───そう、ただの死神ならば。

 

「いきなり虚閃…ほら、返すよ────」

 

八千流(やちる)流 返しの刄 (やなぎ)

 

 と、小さく呟く声とは裏腹にヴァストローデ級の大虚が打ち出した虚閃すら喰らった星葉身を横一閃に振り抜かれた刃は黒い稲妻を放ちながら空間を斬り裂く。

 

「ッ…今日は何の用だよ、あんたが来ると騒がしくなるんだこっちは」

「特に用は無いよ、喰うか喰われるか…私達の間にあるのはその関係性だけだ…それに、これでも霊圧は抑えてる方だよ」

 

 空間すら斬り裂く一撃を躱す…否、“躱させられた”スターク、彼の喉元に鋒を突き付ける千歳はまるで古い友人のように言葉を交わす。

 

「…虚より虚らしいあんたらしいな、昔相手した隊長格の五倍はあるんじゃねーか?」

「…そうだね、私達は死神よりも虚寄りの性質なのは認めるよ。ただ、五倍あるかどうかは知らないけどね」

「謙遜するなよ、本当なら今頃俺の頭と首は飛んでるぜ、あんたは俺と同じ化物なんだよ」

「……」

 

 化物。

 その言葉に否定も肯定もしない千歳ではあるが 虚、滅却師、死神の因子を斬魄刀を経由しその身に宿している彼女は確かに化物と呼ばれても致し方が無い。

 

「あんたが虚なら良かったと思った事はあるが、今日は帰った方が良い、バラガンの爺さんがあんたを探してたぜ」

「あの人か、あの人の配下一個師団を食べた事を未だ根に持ってるんだ…?」

 

 思い浮かべるは髑髏の老人、自らを虚圏の王と自称する大虚の配下を一体残らず斬り伏せた上で糧とした事に流石にスタークも引き気味に距離を置く。

 

「あんたそんな事してたのかよ、…まぁ、忠告はしたからな」

「あ、…やれやれ、当分虚圏での修行は控えるかな」

 

 やれやれとばかりに肩を竦めながら一瞬の隙を突き逃走を謀るスタークに情報分の感謝はしているのか追う事を断念する千歳。

 

『そうだねぇ、主の感情もこの600年で“食べ慣れちゃったし” 他の味も食べてみたいから暫くは尸魂界で出来る事を探そー?』

「食べ慣れちゃったの?…まぁ、暫くは皆の育成に励むとしようか」

 

 相棒であり下手をすれば自身の破滅を呼び込む危険な隣人(星葉身)を鞘に納め、死神の姿をした化物は尸魂界へと帰還するのであった。

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