転生~黒龍となったその者は大海原を自由に生きる~ 作:アールワイオー
俺は失業したての元サラリーマンで前日は自宅のベットで不貞寝した筈だったのだが目覚めた時、ボロボロの薄汚れた格好で何処かの路地裏で倒れていた。
体中のあちこちが痛み、おまけに頭痛までしてくる。
ふと、下を覗き込むと水溜まりに見慣れない少年の顔が映りこんでいた。
よく身体を観察してみれば身長は縮んでおり手や足も一回りくらい小さくなっている事に気がつく。
しばらくの間混乱した後俺は最近流行りの転生系の小説の主人公の様にこの薄汚れた少年に転生した事を悟った。
徐々に流れ込んできた俺という意識が覚醒する前の記憶によれば俺は孤児で食べるのに困り盗みを繰り返していた処運悪く裏の社会の人間の金を盗み、捕まった後痛めつけられ殺される寸前で逃げ出すことが出来たが力尽きこの場所で気を失っていた事が分かった。
とにかく今は奴らに見つからない様にしなければならないと、俺は痛む身体を引きずりながら路地を出ようと這いずるが路地の出口寸前で大きな影が覆いかぶさり顔を上げるとニヤついた強面の男が立っておりその直後、後頭部に鋭い痛みが駆け抜けそこで俺の意識は途絶えた。
気が付いた時俺は浜辺で倒れていた。
うっすらと記憶にあるのは複数の男にボコボコにされた後、海に投げ捨てられた事。
どうやら奇跡的にこの浜辺に打ち上げられ助かったらしい。
体中のあちこちが痛み動かせずに暫く仰向けのまま四苦八苦していた時、サクサクと砂浜を歩く複数の足音が聞こえ俺は音のする方へ首を向けると衝撃的な物が俺の瞳に映った。
そこには二足歩行で歩く猫の獣人、アイルー達がいたのだ。
アイルーとは俺が前世でプレイしていた大人気狩猟ゲームモンスターハンターに登場する種族の事であり少なくとも前世の記憶が蘇る前の記憶にはモンスターハンター要素はなかった為その衝撃は凄まじい物である。
「人間だニャー。生の人間は初めてニャー。どうするニャ? 」
「この島に人間が来るのは数百年ぶりの筈ニャ。一度も人間を見た事ない僕達には判断は難しいニャ。取りあえず黒龍様の元へ連れて行くニャ」
「それがいいニャ。それじゃさっさと運ぶとするニャ」
アイルー達はそんな会話を終えると声一つ出せない俺を台車に乗せ凄まじい速度で移動をし始めた。
移動中気が付けば俺は眠っており次に目が覚めた時には巨大だが人気が全くしない城の前まで運ばれていた。
何だか城の周囲の空気は嫌にひりついた感じがする上、城の上空だけ禍々しい赤黒い雲が覆っている事に気が付きアイルー達が語る黒龍というモンハンでは聞きなれた単語と目の前に広がる光景がマッチし凄く嫌な予感がしてくる。
「人間歩けるかニャ? 」
俺をここまで運んできたアイルーの一匹がそんな事を聞いてきたが未だに体に力が入らない為辛うじて動かせる首を横に振った。
「にゃら仕方にゃいニャ。黒龍様の前まで運ぶニャ」
アイルーはそう言うと俺の乗せられた台車を押しながら巨大な城門を潜り中へと入って行く。
頼むから俺の予想は外れてくれ!そう心の中で叫んだが数分後俺のその願いは空しくも散った。
『我が城へようこそ人の子よ。我が名はミラボレアス。我は姿を変える故名を知らぬ者や我に仕えるアイルー達からは祖龍や紅龍と呼ばれることもあるが今の姿の時その者達は黒龍と呼ぶ。して、お前の名は何という?』
そう俺に語り掛けるのは人語を話すという以外は正に俺の知っているモンスターハンターに登場する禁忌の龍、黒龍ミラボレアスそのものだった。
ミラボレアスの周りには数十匹のアイルー達が控えている。
俺は体が動かせない為台車に寝そべった状態のままだったが恐怖の余り汗が吹き出し歯ががちがちと音を立て体はぶるぶる震える。
早く返答をしようとするが先程と変わらずに声は出ず俺の焦りは急速に増していった。
『フム、どうやら声が出せないと見えるな。ならばこれでどうだ? 』
そう言うと黒龍は指先から青白い光を放つ。
俺は今世の終わりを覚悟し目を瞑るが予想と反し何の変化も表れない為目を開けるとその光はゆっくりと俺の身体へと近づき吸い込まれていった。
『頭の中で話したいと思う事を念じてみよ』
俺は黒龍に言われたとおりに話したい事を念じてみる事にする。
『俺の名はレアスと言います』
『ほうレアスというのか。我の名に刻まれた一部を宿す者とはこれは運命かもしれぬな』
『え!?今の聞こえたんですか!? 』
『ウム。先程お主に我との念話回路を繋いだのだ。思う存分話せるぞ』
そんな事まで出来るのか…と俺が戦慄しているとミラボレアスは再び俺に疑問を投げかけてきた。
『ところでレアスよ、お前はどうやってこの島に辿り着いたのだ?この島は我とアイルー達しか住んでおらず外界からは隔絶されており目にすら映らぬ筈。故にこの島にはもう千年近く、少なくとも何百年と人は訪れておらん。お前を見る限り邪な気持ちで意図的にこの島にやってきたわけではなさそうだが良ければ聞かせて貰えんか? 』
ミラボレアスの物腰の柔らかさからなんか思ったより恐ろしい存在ではないのかもと思いつつ俺は答える。
『少しトラブルに巻き込まれて海に投げ捨てられたんです。そして気が付いたらこの島流れ着いていました』
『成る程。本来であればこの島に限ってそんな事あり得ぬと一蹴していた処だが我との念話で嘘は付けぬ上、お前が我が前に現れたこのタイミング…。レアス、お前は天が我に遣わした救い人なのかもしれんな』
『救い人?黒龍様は何か困ってらっしゃるんですか? 』
この如何にも世界最強と言わんばかりの存在感を放つ黒龍が困っているなど信じられないと言う気持ちで俺はミラボレアスにそう尋ねた。
『ウム、我の魂はあと数日のうちに燃え果てる』
『え?! 』
『人の子のお前が驚くのも無理はない。お前達人間から見れば我は圧倒的強者故滅びるなど見当もつかんだろう。だが我も生ある者故いずれ終わりは来る。我はもう五千年近く生きた。逝くには十分な頃合いだろう』
五千年というワードに度肝を抜かれつつ俺はやはり物腰が柔らかかろうが化け物は化け物なんだな等と思いつつもボレアスの話を聞いた。
『我の魂が尽きる事は我自身受け入れているだが一つだけ心残りがあったのだ』
『その心残りって言うのが先程仰られていた俺が救い人って話に繋がるんですね? 』
『その通りだ』
これは何かとんでもないお願いをされる前振りに違いないと感じた俺は今度こそ今世の終わりを覚悟した。
多分この話を聞けば俺は終わる。
そんな事を思っている俺の事など露知らずミラボレアスは話の続きをし始めた。
『我は龍族最初の種にして最後の龍。我が滅びればそれは龍の滅びを意味する。我は自分が消えゆくのは構わないのだが種その物が我で終わってしまうのが堪らなく辛いのだ。かと言って子を成す力も我には残って居らぬ。しかし、弱り果て朽ちようとしているのは我の肉体や龍の力ではなく魂だ。そもそも我の肉体は龍の力によって構成されておりこの力が尽きぬ限り滅びる事は無い上、龍の力が絶える事等ありはしないのだ。だが龍の力は魂と結びついており魂が消えれば龍の力も消えてしまう』
『それに対して俺は一体何の助けになるんですか?』
『ウム、魂が弱った龍は滅ぶしかない。だが逆を返せば十全な魂に龍の力が宿れば滅ばぬという事。我はお前と話していて決めた。レアス、お前に我の龍の力を託したい』
『ええ!? 』
想像より上の案件を投げつけられ気づけば大声を出してしまった。
『龍の力を託すってそれをすると俺はどうなるんです?それに俺なんかに務まる事なんでしょうか? 』
『ウム。本来ならばアイルーや人間には到底扱いきれるものではない。しかしお前を一目見た時に我が感じた魂の波動は常人の数百倍だ。それにお前はこの力を悪用したりはせんだろう。それだけ分かれば我が力を託すのに十分な逸材だ。何より我の魂が尽きようとする今お前が現れた事には意味がある様に我は思うのだ。それと龍の力を託した後だがお前は我と同じ龍へと変貌する。だが安心しろ。我には人化の術がある故お前にもそれは引き継がれる。龍の身体が煩わしいと思ったら人型になればいい』
多分その魂の波動の強さってのは転生者って言うのが大きな要因何だろうなと思いながら返答した。
『成る程。でも俺、急に力を継いでくれとか言われても何をすればいいかなんてわかりませんよ? 』
『なに、自由に生きてくれれば構わんさ。我も自由に生きた。その上こうして最後の我が儘までお前のお陰で果たせそうなのだからこれ以上望めば流石の我とて
穏やかで慈愛に満ちたミラボレアスの瞳を見た俺は先程のまでの恐怖は何処へやら消え去ったのか覚悟を決めていた。
『わかりました。彼方の力譲り受けましょう』
『ありがとう。わからない事があれば力を継承した後アイルー達に聞けばいい。我の力の事や島の事まで伝えてあるうえそれを五千年の間も絶えず継承し続けてきた者達だ。頼りになる筈だぞ』
ミラボレアスはそう言うと穏やかな表情で俺へとその顔を近づけてきた。
すると、その体が淡く光りだしその命の終わりを告げるようにも見えた。
俺は受け入れる様に少し戻って来た力を腕に入れ体を起こす。
「黒龍様死んじゃうのニャー!? 」
「そんなの嫌だニャー! 」
俺の声は聞こえていなかった筈だがミラボレアスの声は聞こえていた様で先程のやり取りでミラボレアスの死を悟ったアイルー達がその大きな瞳に涙を溜めながら一斉に叫び始めた。
『お前達も今まで島の管理や我の世話など苦労を掛けたな。これからはこの者を主として支えてやってくれ。勿論お前たちが良ければの話だが』
「嫌にゃわけにゃいニャ! 」
「分かったニャ。これからは新しいご主人様を精一杯支えるニャ! 」
「でも黒龍様の事も忘れないニャ!黒龍様がこの島と僕達を守ってくれていたお陰で僕達は元気に生きてこれたんだからニャ! 」
涙をごしごしと拭きながらそう言うアイルー達を見ていると淡く光っていたミラボレアスの身体が徐々に光に溶け出し俺の身体へ流れ込んできた。
暖かく心地の良い感覚に包まれ自分の身体が作り替わってゆくのを感じながら俺の意識は微睡へと落ちて行った。
どれ程の時間が経ったのだろうか?
随分眠っていた気がするがけだるい気持ちを押し殺し瞼を開けた。
すると大きく真ん丸な瞳がこちらを覗き込んでいるのがわかりばっちりと目が合う。
目が合った相手であるアイルーは暫く硬直した後慌てたように大声を上げながら走り出した。
「大変だニャー!ご主人様がお目覚めになったのニャー! 」
長い間寝ていた所為か頭がぼやけており暫くの間脳内整理をしながら自分がそう言えばミラボレアスと同じ黒龍になって眠ってたんだったな。
ボーッとそんな事を考えていたら出て行ったアイルーが数匹のアイルーと絶世の美男美女を連れて戻って来た。
確かこの島には人間は居ない筈だ…だったらアイツ等一体誰だ?
警戒の為起き上がろうとするが体が上手く動かせず首を持ち上げるのが精一杯な事で重要な事に気が付いた。
あ、俺の身体今ミラボレアスそのものじゃね?という事に。
腕を見れば禍々しい黒い鱗に覆われており俺は軽い眩暈を覚え持ち上げていた顔をドスンと再び床に着ける事になった。
「お母様大丈夫ですか?!目覚めたばかりの上お母様は元は人の身だったと聞いております。まずは人化してみてはどうですか? 」
慌てて駆け寄って来た赤く輝く美しい髪にボンッキュっボンの如何にも女騎士といった格好をした美女の方がそんな事を言ってきてお母様って誰だよと思いつつもそう言えば人化の術がどうのとかミラボレアスもそんな事言ってたなーと思いだした。
しかしどうやるのか分からない為素直に聞いてみる事にする。
『すまんがどうやるか分からん。教えてはもらえないだろうか? 』
「勿論お教えします。ですがそんな畏まった話し方はおやめください」
『わかった話し方は何とかする。だからそんな泣きそうな顔しないでくれ』
今にも泣きそうな顔をする美女にそう言いつつ人化のレクチャーをしてもらう。
『頭の中で人の形をイメージしながら体を巡るこのエネルギーの様な物を放出する感じにすればいいんだな? 』
「はいそうです! 」
『ではやってみよう。ハッ! 』
言われたようにやってみると一瞬全身を光が包み気が付けば慣れ親しんだ視野に戻っていた。
だが凄く違和感を感じその違和感のある位置に視線を落とすと…。
「なんだこりゃあああああああ!!?? 」
そこには存在しない筈の物があり俺は目の前の美女へと詰め寄った。
「ここに鏡はあるか?! 」
「え、ええ。あちらに」
俺は彼女が指を指した方向にあった鏡を見つけると猛ダッシュしその前に立つとそこに映しだされたものは漆黒の艶やかなロングヘアにミラボレアスの鱗を使って作られた様な漆黒のドレスを纏った美女の姿だった。
俺は本日二度目の叫び声をあげた。
ONE PIECEの世界の話に触れるところまで行きたかったのですが行けませんでした><
次回は少なくともワンピース要素もいれていくので読んでくださるとうれしいです!
お読みいただきありがとうございました。
誤字脱字などの報告があれば確認次第修正しますのでよろしくお願いいたします。