ただの一人語り。まあ、聞こえないけれど。

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 お久しぶりです。一年ぶりに執筆組に帰ってきました。


物は語らない

 僕はいつも君をみているよ。

 これは僕のただの言の葉。

 君を何時までも見守っていたい。

 ねえ、凜香(りんか) 、僕のこの思いは聞こえてるかな?うん、聞こえてないよね?

 いつか君に伝えたいな、きっととても難しいだろうけど。

………

 僕と君の出会いは9年くらい前。

 あの火は確かよく晴れていたね。  

 たくさんの人で賑やかなお店の中、君は確か大人の人と一緒だったよね。

 確か君がその人をおじさんと呼んでいたね。

 僕だって最初は分からなかったけど、つまりその人は君のお父さんのお兄さんなんだろうね。

僕だって電波とか、先輩たちの話からちゃんと勉強してるんだよ、すごいでしょ?

 まあ、その叔父さんが君にこう言ってたね。

「りんちゃん、音楽を聞くのが好きだよね?そろそろCDデッキ、いらないの?」って。

 君はその時、困ってたよね。自分が機械を上手に操作できるか分からないって叔父さんに言ってたね。

 それで、その叔父さんがだったら、あまり複雑な操作をしなそうなデッキを買うよって言って、それで僕と君は出会ったんだよ。

 なんだかんだで君も嬉しそうだったのを見て安心したのをよく覚えてるよ。

 君は別に機械音痴なんかじゃないね。それはすぐに分かったよ。

まあ、僕も少し不安だったけど、君の言う使えないってそう言う意味じゃなかったんだね。

 君はいつも僕を操作するときに僕本体のボタンを押して捜査しているね。態々歩かなくともリモコンを使えば離れた場所からでも操作できたのに。

 不思議だなって思って、でも先輩たちはそれがさも当然の様に話していたからあまり気にしていなかったんだ。

だけど、僕も普通の人がどうやって読み書きするかくらいは知ってるよ。だから、君の家に少ししてから先輩たちに聞いたんだ。君はどうして目を使わないの?って。

 こんなことを知るなんてって凄く驚いたよ。君は触ったり音を使わなきゃ文字とか物を理解できないんだね。

やっと分かったよ、君は画面の文字を読めないんだね。でも、光は分かってたから、それも使ってたんだね。

………

 だからかな。君の世界から色が、光が失われた時もよく覚えてるよ。

 僕が君の家に来て2年くらい経った秋。あの日は曇ってたね。君はその日も音楽を聞こうとうぃてため。

でも、そのとき君はすぐに僕の操作を止めたね。思ってたCDじゃないって。黄色いCDじゃないって驚いて呟いてた。

 僕は何が起きたのか分からなかった。ただ君が流すCDを間違えたんだとばかり思ってた。

でも、君がお母さんを呼んでしてた会話は何故だか忘れられなかったんだ。だって、あんなに焦ってた君はは初めて見たんだ。

 「お母さん、黄色と白の違いが分からない。黄色いCDを探して!」

 「え?本当なの?病院はまだ先なんだけこれわ不味いね」

 少し前から目の調子が悪かった君。その日ついに君の世界から光をが、色が失われた。

だから、それから君は色についてあまり話さなくなったし、CDにもラベルを付けるようになった。君が変わってしまったように僕には思えたんだ。

でも、君はいつも通りだったね。そんなに不便じゃなかったのかな?

………

 そんなことから2年くらい経って、君は家から長い時間いなくなるようになったね。どうやら寮のある学校に進学したらしくて、そこでは二人で1部屋を使うから大きな音は出せないらしくて、僕は家にいたままだった。

 その頃から君は携帯で音楽を聞くようになったね。音楽好きな君らしいやって思ったよ。寮でもきっと毎日何か聞いているんだろうね。

 でも、せめて家に帰ってきたときくらいは僕を使って欲しかったな。

たまに少しだけ僕を使ってくれてたね。それだけで嬉しくなるくらいには放っておかれてたんだって思うと、今でも悲しいな。

………

 そんな調子で4年くらい過ごしてたんだけど、そんな僕に転機が訪れた。

 君がやっと一人部屋に住めるようになったんだ。だから、やっと僕も寮に行けるようになったんだ。

 君は高校に入ったころから携帯の音楽も僕を使って聞いてくれるようになったし、最近じゃ毎日使ってくれる。僕が寮にいるから、CDだって買えるようになったって、笑いながら言った君は嬉しそうだったね。

 ねえ、凜香?君はやっぱり音楽が大好きなんだね。僕、前みたいに沢山使ってくれてすごくうれしいんだよ。何も君に言葉で伝えることは出来ないけど、それでも僕が仕事を出来る内は君の生活に花を添えるよ。君に音楽が必要な限り、僕がいられる限りずっと君のために音楽を流し続けるよ。

だから、ほらそんな悲しそうな顔をしないで、ね?




 この物語の女の子、凛香のモデルは私です。


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