銀河英雄物語~君主国連盟の帰還~   作:渋川剛三

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ファーストコンタクト

      銀河英雄物語~君主国連盟の帰還~

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 宇宙歴796年帝国歴487年7月12日同盟最高評議会

 

「本日はどのような用件で我らを招集したのですかな、サンフォード議長」

 

開口一番そのように発言するのは、先日のイゼルローン要塞無血奪取で発言力の上がったヨブ・トリューニヒト国防委員長であった。

 

「このような緊急の招集をするとはよほどの事がおありなのでしょう」

 

「うむ、今回の収集の拳なのだが、国土開発委員長」

 

サンフォードが促すと、普段穀潰しだの昼行燈だの陰口をたたかれているアダムス国土開発委員長が発言する。

 

「は、今回皆様を招集させていただいたのは…」

 

 

 

二か月前 同盟辺境探索船パーン

 

「暇っすね、艦長」

 

「任務中だぞ副長」

 

「とはいってもこんな辺境、宇宙海賊も出やしませんよ、銀河中心部への回廊を探すったってそんなの砂漠に埋もれた砂金を探すようなもんですよ」

 

「そういうな」

 

「第一本気で探すならもっと予算をくれってんですよ、最新鋭の船とまではいかなくてももっと性能のいいレーダーがあるだけでもだいぶ違いますよ」

 

そういっただれた空気が館内に漂っていた。

国土開発の一環として銀河中心部へとつながる回廊の発見は建国の頃から始められていたが帝国との戦争がはじまると、そちらに予算が回され、その結果規模は縮小いまでは退職間際の人物が行く感触とされていた。

 

「そもそも…「艦長、所属不明艦より入電が入りました」」

 

「すぐまわせ、くっ宇宙海賊か?」

 

「はっ、すぐに回します」

 

「くそっ、なんだってこんな場所で」

 

さっきまでのダレた空気が霧散して緊張感が漂った。

 

「奴らは何と言っている」

 

「はい、え、これは…同盟公用語でも帝国語でもない、まさかこれは英語?」

 

「どうした、早く入電内容を」

 

「!はい、入電内容は『貴艦は我が領宙を犯している、速やかに機関を停止し所属艦名を返答されたし、当艦は北欧連合内フィンランド共和国宇宙軍所属「シモ・ハユハ」』」

 

 

 

 

 

同盟最高評議会

 

「フィンランド共和国、共和国という事は議会制民主主義を採用しているという事かねアダムス委員長」

 

普段は冷静なジョアン・レベロが興奮した面持ちで尋ねる

 

「はい、それだけではありません、フィンランド共和国だけでなくほかにも複数の国家が存在しておりそのすべてが議会制を敷いているという事なんです」

 

「喜ばしい出来事だ、この慶事を早く国民に知らせねば、我らは一人ではなくともに手を取り合いうる共和制国家が複数存在することを」

 

「お待ちください、彼らの話をまとめると彼らの多くは君主制国家なのです」

 

「どういうことだ?君主制と議会制民主主義は両立しうるのかねアダムス委員長」

 

「はい、なんでも彼らの国は、なんでも立憲、そう『立憲君主制』と呼ばれる制度をとっているのだそうです。詳しくは手元の資料を読んでください」

 

 

 

「ふむ、つまりなんだね、彼らの国々では君主は君臨こそすれ、統治は国民によって選ばれた議員による議会によってなされているという事なんだね」

 

「はい、それを彼らは立憲君主制と呼んでいるのだそうです」

 

「うむ、かの国々のことについては理解ができたと思う。

それでなんだが、フィンランド共和国より親書を受け取っており、それにしたためられていたのは、領地確定のため特使を派遣したいと思うが受け入れるや否やという事だ」

 

「当然受け入れるべきでしょう、このことを発表すれば国民の士気はいや増すことでしょう」

 

「ちょっと待ってくれ、その特使をどのようにもてなすのだ、我が国は今まで一度も外国の使節を受け入れた事が無いのだぞ」

 

そんな議論が続く中それまで発言しなかったトリューニヒトが発言する

 

「それならばこちらから特使を派遣すればいいでしょう、そもそもあちらは親書を送っているのにこちらはまだ送っていない、この返礼として全権特使を派遣してその対応を見てこちら側の対応を決めればいい、特使には私がなりましょう」

 

「わかった、しかしトリューニヒト委員長が行くまでのことはないのでは」

 

「何を言っているのです、国境の確定は国防にかかわる重大事ですぞ、更に国務大臣が派遣されたとなればかの国々に彼らとの関係の構築を重要視していることの大きなアピールになるではありませんか」

 

「うむ、ではトリューニヒト君に頼むことにしよう。では本日はこれにて解散」

 

 

 

 

 

この決定が銀河の未来に大きな影響を与えることを今は誰も知らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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