獅子王・アルトリアペンドラゴンと王達の行くオーバーロードの世界   作:アルトリア・ブラック

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滅亡の序章

ーキャメロット・温室ー

 

キャメロットの第一階層、温室内にて、アルトリアとネロは二人でくつろいでいた。

 

ガレスとミアは後ろで立っていた。

 

「…最近は退屈だなぁ…戦いもないし、東洋の方は無血開城でなんとかしてるし…」

 

「それを聞くと暴れるのが楽しいという野蛮な意味に聞こえるが」

 

「むぅ、だって仕方ない、ここ最近暇だからつまらないのだ!」

 

ネロはジタバタする。

 

「ところで、魔導国が建国されてから数ヶ月経過しているが、これからどうする?あの国は、人間を家畜あるいはペッドにする気満々だが」

 

「まぁ、それは言えるな、余は別にどうでも良いと思ってるぞ、逃げてくるならば守るが、逃げなければ守る筋合いもないだろう?」

 

「…それもそうだが…」

 

「アルトリアはなんでも気負いすぎなのだ。人間全体を守るなんて不可能なことは考えなくても良い!逃げてきた人間のみ、助けを乞うた人間のみを助けなければ、それこそ身を滅ぼしてしまうぞ!オジマンディアスも言っていたではないか!『限られた人間を救い、守る方が得策』だと」

 

「………」

 

ネロの考え方には一理ある。

 

確かに魔導国の侵攻をほったらかしにしていても、キャメロットに不利益はない。

 

むしろ、構えばそれなりに不利益がある。

 

「…ネロ、ラナー王女とその従者の件はどうなっているんだ?」

 

「うむ!手土産を用意して行くと言っておったぞ!」

 

自信満々に言うネロに「そうか」と返す

 

 

 

 

 

 

ーリ・エスティーゼ王国ー

 

ザナックはラナーと歩きながら、一人考え事をしていた。

 

魔導国の戦力は未だ不明ながらも、魔導王一人で十分に国を滅ぼせるというのは既に知られている事実だ。

 

彼の目が王国にこれ以上向けられるのは絶対に避けなければならない。

 

だからこそ、贈り物でもして、ザナック的には従属と受け取られても構わないと思ってはいるが…

 

しかし、それを貴族たちが認めるはずがないというのが厄介な問題だ。

 

「魔導国から使者の方でもいらっしゃいましたか?」

 

ザナックは心臓が一つ大きく打つのを感じた。

 

こちらからのアクションを考えるあまり、思考が疎かになっていた。

 

「そうではない」

 

「それ以外にわざわざ私に会いに来られるほどの事がございますか?」

 

「あぁ、贈り物をどうするか考えていてな」

 

「使者の方がいらっしゃった時に今のお兄様が考えていらっしゃる倍の物を送ればよろしいかと思います。来てくださった労で半分、残りの半分は…いうまでもありませんね」

 

ザナックは何も言わずにラナーの言葉を噛みしめる。

 

それは非常に良い手だ

 

「ブリテン王国についてはどうする」

 

ブリテン王国、数百年前から存在する最強格の国家。

 

スレイン法国やアーグランド評議国と幾度となく争い、勝ちを収めている。

 

それに、最強格であるあの国に応援を求めれば、最低でも魔導国を牽制できる力を持っているだろう。

 

「ブリテン王国に関しては、使者を送って様子見した方がよろしいかと思います。彼の国は、近年東洋の方に侵攻されてますから、こちらに構う気がなければ使者の方を追い払うと思われますし」

 

「…そうだな」

 

ブリテン王国は確かに気まぐれなところがある。

 

助けてくれる時は助けてくれるのだが、助けるメリットがないと感じられてしまえば、助けてくれないのだ。

 

「王子、陛下がお呼びです。王女もお願いします」

 

「何事か?」

 

「はい。魔導国から外交使節団が来るという報告が入ったそうです」

 

「わかった、今すぐ向かうと伝えてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「王国の半分を手土産にか」

 

ギルガメッシュはラナーからの手紙を読みながらため息をつく

 

「王国全てを渡すことは不可能だと言っておりました。魔導国をそこまで欺くことは出来ないと」

 

「…しないだけで出来るだろうな、あの女は」

 

「どうされますか?」

 

シドゥリの質問にギルガメッシュは手紙を投げ捨てる。

 

「我は別に国などどうでも良い。楽しめるのならばな」

 

バハルス帝国もその内、手中に収まるのだ。

 

「王!!白金の竜王がギルガメッシュ王に会わせろとのことです!」

 

「ほぅ、ついにきたな、出迎えておけ」

 

「かしこまりました」

 

ギルガメッシュは立ち上がり、武装した状態で出入り口に向かう。

 

 

 

ツアーはブリテン王国の首都・キャメロットに来ていた。

 

白亜の城がそびえ立つ

 

魔導国の到来は周辺諸国を動揺させるのに容易かった。

 

(100年の揺り返し…間違いなく悪だ、彼らは世界に害をなす存在だろう)

 

出来るならば、ブリテン王国と共にあの国を滅ぼしたいのだが、彼らはやる気があるのだろうか?

 

(…リクが個人的に仲良くしていたアルトリア・ペンドラゴンは、あれ以降、周囲に対して関心を向けていないし…困ったな)

 

アルトリアは他のギルドメンバーとやらより、最も話が出来るし、こちらが困っていると言えば、ある程度は力を貸してくれる。

 

しかし、彼女は近年、外に出てくることはあまりなく、あったとしても何も言わないことが多い。

 

「ほぅ、わざわざ結界を攻撃してまで来るとは相当やられたいようだな」

 

「!」

 

黄金の光と共に現れたギルガメッシュに内心嫌な感覚になる。

 

『ギルガメッシュ』

 

キャメロットにおいては最も話が出来ない存在だ。

 

そもそも、彼は己の快か不快かで行動している節もある。

 

「やられたくて来るほど変態ではないよ」

 

「そうか」

 

ギルガメッシュは腕を組み、話を聞いてやろうみたいな姿勢になる。

 

「魔導国について君は知っていたのか」

 

その問いかけにギルガメッシュが『あぁ、そんなことか』と返して来る。

 

(…やっぱり)

 

彼は知っていて黙認していた。

 

「知っていたかと問われれば知っていただろうな。だが、それがなんだ?あちらの国がどうなろうと知ったことではない」

 

「……魔導国と戦うつもりはあるか?」

 

その質問にギルガメッシュは「暇つぶしなら良かろう」と返して来る。

 

(…参ったな)

 

協力してくれることに越したことはない、しかし、下手にかき乱してしまえば対策も後手に回ってしまう。

 

「……わかった、こちらでも何か分かれば相談に来る」

 

そう言うとギルガメッシュは悪い顔をし、霊体化して消えていく

 

 

 

 

 

 

ーリ・エスティーゼ王国ー

 

ロ・レンテ城にて

 

歴代の王が執務して来た部屋に本来の主人たるランポッサ三世の姿はなく、代わりに第二王子たるザナックの姿があった。

 

ザナックは上げられた書類に目を通し、暗い表情で重いため息をつく

 

書類に書かれている内容は王国の現状を知らしめるものだ。

 

【カッツェ平野の戦い】で多くの民が死亡した。

 

とはいえ、王国が致命傷を受けたというほどではない。

 

王国の民はおおよそ九百万。戦死者はその内の十八万程度しかない。

 

それに、農村の次男・三男などの予備とも言える者達などが多く、言葉は悪いが死んでも困るわけではない。

 

「ブリテン王国との同盟関係はどうなってますか?」

 

「あぁ、動いているが、良い返事はないな」

 

ブリテン王国と会談する手はずになっているが、そこで結果を出せるのかと言ったら微妙なところだ。

 

「評議国と同盟は結ばないのですか?」

 

「…あぁ、それについても動いてはいるが、なかなかに厳しいな、ブリテン王国さえ返事してくれたら他の国も動いてくれるのだろうが…」

 

ブリテン王国は大陸を統治している巨大国家であり、この世界においては最強格の国だ。

 

彼の国が協力姿勢ならば、他国も協力してくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

リ・エスティーゼ王国に向かうことになったアグラヴェイン、ガウェイン、玉藻前が来ていた。

 

それと、キングハサンも付いて来ている。

 

「今回の王国との同盟についてですが、王国に対してのメリットがほとほとありませんね、放っておけば簡単に滅びそうですし」

 

ガウェインの言葉にアグラヴェインがため息をつき

 

「他王はリ・エスティーゼ王国を侵略するつもりの魔導国の好きにさせろと言っていたから、我らの目的は弱者の救済のみ」

 

「弱者の救済ってねぇ…助けを求めていない人々を救済するのって救済って言えるのですかねぇ」

 

玉藻前の言葉にアグラヴェインは無言を貫く

 

「…ギルガメッシュ王の考えることなど分かりたくもないが、ギルガメッシュ王の目論見は魔導国がある程度巨大化することだろう。そうでなくては張り合えないとも言っていたしな」

 

「…あの人って本当に悪趣味ですよね、何食べたらあんな性格悪くなれるんでしょう」

 

アグラヴェイン達一行は馬車が王都に着き、仰々しく出迎えて来る王国の兵士たちを見る。

 

(…明らかに質は落ちて来ているな)

 

兵士全体に緩みが見られ、なおかつ、揃ってる貴族達はある程度の礼儀はあるものの、こちらを見る目が奇異に満ちている。

 

「………」

 

出迎えて来た王にも疲れきったような表情をしていた。

 

唯一、気を張っているのはザナック王子ぐらいだろう。

 

「こちらへどうぞ」

 

ランポッサ三世の言葉に従い、宮殿に向かっていく


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