獅子王・アルトリアペンドラゴンと王達の行くオーバーロードの世界 作:アルトリア・ブラック(Main)
ーリ・エスティーゼ王国ー
その一室は今、人の集まりが生む特有の熱気に満ちていた。
人数はさほどでもないが、部屋自体がそこまで広くないことと、何より彼らの真剣さが室内の温度を上昇させている。
部屋の中央には長方形のテーブルが置かれ、その最も上座となる場所に座るのがランポッサ三世、そのすぐ右に座るのが第二王子のザナックだ。
ほかに着席しているのは、王国の各尚書などの重臣達であった。
「それでは宮廷会議を行う。今回の議題は魔導国の宣戦布告の件に関してだ」
宣戦布告という強い言葉を使ったが、全員に緊張感を持ってこの会議に臨んでほしいと思ってのことだ。
ザナックは父の横顔をちらりと盗み見る。
最も心配なのは父の判断だ。この件がどれほど危険なのかを十分に理解し、最適な行動をとってくれるだろうか?
(あいつを殺した魔導王に対して、おもうところがあるだろうかなら…)
戦士長・ガセフが死んだ時、父は我を忘れて動転していた。
以来、父は一気に老け込んだように見えた。
本当に骨と皮だけの人形になったかのようだった、
今回の議題は、数日前、魔導国から使者が訪れ、王国側に魔導国の国璽の押された正式な文書を渡して来たこと
その内容は『魔導国が聖王国に対する支援は一環として送っている食料を、王国の者がその武力で強奪した。これは魔導国に対する敵対行為とみなし、宣戦布告も辞さない』というものだった。
更にそれに、魔導国の判断は間違っていないと賛同する国まで現れた。
ブリテン王国の使者はまだいるが、宣戦布告の件をどういう手順で知ったのか「一度帰還する」と言って背を向けた。
「使者が持ってきた書面に押された六つの印。二つに関しては調べがつくのが遅くなり、申し訳ございません」
頭を下げた外務尚書だ。
「わかっていたのは魔導国、帝国、竜王国、聖王国の四つでしたな?」
「その通りです」
「評議国と法国以外は魔導国に賛同して王国を非難しているというのは、魔導国の謀略ではなく、事実なのだな」
「はい、陛下」
疲れたように父がため息を吐き出した。
「竜王国も魔導国に屈したか」
「とは言い切れません、陛下。竜王国で何かが起きたという情報は入ってきておりませんので、恐らくは言いくるめられた、もしくは王国に味方するよりかは魔導国についた方が利益が大きいと踏んだからと思われます」
竜王国はあくまでも魔導国に賛同しているだけであって、かの国自体がどうこう動く気配はないということだろう。
「ブリテン王国は何も言っていないのか」
父の言葉に外務尚書が首を振り
「"市民は避難させど王国と魔導国の戦いに首を突っ込むつもりはない"とのことです」
ブリテン王国の言葉に重臣達はため息をつく者もいれば、中には忌々しげに何か話していた。
「…今回の事件についてなのですが、陛下、犯人が誰かまでは分かっております」
重臣達が驚いたような表情を浮かべた。
「これまでに分かった事は、どうもフィリップ・ディドン・リイル・モチャラス男爵なる人物とその領民達が犯人のようです」
「モチャラス?」
「聞いた事あるか?」
重臣達が聞いたことのない名前に首を傾げていた。
「…これは陛下。やはり、魔導国の謀略なのではないでしょうか?流石に王国の貴族が主となってあのようなことをしでかすとは思えません」
「確かに、あの魔導国は《人間種魅了》を裁判の場でも平然と使う国ではないか。ならば、国家間においてありえないような薄汚いことも平然と仕掛けてくる可能性があろう」
なるほど、と言うか声が上がる。続けての指摘はザナックも己の不手際を後悔するものだった。
「であれば、急いで男爵の身柄を確保した方が良いだろう。私も詳しくは知らないのだが《人間種魅了》とかいう魔法は解けても魔法がかけられている間にやったことを覚えているらしい。なので、その男爵が口封じされかねない」
ザナック、いや、王国には魔法に関する知識は恐ろしいほどない。
「その男爵を早急に召喚し、その身の安全を図ると共に何があったかを調べねばなりません」
「父上」
「なんだ、ザナック」
「真相が解明された暁には、その男爵の首を土産に魔導国との交渉に入りますか?」
「何を言っている」
父の鋭い目が自分を刺し貫く
「軍務尚書、参考までに聞きたいのだが、どうすれば魔導国と戦って勝つことができる?」
「その前にどの国と同盟を組めるのでしょうか?我が国一カ国だけなのですか?」
「評議国との同盟はあまり上手くいっていない。前々から交渉はしていたのだが、良い形での同盟は結べていないのだ。魔導国との仲がより険悪になったと知れれば、断られる可能性がある。それに…」
《ブリテン王国》は早々にリ・エスティーゼ王国に見切りをつけたのだろう。
王国内にいた使者達も今朝にはブリテン王国に出立してしまった。
つまるところ、ブリテン王国との同盟・援助が見込めない以上、法国・評議国は動かないことになる。
実質、リ・エスティーゼ王国は詰み状態に陥っているのだ。
ー法国ー
神官長達のいる場所にて、ブリテン王国の使者達の行動が逐一報告されていた。
「ブリテン王国はリ・エスティーゼ王国を見捨て、代わりにバハルス帝国を拾い上げたか」
「はい、そのようです」
漆黒聖典の第一席次は膝をつき、神官長に事を報告する。
「そうか…ならば、仕方あるまい。我らも此度の宣戦布告には黙秘を貫かなければならない」
「…はい」
『ブリテン王国』は600年前にスレイン法国に降臨された六大神と同等以上の力を持つ神々がいる国だ。
むやみやたらに深入りして滅ぼされたらたまったものではない。
つい最近、やっとブリテン王国との同盟にこじつけたのだ
すでに没落が確定している国に援軍を派遣してしまうよりは、黙認を貫いた方が良い
ーリ・エスティーゼ王国ー
リ・エスティーゼ王国にやってきたソロモンことロマニは魔導国の宣戦布告から町の人々が気が気ではないのか、無一文になってでも逃げるべきだと口論しているのを見ていた。
「まさに混乱期ですね〜」
そんな中、のんびりと話している子ギルにため息をつく
「あ、今呆れました?」
「…そりゃあ、呆れたくなるさ、国がまさに滅びようとしているのにそんなお気楽に話してるのを見ればね」
二人は少しだけ人気が減った場所を歩く
「今更じゃないですか、国が滅びるのなんて今まで何回もあったじゃないですか」
「…まぁそりゃそうだけど、よくアルトリアが何も言わなかったなぁと思って、この国には割と好意的だったのに」
アルトリアはこの国の貴族には関心は微塵も見せていなかったが、王国の冒険者達や市民達には好意的だった。
特に冒険者組合と最近まで遠回しで任務の依頼などをしていたぐらいだ。
「好意的だったとしても、今回の事件は流石にかばうつもりなかったんでしょう。あの馬鹿の行動には確かに笑いましたけど」
フィリップ男爵とやらが起こした愚かな行為
確かに人間にも馬鹿な人間はいるが、あそこまで底なしの馬鹿だとは思わなかった。
キャメロットの娯楽室で一連の流れを流していたときは、思わず抱腹絶倒したものだ。
「この世界に転移してきて初めてのエンタメでしたからねぇ」
「……まぁ、アレについては僕もかばうつもりはないけど」
苦笑いしながら言うロマニ
「それで、今回の件ですけど、魔導国がある程度動けるように選抜するとして、問題は冒険者の方ですよ」
王国にある冒険者組合もとい冒険者達は今後のために保護しておきたい対象だ。
まぁ、居なくても別に良いのだが、外交的な問題で保護した方がキャメロットのためにもなる。
「今思ったけど、ギルガメッシュって意外に人材確保には抜け目ないよね」
「馬鹿にされました?そりゃ、僕一人でなんとか出来ますけど、下はいくら居ても良いじゃないですか」
「………(やっぱ、ギルガメッシュだわ)」
強者に対しては割と寛容的だが、弱者に対しては容赦も遠慮もなく置いてけぼりするところがある。
現に働けなくなった者は遠慮なくキャメロットのウルクの領域からほっぽり出している。
「それで着きましたよ」
そう言って子ギルは蒼の薔薇の面々がいるであろう場所を指差す。