獅子王・アルトリアペンドラゴンと王達の行くオーバーロードの世界 作:アルトリア・ブラック(Main)
ー宿ー
リ・エスティーゼ王国内にある小さな宿にて…
蒼の薔薇の面々は朱の雫であるアズスと話していた。
アズスはラキュースの叔父にあたり、評議国付近でアダマンタイト級冒険者として動いていた。
「もし、ここから離れるなら俺の伝手を使っても構わないんだぞ?」
「離れるつもりはありません」
全員の視線がラキュースに集中する。
「ちっ、やめておけ、魔導王は住人を皆殺しにして都市を完全に破壊するつもりだ」
「いえ、逃げません。祖国を見捨てるなんて」
ラキュースの言葉にアズスはため息をつく
「……ブリテン王国が動き出してる」
「「「!!!」」」
全員が驚く
「…あの国は動いていないと言っていたが」
プレイヤー国家であるあの国は近年は東洋に侵攻しているだけで、こちらには何も干渉していないように思えた。
「公式にはな、だが、評議国の
「公式的には見捨てるみたいな話もあったが」
ガガーランが腕組みをして話す。
ブリテン王国は周辺諸国にリ・エスティーゼ王国を助けないような遠回しな事を言っており、事実、法国も動かないと言っているのだ。
「あの国にしてみれば貴族やそれに準じる者は助けないんだろうな、そもそも、あの国は強者と無垢な人間にしか優しくないからな」
強者と無垢な人間しか受け入れない。
「なら、あの国と共に戦うと言うのは…」
「やめておいた方がいい、あの国は周りに人がいない方が戦いやすいだろうし、こう言っちゃなんだが、お前らは邪魔扱いされるだろうな」
その言葉にイビルアイは「確かにな」と返す。
あの国の要人達を唯一知っているイビルアイの言葉にラキュースも何も言えなくなる。
ラキュースが複雑な感情を抱いたとき、『ボス』と緊張感を含んだティアの声と同時のタイミングで「時間通りですね」という男の声が通路から聞こえた。
扉の入り口に立っていたティア・ティナとガガーランの三人が見えざる力で押し込まれるように室内に入り、続いて二人の男女が入ってきた。
十本の指にそれぞれ指輪をしており、柔和な笑顔を整った顔に浮かべていた。
ラキュースは警戒心を強めた。仲間達は生物としての強さ、格に押されたのだ。
「…フル装備で来て正解だった」
「…個々が私達よりおそらく上」
「あぁ、こんな奴らが王国にいるなんて話は聞いた記憶がねぇ」
「おいおい、連れてきたくせにそんな危ない気配を撒き散らすんじゃねぇよ。お前さんらは上からそう言われてきたのか?無礼を働いて来いってよ」
アズスが皮肉げに言うと女が鼻で笑う
鼻で笑った女を男は制して
「それよりも私どもの仲間が少し、失礼の欠いた発言をしそうになり、申し訳ありま…」
「おいおい、なんか隠すことでもあったか?お前ら法国の人間だろ?」
アズスが男の言葉を遮る。
「本当に法国だと言うのか、法国にこれほどの奴がいたとは…」
イビルアイが驚いたように言う
「それで?法国の人間がわざわざきてくれたようだが、ブリテン王国が勧誘している人間を少しでも減らすためにでもきたか?」
アズスはドカッと椅子に座りなおす。
「それも少しあります。あの国は近年、王国の冒険者方をブリテン王国に勧誘し、連れて行っていますから、我々も少しは動かないとなりません」
男は口にしないが、あの国は最強格として名を馳せている。
これ以上強者があちらの国に流れるのを阻止したいのだろう。
「そうだな、国家間の争いになれば法国は負けるからな」
「………」
男は睨むような視線でアズスを見る。
後ろにいる女が『クアちゃん、やって良いのならやるよ』と言っていた。
「叔父さん!」
ラキュースの言葉にアズスが両手を挙げ「悪い悪い」と笑う
「それで、アインドラ様の……失礼、蒼の薔薇の皆様の方はいかがでしょうか?」
法国に避難するならぱと言った言葉にラキュースは
「その前に一つ聞いて良いかしら?どうやってここから逃げるの?」
「味方になってくださるならば、その時にお伝えします。ちなみに幾人かの冒険者チームの方々を同じくスカウトして了承を得ましたので、この地より安全に避難していただきましたよ」
「…おい、力ずくとか脅しとかで連れて行ってるんじゃねぇだろうな?」
ガガーランの言う通りだ。彼らほどの力を持った者達が脅しをかければ、それを拒否するのはかなり難しいだろう。
「そう言うことはしません。意にそぐわない形で来てもらっても、いつ裏切るかわからないじゃないですか。私たちは本心から味方になってもらえる方にお越し頂いています」
優男の真剣な言葉に嘘の色は一切なかった
「私は…断るわ」
皆んなは?、と問いかけようとするが、それよりも早くガガーランが口を開く
「私は、とか言うなよ、俺たちもリーダーの言葉に賛同するぜ」
ガガーランの言葉に仲間の皆が頷いてくれる。
「そうですか、分かりました」
優男の言葉に従い、彼らが退出して行く
「ふぅ、連続で悪いが、この後にも人と約束してるんでな、お前らも待っててくれるか?」
アズスは少し背を伸ばす
「叔父さん、そんな呑気に話していたら…」
「言いたいことは分かるが、この後会う奴の方が大事だ。俺の友人が約束を取り付けることに成功したらしいからな」
「……約束?」
「リーダー、足音が聞こえてきた」
ティアの言葉にラキュースはハッとなる。
アズスは立ち上がると
「気をしっかり持てよ、次会う奴はさっきの奴らよりも上だからな」
ーロマニ・子ギルー
「………その形態で行くの?」
ロマニは姿をソロモンに戻そうとしたが、子ギルは一向に姿を戻そうとしないのでそう聞くと「はい!」と元気に返事を返してくる。
「…威厳とか良いの?」
「子供の方が相手の本心を探れるじゃないですか、まぁ、それは良いとして、蒼の薔薇の勧誘はお願いしますね、僕はこれから行く場所があるんで」
「…はい?一人で行くの?」
「はい、それに、僕がいたらあっちも怯えきった子犬みたいになってしまうと思ったので」
じゃ、と言ってその場から居なくなる子ギルに『…自由すぎる…』と呟く
《ソロモン。着いたのか?》
『着いたんだけど、ギルガメッシュが何処かに行ったんだけど、迎えに行った方がいいかな?』
その言葉にアルトリアが《…ほっといて良いと思うな、エルキドゥが行ったから》と呆れているのがわかった。
『それで、もし断ったらどうするつもりだい?』
蒼の薔薇の面々を考えれば、ブリテン王国に行く事を断る可能性が高い。
なにしろ、王国を思う気持ちは常軌を逸しているような気がするのだ。
自爆特攻してでも魔導国の侵攻を止めそうなのだ。
《…断ったのなら、それでいい。だが、アズス・アインドラと協力して魔導国の戦力を一定以上削ろう》
『…一定以上っていうのはデミウルゴスとアルベドを殺すぐらい?それとも、マーレとアウラの二人を封印する程度?』
もしも、あちらとの戦争になれば、ここが更地になるのは確定事項だ。
《最低でもデミウルゴスを封印できるならば、それでいい、アルベドは恐らく出てこないだろうからな》
『うーん、それもアズスさんと話さないとなぁ』
そう話しながら蒼の薔薇の面々がいる部屋の前に立つ。
「失礼するよ」
そうノックして中に入る。
ー蒼の薔薇ー
「失礼するよ」
その言葉と共に入って来た男性は20代後半ぐらいのオレンジ色の髪をした男性が入ってくる。
「待ち合わせ場所はここであってたかな、アズスさん」
叔父を知っているような口ぶりにラキュースはえ?となる。
見た目は普通の男性で、先程叔父が言っていたような『気をしっかり持つべき人』とは思えなかった。
「よせよ、お前さんにさん付けで呼ばれたら後が怖い、そこは普通にアズスって呼び捨てにしてもらった方が今後のためにもなる」
「あはは、ごめん、じゃあ、アズスと呼んで良いかい?」
「それなら構わねえよ」
叔父とその男性は仲よさげに話していた。
「叔父さん…」
そう呟くように言うと、男性の方が「あぁ、ごめん」と言って
「自己紹介がまだだったね、僕の名前は…うーん、今はロマニ・アーキマンと名乗ろうかな」
「そっちで名乗るのかよ」
「仕方ないじゃないか、今はいろいろ危ないからね、あっちの名前で名乗ったら魔導国が最恐のNPCを派遣して来るかもしれないから嫌なんだよ」
「おい、待て。今えぬぴーしーと言ったか?」
イビルアイが会話に入ってくる。
「イビルアイ?」
ガガーランが首を傾げるが、イビルアイはまっすぐとロマニの方を見る。
「そうか、アンタは知ってたな」
アズスがイビルアイの方を見て呟く
「えぬぴーしーの存在を知っているのは同じぷれいやーしかいない。それは…」
言おうとしたイビルアイを笑顔で『待って』と言って制してくるロマニ
「まぁ、単刀直入に言うと、さっきの人たちと同じ要件かな」
「さっきの…法国の奴らと同じくらい勧誘しに来たってことか?」
ガガーランの言葉に『そう』と言う。
「アズスとは別件で用があったんだけど、君たちは避難するつもりはあるかい?」
その言葉にラキュースは「祖国を見捨てて逃げるなんてことはしないわ」と言う。
その言葉を知っていたであろうロマニは『そう』と一言で終わらせると
「まぁ…分かっていた上での質問というか、なんというか…うん。君ららしい」
ロマニはそう言ってラキュースをジッと見る。
「…?」
「キツイことを言うけど、魔導国は君たちのレベルじゃ到底勝てない相手だよ、それに、一発で死ねたら幸運、死ねなかったら絶望の始まりだ」
「それは…どういうことですか?」
「そこも気になるが、お前の口ぶりじゃ、魔導国について知っているように聞こえるが、アイツらの仲間ってわけじゃねぇだろうな?」
ガガーランの疑問は確かにその通りだ。
アズスは呆れたようなポーズをとると
「…その姿だと返って面倒なことになるから元の姿に戻ってくれねぇか?」
「やっぱり…?まぁ、あの姿だと会話になるか怖かったからこの形態だったんだよ」
そう言って人差し指に嵌めていた指輪を外す
「「「っ…!!!」」」
目の前に現れたのはブリテン王国の王・ソロモン王その人だった。
しかし、威圧感はまるっきりなく、圧迫感を感じなかった。
「大層な指輪して、ラキュース達を気遣ってのか?」
「まぁそれもあるけど、魔導国に気づかれるとそれこそ最悪なことになりかねないからね、レベルがバレるような行為はしたくないのさ」
「へー」
ソロモン王はラキュース達を見ると
「ブリテンはリ・エスティーゼ王国を守る気はない。僕の仲間達の大半が助けないという選択肢を選んだからね、それに、君たちの意思が聞けたから良しとしようかな」
そう言って姿をロマ二・アーキマンに戻す
「アズス、話をしたいから準備をしたらいつものところに来てね」
「了解だ、じゃあな」
そう言ってロマニが外に出る。
その背中を何も言えず黙って見つめていることしか出来なかった。