オレ氏、デウスエクスマキナ的なアラガミになる   作:真鳥

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サブタイつけないと言ったが………あれは嘘だ(いい笑顔)。


10 転がる運命

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちゃんとコアは侵食したはずなのに。まだ意思があるなんて…………」

 

 白銀糸の獅子のようなフサフサした鬣の髪を持つ。ワンピースぽい姿の真っ白な少女がオレを不思議そうに小首を傾げ見てくる。

 

 なんだこの子? 

 

 さっきまで何処にもいなかったはずだが、何処から現れた? 

 

『君は誰だ? 此処が何処か知っているのか?』

 

 白い少女はひと息吐き、話し出す。

 

「その夜、眠りについた子供たちは朝になっても目覚めなかった……二つめの朝…………三つめの朝…………四つめの朝にして、人々はようやく異変を自覚した」

 

 まるで歌劇を歌唱するように。

 

「これは呪いだ…………子供たちは呪われてしまった…………あの魔女によって」

 

 両手を掲げてワンピースの裾を翻し、くるりと廻る。

 

「あるひとりの勇敢な少女が夢の国の女王に直訴するために影の世界に赴くことにしました。お供にカカシ、ブリキの木こり、ライオンを連れて」

 

 少女は唄う。

 

「一匹の意地悪い猫が案内人となり、少女は影の世界の扉を潜りました。するとどうでしょう。目の前に、どこまでも続く大きな螺旋階段が現れたではありませんか」

 

 これは、不思議の国のアリス? オズの魔法使い? しかし、変則的な改変がなされた内容だ。

 

「少女は先に立って階段を降りました。ここはもう夢の世界だよ。気を付けることだね。夢への旅は、それを視る人間のココロの旅だから。闇の奥から、不気味な猫の笑い声が聞こえてきます」

 

 少女の紅い瞳が艶を帯び光る。

 

「深い深い夢の底。忘れ去られたオモチャ箱。手足のもげたヌイグルミ。崩れ落ちた積み木の城。ビスク人形は歌を久しく絶えて、錆びたオルゴールのゼンマイを巻くものもいない」

 

 少女がワンピースのスカートを摘み、慇懃無礼に礼をする。

 

「ここは世界でもっとも悲しい場所。子供たちの壊れた夢が流れ着く彼岸。仄暗き夢の主にして影の国の女王の視る悪夢の玩具箱」

 

 オレは少女の話に肝心なオチがないことに気付いた。

 

『…………眠ったままの子供たちは、結局どうなったんだ?』

 

「子供たちは目覚めないよ、眠り続けるだけ。だってこれは悪い夢だもの。最初からずっと夢を見ているだけ。永遠に醒めない悪夢の続き」

 

 少女はいつの間にかオレの真正面に立っていた。

 

「だからキミも眠って? ずっと夢を見たまま、世界が終わるその日まで…………」

 

 少女の白い手がオレにゆっくり伸びる。

 

 紅い瞳がオレを覗き込む。

 

 瞬間────

 

 オレのブレードが白い少女を叩っ斬った。

 

「あれ? なんで抵抗出来るのかな?」

 

 背後から少女の声が聞こえてくる。

 

 振り向き様にブレードを斬り上げる。

 

 しかし少女はそこにはいない。

 

『…………そうやってまたオレになんかするんだろ? 見た目に騙されるものか。紳士諸君が悦びそうな美幼女だけど。罠だってのが丸分かりだ』

 

 オレの中のアラガミの細胞が告げる。この少女に気を許してはならない。この少女は見ためは可愛いが、獰猛な獣であると。羊の皮を被った擬態した狼、否、ライオンだ。

 

「なんだ、気付いてたの? へぇ、ボクはてっきり意識もろとも捕食したと思ったんだけど…………キミって面白いね…………さすが『向こう側』から呼ばれた特異点なだけのことはあるよ」

 

 少女が左右逆さまに空中に浮かんでいる。

 

『あー、こういう展開ってさ、大体パターン決まってるもんだろ。ここがオレの精神世界で、オレは謎の敵と戦っている間に現実世界がピンチになってる、とか』

 

「…………ふぅん。そこまで分かってるんだ。うん。キミの言う通りだね、ホラ」

 

 逆さまの少女がくるりんと体勢を戻して空間を指差すと、大きなスクリーンが現れ映像が映し出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高天原を追放された須佐之男命(スサノオノミコト)は、出雲国の肥河の上流の鳥髪に降り立った。箸が流れてきた川を上ると、美しい娘を間に老夫婦が泣いていた。その夫婦は大山津見神の子の足名椎命(あしなづち)手名椎命(てづなづち)であり、娘は櫛名田比売(くしなだひめ)といった。

 

 夫婦の娘は8人いたが、年に一度、高志から八岐大蛇(ヤマタノオロチ)という8つの頭と8本の尾を持った巨大な怪物がやって来て娘を食べてしまう。今年も八岐大蛇の来る時期が近付いたため、最後に残った末娘の櫛名田比売も食べられてしまうと泣いていた。

 

 須佐之男命は、櫛名田比売との結婚を条件に八岐大蛇退治を請け負った。まず、須佐之男命は神通力で櫛名田比売の形を変えて、歯の多い櫛にして自分の髪に挿した。そして、足名椎命と手名椎命に、7回絞った強い酒(八塩折之酒)を醸し、8つの門を作り、それぞれに酒を満たした酒桶を置くようにいった。

 

 準備をして待っていると八岐大蛇がやって来て、8つの頭をそれぞれの酒桶に突っ込んで酒を飲み出した。八岐大蛇が酔って寝てしまうと、須佐之男命は十拳剣(とつかのつるぎ)で切り刻んだ。このとき、尾を切ると剣の刃が欠け、尾の中から大刀が出てきた。そしてこの大刀を天照御大神に献上した。これが「草那藝之大刀」(天叢雲剣)である。

 

 

 

 

 

「…………極東に伝わる神話だ。スサノオノミノコトが最初に所持していた剣、十握剣は別名、天羽々斬(アメノハバキリ)とも呼ばれる」

 

「そのアメノハバキリからヤマタノオロチが現れるとは、なんとも皮肉な話だな」

 

「アラガミの中から神機が出て来たのか? 変わってんなぁ」

 

「実に興味深い御伽草子だ。アラガミが多種多様な極東ならではの神秘性がある。私もいつか極東に訪れてみたいものだ」

 

 アインの語る極東の神話に、ユウゴ、ジーク、ルルが黒燐の大蛇を見上げる。

 

 その神話に(なぞら)えたかのごとく立ち塞がる巨大な魔竜。

 

 天を穿つ恐るべきアラガミに立ち向かう神機使いたち。

 

 神に挑むそれは神話の一端のような光景。

 

 

 

 

 

 

『…………………………………………』

 

 

 

 

 

 

 なんじゃこりゃああああああああああああぁぁぁッッッ!!!? 

 

 

 

 

 

 白い世界にオレの絶叫が轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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