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暗い黄緑色を基調とした身体中に傷を負った三つ首の頭部と顎を振り回し、すべてを喰らい尽くそうと暴れ回る対抗適応型アラガミ。『シン・ドローミ』。
あらゆるモノを飲み込む
「そっちに行ったぜっ! 後は任せたぁッッッ」
雷の衝撃波の咆哮を放ち、限界まで顎門を広げて異常なほど執拗に周囲を破壊し包囲網から逃れ出す。
「トドメを刺してやれッッッ」
ジークとユウゴがシン・ドローミが疾走する先に待ち構える者に叫ぶ。
「頼んだ。オロチノカラサビ」
クリサンセマムの鬼神が振り返る。
手負いの罪なる禍王はガムシャラに雷撃を放ちながら、立ち塞ぐ存在に三口を開き、挑み掛かる。
「ああ。任された」
右手に掲げた大曲刀を構えるは長い黒髪に大きな角を持つ異形の少女。黒き外骨格のガントレットに覆われた鋭い鉤爪の掌に連なるノコギリ刃がチェーンソーのように唸り、激しく回り出す。
勢いよく振り抜かれた刀身が何処までも伸び上がる。まるで幾重もの刃が蛇鞭のようにしなり、空を切り裂き一閃し、シン・ドローミの二つの禍々しい首を一文字、横並びに両断した。
二つの頭を失い、大絶叫する対抗適応型アラガミ。だが、怒りに狂ったケダモノは残るひとつの頭を盛大に猛らせ震わせ渾身の一撃を放つ。
─────甲高い金属音。
黒髪の異形少女の左腕にいつの間にか巨大かつ無骨なシールドが装着されて、反攻する兇獣の複牙を受け止めていた。
「────悪いな。チェックメイトだ」
シールドの射出口から閃光が迸り、爆音が鳴り響く。
シン・ドローミの残された頭部が長大な鉄杭に開いた大口こと身体を貫通せしめし爆ぜ、絶命させた。
ジャコンと特大の空薬莢がパイルバンカーシールドから煙を撒き排出され、伸ばされたガリアンソードがギャリンギャリンと連結していき、元の大曲刀に戻る。
全身黒塗りで固めた戦人形さながら整った美貌をチームメンバーに向け、外骨格の鋭い鉤爪で親指をグッと立てた。
それには応えるように仲間たちも親指を立てる。
ヤマタノオロチを倒し、オレが倒れてから数日…………オレはクリサンセマムの一員として、共に活動していた。
「こいつ、切れば切るほど気味悪い触手をウネウネと……破ァァァッ!!」
ルルが伸ばされる触手の塊りで造られた不気味で巨大な腕を薙刃を旋回させ、次々と斬り飛ばす。
だが、『ナヴァド・ヌァザ』はまるで意に介さず、そのままルルを呑み込もうと触手を這わし拡げる。
明王を思わせる装飾を身に纏った、隻腕の巨躯を持つ対抗適応型アラガミ。
右肩の肉塊には人間の腕がいくつも絡まったような触手が蠢き、頭部の頭骸骨からは瘴気が溢れ、赤い瞳がその奥で不気味に発光して、何とも悍ましい姿をしている。
「─────悪いお手々。めっ!!」
フィムが振り下ろした剛月斧の断罪が、天罰を体現する轟仏の魔神の触腕を真っ二つに斬り飛ばす。
「チャンスだよっクレアっ!」
腕を断ち切られ、バランスを崩して片膝を着くナヴァド・ヌァザ。そこにクレアが至近距離から一斉射撃を繰り出す。
「ッてぇえええええええええッッッ!!!」
剥き出しの露出されたコアを正確に全弾銃撃する。魔神は身動ぎしつつも再び、触手を纏わせ起き上がろうと捥がく。
「させるかっ! これでも喰らえっ!!」
ルルがホールドトラップを直接、魔神の身体に叩き込む。
ナヴァド・ヌァザが咆哮を谺し、その動きを鈍らせる。
「今だっ! カラサビッ!!」
「カラサビッ! お願いっ!!」
「カラサビお姉ちゃんっ!!」
三人の乙女の声が響き合い、遠方に構えるは黒き戦乙女。
外骨格の右腕から肩に超長大な黒鉄のロングバレルライフルの砲塔が形成されており、背中には幾つも排気口のノズルと排熱ファンに覆われている。
両脚のバトルレガースから伸びたバンカーが大地に深々食い込み固定され、左腕で砲身と化した右腕の突出したグリップを握り締める。
「─────待たせたな。準備OKだ」
ニヤリと不敵に笑い、展開されたソリッドグリッドの照星を覗き、ターゲットに照準を合わせるオロチノカラサビ。
「─────狙い撃つぜッ」
迸る眩ゆい閃光。
一直線に直走る螺旋を巻く高高圧エネルギーの奔流。
ナヴァド・ヌァザのコアを、貫いた───────
醜悪な巨軀に見事な
レールガンのような砲身と背中の排出機関から大量の蒸気を放出し、形態変化させた肉体を緩やかに元の身体へと戻していくオレ。
「カラサビお姉ちゃん凄いっ! 強いっ! カッコいいっ!」
フィムがダッシュし、勢いよく飛び付く。それをオレは大きな双球で受け止める。
クレアとルルも駆けつけて互いの無事を喜び合う。
仲間たちと共に過ごす日々はとても充実していて、何にも増して得難いものだ。
だから、だからこそ、オレは───────
獰猛な獣が煌びやかな鎧を纏ったような、荒々しくも神々しい銀皇の四足獣型の荒ぶる神が威嚇して吠え猛る。
エジプト神話の冥界の神の名を持つ限界灰域対抗適応型アラガミ。
『アヌビス・デュナイ』
「否定」を意味する「ディナイ(deny)」を冠し、世界を凍土に変える程の冷気を放つ、アヌビスの対抗適応型アラガミ。銀白色の鎧を纏い、発光部は紫色に変化している。
強大な力を持ち、バーストせず通常の状態でもマルドゥーク数体を一撃で瞬殺する。
さらに目に入るモノ全てを切り裂き喰い殺す程の非常に高い凶暴性を備え、その存在を知る者からは『冥界の主』と称される。
「おっととぉっ! 奴さん血気盛んだっ! オジさんじゃ、荷が重いからパスしたいねぇっ!!」
「この暴れっぷり、寝相の悪いジーク兄貴そっくりだなっ! 今朝も頭を蹴られたっ!!」
強靭な牙を展開し素早く捕喰形態に移行し、対象へ一度折り返しつつ突進してくるアヌビス・デュナイを素早く左右に躱すリカルドとニール。
「さっさと御退場願おうかッ、カラサビッ!!」
冥府へと導く死神の顎門をタワーシールドを展開し、ジャストガードで完全防御するアイン。
捕食攻撃をあっさりと防がれた喰獣の銀皇は、タタラを踏みながら後ずさる。
その頭上、真上、空中から高速度で飛翔する異形のアラガミ少女。
背中から6枚羽根の漆黒に輝くウィングスラスターを展開させ、追従するファンネルから無数のレーザーを嵐の如く射出する。
降りしきるレーザーの雨霰に身を穿たれ焼かれながらも、二足で立ち上がるアヌビス・デュナイが真上の敵手に向かい口腔を開く。
赤色のフィールドが周囲から揺らめき沸き立ち、アヌビス・デュナイの開かれた顎門へと一斉に集約し、高密度のエネルギーの塊りとなる。
そして、それを真上へと撃ち上げた。
機械の翼を持つ黒き戦乙女は、両手を広げる。
彼女を中心に幾つもの円刃のサークルが幾重にも螺旋を描き、重なるように出現する。
少女が手をかざす。
不規則に旋回する円刃の歯車の中心部の空間が裂かれ、虚無の彼方より少しずつ、其れが姿を
巨大かつ長大な槍。
「槍」とはいうが、その形状は独特で、赤い光を放つ幾何学文様を備えた三つの円筒が連なる姿は、ヘビーランス、騎士の馬上槍ような独特の形状をしている。
三つの重なる円筒が互い違いに旋回し、空間を軋ませ、歪ませる。
それはこの世にあらずもの、神代の武器。まさに『
廻る円錐の異様な巨槍を構えるオロチノカラサビ。
「────控えろ、雑種」
そして、それを真下へと撃ち降ろした。
真下から赤い破壊の光が立ち昇る。真上から黒い破滅の光が降り立つ。
赤い破壊の光が、黒い破壊の光にあっという間に飲み込まれる。
冥界の名を印す荒ぶる神は、開いた口ごと大地に縫い付け突き立てられ───────
─────果てた。
大地を台座に巨槍を墓標とし、風と共に運ばれ散って逝くアラガミを目下に見下ろす黒の少女。
地平線の山嶺から沈みゆく陽が静かに大地を赤く染めてゆくのを見つめ、仲間たちが待つ下に降りていった。