オレ氏、デウスエクスマキナ的なアラガミになる   作:真鳥

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21 路の先に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベッドで毛布を被る天使の輪っかがある小さな少女。

 

「…………お姉ちゃん、あれ歌って…………いつもの…………」

 

 隣りに腰掛ける黒髪の長い角がある少女に眠そうにしながら、ねだる。

 

「フィムは本当にあれが好きだなあ。うん、歌ってあげるよ」

 

 アラガミの少女は、すうっと息を吸うと、静かに紡ぎ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 終わらない歌がないなら

 

 くり返し歌えばいい

 

 枯れない花がないなら

 

 別のたね蒔けばいい

 

 life.my life

 

 続いてゆく、きっと永遠に

 

 誰もがそう、本当は信じたい

 

 現実という悲しみに出会うまで

 

 瞳そらそう…………

 

 

 

 オレが歌っているのは、シオが劇中に口ずさんでいたあれだ。

 

 切なくも温かい。優しいメロディ。本来なら歌詞はないが、そこはオレが転生者だからな。本物のアーティストの作詞楽曲を知っている。

 

 アラガミとはいえ、今のオレは女。高い声がよく出る。出来るだけ、ゆっくり、優しく、緩やかに、子守唄のように、歌う。

 

 

 

 

 憶えている

 

 母の胸は温かくてやさしい

 

 この世を離れる日に想うでしょう

 

 忘れないで私の声

 

 voice.of me

 

 いつか必ず訪れる

 

 別れなら出来るだけ

 

 美しくきっと言おう

 

 忘れないで私のこと

 

 life.my life

 

 いつか必ず訪れる

 

 別れなら出来るだけ

 

 そう美しく……伝えたいのその時には

 

 いつか誰にも訪れる

 

 さよならは泣かないで

 

 美しくきっと言おう…………

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん? いつの間にか寝たか。これ歌うとすぐに寝るよなフィム」

 

 スヤスヤと寝息を立てる少女の髪を優しく撫でてやる。

 

 こうしてると本当に普通の女の子だと思う。到底アラガミとは思えない。

 

 オレはフィムを起こさないようそっと離れる。

 

 まだみんなは起きているな。

 

 少し外に出るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜。

 

 玲瓏(れいろう)世闇(よやみ)を照らす月。

 

 その呼び名は数多ある。

 

 (さく)始生魄(しせいはく)弓張(ゆみ)はり、幾望(きぼう)望月(もちづき)朧月(ろうげつ)玉桂(たまかつら)

 

 挙げればまだまだきりがない。

 

 見上げる。

 

 満月を一日過ぎた今宵の月は十六夜(いざよい)、またの名を不知夜(いざよい)という。

 

 夜を知らぬとはよく言ったものだと思いながら、煌々と照らす少しだけ欠けた月を見上げる。

 

 オレは荒野に停泊する灰域踏破船クリサンセマムの甲板で夜空を眺めている。

 

 思えば、この世界に来てからいろいろあった。何故かアラガミ、ハバキリになって、アラガミと生死を賭けたサバイバル。生きるために戦い、食らい、アメノハバキリに進化。途中から神機使いに執拗に狙われまくった。

 

 ある時、偶然にもアインさんたちと接触。だと思ったら、グレイプニルを騙る神機使いに何か分からない謎の神機に刺されて、身体が変化。

 

 ヤマタノオロチにジョグレス進化した。

 

 オレは深層意識の世界で、白いアラガミ少女と出会い、ヤマタノオロチ化が少女による意図的なものと知る。

 

 頭に来たオレは白獅子に変身した少女と戦うも、敗れてしまう。

 

 現実世界では、ヤマタノオロチが暴れまくり駆けつけたゴッドイーターたちが応戦するも苦戦。

 

 絶体絶命の状況の中、オレは新たなる進化をした。

 

 白獅子少女を倒しヤマタノオロチを倒した危機が去った矢先に、白獅子少女の姉なる者が現れ、事態は急変。

 

 なんやかんやで逃げられ、オレは進化の反動なのか意識不明に。

 

 クリサンセマムのメンバーに保護された。

 

 という経緯だ。

 

 

 自分のこと、何故この世界に来たのか。この異様な力はなんなのか。何故、あの姉妹はオレを狙ったのか。最初は生き残ることに必死で、強くなるにつれ、謎ばかり増えていく。

 

 

「…………分からないことばかりだ」

 

 だけど、分かることもある。

 

 黒い鉤爪を白い月に伸ばす。あの月にはもうひとりアラガミの少女がいる。分かる。今もこっちの星を見ているのが。

 

「…………お前、あの歌をどこで覚えた?」

 

 オレの背後から甲板の壁に背を預け問いかける男、アイン。

 

 オレの後を着けていたのは最初から知っていた。

 

「………………」

 

「久しぶりに聴いた…………懐かしいメロディだ…………だが、あのフレーズには歌詞は無かった筈だが…………?」

 

「………………」

 

「お前は何者だ? 過去のオレしか知り得ない事情を知っている。ただのアラガミではない強さもそうだが」

 

 アインは問う。

 

「…………アイン、アンタは輪廻転生を信じるか?」

 

「…………唐突だな。輪廻または輪廻転生とは、サンスクリット語のサンサーラに由来する用語だ。命あるものが何度も転生し、人だけでなく動物なども含めた生類として生まれ変わること。輪廻とは、生命が無限に転生を繰り返すさまを、輪を描いて元に戻る車輪の軌跡に喩えたことから来ている。輪廻転生の概念は元々古代インドに伝わる考え方から派生したものという説がある。仏教のみならず古代ギリシャやイスラム教のごく一部でも見られ、世界各地に似たような思想がある」

 

 アインはウィキペディアのようにスラスラと説明する。流石、科学者。歴史にも造詣が深い。だったら確信をついてやろう。

 

「オレがその"転生者"だとしたら? どう思う?」

 

「…………なるほど、そう来たか。生憎だが、俺はオカルトは信じていないタチだ。仮にお前が転生者だとして俺はお前のようなヤツには過去会ったことはない」

 

 オレは嘘は言っていない。やはりいきなり転生だのなんだの言われても信じるわけがない。それにオレはこの世界の住人ではないのだから知らなくて当たり前だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…………まあ、全部信じてくれるとは思ってないが、オレはこの身体、アラガミになる前は人間だった。神機使いじゃない。普通のな。事故で死んで気が付いたら、いつの間にかこんなんなっていた」

 

「………………」

 

 アインは黙ってオレの話を聞いている。

 

「それからは必死さ。アラガミだからな。食わなきゃ食われる世界だ。食って食って食いまくって進化して強くなった。ゴッドイーターたちに狙われて適当に相手しながら逃げ回っていた。そしたら、アンタたちと出会って…………あとはあの通り、だ」

 

 オレは甲板の柵に軽く寄りかかる。力加減しないと破壊してしまうからちょっとだけ。

 

「…………オレはすべてを知っているわけじゃない。あの姉妹のことも分からない。自分自身のことも分からない。これから何が起こるかも…………」

 

 この世界線では、どうやらストーリーはすでに完結。深層意識のキャラクターサブイベントも終了しているのが数日一緒に過ごして分かった。

 

「…………こうして改めてお前と話しているとまるで人間と話しているようだ。お前が元人間というのも納得がいく……だが、お前は"アラガミ"だ。現状はな。それはお前が一番理解しているだろう?」

 

 アインの瞳がオレを見つめる。

 

「…………ああ、そうだ。間違いなくアラガミだ。自分が分からないオレでも分かる。どうしようもなく…………だからだ。オレは…………ここにはいられない」

 

 オレはここでクリサンセマムのメンバーたちと過ごしていくうちにずっと考えていた。

 

 自分自身のこと。あの姉妹のこと。そしてこれから起こり得るだろうことを。

 

 戦うだろう。間違いなく。

 

 彼らゴッドイーターたちも巻き込まれるだろう。否応なく。

 

 オレがここにいる限り。

 

 だから、オレは…………此処から去る。

 

「…………殊勝なヤツだ。あれほどの力を持っているというのに。いや、だからこそか。俺たちに迷惑はかけられないってわけか」

 

 アインの言葉に頷くオレ。その通りだ。オレはまだ全力を出してもいない。

 

 これから先、彼らを庇いながら戦えるかと問われれば、NOだ。

 

 正直に言おう。オレは戦いが愉しい。敵を、アラガミを倒すのが愉しい。自分の力で捻じ伏せ、捕食し、強くなることが楽しくてしょうがない。

 

 これはオレがアラガミだからか。人間だからか。両方だからか。あるいはもっと違う別の何かか。

 

「…………今夜にもここを出て行くつもりだ。アンタたちには随分世話になった。迷惑もかけた。感謝している」

 

「…………そうか。それがお前の決断なら止めはしない。ただ…………」

 

 アインがいい淀む。

 

「ただ?」

 

「…………あの歌を、もう一度……聴かせてくれないか?」

 

 アインがバツが悪そうに言う。

 

 なるほど。あの子の歌だもんな。うむ、いいだろう。男の時はキーが高くて歌うことはなかったからな。ハバキリの時にひとりカラオケ感覚で練習しまくった甲斐があった。

 

 オレはクルリと回り、一礼し、甲板の段上に上がると、ひと息つく。

 

 そして歌い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白い月が浮かぶ夜空。

 

 優しい歌声がゆったりと流れ、奏でられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







よくある主人公や強者の葛藤。表現するのが難しいのでこれくらいで。これで主人公は再びソロ活動です。正直長々とクリサンセマムの仲間たちを描写していくのはすごく大変で面倒臭いので。展開として強引ですが、ご容赦を。作者の力不足故に申し訳ない。



使用楽曲コード: N00088559,16421914,36561
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