オレ氏、デウスエクスマキナ的なアラガミになる   作:真鳥

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22 来たるその日まで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────扉が再び開かれるのは、いつか

 

 扉を外から叩くのは、誰の手か

 

 開け放たれた扉の向こうに待つのは、誰か────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………そういうわけで、アイツは昨夜、此処を発った」

 

 アインはキャラバンのブリッジにクリサンセマムのメンバーを集めて、オロチノカラサビが去ったことを話す。

 

「…………なんだよ、黙って行っちまったのか…………アイツ、自分のことは全然話さなかったからな…………」

 

「俺も敢えては聞かなかったが…………そういう理由があったのか。しかし、元人間か…………」

 

 ジーク、ユウゴが話す。

 

「偏食因子の暴走、活動限界域を超えた神機使いがアラガミ化する現象は稀にあるらしいけど…………彼女はゴッドイーターではなかった……だとすれば、なんらかの外部的要因が考えられるけど…………」

 

「アラガミになっても、されど人の心を失わず、か…………」

 

「アラガミにしては、やけに人間味に溢れている変わったヤツだとは思ったが…………」

 

 クレアが思索し、ルル、ニールも考える。

 

「う〜ん。彼女がここに来てから身体のこといろいろ調べさせてもらったけど、あ、ちゃんと本人の許可は取ったからね。やっぱり矛盾するんだよねー。彼女は人間じゃない。それは間違いない。肉体的にはだけど。でも彼女の身体は神機と同質のものであるものの、本来の活発なアラガミの偏食細胞そのものでもあるんだ。普通こんなのあり得ないんだけど、彼女自身が実例として存在するからね。参っちゃうよ」

 

 キースが困り顔で語る。

 

「自由意思を持った神機であり、同時にアラガミでもある。それも高度な知性のある…………従来の人型アラガミに類似する点は多々あるけど、彼女、オロチノカラサビはそれすら逸脱した存在ということね…………憶測だけど、フェンリルには人体実験を肯定する組織が昔から秘密裏にあったらしいけど、彼女がなんらかの関係者の可能性も示唆出来るわ」

 

 イルダも考察する。

 

「…………俺も昔、研究者としてやっていた時に噂は聞いたが……実際にあった筈だ。フェンリルは秘密主義だからな…………非人道的なことも平気でやるヤツらがいてもおかしくない。犬飼のヤツのようにな」

 

 リカルドが苦虫を噛み潰したように言う。

 

「…………成長する神機…………随分と昔だが、過去に似たような実験を行なった事例があったようだ」

 

 アインの言葉に皆が注目する。

 

 アインがフェンリルヒマラヤ支部にてかつて行われていた恐るべき実験が実在したことを話す。

 

 それはあまりにも凄惨であり救い難いものであった。

 

「…………酷い…………人を闘うための道具に変える実験だなんて…………」

 

「救い難いものだな、人間というものは…………」

 

「アイツの方がよっぽど人間らしかったぞ…………っ!」

 

「俺たちAGEも似たような経緯なもんだが…………それにしても…………」

 

 クリサンセマムのメンバーがそれぞれ苦い顔をする。

 

「…………成長する、進化していく神機…………同一、というわけではなさそうだけど、似てるわね…………可能性は高いわ…………それと例の犬飼博士の件だけど、精神状態が安定してなくて事情聴取は難航しているわ。ただ彼が何者かに盗まれたという研究が何なのかは、ある程度分かったわ」

 

 イルダは一旦、間を置いて話す。

 

「…………『侵蝕融合細胞』…………詳しくはデータがほとんど残されていないから分からないけど、研究スタッフの調査によれば、偏食因子オラクル細胞を任意に融合、変化させる研究らしいわ」

 

「今、その情報データを収集解析してるけど、何者かに改竄された形跡があるんだよ。それも含めて調査してるけど、あまり上手くはいってないね…………」

 

 キースが報告する。

 

「…………カラサビお姉ちゃん、いなくなっちゃったの…………?」

 

 悲しげなフィムが女主人公の腰に腕を回し抱きついている。

 

 今朝、目覚めてからオロチノカラサビの姿が見えないことに疑問を持っていたが、理由を知り少なからずショックを受けたようだ。

 

「…………フィム」

 

 クリサンセマムのリーダーたる女性はフィムを優しく撫でる。オロチノカラサビにとても懐いていたのは身近にいた己れも知っている。

 

「…………フィム。アイツがお前に渡したいものがあると言ってな、置いていったものがある。少し待ってろ」

 

 アインはそう言って、場を離れる。

 

「…………お姉ちゃんが?」

 

「フィムに渡したいものって、何だろう?」

 

 クレアたちが首を傾げる。

 

 少ししてアインが戻ってくるが、特に手にしているものはない。皆が不思議に思っていると彼の背後から妙なモノがフヨフヨと着いて来ていた。

 

『ピギィッ!』

 

 それは、黒い丸い形した珍妙な生き物? だった。

 

 その姿は神機の捕喰形態(プレデターフォーム)に酷似しており、なんというか……可愛いの一言である。

 

 コンパクトなボディ、ハコフグのようなフォルムに金魚を思わせるヒレ。 体を左右に揺らしながらピギィピギィ鳴く様子はまさに小動物的である。

 

「えっ! 何これっ!?」

 

「な、なんだこいつッ?」

 

「動いている…………生物、なのか?」

 

 その奇怪な生き物はフヨフヨ浮かびながら、フィムの足元までやってくる。

 

『ピギィッ!』

 

「わぁ〜〜〜ッ!?」

 

 初めて見る謎の生物に驚き戸惑うフィム。

 

「アイン、もしかしてコレが?」

 

 ユウゴが問う。

 

「ああ。オロチノカラサビが作った置き土産、小型アラガミ『アバドン』だ。安心しろ。アラガミだが危険はない。間違って討伐するなよ?」

 

「作ったっ!? このちっこいアラガミをっ!?」

 

「規格外なヤツだとは分かってたが、こういうことも出来るのか……」

 

 ジーク、ニールがフィムの周りをぐるぐる廻る怪生物に戸惑う。それぞれ驚く面々。

 

「アバドン…………幸運を運ぶという幻のアラガミ…………別名、混沌を呼ぶ者とも言われている超希少種。まさかこの目で拝めるとは……非常に興味深い……」

 

 ルルがアバドンを観察する。

 

「コレ……? お姉ちゃんが、フィムに……?」

 

 そっとアバドンに触れるフィム。アバドンはフィムの小さな手に自ら擦り寄ってくる。

 

「ああ、アイツがお前に渡してくれ、と言っていたからな」

 

『ピギィッ! ピギィッ! ピギギギ…………あ〜あ〜、テステス、これちゃんと録音されてるのか? …………よし、大丈夫だな』

 

 突然にアバドンからオロチノカラサビの声が聴こえてきた。

 

「お姉ちゃんっ!?」

 

「えっ!? 何で、声がっ!」

 

「どうやら予め自分の声をセットしていたようだが…………」

 

「…………何か言おうとしている。メッセージか」

 

『…………クリサンセマムのみんな、聴こえているか? オレだ。オロチノカラサビだ。こんな形で別れる事になって本当にすまない』

 

 アバドンから聴こえてくるオロチノカラサビの声に耳を傾ける一同。

 

『…………ずっと考えていた。オレはここにいていいのか。このままみんなと一緒に過ごしていいのかって…………』

 

「いいに決まってんだろーがっ!」

 

「私たちが信用に足らなかったから愛想を尽かしたのか…………?」

 

 ジークが憤り、ルルが寂しそうに顔を伏せる。

 

『…………ヤマタノオロチはオレが産み出したアラガミだ。アレはオレと同じ存在、同じ力が今もオレの中に疼いている…………すべてを破壊しようと身をくねらせ渦巻いている…………オレは危険なアラガミなんだ。それに皆もう知っての通りヤバイヤツらに目を付けられている。だから、みんなとは一旦ここで離れることにした。自分勝手な理由ですまない』

 

「本当に自分勝手だねぇ…………自分一人で全部抱え込むってつもりかい? やるせないねぇ…………」

 

「まるで以前の俺を見ているようだ…………暗闇で足掻く自分に…………」

 

 リカルドが顔を顰め、ニールも何処か想う。

 

『…………フィム、何も言わずサヨナラしてゴメン…………代わりにオレのオラクル細胞で作ったアバドンを送るよ。またいつかOKG食べさせてくれ。それとフィムのこと頼んだ、クリサンセマムの鬼神』

 

「カラサビ…………ああ」

 

 鬼神と称されたリーダーの女性は力強く頷く。

 

「カラサビお姉ちゃん…………」

 

 フィムはアバドンを抱える。

 

「お姉ちゃんの匂いがする…………」

 

 腕の中のアバドンを強く抱きしめた。

 

『ユウゴ、ジーク、クレア、ルル、キース、ニール、リカルドさん、エイミーちゃん、イルダさん、アインさん…………世話になった、ありがとう』

 

 アバドンからオロチノカラサビの声が途絶えた。

 

『ピギィッ!』

 

 一同、皆暫く沈黙する。

 

「…………アイツ、引き留められるのが分かっていたから、わざわざ黙って出て行ったんだな…………」

 

 ユウゴが呟く。

 

「…………彼女は私たちを巻き込まないように配慮したようね。でもそれで私たちが、はいそうですかって、簡単に頷くと思ったのかしら? 甘いわね」

 

 イルダがやれやれと頭を振る。

 

「…………そうだな。俺たちは諦めが悪いんだ。アイツが羽根を伸ばしている間にやれることはしておこう。いつ帰ってきてもいいようにな」

 

 アインがニヤリと笑うと、みんなも一様に頷いた。

 

 フィムがアバドンの頭を撫でると、アバドンの鳴き声が柔らかい声に変わる。

 

『〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪』

 

「これ…………お姉ちゃんのいつも歌ってくれる歌…………」

 

「優しい歌声だね………」

 

「ああ………」

 

 フィムは耳を澄ませ、クリサンセマムのメンバーはその歌声に聴き惚れる。

 

「フィム、美味しいアンプルかけごはん作るの、練習する…………ッ!」

 

「よしっ! フィム、新メニューを開発して、帰ってきたアイツをビックリさせてやろうぜっ!!」

 

「うんっ!」

 

 ジークの新メニューOKG開発に元気よく返事するフィム。

 

「アンプル代はあなたの給料から引いておくから、幾らでも使っていいわよ? ジーク」

 

 イルダが当然とばかり宣言する。

 

「うげっ!? マジかよっ!?」

 

 その場のメンバーたちが一斉に笑い声を上げた。

 

 いずれ遠からず、もうひとりメンバーの笑い声も加わることだろうと信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





パーティ離別の理由付けとしては弱いとは思いますが、作者の執筆力ではこれが精一杯。難しいなー。
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