オレ氏、デウスエクスマキナ的なアラガミになる   作:真鳥

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23 蠢く坑道

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てぁアアアアアッッッ!!!」

 

 クレアが放ったチャージグラインドが漆黒の体躯のアラガミの横腹を穿つ。

 

『──────────ッッッ』

 

 獣咆をけたたましく谺すアラガミ。醜悪な人面の顔を歪ませ、拡げた刃翼を唸らせ敵対者に振るう。

 

「はァぁあああああッッッ!!!」

 

 二刀の交差させた刃が斬り上がる翼の剣を火花を散らし食い止めるルル。

 

『───────────ッッッ』

 

 だが、無理矢理に鍔迫り合う刃を振り抜いたアラガミ『ディアウスピター』がルル目掛けて態勢を低く構え素早く突進する。

 

「しまっ……!?」

 

『ピギィッ!!』

 

 黒獣の牙がバランスを崩して無防備なルルの身体を喰らい付かんとした時、傍から小さな姿のアラガミが現れ立ち塞がり、口中から何かを吐き出した。

 

 眩ゆい閃光が弾け、辺りを照らす。

 

『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ』

 

 眼前でまともに直撃した烈音と光幕に怯むディアウスピター。

 

「せぃヤァアアアアアッッッ!!!」

 

 クリサンセマムの鬼神がアラガミの刃翼を根本から剛斧で斬り飛ばす。

 

「今だっ、フィムッ!」

 

「うんっ、お母さんっ!」

 

 頭上からクリサンセマムの鬼神と入れ替わるようにヘヴィムーンを掲げた天使の輪っかの幼い少女が舞い降りる。

 

 三日月の巨大な刃がディアウスピターの頭に叩きつけられ、勢いよく大地ごと陥没し、伏せさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい。そっちは片付いたかぁ?」

 

 呑気な間延びした声を上げてブーストハンマーを担いだ青年が男性陣の仲間たちと伴い、女性陣の元にやってくる。

 

「ああ、問題ない、ジーク。少々ヒヤッとしたが、あの子たちのおかげで事なきを得た」

 

 ルルがジークと会話し、小さな少女と戯れる小さなアラガミを見やる。

 

「アバドンっ! お手っ!」

 

『ピギッ!』

 

 黒い丸い身体からニュッと、ヒレを伸ばし少女と手を交わす。

 

「伏せっ!」

 

『ピッギィッ!』

 

 丸い身体を地面に伏せ、潰れた饅頭のようにペコンと平たくなる。

 

「立てっ!」

 

『ピギギィッ!』

 

 身体をニュミーンと餅のように縦長に伸ばして直立する。

 

「オウガテイルの真似っ!」

 

『ピギ、ピギィッ!』

 

 身体がグニャグニャ変形して瞬く間にリアルなミニオウガテイルに変わる。

 

「アバドン偉いっ! ご褒美のおやつあげるねッ!」

 

『ピギィ♪ピギィ♪』

 

 お菓子を貰いパクパク食べる奇妙なアラガミと少女のやりとりを見守るメンバー。

 

「しっかし、あのちっさなアラガミ、アバドン。まさか俺たちと一緒に戦うなんて思わなかったよな」

 

「確かに。あらゆる局面で的確に俺たちにアイテムを使ってくれる。傷を負えば回復を、敵に対してはトラップ、スタングレネードを。何度となく助けられてたな」

 

「欲しい時にピンポイントで援護が来る。しかもアイツには所持限界数もないようだ。流石、オロチノカラサビが作ったというべきか、規格外のサポーターだ」

 

「いやぁ、ホント助かるよー。炊事洗濯掃除家事手伝いまで手伝ってくれるからオジさん大助かりだ」

 

 ジーク、ユウゴ、ニール、リカルドが新たな仲間の活躍について称賛する。

 

 フィムの周りを高速でバターになるんじゃないかってぐらい廻りまくる小型アラガミ、アバドン。

 

「不思議なアラガミだよね。この間、落っことして割っちゃったお気に入りのマグカップを食べて、口から直して出したからビックリしちゃった」

 

「…………構造が気になるな。是非解剖して調べてみたい…………おい、そんな顔をするな。冗談だ」

 

「ルルは冗談に聴こえない」

 

 クレアとルル、女リーダーも交えて会話していると、フィムとアバドンが一緒にやってくる。

 

「みんな、お疲れ様。アバドン、みんなにあれ出してあげて」

 

『ピギィッ!』

 

 フィムの言葉に返事をするアバドン。身体を丸く膨らませたかと思うと、口から何かを大量にポンポン取り出す。

 

 それはキンキンに冷えたスポーツドリンク。

 

「ありがとう、アバドン」

 

「おっと。へへ、いつもサンキューなっ!」

 

 メンバーたちがアバドンから、スポーツドリンクを受け取る。

 

「いつも悪いな。お前のサポートのおかげで助かってるよ」

 

 女リーダー、ジークとユウゴがドリンクを飲みながら、感謝する。

 

「いつもサポートありがとうね、アバドン」

 

「お前は良いアラガミだな。忠犬ならぬ忠アラガミだ」

 

 クレアとルルがアバドンの頭を撫でる。ヒレの尻尾を振って喜んでいる様子のアバドン。

 

「これで本格的にアラガミと戦闘出来たら言うことなしなんだがなぁ」

 

「それはいくら何でも無理だろう。この小ささじゃな、オウガテイルの尻尾でも一撃だ」

 

 リカルド、ニールが残念だと会話する。

 

『ピギィッ! ピギィッ!』

 

「アバドンが、やるときはやるぞ! って言って怒ってるっ! 馬鹿にしちゃダメだよっ!」

 

 怒って? プックリとフグみたいに膨らむアバドンを抱えてプンスコ頬を同じように膨らませるフィム。

 

「悪い悪い。そんなつもりじゃないんだ」

 

「…………というか、アバドンの言葉解るのか?」

 

「う〜ん。何となくだけど。嬉しいとか怒ってるとか、だいたい解る。全部じゃないけど」

 

 フィムが抱いたアバドンの頭を撫で撫でする。

 

『ピギィッ♪』

 

 嬉しそうにしていたり、怒ってるのはなんとなくだが解る気がするが、やはりいまいち表情? が伝わりにくいのはアラガミだからだろうか。

 

「お前、オロチノカラサビから作ってもらったんだろ? なんかアイツみたいにすんごい必殺技とかないのか? アバドンビームッ! とか」

 

 ジークがアバドンの頬っぺたをプニプニ突つく。

 

 ガブリッ

 

「いってええええええええええッッッ!!?」

 

 差し出されジークの手に噛み付いたアバドン。

 

「コイツぅっ、また俺の手ぇ、噛みやがったあっ!! なんで俺が触るといつも噛みつくんだよっ!?」

 

 噛み付かれ手を押さえてフーフーする涙目のジーク。

 

「お前がいつも残飯ばかり食べさせるからじゃないか? アンプルなんたらの残骸を」

 

「残飯じゃねえしっ! 開発中の新メニューだよっ! ただちょっと失敗して捨てるのもったないからコイツに食わせてるだけだっ!」

 

「ジークのは、ただ単にマズいからだろう? フィムが作ったアンプル料理は美味そうに残さず食べているが?」

 

 ユウゴがツッコミを入れ、ルルが痛いところを突いてくる。

 

「…………そうなんだ。最近、妙にアンプルの減りが早いからおかしいなぁって思ってたの。ふーん、ジークのせいだったんだ?」

 

 クレアが和かに微笑むを浮かべる。背後からゴゴゴゴと炎が揺らいで見えるが、幻覚か? 

 

「ちょ、ちょっと待てクレア。悪気は無いんだ。オレはアイツが帰ってきたら美味いアンプル飯を…………って、なんで神機の銃口こっちに向けてんだよっ! 話せば解るっ…………ア─────────────────ッッッッッッ」

 

 ジークの悲鳴が廃虚の街中に響き渡った。

 

 

 これにより新たなアラガミが多数引き寄せられ大乱闘となり、フィムとアバドンが再び活躍し、脚光を浴びるのだった。

 

 

「アバドンッ、キミに決めたッ!」

 

『ピギィッ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅い砂塵が渦巻く廃坑道。

 

 吹き荒れる高密度の喰灰が刻一刻と移り変わり、すべてを呑み込む限界灰域。

 

 蠍の尾を振るい、鋭利な針を撃ち出すボルグカムラン。鋸刃を連ねた大曲刀に防御した盾ごと頭から巨体を斬り裂かれた。

 

 咆哮を上げ、鋼の身体を丸め回転しながら突進するコンゴウを容易くシールドで弾き返すと同時に炸裂したパイルバンカーが串刺しにする。

 

 ミサイルを乱発するクアドリガに向けて腕をブラスト砲にトランスフォームさせ、内臓破壊弾を撃ち放ち強靭な外骨格ごと内部から木っ端微塵に吹き飛ばす。

 

 レーザーの落雷を放つグウゾウと、ビームの雨を降らせるサリエルは脳天直撃弾で沈黙させる。

 

 ワラワラと無尽蔵に集まる小型のアラガミ群はペンタJGPの回転放射で焼き尽くす。

 

「どうやら、ちゃんと機能してるようだな、オレの作ったアバドン」

 

 機械の両手、両足の武骨な外骨格に反する人間の女性のような肢体、しなやかな美しさを併せ持つ異形のアラガミ。

 

 脚部のブースターの推進力で小型アラガミの中を縫うように移動し、ギャリンギャリンとチェーンブレードが旋回し、黒に塗られた異形の少女がアラガミを切り刻み次々屠る。

 

「フィムたちの護衛には丁度いいだろう。白姉妹対策にもなる」

 

 体勢を低く構えた状態から、広範囲に一気に雷刀斬撃の居合斬りを放つ。

 

 迸る電光の斬撃波が周囲のアラガミを纏めて一掃する。

 

 クリサンセマムのメンバーたちと別れてから少し経つ。

 

 オレこと、オロチノカラサビは、紅蓮灰域で腕を磨いていた。

 

 仲間たちと離れ離れになったのは寂しいが、今のオレは強力な力を持て余し気味であり、不安がある。

 

 何より懸念しているのが、あの白姉妹のこと。

 

 仲間たちになんらかの接触、被害が出ることが一番問題だ。妹のネロ、あの少女よりも姉、ネルウァの方が特に搦手を使うような嫌な感じがあの時した。

 

 あのまま皆のところに居たら間違いなく良くないことが起こる。

 

 だから別行動にしたのだ。代わりに特別な『アバドン』をボディガードに置いてきたから大丈夫だろう。

 

 オレの道はオレが決めると決めた。オレはこの世界で楽しく生きるために出来得る限りのことをする。かと言って慢心して油断し、足元を掬われたくはないのでしっかり地盤は固める。特に、推しのゴッドイーターたちには是非とも幸せになってもらいたい。

 

 もしかしてオレはその為にこの世界に転生したのでは? とか都合の良いように考えることがある。

 

 オレも彼らもハッピーエンドが一番だが、世の中そう上手く廻らないのは生前嫌と言うほど体感している。前世はバッドエンドだったからな。

 

 今のオレは強くてニューゲームだが、このリアルゴッドイーターの世界に於いてはビギナーにも等しい。

 

 オレの─────

 

 オレたちの戦いはこれからだ─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白く輝く満月。

 

「いい夜ね。それに壊したくなるくらい綺麗な月。そう思わない? ネロ」

 

「…………準備はできてるよ、お姉ちゃん」

 

 瓦礫の巨塔に佇む白い姉妹。

 

 その廃虚の足元にはおびただしい蠢く異形のアラガミたちが息衝いていた。

 

 

 女体と蠍の様な昆虫が融合したような妖艶な姿のアラガミ。

 

 竜と巨大な鬼が融合したような姿をしたアラガミ。

 

 半月状の巨大な殻と昆虫ともつかない人型が融合したアラガミ。

 

 複数の翼を模した巨大な装飾と不敵な笑みを浮かべる二体の堕天使が融合した様なアラガミ。

 

 巨大な顎を持つ蛙と鰐が融合した様なアラガミ。

 

 青紫色の翼竜型のアラガミ。

 

 二本の巨大な角を持つ獣人型のアラガミ。

 

 獅子のような下半身と人間の女性の上半身に、巨大な一つの目となった頭部を持つアラガミ。

 

 髑髏のような仮面を被り、体の一部に神機が癒着した複数のアラガミ。

 

 そして未だ見ぬ異形のアラガミたち。

 

 

 

 

 

 

 

「始まるわ。世界を舞台にした悲劇、終末の世の夢。私を存分に愉しませてちょうだい…………さあ、一緒に楽しい舞台で歌劇を歌い、艶やかに踊りましょう、オロチノカラサビ…………ふふ、はは、あははハハハハハハハハハハハ…………ッッッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 照らす月のアンサンブルカーテンコール。

 

 演目『世界の終焉』

 

 開幕─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




私生活がクソ多忙により更新頻度は落ちます。ご容赦を。
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