オレ氏、デウスエクスマキナ的なアラガミになる   作:真鳥

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24 灰の番人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西暦2050年代より突如として始まったそれは、地球上のあらゆるものを捕喰する細胞「オラクル細胞」から形成される異形の怪物「荒神=アラガミ」によって荒廃し、彼らの脅威に晒された人類は滅亡の危機に瀕していた。

 

 人類の対抗手段は、当時、世界に名を馳せた生化学企業「フェンリル」によって開発された生体武器「神機」とそれを操る「ゴッドイーター」によって難を逃れた。

 

 そして2070年以降現在、その人類救世の聖地であるフェンリル本部は、一度灰域に沈み人の手から離れ、長い年月を得てアラガミの領域から奪還され再び現在にいたる。

 

 エイブラハム・ガドリン、元グレイプニル最高司令官。

 

 かつては旧フェンリル正規軍であった一個師団「グレイプニル」のトップであり、ゴッドイーターとして戦場で戦った経験を持つ壮年の男は人払いが為された会議室で対する青年に目を向ける。

 

「…………御父上、叔父上によく似ている。母君の面影も…………私に何用かね? アイン君、今はそう呼んだほうが適切だろう」

 

 相対する青年に懐かしみを込めた視線を送る。

 

「ガドリン総督、いや今は評議委員会長か。あんたと取り引きをしに来た」

 

 隻眼の鋭い眼差しの青年が同じく眼帯の厳つい壮年の男と言葉を交わす。

 

「取り引き? 何を言うかと思えば…………今の私に何も権限がないのは君たちも周知の通りだ。もはや私には振るえる力など無いに等しい…………そんな者に持ち掛ける話など無いと思うのだが…………」

 

 ガドリン元総督は自嘲気味な笑みを浮かべる。

 

「単刀直入に言う。大災害の再来、いやもっと悪いことが起こる可能性がある」

 

 無駄話は不要だと言わんばかり話すアイン。

 

「…………それは確証が合っての話かね? いや、科学者でもある君が言うならそうなのだろう。しかし、大災害よりも、とは?」

 

「終末捕食だ」

 

 アインの言葉に顔色が険しくなるガドリン。

 

「…………詳しく話を聞こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨大かつ雄々しい肉体を持つ竜を彷彿とさせる大型アラガミ『ハンニバル』が獲物を求めて悠々と地を踏み鳴らし闊歩する。

 

 その背中の逆鱗が突然に爆発し破壊された。

 

 絶叫を響かせるハンニバル。炎の竜翼が噴き荒れ、愚かにも逆鱗に触れた敵対者を探し視線を向け、

 

 ──────頭が木っ端微塵に弾け飛んだ。

 

 巨体が音を立てて崩れ落ちる。

 

「…………よし」

 

 遥か遠方、切り立った岩棚の丘の上にスナイパーライフルを構えた異形の角がある黒髪の少女がスコープを覗きながら呟く。

 

 ジャキンとレバーがコッキングされ、空薬莢が排出される。

 

「今の騒ぎで他のアラガミが、ハンニバルの亡骸を捕食しにやって来たな」

 

 倒れたハンニバルの死体を貪ろうと様々なアラガミが小型、中型と集まり出す。

 

 その脇をキャラバン船がゆっくり慎重に通り過ぎていく。何処かのミナトの船だろう。

 

 オレは、たまに灰域やそれ以外でも船を見かけると、こうして接近遭遇しそうなアラガミを討伐し、進路確保の手伝いをしている。

 

 余計なお世話かもしれないが、取り敢えず気付いたらやっておく。

 

「ん? 向こう側で戦闘しているな。この反応はゴッドイーターか」

 

 キャラバン船が去った方角を見送っていたら、別の場所から戦闘反応を感じた。なので、少し様子を見に行くことにする。

 

 もし、苦戦しているようなら陰ながらバックアップしてやるつもりだ。

 

 問題ないようなら構わないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ! 倒しても倒してもキリがないっ!」

 

「アイツを先に倒さないと終わんないわよッ!!」

 

「そんなこと分かってますよっ! くっ、なんて動きが素早いんだっ!」

 

「雑魚は無視しろっ! ターゲットだけに集中しろっ、お前たちっ! 聞いているのかっ!? 指示通りに行動しろッ!!」

 

 四人のまだ若い、少年少女のAGEたち神機使いが複数のアラガミ相手に右往左往、悪戦苦闘している。

 

 その中心にいる巨大な感応種アラガミ、赤熱の餓狼『マルドゥーク』が咆哮を上げると、何処からか別のアラガミたちが誘引され戦場にぞろぞろやって来る。

 

「…………あちゃー、あれはダメだな。てんで戦い方がバラバラだ。チームワークなんてあったもんじゃない」

 

 オレは岩陰からステルスフィールドを発動しながら、そっと覗く。

 

 彼ら個人個人としての戦闘力は高い。現に中型程度のアラガミならタイマン相手に倒している。

 

 ただ、いかんせん戦い方がなってない。ソロならともかくチームワークが基本的な戦いなのだ、ゴッドイーターというものは。

 

 引っ掻き回すように暴れ回るマルドゥークに完全に場をいいように乱されて翻弄されていた。

 

 あのままだと早晩スタミナ切れで、遅かれ早かれアラガミに囲まれてフルボッコ全滅確定だろう。

 

 仕方ないから助けてやろうか。

 

 ただ直接的な戦闘手段は控える。今のオレはアラガミだから、オレが攻撃されてしまう可能性がある。

 

 だからここは、遠距離から狙撃して援護に徹しよう。

 

 オレは腕と一体化したスナイパーライフルを構えて、アラガミを照準に捉える。

 

 先ずはあのシユウからだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エネルギー弾を連続で放ち、翼手を拡げ迫り来るシユウ。

 

 その牙を剥いた凶悪な顔面が爆ぜて無くなって吹き飛んだ。

 

「なっ!?」

 

 砲塔から水流の渦をしつこく放つグボログボロの身体が蜂の巣になり、倒れ伏す。

 

「えっ!? 狙撃っ!? 何処からっ!?」

 

 次から次へと神機使いと戦うアラガミが穴だらけに変わり、倒されていく。

 

「何ですかっ!?援軍っ!?」

 

 さっきまで優勢を保っていたマルドゥークがあっという間に孤立無援に立たされて戸惑っている。

 

 慌てて他のアラガミを再び誘引するべく咆哮を上げるため顎を高々反らすと、その強靭な顎元が吹っ飛ばされた。

 

「チャンスだっ! ヤツはアラガミを呼べないっ! 一気に畳み掛けろっ!!」

 

 リーダーの神機使いのAGEが仲間たちに指示を出す。

 

 そして手負いの暴れるマルドゥークをなんとか協力し倒し、討伐した。

 

「はぁ…………はぁ…………なんとか倒したが…………一体何処の誰が援護を…………?」

 

「私たちの他にもゴッドイーターが居たのかしら…………?」

 

「みんなっ、あそこの岩棚の所を見てみろっ! 誰かいるぞっ!!」

 

 神機使いのひとりが指差して示す。

 

 一望出来る高い岩棚の上にその者が佇んでいた。

 

 輝く長い濡れ羽色の黒髪を靡かせ、武骨かつ長大なスナイパーライフルを傍に掲げる何者か。

 

 漆黒の鋭利な角を頭部の両端に備え、蒼白い肌の女性的な艶やかなグラマラスな美体を晒す。

 

 両腕、両脚は黒鋼の機械的外骨格に包まれた異形の姿。

 

 切れ長の紅金に染まる瞳でこちらを冷淡に見下ろす美貌の視線に背筋がゾワリ粟立つのを覚えてしまう。

 

 その異様な風体の黒衣の美少女? は、こちらからの視線に気付くと踵を返し、その場から立ち去っていった。

 

 後に残された神機使いたち。自分たちを援護してくれたのは彼女に間違いないだろう。

 

しかし彼らは信じられないものを目の当たりにし困惑を隠しきれない。

 

「…………今のは……人間……だったのか?」

 

「…………いえ、どう見ても人じゃなかったわ…………」

 

「…………俺にはアラガミにしか見えなかった…………まさか、アラガミが人を助ける…………? そんなことがあり得るのか…………?」

 

「…………すごく………綺麗だった…………」

 

「「「えっッッッ?!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やばい、やばい。見つかちまった。ステルスフィールド効果切れてたわ」

 

 ウィングスラスターを展開し、場を飛翔し離れる。

 

 まあ、彼らが無事なら良かった良かった。

 

 こうやってたまにゴッドイーターたちを助けてやるのもオレの仕事だ。

 

 最近ゴッドイーターたちをちょくちょく見かけることが多くなったな。順調に灰域を踏破してるようでなによりだ。

 

 その分オレとの遭遇率も高くなるから、隠密行動にはより気を付けないといけない。

 

 たまに予期せず鉢合わたときは、戦わず即トンズラするから大丈夫だろ。

 

 さてと、次は何処らへん探索しようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴッドイーターたちの間に実しやかに囁かれ、噂される都市伝説のような話。

 

 そのひとつに"黒の機械仕掛けの乙女"という嘘か真実か定かではない話があるとか、ないとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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