オレ氏、デウスエクスマキナ的なアラガミになる   作:真鳥

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25 脅威の謳歌

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歪んだ祈りを奉る者は

 

 たとえ神亡き世界だろうと、到る処に巣喰っている

 

 

 やがてその祈りは呪詛と化し

 

 あらゆるモノを腐蝕する

 

 

 地上は荒ぶる神が支配する楽園──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こちら灰域踏破船ブルーキャップ。無事、南東方面の限界灰域地帯を突破した』

 

「こちら管制室。ブルーキャップ了解。補給状態に問題が無ければ、引き続き、調査を続行せよ」

 

 新フェンリル本部統治下直属の灰域監視所兼簡易ミナト。

 

 灰域踏破船から灰域調査報告を定期的に受信している。今日もいつもと変わらぬ定時連絡になると思われた。

 

『ブルーキャップ問題無い。こちらはこのまま探査を継続する…………な、なんだ、あれは…………っ』

 

 それは唐突だった。

 

「どうしたブルーキャップ。何があった?」

 

『と、とんでもな…………数…………アラガ…………! 何故…………こんな…………ッ』

 

 慌ただしく途切れ途切れの声が聴こえ、そして通信が途絶えた。

 

「ブルーキャップッ!? 応答しろっ! どうしたっ! 一体何が起きたッッッ!!?」

 

 

 それは、暗澹たる影。

 

 混沌の兆し。

 

 緩やかに、だが刻々と忍び寄る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 暗い。

 

 昏い場所だ。

 

 だけど見覚えのある景色だ。

 

 子供の頃に遊んだ田舎の山林、田畑の風景。

 

 通っていた都心の学校の校舎、教室。

 

 勤めていた会社のオフィス、営業先。

 

 どれもが前世の世界の馴染み深いもの。

 

 血が滲み、どす黒く染まっている以外は。

 

「また、ここか…………」

 

 てくてくと薄気味悪い血濡れた風景の中を歩く黒衣のアラガミ少女、オロチノカラサビ。

 

 道なのか血の川か分からない通路を平気な顔で歩いている。

 

「毎回毎回変わり映えしないし、退屈なんだよなぁ」

 

 謎のスプラッタ空間で欠伸をするオレ。ここはどうやらオレの精神世界、深層意識領内であるようだ。ここに来たということは、現実世界のオレは寝てるんだろう。

 

 たまにこうして『呼ばれる』のだ。

 

 

 すると、血溜まりの中から黒い何かが形作られ現れた。

 

『…………喰ラエ…………スベテ喰ラエ…………』

 

 現れたのは真っ黒な影を塗り込めたようなハバキリ。

 

 その影ハバキリがブレードを構えて突進してくる。

 

「あーハイハイ。いつものやつね」

 

 オレは軽く外骨格の手を横薙ぎに払うと、影ハバキリは真横にスッパリ断ち切られ粒子となり霧散する。

 

 曲刀の連刃大剣がオレの手に握られている。

 

 別の場所から、また再び黒いハバキリが現れ襲いかかってくるが、頭と身体に風穴を開けて消し飛ぶ。

 

「毎回ワンパターン過ぎるっての、だから」

 

 形態変化させた左腕のブラストキャノンを翳す。

 

 血溜まりから続々と影ハバキリがこれでもかと湧いて出て、斬り掛かってきたり、雷砲を撃ってきたり、空中から滑空したり、四方から迫り来る。

 

「しゃらくせえな、面倒だ。纏めて相手してやるよ」

 

 大曲刀が一瞬で無数に分割され巨大な竜蛇がトグロを巻きように渦を描く。ギザ刃のブレードが嵐の如く掻き荒れ、影ハバキリたちを容赦無く細切れに細断する。

 

 周りの血濡れた景色もろとも、スーパーサイクロンカッターが余すとこなく切り裂き破壊していく。

 

 カキワリの作られた撮影スタジオのように、景色がそれまでとは異なるものに変わる。

 

 のっぺりとした墨色の黒い空間。

 

 その中央の暗闇をスポットライトの照明が照らし出す。

 

 ライトに照らされたのは、影で形作られたオレ。『オロチノカラサビ』。

 

『…………喰ラエ…………スベテ喰ラエ…………』

 

 ふーん、改めて見ると我ながらナイスバディだ。ボンッ! キュッ! ボンッ! タワワなバスターバインがバインボイン。自画自賛したくもなるわな。あと、自分の声が色っぽいね。くっ、殺せっ! とか似合いそうだわ、絶対言わんけど。

 

 影オロチノカラサビ、長いから影サビ、が、腕を大曲刀に変えてオレに向かってブースターを加速、一気に距離を詰めてノコ刃を振り下ろす。

 

 オレも大曲刀を振り下ろし、影サビに向かって斬り込む。

 

 お互いのチェーンブレードが打つかり、ガリガリと音と火花を散らし鍔迫り合う。

 

『…………喰ラエ…………スベテヲ…………』

 

「…………お前さ、いい加減諦めたら? ま、思考がアラガミだから捕食一辺倒なのはしょうがないけど」

 

 影サビと話すが、返事はもちろん返ってこない。これもいつものこと。だからオレは大曲刀に力を込めて影サビを武器ごと真っ二つにしてやる。

 

 両断された影サビ。形が崩れてドロドロと溶け出した。

 

 さて、前座はお終い。ここからが本番、メインバトルだ。

 

 黒い影は再び形を成すべく集まり出し、やがてそれは巨大な体躯を持つ異形の獣の姿を形成する。

 

 四足のマダラ模様の腕、脚、三つの獰猛な龍の顎が背部より鎌首をもたげる。体色が鮮血のごとき紅に染まり、凶悪な、威容な風体を誇る。

 

『…………喰ラエ…………喰ラエ…………喰ラエ…………』

 

 三頭蛇の不気味な顎門から、冥府の底から響くような唸りにも似た声が重なり発する。

 

「…………今回も懲りずに来たな、『オロチ』」

 

 そう、コイツは『オロチ』。ゴッドイーター2レイジバーストDLCで闘える予約特典の未知の接触禁忌種アラガミ。出現ミッションは「多頭の悪神」。

 

 見た目はクロムガウェインの亜種っぽいが、 変異種らしい。進化の結果、神属固有の特徴であった双腕の先端が変異し、一対の首に発達。

 

 体躯の方は黒地の肌に金色の縞模様という、警戒色めいた虎柄に変化し、生態は謎に包まれ、生息域や発生起源は不明。 天から降って湧いたかのごとく突如出現したアラガミであるようだ。

 

 戦闘面では原種ゆずりの敏捷な動きを見せつつ、二本の首を自在に操って襲い掛かる。 双頭の口からは仕込み刃だけでなく、爆炎を吐いて砲撃もする。

 

 超越的に危険度の高い個体へと進化を遂げたアラガミであり、防衛班の緊急出動を見合わせるほどの強力な反応を示す。

 

 その実態は、獲物に対して異常なまでの執着を見せる性質を持った桁違いの強敵。 牙や仕込み刃に猛毒(デッドリーヴェノム)を持つ周到さ。

 

 また、このDLCにはオロチ専用戦闘曲「黒の一閃」が特別に収録されており、これまでのGEサウンドにはなかった三味線と尺八の音色がやたらカッコ良かったものだ。

 

 ちなみにコイツに因んだ複合スキル「大蛇の怒号」は、「復讐への憤怒」「バースト時間」「救命対象バースト化」「受け渡しバースト化」の四つを纏めたものであり、戦闘時には意地でもバーストを発動、或いは保持する性能を発揮する強力なスキルであった。

 

「しかも、魔改造されてパワーアップした赤い方のヤツだしな…………これは『ヤマタノオロチ』繋がりだからか? だとしたら────」

 

 

 刹那、オロチの巨体が陽炎のように揺らぎ、目の前から消えた。

 

 か、に見えた凄まじき超速突進。右頭の口角が裂け拡がり、漆黒の仕込み刃が展開。その禍々しい頭牙から鋭い剣先が伸び生え、オレの首を寸断────

 

 されず、黒鉄のタワーシールドでオロチの仕込み刃を防いだ。

 

『…………喰ラエ…………スベテヲ喰ラエ…………』

 

「…………やっぱりな。この前戦った時より更に強化されてるな。しかも魔改造なんてレベルじゃない。改悪も改悪。戦う度にエゲツない性能になってきやがるぞ、コイツ」

 

 オレのシールドを押し返すほどの獰猛なパワー。

 

 オロチの紅く血に染まる三頭蛇の眼光が強く輝く。

 

「.むっ!?」

 

 多頭から仕込み刃が連続して残像を描き突き込まれる。

 

 左頭の叩き付けからの攻撃。双頭の左右を振りかぶり、仕込み刃で薙ぎ払う。リーチがすこぶる広い。 素早く身を翻し躱し、間合いを取って右頭の刃を正面へと斬り返す。

 

双頭を振り上げ勢いよく本体を前進させ、度重なる連続噛み付きを見舞ってくる。シールドでガードし、ステップで躱す。

 

 狙ったように回避線上に突き刺し攻撃。直後、オレはブースターを加速。更に身を捻り翻し、左右からの蛇頭の刃を突きだして来る凶悪な連続コンボ攻撃を紙一重に次々躱していく。

 

 隙を見てオレは大曲刀で刃を弾き、シールドの側面外皮で滑らしてから懐に潜り込んでパイルバンカーを打ち込む。

 

 されどオロチは右頭を振りかぶりつつ屈むような姿勢を見せた直後、刃を出して旋風を発生させつつ舞い上がる。 超高速で場を旋回し、伸び上る刃を振り上げ錐揉みしながらの回転斬り上げ全方位攻撃を放つ。

 

 カウンターに次ぐカウンター攻撃の応酬、元の位置より入れ替わり着地しつつ、両者互いに振り向く。

 

 着地と同時に振り向き様に双頭から爆炎の大火球を吐き出すオロチ。

 

 大曲刀を分割し鋸刃の刀身で斬り付け、迫る火球を切り裂き、極大の火球群を連続発射するオロチに向かってチェーンブレードを伸ばし攻勢に転じる。

 

 オロチはその場から高速バックステップし、双頭蛇の刃でチェーンブレード薙ぎ払い、いなしつつ、炎を纏った斬撃波を幾つも飛ばし対抗する。

 

 空間を燃やし裂き次々迫る炎熱の斬撃波をバーニアを噴射、アサルトキャノンのドローバックショットで回避しつつ撃ち落とし応戦。

 

 燃え立ち昇る爆炎の柱、渦中(うずなか)を喰い裂き、三つ頭の牙と刃を剥き出し、オレの眼と鼻先に現れ飛び掛かるオロチ。

 

 突き出された刃先がオレのタワワごと身体を貫くか否か────

 

 アサルトを可変させた大型ショットガンを突きつける。炸裂。零距離のラッシュファイア。

 

 徹甲弾のシャワーを喰らい吹き飛ぶオロチ。だがすぐさま態勢を立て直して着地した。

 

 再びお互いに距離を設ける。

 

 オロチの炎に揺らめく赤黒い躰は穴だらけだったが、瞬く間に傷が塞がる。

 

 オレの躰にも幾つもの斬り裂かれた傷痕が。動作反応が鈍く感じるのはデッドリーヴェノムによるスリップダメージ。状態異常に耐性を持つオレの防殻を侵食している。

 

「…………成長するアラガミ…………そうだよな。お前もオレと同じ、オレ自身だもんな。オレが強くなればお前も強くなる」

 

 アインの中の小さいアイン君のように、オレの中のアラガミがこのオロチ。

 

 オレの深層意識内にこうやって現れては、オレから主導権を奪おうと戦いをけしかけてくる。

 

 戦うごとに強さを増していく。もう+99は優に超えているだろう。

 

 それぐらいの強敵。

 

『…………喰ラエ…………スベテ喰ラエ…………喰イ尽クセッッッ…………オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッ』

 

 オロチは三つ首から唸りを呪詛のように燻らせ、吠え猛る。

 

「…………ふん、やる気満々だな。いいぜ、とことん付き合ってやるよ。最近手応えあるアラガミが中々いなかったから丁度いい塩梅の練習相手だ」

 

 オレは大曲刀を構えて、微笑う。

 

 暫くは退屈しのぎになるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………んっ、んんん…………」

 

 眼を覚ます。オレは灰域の一角で仮眠をしていた。手作りハンモックの上で手足と背筋を伸ばして起き上がる。でっかいタワワもドプンダプンと揺れて挨拶してくる。

 

 周囲には、アラガミ繊維の単分子ワイヤーのブービートラップを幾重にも張り巡らせている。どうやら今日は、寝込みを襲うアラガミは、いなかったようだ。

 

 オレはアラガミだから基本的に眠るという行為は必要ない。

 

 しかし前生の名残りか、中身が人の為か、時たまこうやって睡眠を取っている。

 

「…………また出やがったな、オロチ。しかも前に戦った時よりも何倍もパワーアップしてやがった」

 

 確定ではないが、高い確率で眠っている時に深層意識に現れ、その都度、戦闘を繰り返す。オロチの強さはオレの強さに比例している。

 

 今のところ、危うげなく全勝しているから問題ない。

 

 だが、もし負けた場合は──────

 

「…………間違いなく喰われるな」

 

 そうしたらオレという『個』は完全にアラガミになるだろう。

 

 ひたすら喰らうだけの存在に。

 

 ハンモックの上で腕を伸ばして頭の後ろに組み、長い脚をクロスして寝っ転がる。

 

「まあ、暫くは出てこれないだろう。ボッコボッコに叩きのめして消滅させてやったからな。…………あと気になるのは、あの白姉妹か…………」

 

 オレは灰域を隈なく探索しているのは、あの白姉妹を見つける為でもある。絶対に何かしらイベントを起こすのは間違いない。先に見つけて『お話し』してやろうと思っていたが…………

 

「…………見つからない。流石に大陸全域は探しきれない。ユーラシアはほとんど探したから、残るはアフリカ大陸なんだが、離れすぎるとアバドンの制御範囲から外れるからなぁ…………」

 

 ああ、それにしても相変わらずフィムは天使で可愛いなぁ…………女主人公もクレアもイルダもエイミーも見事なバスターバインなお手前で。ルルもそれはそれで素晴らしい。お風呂最高だな。ありがとうございます。

 

 アバドンからの可視感覚共有で今日もいろいろと捗る。

 

 ん? ストーカー? 

 

 これは不可抗力です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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