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白い幼かった少女は、巨大な身体を持つ白い獅子へと姿を変えた。
鋭い牙列の顎門を開き、濃淡な白灰色を滲ませる四本の角を携え、結晶化したオラクル細胞の大鎧を纏った巨軀のアラガミ。
咆哮。身を震わせる衝撃波を発生させ、荒々しく吼え猛る。
『ウガアアアアアアアアアァァァッッッ!!! モうイいッ! ミんな引キ裂いテるヤるッ! バラバラにシてやルッ! オ前もソいつもッ! 外の人間どモ全部残ラず喰イ殺しテやルッッッ!!!』
凄まじい衝撃波の怒轟がすべてを押し返す。盾でなんとか受け止めるフィムが吹き飛ばされそうになり慌てて体勢を整える。
「ええええぇっ!? 変身しちゃったあっ! どうしようッ!!」
白獅子の周囲に無数の結晶体が創造され、結晶から何本もレーザー弾が放たれる。
「くうぅっ!!」
降り注ぐレーザーの猛攻を必死に防ぐフィム。
そこに追撃するように白獅子が突貫。
強靭な爪の右腕の引っ掻き、聳える角から抉る攻撃、さらに左腕から引っ掻き、再び角攻撃と連続しての近距離攻撃を繰り出す。
迫り来る、喰らえば致命の死線をシールドで防御するが、耐えられず吹っ飛ばされてしまう。
「きゃあああああああッッッ!!!」
地面を穿ち、叩きつけられ、勢いよくバウンドし転がるフィム。
『ピギィッ! ピギィッ! ピギギィッ!!』
アバドンが倒れるフィムにダッシュで飛んでくる。
「うぅ……ア、アバドン…………えっ? フィ、フィムも変身できるの? 変身すれば強くなる? ど、どうやるの!?」
白獅子はゆったりとした強者の貫禄の足取りで歩いてくる。
『何を今さらコソコソと…………モうボクにはグレネードやトラップなんヤらは通用しナい。今のボクはとテも機嫌ガ悪いンだ。楽にハ死なセなイ』
フシュルウゥゥと熱波の息を吐き、迫る凶獣。
『ピッギッ! ピギギィィッ! ピギピギピギィィィッッッ!!!』
「歌う? お姉ちゃんから教わったあの歌を歌えばいいの? うん、分かった! フィム、歌うッ!!」
そしてフィムは両手を重ねて、天に祈りを捧げるように、高々と歌う。
〜〜〜〜
響き合うメロディ。紡がれる聖詠。勇しくも優しげなハーモニー。
眩ゆい光の軌跡がフィムとアバドンの両者を覆う。
煌めき一矢纏わぬ輝く姿となるフィム。アバドンのボディが金色に輝き、流れる光の粒子となり、フィムの幼くも可憐な褐色の裸身を緩やかに纏う。
しなやかな両サイドの脚先に黄金色に照り返す機械的なバトルレガースが装着され、両腕にも金色のメタリックなガントレットが装着される。
腰先から包むようにアーマードプロテクターが組み合わさり胸元を覆い、背部にも二基のバーニアユニットが取り付けられる。
『System ARMS "Wetschera" convert』
頭部にメカニカルなヘッドギアが形成され、フェイスガードから羽のようなウィングライザーが伸び上がる。
極彩色の鮮やかな空間に身の丈を優に越す超巨大な両鎚のバトルハンマーが顕現する。
サーミ神話の雷神ホラガルレスの聖遺物『ウェスチェラ』。悪霊に裁きを与える黄金の戦鎚が電光を発し、雷震を漲らせた。
小さな可愛らしい掌がポールを力強く掴み、握り込む。
華奢な二の腕で軽々と縦横無尽に重厚なハンマーを振り上げ、豪快に風を切り旋回させる。
眼前の邪なる敵に正義の鉄鎚を下すために勇しく堂々と迅雷を迸らせ構えた。
その威姿は絢爛舞踏、美しき戦士、戦地を翔る万雷の戦乙女。
まさに、戦姫絶唱。
今ここに新たなる『奏者=装者』が誕生した。
遍く虹彩の閃烈から爆誕した金色の武装少女を目の当たりにしたネロは呆気にとられ茫然とした。
何が起こったかのかまったく判らない。
だが、感じるオラクルのエネルギーはとてつもなく強烈であり、本気の力を解放した自身さえも呑み込むのでないかと思えるほど凄まじい。
ネロは憶えている。
この力は前にも感じた。
それは眩しく鮮烈で、強靭で熾烈で、屈辱的で畏怖を伴う。
煩わしい過去の記憶。
脳裏に過ぎるは、黒鉄を象る異能のアラガミ。
『同じ"力"…………っ!? マさか、そンなコとが…………っ!?』
知らず知らずに脚が竦み、退いていく。
「わああああッッッ、凄い凄いっ! フィム、本当に変身しちゃったッ!!」
『ピギ、ピギ、ピギギィィ…………あ〜あ〜、やっと繋がったか。聴こえるかフィム?』
「えっ!? カラサビお姉ちゃんっ!?」
金色のメカニカルなプロテクタースーツとでっかいゴールデンハンマーに驚くフィムが更に驚く。
『今、フィムと適合したアバドンを通じて会話している。あまり時間的に余裕はないみたいだから手短に説明するぞ。フィムはアバドンと融合して簡易的だがオレの力を一時的に共有している。解るな? 感じるだろう?』
フィムの意識に語りかけるオロチノカラサビ。
「お姉ちゃんの力…………うん。感じるよ。凄く力強くて、とても暖かい…………身体全部がお姉ちゃんに包まれて、抱っこされてるみたい…………」
フィムが目を閉じて体を愛おしそうに抱きしめる。
『今のその力なら、目の前のソイツを必ず倒すことが出来る。やれるか、フィム?』
「…………ん、大丈夫…………フィム、出来るっ!」
『…………よし。だったらOKだ。なぁに、オレが一緒だ。心配ないさ。さあ、やってやろうぜッ!』
「うんッ!」
オロチノカラサビの言葉にしっかりとフィムは頷いた。
その純然たる煌めく瞳に真っ直ぐ対する敵の姿を映し捉えて。
『…………なンだヨ、ソの力…………クっ、騙さレるモんか。ハッタリ、コケ脅し、所詮ハ紛イ物の力だ。ボクの方が絶対強イ。ソれヲ思い知らセてヤるッッッ!!!』
ネロは巨体を翻し、バックジャンプから後ろに飛び退きつつ前方中範囲に複数の紫雷球を撃ち落とす。
着弾した軌道上に爆発するように結晶棘が爆散する。
結晶の爆発の中から、黄金色のプロテクターを纏う少女が飛び出す。
『ナッ!?』
"爆光雷撃"
振り降ろされる雷を纏う巨大なハンマーが爆発する。慌ててステップを踏み、空宙を蹴り上げ回避するネロ。しかし、爆ぜ荒れる雷撃の余波が体中を焼き焦がす。
すかさず蹲る体勢をとった後、咆哮とともにブースターキャノンから追尾レーザーを発生させる。レーザーは全方位に飛ぶが、黄金の少女は残像を残しつつ素早く躱し当たらない。
レーザーの猛威を掻い潜り、素早く張り付くように追従してくるフィム。
"撃滅轟雷"
連続で叩き付けられる豪雷のハンマーをなんとかガードするネロ。
体躯に軋むように響く痛烈な剛鎚と雷の衝撃。
『〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ』
堪らず鬣をブレードに変換、攻撃。四肢の腕からも光刃のエフェクトを発生させ、左右に薙ぎ払い結晶弾を振り撒き放つ。
黄金の少女を飛び上がり頭上から捕食のチャンスとばかり口裂を開け噛み付くも、
『ンガアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!?』
ダメージを負いながらも態勢を無理矢理変え、此方もバク宙しながら尻尾で攻撃し、追撃をしようとした少女の攻撃を回避し、正面に紫雷球を発射し牽制。
背部のブースターからを排熱を放出、発生させ、ターゲット目がけて超速突進する。
お互いに打撃の連打、連打、連打。回避、ガード、攻撃、カウンター。
されど、攻勢は黄金少女にあり、白獅子は劣勢。見る間に身体中の装甲が軋みヒビ割れ破壊されていく。自ずを奮い立たせるように咆哮を谺し、結晶弾を生成、全方向にレーザーを拡散し放つ白獅子。
力を全開に解放、更なる結晶弾を無数に創り、円形に何重にも整列させ、自身の周辺を無尽のレーザーの弾幕で陣取る白獅子に対し、臆することなく、回避することもなく真正面から突っ込んでいく黄金少女。
巨大ハンマーを高々と勢いよく振り上げ、身体を捻じり振りかぶるモーション。
"雷砲裂戒"
凄まじい衝撃波の雷嵐に薙ぎ払われ、レーザー諸共、結晶が全て木っ端微塵に破壊される。
暴風の衝撃波で巨体が浮き上がり、まともに身動ぎ出来ないネロ。
信じられない。自分が完全に押されている。
コイツは、コイツらは一体何だ? 何なんだ? 本当に自分と同じアラガミなのか?
認めない。認められない。認めたくない。
気付いたら、いつの間にか己れの懐に深々入り込んだ金色に輝く少女が巨大な戦槌を思い切り振り構えていた。
『今だっ、フィムッ! 解き放てッ! 全てをッ!!』
「うんッ! お姉ちゃんッ!!」
黄金の戦鎚"ウェスチェラ"の武装甲が唸り上げ幾重にも展開し、エネルギーの雷光が噴き上げ、積乱流の渦を巻き起こす。
『「飛べよォッ!
このッ!
奇跡にッ!! 光あれええええええぇぇぇぇぇッッッ!!!」』
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────────すべてを
後悔は無い。(`・ω・´)