オレ氏、デウスエクスマキナ的なアラガミになる   作:真鳥

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29 慈悲なき舞台

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フィムッ! 目を覚ましてくれっ!」

 

「まったく起きる気配がない…………一体何が起きてるんだ…………」

 

「脈拍、心拍数、体温、身体的異常は見受けられない…………これは精神的な何かの干渉を受けているのかもしれない…………?」

 

 廃虚の建物の一角。

 

 帰投するため眠っているフィムを起こそうとしたが一向に目覚める気配がない。

 

 まるで童話の眠り姫のようにスヤスヤと眠りについたまま。

 

 しかも胸に抱いたアバドンも同じように眠ったように動かないではないか。

 

 これはただ事ではないと女リーダー、ルル、クレアたち女性メンバーは混乱していた。

 

 そこにエイミーから通信が入る。

 

『…………皆さん、一先ず眠っているフィムちゃんを連れて帰投してください。メディカルチェックで検査をして何が起きたかを…………えっ!? み、皆さん気を付けてくださいっ!! その場所に、もの凄い濃密度の偏食場パルス発生の兆候反応がッ!!』

 

 突如、何も無い空中の空間がバチバチと放電し、ヒビ割れるように亀裂が疾った。

 

 勢いよく空間が割れ、激しく砕け散ると、凄まじい雷光の稲光りとともに白い巨軀の獅子のアラガミが飛び出して、廃虚を破壊しながら吹き飛び瓦礫に激突した。

 

「きゃあッ!?」

 

「なっ、何だ、これはっ!?」

 

「くっ…………っ!?」

 

 巨大アラガミが衝突する衝撃に驚く女性メンバーたち。

 

 瓦礫に埋もれたアラガミらしき場所一帯が電流の余波を発しつつ粉煙を上げて燻っている。

 

 すると、女リーダーが介抱していたフィムがパチクリと目を覚ました。オマケにアバドンも同じく目を覚ましたようだ。

 

「フィムっ!? 目が覚めたっ!?」

 

「お母さん…………みんな?」

 

 愛らしい眼差しで心配そうに見つめる女性陣を見上げる。

 

 その時、廃虚に埋もれていた白獅子のアラガミが瓦礫を爆砕して飛び上がりボロボロになった身体を引き摺って起き出した。

 

『が、ガァァァァアアアアアアアアアッッッ!!! ゆ、許サな、イ…………こ、殺す、コロス、コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスウウウゥゥゥッッッ!!!』

 

「…………お母さん、みんな、離れていて。まだ、終わっていない。アバドンッ!」

 

 フィムがスッと起き上がる。胸元に抱いたアバドンを撫でて声を掛ける。

 

『ピギィッ!』

 

 アバドンが鳴いた瞬間、金色に輝き、眩ゆい光の柱がフィムを包み込んだ。

 

 輝く光柱の中から、巨大な黄金の戦鎚を携えたゴールドなプロテクターを纏う幼げながら可愛く美しい天使な輪っかを持つ勇ましい武装少女が出現する。

 

「え……フィム?」

 

「なっ…………、フィムが変身した…………?」

 

「えっ? えっ? フィム? あれ?」

 

 様変わりした少女に呆気に取られる女性陣が見守る中、白い獅子のアラガミと黄金少女となったフィムが飛翔し空中でぶつかり合う。

 

『な、何かとんでもない未知のエネルギーの数値が叩き出されていますが、ってぇえええっ!? フィムちゃんっ!? い、いったい何が何やら…………ッ』

 

「それは私たちも知りたいが…………とにかく凄いことになってるのは確かだ」

 

「フィム、凄い…………」

 

「あれって、もうゴッドイーターの域を超えてるんじゃ…………?」

 

 エイミーがオペレーションしながら混乱し、女性陣たちも戸惑う。

 

 その間も両者の闘いは熾烈を極め、大気を揺るがす。

 

 やがて両者ともに地上に降り立つが、荒く息を吐き疲労状態が著しい様子だ。

 

「はぁはぁ…………お、お姉ちゃん…………身体が重い…………すごく疲れたよう…………」

 

 フィムがハンマーに寄りかかり力無くグッタリする。

 

『…………うーむ、いきなりの変身だったからな。まだ体が馴染んでないんだろう…………こうなったら作戦第二プランを考慮に…………』

 

 その時、白獅子を中心に無数の白蝶が現れ、人の形を成した。

 

「あ、あれはっ!?」

 

 白い蝶群から妖しい笑みを称えた白いトーガを纏う美女が創りだされる。

 

『ネ、ネルウァお姉ちゃん…………ッ!!』

 

「ふふふ、頼んだおつかいから帰ってくるのが随分遅いから迎えに来たわ。ネロ」

 

 その白い美女は以前にクリサンセマムのメンバーたちの前にも姿を見せた謎の人物ネルウァ。

 

『あ、アの、そレは抵抗しタあイつラが思ったより手強くっテ…………で、でモっ! アイツらずルいんダヨーッ! 変ナ"力"で変身スるシッ!! ボクは一生懸命闘っテ…………ッ!!」

 

 白獅子は巨軀を怒らせ吼える。

 

「ネロ?」

 

 白い美女ネルウァが白獅子の名を呼ぶ。

 

『うっ…………ご、ゴメンなサい…………失敗しマしタ…………』

 

 白獅子は身をビクッと震わせ、その場で蹲り身を伏せた。

 

 まるで主人に怒られてシュンと頭を垂れる飼い犬のように。

 

「ふふふ…………別にいいのよ。あわよくば人型アラガミのあの少女を交渉材何なりに使って『彼女』を此方に引き込めれば、と思ったけど…………上手くいかないものねぇ?」

 

 ネルウァは微笑みながら伏せる白獅子の鬣を優しく撫でる。

 

「…………人型アラガミ。それは、フィムか。詳しく話を聞きたい。あの子の保護者として」

 

 女リーダーがヘヴィムーンを構え、疲労状態のフィムを庇うように立ち塞がる。

 

「…………彼女、とはオロチノカラサビのことか? だったら身過ごすことはできないな、少々付き合ってもらおう」

 

「…………要するにフィムを利用してオロチノカラサビを(おび)き出そうとしていたのね。そんな姑息で卑怯な真似、絶対に許せない…………っ!」

 

 ルルがバイティングエッジを、クレアがチャージスピアを構えた。

 

「あらあら…………私は戦いに来たのではないのだけど…………ふふふ…………少しだけ遊んであげても構わないわ。ただし、この子たちが相手だけど」

 

 そう言ってネルウァは手を翳す。

 

 地面に無数の歪みが生じる。

 

 ブクブクと泡立ち、ドロドロと溶け出し、グチャグチャと絡み合う。

 

 それは瓦解した建物であったり、崩れた岩盤であったり、廃棄された車両であったり、枯れた樹木であったり、転がるただの石ころであったりした。

 

 それらがまるで粘土細工の工作の如く互いにくっ付き寄り合わさり、奇妙に形を変えながら、幾つもの夥しい異形たちの姿が創りだされる。

 

 

 四足の甲殻に巨大な大砲を備えた機械獣のような出で立ちのアラガミ。『ラーヴァナ』

 

 鬼の面と風貌を備えた片腕が銃身となっているアラガミ。『ヤクシャ』

 

 そのヤクシャをさらに巨大化させ四本の鉤爪と銃身の腕を合わせたアラガミ。『ヤクシャ・ラージャ』

 

 金色の近代兵器の重装甲戦車を思わせる翡翠の仮面のような人面と巨体を合わせ持つアラガミ。『テスカポリトカ』

 

 背中に発電機のタービン、尾にアンカーのような部位を備えたワニのようなアラガミ。 『ウコンバサラ』

 

 巨大な狼の姿をしており、前足は頑強なガントレットで覆われているアラガミ。『ガルム』

 

 鳥のような鮮やかな羽と女性的なフォルムを備えており、シユウ神族に酷似したアラガミ。『イェン・ツィー』

 

 石膏像のような不気味な能面を貼り付けた巨象のように巨大な体躯をしならせ震わせるアラガミ。『デミウルゴス』

 

 髑髏の鉄仮面のような風貌に、筋骨隆々とした黄金の体躯を備えているハンニバルに酷似した竜人型のアラガミ。『スパルタカス』

 

 既存のサリエル神属をよりさらに人間じみた風貌にした妖艶な雰囲気を醸すアラガミ。『ニュクス・アルヴァ』

 

 蟷螂のように巨大な一対の鋭利な鎌状の爪に、背中には繭状の外殻で包まれたコアを持つ、四本の足の不気味なアラガミ。『チェルノボグ』

 

 ステップを踏み、泡玉をジャグリングするピエロの道化師のような奇妙奇天烈なアラガミ。『アレルッキーノ』

 

 大量のコクーンメイデンを従える蜘蛛を思わせる体躯、コクーンメイデンを巨大化させた悍ましいアラガミ。『クィーンメイデン』

 

 空を飛翔する巨大な一対の翼を持ち、砲身型の器官が身体のいたる部位から生えている青紫色の西洋竜型アラガミ。『ヴォルトゥムナ』

 

 そして、それらを見下ろすように背後に佇む小山ほどの体躯に複眼・触手を持つ、アラガミの中でも群を抜いて奇怪な超巨大アラガミ。 『ウロヴォロス』

 

 まるで魔法のように、アラガミの大軍団が即座に創り出された。

 

「ふふふ…………さあ、楽しい演劇を始めようかしら」

 

 ネルウァは愉しげに微笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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