オレ氏、デウスエクスマキナ的なアラガミになる   作:真鳥

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31 黒の一閃

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新たなる力を得たGEたち。

 

 無数のアラガミ、それらを操る謎の敵。

 く

 一にして全なるモノが死を灯す。

 

「ウオオオオオオオォォォッッッ」

 

 緑樹のプロテクターを纏うクリサンセマムの鬼神のバトルアクスが地上のアラガミの群れを薙ぎ払う。

 

「タアアアアアアアァァァッッッ」

 

 天使な黄金少女フィムのウォーハンマーもアラガミの大群を討ち払う。

 

「セリャアアアアアァァァッッッ」

 

 蒼流の鎧に身を包むクレアがスピアを構えアラガミの軍団に突撃して貫いていく。

 

「ハアアアアアアアァァァッッッ」

 

 炎に包まれた双剣を振るい、次々とアラガミを斬り裂く赤火のプロテクターのルル。

 

 並み居るアラガミが悉く四人の神機装者たちに倒されていく。

 

『ああっ! あンなにイたアラガミの大群がドんどん減ラされテルっ! なんだヨっ! あの力っ! チートだッ!!』

 

「ふふふ…………素晴らしい。即席の紛い物とはいえ、あれほどのアラガミをモノともしないとは…………もっともっと見せてちょうだい」

 

 ネルウァが手を翳す。

 

 すると、倒されたアラガミが補充されるように新たに創り出される。

 

 顔が割れたコンゴウ種『ハガンコンゴウ』

 

 女神像の彫刻面を持つ不気味なアラガミ『プリテヴァマータ』

 

 サリエル神族の男性体『アイテール』

 

 青い海神武装重戦車『ポセイドン』

 

 火炎を纏う紅いシユウ神族『セクメト』

 

 ボルグ・カムランのような外骨格各部に淡い紫色のオーラのようなものを纏っており、手は捕食形態の神機のようなアラガミ『スサノオ』

 

 アルダーノヴァのプロトタイプ人工アラガミ『ツクヨミ』

 

 背中に巨大な双腕を生やした黒豹の姿をしたアラガミ『クロムガウェイン』

 

 密林の原住民じみた派手な風貌を備えており、異様に長い鼻砲を持つアラガミ『カバラ・カバラ』

 

 長い三本の尾と腰から灯される六本のオラクルの炎を持つ狐型のアラガミ『キュウビ』

 

 ウロヴォロスと同形統の超巨大なアラガミ。頭部に当たる部分に女神像に類似した物体がある『アマテラス』

 

 次から次へと瓦礫や廃材、地面すら、あらゆる物質がアラガミと化し、場は、より混沌したものへと移り変わりいく。

 

「いったいどれだけアラガミを作り出すんだッ! ハぁアアッ!!」

 

「アラガミっ! いっぱいっ! とりゃあーッ!!」

 

「でもっ! この程度ならっ! イケるっ!!」

 

「まだまだっ! まだだっ! 舐めるなっ! アラガミどもっ!!」

 

 倒しても、倒した側から新たなアラガミが作り出される。

 

 そのアラガミを倒せば、また別のアラガミが続々と湧いてくる。

 

 まさにイタチごっこ。終わらない。このままでは、いくらなんでもキリが無い。されども戦いは止まらず、武器を振るう手が休むことはない。

 

「ふふふ。さあ、どんどんいきましょうか? 幾らでも小道具は作り出せますよ。踊りなさい、私の舞台で。人形たち。ほら、ほらほらほらほらほらっ! あはっ、アハ、アハハハハハハハハハハハハハッッッ!!!」

 

 嘲笑うネルウァ。マリオットを操る傀儡師さながらに両手を振るう。

 

「ぐううぅっ!? か、体が重い…………っ!?」

 

「むううぅん〜っ! ま、また、つ、疲れてきた〜っ!」

 

 それまで、優位に攻勢を築いていた神機装者たちの動きが、ぎこちない緩慢としたものになってしまう。

 

「くっ!? こ、これは…………っ!」

 

「な、なんだ…………っ!? 急激に気怠い疲労感が身体全体に…………っ!!」

 

 居並ぶアラガミをバッタバッタと倒していたのに、今や迫り来る攻撃を躱し防ぐだけで手一杯の有り様だ。

 

「…………やはり。思った通りね。貴女たちのその力、実に凄まじく恐るべきモノ。でも、長時間は肉体に負担が掛かりすぎて耐えられないようね」

 

 目を細め、動きが鈍くなったゴッドイーターたちを高台から見下ろすネルウァ。

 

「ザマァみろっ! ズルばっかりしてるから罰が当たったんだっ! お姉ちゃんっ! そのまま、アイツらヤッちゃえっ!!」

 

 いつの間にか人型に戻って、得意満々に隣りで意気込むネロ。

 

「…………仕方ないわね。そろそろ遊びは終わりにして幕引きにしようかしら」

 

 ネルウァが手を翳す。無数のアラガミたちが、女リーダー、フィム、クレア、ルルたちを囲い込み、埋め尽くすように迫る。

 

 ここまでなのか。このまま終わってしまうのか。

 

 そう誰もが思った時──────

 

 

 

 〜〜〜〜Imyuteus amenohabakiri tron(エミュテウス アメノハバキリ トローン)〜〜〜〜

 

 

 

 

 唄が聴こえた。

 

 

 

 

 

 

「千ノ落涙」

 

 

 

 空間から大量の剣が具現化して射出され、アラガミの大軍団を斬り裂いた。

 

「こ、これは…………ッ!」

 

「アラガミの大群が…………ッ!」

 

 防戦一方だった神機装者たちが驚愕する。

 

 

「影縫い」

 

 

 大量の黒塗りの刀身がアラガミたちの影に突き刺さると、アラガミたちの動きが弛緩し、固まり静止する。

 

 

 

「黒ノ一閃」

 

 

 黒いプロテクトアーマーを纏う影が、宙空より飛翔、超速滑空。

 

 黒鋼のガントレットに持つ大剣が唸り上げ、斬撃を放って所在無さげに立ち尽くすアラガミの大群を横並び一辺倒、鮮やかに一閃。両断。

 

 漆黒のウィングスラスターの排熱口が展開し、エネルギーの余波が放熱される。

 

 爆散、散り逝くアラガミの群れ。

 

 黒鉄の武骨な大曲刀を携え、地上に緩やかに舞い降り立つ全身黒一色の異形の少女。

 

 アラガミたちが一斉に少女に襲い掛かる。

 

 

「逆羅刹」

 

 

 瞬時に片手逆立ち、艶やかな両の脚を回転させ、鎌首状の脚部ブレードで襲い来るアラガミどもを連続的に切り刻む。

 

 

「無想三刃」

 

 

 曲刀を大上段に構えた状態で脚部ブレードのスラスターで勢いをつけ、縦回転しながら手にした大剣と二つの脚部ブレードでアラガミどもを斬り裂きまくる。

 

 

「天ノ逆鱗」

 

 

 空中に高々と軽やかにバックジャンプし投擲した大曲刀が、より巨大化し、スラスターを爆射。たじろぐアラガミたちに向かって一気に極大剣を蹴り放ち、纏めて貫き破砕する。

 

 

「黒炎鳥極翔斬」

 

 

 大曲刀を双剣に分離させて噴き上がる黒炎を放出、自身を巨大な雄々しい黒い火の鳥と化して突進する。けたたましく嘶く煉獄の黒鳥が大翼を広げ、無数のアラガミどもを根刮ぎ焦熱の渦中に呑み干し、尽く塵芥へと変える。

 

 

 大地を、空を埋め尽くしていたアラガミの大軍団が消失した。

 

 すべて。

 

「…………遅くなってすまない。少しばかり向こうのアラガミたちを掃除していた」

 

 漆黒のプロテクターを纏う異形の角先を持つ少女、オロチノカラサビが、クリサンセマムのメンバーたちに声を掛ける。

 

「カラサビお姉ちゃんッッッ!!!」

 

 フィムがハンマーを放っぽり出し、勢いよくそのアーマー越しの豊満な膨らみに抱き付いた。

 

「…………フィム。いい子にしてたか? お母さんたちと仲良くしていたか?」

 

 柔らか微笑みを浮かべ、抱き付くフィムの髪を撫でるオロチノカラサビ。

 

「カラサビッ!」

 

「カラサビっ!!」

 

 クリサンセマムの女性メンバーたちが颯爽と現れた旧友に驚きと喜びが混じった声を上げる。

 

 

「…………オロチノカラサビ…………まさかあのアラガミの大群をひとりで片付けて、ここまで来たというの?」

 

 高台から見下ろす顔を蹙めるネルウァ。

 

「うわっ!? 来たぁっ!? 一番チートなヤツが来ちゃったよっ! お姉ちゃんっ!!!」

 

 ネルウァのトーガの背後に慌てて隠れるネロ。

 

「まあな。ユウゴたちやアインさんが開発したアラガミ防壁で時間を稼いでくれたおかげでね。後は、お前らだけだ。覚悟はいいか? 悪戯姉妹」

 

 オロチノカラサビが見下ろす白い姉妹を見上げる。

 

「…………ふ、ふふふっ! 想定外…………っ! 私は貴女の力を侮っていたわっ! オロチノカラサビっ! 貴女に相応しいアラガミは何がいいかしら? 神速種? 侵喰種? それとも神融種? 神源種もいいわね。侵襲種も捨てがたいわ」

 

 片手を翳すネルウァ。

 

 空間が歪み、禍々しい力が渦巻き辺りの物質を揺らぎ形を変えていく。

 

「うっ!?」

 

 突如、ネルウァが片腕を押さえて蹲る。

 

「お、お姉ちゃんっ!? 腕がっ!!」

 

 蹲るネルウァの手から右腕が乾いた粘土細工が壊れたようにヒビ割れ、ボロボロと崩れていくではないか。

 

「…………調子に乗ってアラガミを短期間に作り過ぎたみたいね…………やはりまだ完全とはいかないわ」

 

 右肩から先が消失した部分を、忌々しげに眺め立ち上がり、眼下を見やる。

 

「…………とても残念だけど、これ以上は遊んであげることが出来なくなったわ、オロチノカラサビ。またいずれ会いましょう」

 

 そう言って片腕がないネルウァはネロを連れて空間に溶けるように一瞬にして消えた。

 

 後には至る所、虫喰い穴だらけの大地と廃虚が残されただけだった。

 

「…………ああ、嫌でもまた会うさ。近いうちに必ず、な」

 

 黒の少女は天使な少女を抱き抱えたまま、こちらに駆け寄るかつての仲間たちのもとへ歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 終末の、明日も見えない白く濁った世界。

 

 ほんの少しだけ、閉ざされた未来に黒き輝きが差した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To be continued………?

 

 







これでひと通り完結とします。いろいろ好き勝手しましたが、皆さんお付き合いいただき本当にありがとうございました。次回作があるかどうか判りませんが、いずれまた。

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