サブタイ付けようかどうか毎回考えるけど、めんどいからパス。
突然に苦しみ出したアメノハバキリ変異種。
一体何事か?
それまで斬られようが、撃たれようが屁でもないとばかり超然としていたはずなのに。
「あの神機のせいかっ…………?」
アインは先程のグレイプニルの神機使いが突き刺した神機によるものだと予測し、それを確信に変える。
何故なら己れの中の荒ぶる神も騒めき暴れているから。
…………クルシイ…………ツライ…………ニゲタイ…………ラクニナリタイ…………
オレは生前、特筆するほどの人間じゃなかった。
出不精で面倒くさがりで、ぶっきらぼうで。
それでいて外面は愛想良く、頬笑み、得意先の客におべっかを使う、しがない会社員の営業マンだった。
毎日毎日働いて、生活のため、家族のため、生きるためと自分を騙し騙し日々を繋いできた。
平凡な何処にでもいる社会を構築するひとつの歯車。
不平不満、内に秘めた怒り、形容しがたい不安を燃料にただ生きていく。
機械だ。
オレたちは、オレはマシーンだ。
壊れてもいくらでも換えが利く安いローカルな。
そんなオレはある日唐突に、たいしたこともない人生はリセットされ、メタリックなボディに成り変わった。
たまにやる好きなゲームの1キャラクターに。夢でもいい。喜ばしい限りだ。
だが夢は夢。ゲームはゲーム。現実は現実。
嬉しかった。
毎日が命のやりとり。
哀しかった。
食うか喰われるか。
嬉しかった。
弱いものは生き残れない。
苦しかった。
死んだら終わり。
楽しかった。
何が違う?
辛かった。
何が変わった?
結局変わらない。変わらないんだ。
何もかも。
────ダッタラ、壊セバイイヨ。
えっ?
────壊ワシチャエバ、イイヨ。
壊す? 何を?
────ゼンブ、ダヨ。
全部?
────ソウ、ゼンブ。『ヒト』も『アラガミ』モ。
ゼンブ。
ゼンブ。
ゼンブ。ゼンブ。ゼンブ。ゼンブ。ゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブ。
────壊シチャエ。
頭を抱えて胸を押さえて苦しんでいたアメノハバキリ変異種が、ガックリと項垂れた。
両腕を垂らし、まるで電池が切れた玩具のように。
アインは膝を着いて自身の胸を押さえる。
「ぐうゥゥううっ!?」
「アインっ!? どうしたっ!?」
ユウゴがアインに駆け寄る。
アインの頭の中にイメージが流れ込む。
真っ白な獅子の鬣を持つ少女。
紅い血の滴を塗り込めた瞳を輝かせ、微笑う。
項垂れていたアメノハバキリ変異種の身体がピクリと震えた。
プルプルと全身が小刻みに振動を始める。
ピシリと何かがヒビ割れるような亀裂の音が大きく響く。
────アメノハバキリ変異種の背中から黒い泥状のナニカが噴き出した。
「…………なんだよ、アレ…………」
空を呆然と見上げるジーク。
「…………灰嵐のときもヤバイとおもったが…………アレはもっとヤバイ…………」
ユウゴがアインを支えながら空をジッと見上げる。
「…………アレは何という現象だ…………? 空が、空が黒く染まっていく…………?」
ルルもただ変わりゆく空を見上げるしか出来ない。
「ぐっ…………! だ、ダメだっ! や、ヤツを、ヤツを止めない、と…………っ!!」
アインはバスターブレードのグリップを握り締める。
アレは危険だ。この世界に絶対に在ってはならない。
すべてを塗り潰す異なるモノ。
「!?」
振り返る、頭に天使の輪のような髪型の幼い少女。
遠く、空の彼方を見上げる。
「フィム? どうしたの?」
呼びかける白いポニーテールの前髪で片目が隠れた女性。
「お母さん、私行かなくちゃ」
フィムと呼ばれた少女は強く決意した視線で母と呼ぶ女性を見詰める。
「…………そう。ユウゴたちに何かあったのね?」
「うん。お空がね、泣いてるの。悲しい、痛い、辛いって。だから…………」
女性はスッと少女の髪を優しく撫でる。
そして立ち上がり少女と同じく強い瞳で空を見上げる。
「…………行こう、フィムっ!みんなのもとへ!!」
「うんっ! お母さんっ!!」
それぞれ肩に三日月型の巨大な神機を担ぐ。
その出で立ちは、まさに親子。ふたりともそっくりだった。