ナレーターさんは有給を取りました。
「呼んでいる〜胸の〜どこか奥で〜♪」
「ハル、そろそろつくみたいだよ」
気持ち良く歌ってたところを兄に中断させられ、僕は車のリクライニングシートを起こした。
まずは自己紹介。僕は転生者の『初春 春雪』です。
ふりがなは『はつはる はるゆき』で、けして『ういはる』ではないので間違えないように。あだ名はハル。
生を受けてからもう七年がたった。産まれた当初の話は羞恥心で心が折れそうになるので割愛する。
赤ちゃんプレイの話なんて誰が聞きたいんだよ。
ちなみに初雪家は四人家族で10こ上の兄がいる。
父の仕事の都合で七月の終盤というくそ暑いなか引越しをすることになった僕らは新たな我が家へと向かっていた。
「なぁハル、友達と離れるのは寂しいか?」
「うーんわかんない」
ちなみに僕には友達はいなかった...悲しくなんかないもん。
これからいっぱいできるからいいんだもん。
七歳児のメンタルは弱いのだ。
まあ、未だに原作介入できていないのが心残りだけど。
「ねぇお父さんさっきすごく大きな鳥居があったよ」
たかが鳥居ではしゃぐ兄は結構子どもである。早く大人になって欲しいね。
「あぁ。たしかここら辺の土地神を司る『篠ノ之神社』だったかな?」
訂正、兄さんにはこのまま子供でいて欲しいね。
実は兄さんは結構なフラグメーカーで中学生時代には三人の女の子に言い寄られてた。羨ましい。
車が止まったのはそれから数分のことだった。
だったらすることは一つしかない。
「お父さん、お母さんちょっと遊んでくるねー!」
「あまり遠くに行かないようにね〜」
さあ、パーリィーもとい原作介入の始まりだー。
母がのん気な人で助かった。普通の親だったらこうは行かなかったね。
引越しの手伝いをしようとしなかったのは心苦しかったけど先日両親がもう家具は入れたと話していたのをおもいだした。まさにベストタイミングだね。
そして僕は記憶と希望を頼りに神社へ走り出した
のがいけなかった。
いや、よく考えてみれば当然だ。幼い子ども、見知らぬ街という二つの言葉に当てはまるのは迷子という言葉のみである。
後悔した。
第一神社への道なんて覚えて無いし子供一人で行くにはむりがあった。後で父さんに言えば連れて行ってくれたかもしれない。帰り道も分からない。
やばい、泣きそう。
耐えろ七歳児のメンタル。
そうして時間は過ぎ、本格的に泣き始めた頃、僕に声を掛ける人がいた。
「ねぇそこの君こんなところでどうしたのかな?」
その人は天災と呼ばれる人だった。
少年説明中
「そうかそうかつまり迷子になっちゃったんだね!」
「う、うん」
取り敢えず何とか落ち着いた。
それにしてもこのお姉さん常にハイテンションだし何処かで見覚えがあるんだけどいったい誰だろう?
「お姉さんはここで何してたの?」
「私はね人を待ってるんだよー。あ!きたきた!」
「すまない束、遅くなった」
えっ束ってことはこの人が篠ノ之束!?つまり束さんと親しそうなこの人は。
「ぜんぜん待って無いよちーちゃん!」
やっぱり織斑千冬だったー!
どうしよう元々原作の舞台をちょっと見に行くだけだったのに主要人物の二人に会っちゃったよ!
でも篠ノ之束ってすごい人嫌いだったような。
千冬さんは僕を見るなり束にいった。
「ついに人さらいにまで手を出したか。これは相当長い間ぶち込まれるぞ」
「そんなことしないよ!私を信じてよ!それにこの子は迷子なんだよ!」
「そこの君、本当か?」
僕は首を縦にふった。
「しょうがない。取り敢えず道場に連れて行こう。君の名前は?」
「初春春雪、七歳」
「そうか、弟と同じだな。私は織斑千冬だ。でこっちが」
「天才の篠ノ之束さんだよー。よろしくね、はるるん」
「は、はるるん?」
「気にするな。こういう奴だ」
なんだか想定外の事態になっちゃったけど当初の目的は果たせそうだね。
少年移動中
というわけでやってきました篠ノ之神社。
近いと思ってたけど子供の足じゃ意外と遠かった。
「裏に道場がある。着いてこい」
おとなしく千冬さんに着いて行くと道場と思われる建物が見えてきた。
目を凝らすと門下生たち三人が素振りをしていた。
あれ?三人?
確か原作だと箒、一夏、千冬の三人しか門下生はいない。
でも千冬さんはここにいるからし、あの体型からして大人
ではない。いったい誰だろう?
もしかして他の転生者⁉︎
「すまない遅くなった。篠ノ之、一夏、マドカ」
マドカ?
「遅かったぞ千冬姉!」
「何かあったのかと心配したじゃないか姉さん」
なんであの子がここにいるんだろう。
織斑マドカは物語中盤から登場して主人公の一夏たちと敵対するはずなのに。
恐らく僕があいつらにした願い事のせいかな。
「千冬姉そいつ誰?」
「初春春雪君だ。迷子になったらしい」
一夏は迷子になった僕のことを笑うだろうか。
「そっか、大変だったな。俺は織斑一夏よろしくな!」
すごくいい笑顔だった。
正直バカにされるかと思った。
普通この位の年でこんなこと言えるような子はそんなにいない。
主人公だからとか関係なくこの子はすごい。
だったら僕も笑って返そう。
「僕は初春春雪。ハルって呼んでね」
この時気づいた。
僕に友達ができなかったのは笑わなかったからだ。
そうだこれからは笑うことを重視しよう。
「私は織斑マドカだ。姉さんと一夏共々よろしく頼む」
「うん。こっちこそ」
さて、あとはもう一人。
「篠ノ之箒だ。えーと、あの」
「どうしたの?」
何故か箒の歯切れが悪い。
「姉さんに何かされてないか?」
「どういう意味?」
「言いにくいのだが姉さんはロリ&ショタコンなんだ」
「………」
絶句した。
絶句するしかなかった。
「ロリ&ショタコンなんて酷いよ箒ちゃん。私はただ小学生以下の子どもが好きなだけだよ」
「それをロリ&ショタコンだと言うんです」
千冬さんがいて助かった。
あのまま来なかったらいったい何をされていたか分からない。
もっと皆と話したいと思った時、突然奴はやって来た。
「すいませーん。こちら弟がお邪魔してませんかー?」
「兄さん!どうしてここが」
「たぶん、ここだと思ってな」
「なんだ?迎えか?」
何故このタイミングで。
「弟を預かってくれてありがとう」
「いえ、今度は目を離さないようにしてくださいね」
あー帰らす気満々だ。
「そっちの君もありがとうね」
兄さんは束さんにもお礼を言った。
「なんなんだよ」
「え?」
「今は箒ちゃんといっくんとまーちゃんとはるるんのダブルロリ&ダブルショタのコンボなのになんで平然と壊そうとしてる訳?わけがわからないよ」
うわーすごく帰りたい。
まいっかまた会えるし。
「そろそろ僕も帰ります」
「えーはるるんもー?」
「もう迎えも来ましたし」
それじゃ、と言おうとした時だった。
「また、来てくれるか?」
マドカがそんなことを言った。
だから僕は。
「もちろん。絶対また来る」
と、笑ながら答えてその場を去った。
兄さんとの帰り道。僕は兄さんに。
「剣道がやりたい」
と言った。
これが僕たちの出会い。
束の喋り方がよくわかんない。(泣)
。・°°・(>_<)・°°・。