人型ロボットが蔓延る世界で生きる俺のヒロインが全員ヤンデレだった件についてwww   作:門崎タッタ

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ちょっと短めです。




第5話

 

 絶体絶命のピンチが訪れている。  

 このままだと、確実に死ぬ。

 俺の心臓はどくどくと早鐘を打っていた。

 ブレードを放り出してしまったため、盾しか持っていない。

 この状態では何も抵抗ができないため、敵機にコックピットを潰されるのは……時間の問題だ。

 

 しかし、俺は至って平静を保つことができている。

 ……なぜなら、俺が搭乗しているガラドにはこんな時のために()()()が備え付けられているから。

 リーゼロット隊長と初めて訓練を行った際に彼女から頂いたアドバイスを実行に移した俺は我が騎士団の整備班に話を通し、とある兵装を俺のガラドに装着してもらっていたのである。

 そのため、俺は落ち着きながらも迅速に、敵の機体のメインカメラの箇所に標準を合わせた。

 

 緊張はしているが、不思議と焦りは全く無い。

 できる限りの準備を済ませて、俺は奥の手が有効に作用する瞬間を待つ。

 すると、倒れている俺の機体にとどめを刺そうと……敵機が片手持ちのアックスを全力で振りかぶる。

 俺が抵抗できないと考えているのか、攻撃の動作は緩慢であり、付け入る隙が微かに生じていた。

 

 ……チャンスは今、この瞬間しかない。

 

「……ッ、喰らいやがれ!!」

 

 機体の右肘に備え付けられていたパイルバンカーを敵機に向かって勢い良く射出する。

 ……けれども、素早い反応を見せた敵機は後退する事でパイルバンカーを回避した。

 すんでのところで行われた敵の回避行動によって、俺が射出したパイルパンカーは着弾こそしなかったが、体制を立て直す事はできた。

 俺はブレードホルダーに装備された予備のブレードを引き抜き、間髪入れずに敵機に攻撃を仕掛ける。

 ここで、敵のコックピットを華麗に貫けたのなら、スムーズに戦いを終えられたのだが、現実はそう上手くいかない。

 

 相手もかなりの腕前らしく、俺が振るったブレードはあっさりとアックスで受け止められる。

 それによって、俺のガラドと敵のジダルは鍔迫り合いのようにブレードとアックスを互いに押し合う形になった。

 出力は最新型の魔導兵器であるガラドの方が上だ。

 このまま力比べをしたら負けるのは敵の機体だろう。

 

 そう結論づけた俺は、操縦桿を握る手に力を込める。

 ……しかし、俺は敵の機体に押し負けつつあった。

 この状態は新米パイロットの俺よりも、敵の技量の方が上だという事実を如実に表している。

 恐らく、実践経験が浅い俺が知り得ない魔導兵器の武器の扱い方を敵は心得ているのだろう。

 それは、訓練校の教本に載っているものでは決してなく。

 数多くの戦場を生き残ってきた猛者にしか身につかない……経験に裏打ちされた技術なのだ。

 

 ……面白い。

 不純な思いが俺の心の中に生まれる。

 この感情は俺の初出撃の際に、植物型の魔物と相対した時に感じた激情と殆ど同じ。

 リーゼロット隊長と模擬戦をした時と同じ気持ち。

 人々を守るために戦う騎士として、これがあるまじき衝動であるのは俺も重々自覚している。

 そして、一般人の死人が出てる状態の戦闘でこんな感情を持つのは限りなく不謹慎だろう。

 

 俺は一体、いつから、命を賭けた戦いに興奮を覚える変態になってしまったのだろうか?

 それに加えて、闘争の中に愉悦を感じるような人間に帝国の政策に対して憤りを覚える資格があるのだろうか?

 ……どちらも非人道的であるのは変わらないのに。

 上記の他にも、似たような疑問と意見が俺の脳裏に流れては消えていく。

 そして、俺の脳みそが出したのはこんな思いを抱くのは間違っているという結論だった……が。

 

 それでも、俺は激情を抑える事が出来ない。

 この感情に身を任せて戦うのは絶対に間違っている。

 間違っているのを分かってはいるのだが……。

 

 ……たった一回だけだ。

 この戦闘だけは自分の心に従って、余計な事は考えずに純粋に戦いを楽しもう。

 

「く、くく、くくく」

 

 自分の脳内でそう決断を下すと、今までの人生で一度も出した事がない、狂気的な笑い声が俺の口から漏れた。

 奴と俺の実力の差はどう足掻こうが覆すことはできない。

 

 どうせ負けたら死ぬんだ。

 半ば賭けにはなるが、思いっきり暴れてやろうじゃないか。

 自暴自棄に似ているようで違う覚悟を決めた俺は、鍔迫り合いの状態を維持したままスラスターを利用して全力で敵機に突撃する。

 そうすると、俺の機体は宙に放り出され、敵の機体は凄まじい勢いで転倒した。

 俺と敵の戦いは既に混沌と化してるが、そんな状況に置かれても俺の興奮は一切冷めない。

 寧ろ、更にボルテージは上がっていく。

 快楽物質が脳みそを駆け巡る。

 落下した衝撃で軽い脳震盪を起こしているが、それでも俺は止まらない。

 

 敵の起き上がる隙を突き、手持ちのシールドで敵の機体の横っ面をぶん殴る。

 それと同時に、敵はアックスで俺の機体の右腕を切り落とした。

 ブレードを持つ手が敵に切り落とされた事で武器を失った俺は、シールドをそこら辺に放り投げて。

 最後の一本である予備のブレードを手に持ち、機体に詰め寄ってくる敵機の左腕を即座に切り捨てた。

 そして、お互いに満身創痍となった俺と敵の機体は斬り合いを始める。

 俺の猛攻は戦法もへったくれもないめちゃくちゃな戦い方。

 そんな俺と相対している敵はどんな事を考えながら、戦っているのだろうか……。

 

「ふ、ふふふふふ」

 

 と、どこか他人事のように考えていた俺の機体の画面に突然、見知らぬ女の子が映った。

 赤い髪をボブカットにした少女は端正な顔を歪めて奇妙な笑い声を上げている。

 彼女は俺の顔をじーっと見つめながら、魔導騎兵の操縦を手元を確認せずに行っていて。

 物凄く、不気味だ。

 ……もしかして、この少女は俺が相対している魔導騎兵のパイロットなのだろうか?

 

「やっと見つけました。私の、同類さんを……運命の相手を……」

 

 脳裏に浮かんだ疑問を少女にぶつけようとすると、彼女は恍惚に満ち溢れた表情を見せる。

 火照ったように朱の差した頬。

 仄かに潤んだ瞳。

 それらは淫靡な色気を醸し出しているが俺は恐怖の感情しか抱けなくて。

 少女の不気味さに肝を冷やした俺はさっきまでのテンションや熱意も一気に冷めてしまい。

 自分が殺し合っていた相手がまだ幼い少女だと知った影響でほぼ無意識に機体を操作する手を止めてしまう。

 そんな俺に魔の手が迫る……ことはなかった。

 

「後輩くん、助けに来たよ!」

 

 ……俺の救援にやってきたベルラ先輩の機体から放たれた銃撃によって、少女の機体は体勢を崩したから。

 そうして、矢継ぎ早に先輩の援護を受けているテレシアの機体が、少女の機体に斬りかかった。

 

「むぅ……」

 

 援軍が来て旗色が悪くなった事を察したのか。

 不機嫌そうにほっぺたを膨らませた少女は機体の腰の部分から円形の物体を取り出すと、それを乱雑に放り投げる。

 次の瞬間、辺りには煙が充満して。

 凄まじい轟音と共に少女の機体は姿を消してしまった。

 

 急いで少女の後を追おうとしても、レーダーに彼女の反応は映らない。

 どうやら、彼女が使用した煙幕には、姿を晦ます効果と魔力反応を掻き乱すチャフのような効果があったようだ。

 当然ながら、通信も少女に一方的に切断されてしまったようで、僅かな痕跡も残っていない。

 

「ふぅ……」

 

 損傷が激しい魔導騎兵の中で、確認作業を行った俺は一息つく。

 その後、先輩やテレシアに一通りの報告を終えて子供の救助に向かう俺の脳裏にはあの妖しい少女の姿が深く刻み込まれていたのだった。

 

 

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