人型ロボットが蔓延る世界で生きる俺のヒロインが全員ヤンデレだった件についてwww   作:門崎タッタ

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第8話

 

「投薬、終了しました。15番、身体に異常は?」

 

「ありません」

 

「直ちに自室に戻りなさい」

 

「了解です」

 

 いつ見ても不気味な器具をぽぽいっと投げ捨てた私は、真っ白な部屋を後にします。

 それを目にした白衣の男性は露骨に顔を顰めており……本当に良い気味で。

 ざまぁない、とも言い換えられます。

 私は常日頃から、年頃の女の子の体を好き放題弄くり回されており。

 もちろん、その事にも良い感情を抱いていないので、白衣の男性を少しでも不快にしたいと言うのが私の本音なのです。

 そんな事を考えながら注射を刺された場所にパッチを貼ると、じくじくと腕が痛みます。

 続いて、異常なほどに胸もバクバクしているので、もうそろそろ限界かもしれないです。

 ……私の体は。

 抑制剤の量は日に日に増えてきてるし、禁断症状のスパンは短くなってきてるし。

 偉大なる先輩方のように廃棄される日が、想定よりも近づいているのかもしれないですね。

 まぁ、別に。

 今とはなってはどうでも良い事ですが。

 

「ただいまです、皆さん。悪の組織のエースパイロット、イチゴちゃんが帰りましたよ〜!」

 

「…………」

 

「ベルラお姉ちゃん、待っててね。私が誇り高き祖国を守護する事は望んでいる事なの。正義は我にあるわ!だから、私が貴女を必ず救ってあげる!それが私の願望である事は確定事項よ!」

 

 相変わらず、返事はありません。

 ルームメイトである少女二人は、私の存在を認識している事はなく。

 絶えず、自分の世界に入り込んでいる不思議ちゃんなのです。

 長い水色の髪の少女、53番ちゃんはしきりに頭を壁に打ち付けており。

 ふわっとした金髪の少女、69番ちゃんはぬいぐるみに向かって、支離滅裂な言葉を投げかけていて。

 双方、正気を保っていません。

 有り体に言えば、目ががんぎまっていて、少し怖いです。

 ですが、こんなにも酷い精神状態でも、魔導騎兵に乗り込めば、普通のパイロットを凌駕する操縦ができるのだから不思議なモノですね。

 

「まぁ、それは私も同じなんですが」

 

 私達は魔道騎兵を効率良く動かすために改造されたパイロット。

 謂わば、ロボットの強化パーツのような存在です。

 反射能力を極限まで高める目的で、体の至る所に機械を埋め込まれており、それを維持するために様々な薬物を投与されていて。

 投与される薬物には依存性があり、継続的に摂取しなければ死に至るため、逃げることなどは許されません。

 ……正真正銘の悪の組織「暁の騎兵団」から。

 

 「暁の騎兵団」は表向きは単なる賊とされているが、実態は大きく異なります。

 この組織のメンバーの殆どは元帝国軍人で、数年前に王国に敗北した事を認められずに足掻いているどうしようもないクズばかり。

 そんな人々が集まって、無差別にテロ活動を行っている最悪な組織が「暁の騎兵団」であるのです。

 因みに、秘密裏に帝国の支援を受けている疑惑もあるそうですが、実際どうなのかは分かりません。

 使い勝手の良い道具にすぎない私には、何の情報も与えられなくて、当然ながら人権もなくて。

 ぶっ壊れたら、捨てられるだけですから。

 

「だからこそ、命尽きる時まで楽しまなきゃ、損ですよね。私が心より愛している戦いを……」

 

 脳裏に浮かぶのは先日の戦闘で出会った、王国の騎士団に所属しているパイロット。

 命懸けの戦いを楽しんでしまう……私と同類の青年の姿。

 彼との戦いは、本当に本当に楽しかったです。

 理性をかなぐり捨てて、ロボットを駆る。

 獣のように本能剥き出しで戦いに興じるのは何者にも変え難い快楽で。

 それを共有できたのは、生まれて初めての経験でした。

 

「自ら、改造される事を志願した甲斐がありましたっ。私はあの人と出会うために今まで、生きていたんですね……!」

 

 ああ、会いたいです。

 今すぐ、戦いたいです。

 一刻も早く、殺し合いたいです。

 

 私はもうじき、死にます。

 なので、どうせ死んでしまうのなら。

 ぐちゃぐちゃに混ざり合うまで、互いの狂気をぶつけ合って。

 最後の最後は、あの青年の手で殺されたいと……心の底から思うのです。

 

「ひっ、きひひっ。楽しみ、楽しみです。早く、早く会いたいなぁ……」

 

 周囲を顧みずに私は笑います。

 お腹を抱えながら、大きな声で。

 その様子はきっと、狂気じみていると自分でも思いますが。

 ルームメイトは皆、私も含めてイカれてしまっているので、何も問題はないのでした。

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