追い風を受け、ヒカリへと飛び立つ者 作:モルモット0816番
亀更新のタグも付けないといけないな…
※途中、実況だけになります。
「すぅ…ふぅ…」
「緊張してるね〜…」
控え室で時を待つのは、勝負服に着替えたヒカリフライトとそのトレーナー。
会見での騒ぎは世間的に注目され、マスゴ…失礼、マスコミ各社に往年のタキオンファンからの問い合わせが殺到。
勿論ファンとしてはそんな事してないと分かっていたのだが、『タキオンの娘がタキオンの出れなかったダービーに出走する』という事実が導火線に火をつけ、何処かの阿呆がそのタキオンの娘に、あろう事か暴力を振るおうとした事で爆発した。
伊達に長年、タキオンのファンというだけで『薬漬けのウマ娘のファンとかw』などと馬鹿にされ続けては居ない…ある種最高かつ最悪の形で弾けてしまったのだ。
そんな事もあり、ヒカリフライトは珍しくプレッシャーを感じていた。
『勝たなきゃいけない』『私に勝てるのかな…』
『お母さんが走れなかったんだ』
『お母さんを応援してくれた人の為にも』
『私の為に頑張るトレーナーさんの為にも』
『馬鹿にして来た人を見返す為にも』
『絶対に勝たなくちゃ』
「こーらっ!」
「ふぇっ!?」
思考の海に沈みかけたヒカリフライトだったが、なんとか戻れたようだ。
「ハッ…ハァッ…トレーナー、さん?」
「…色々考えてるとは思うよ…だって、お母さんが走れなかったレースだもんね…」
「だから私は…!」
「うん、けどね。フライト自身の為にこのレースに勝って。お母さんや私、ファンの皆の為に…じゃなくて、貴女自身の為に」
「…私の?」
珍しく、間延びした口調も抜きに話すトレーナーは、驚くヒカリフライトに続けて口にする。
「そう。この舞台に立つって事は、期待を背負うのは当然のことなの。それを重荷にせず、ブースターとして使えるかは貴女次第だから」
「…」
「貴女はどこまででも行ける…ヒカリに向かって飛び立てる…そんな貴女自身の為に、このレースに勝って」
「…はい!」
「よ〜し良い返事!勝負服もキマってるし負ける気しないよね!2冠目、取っちゃおうか!」
「はい!じゃあ…行って来ます!」
ヒカリフライトはそう告げ、ターフへと向かった。
『ここ東京レース場にて行われます、日本ダービー!【最も運のあるウマ娘】は、果たしてどの娘になるのか!』
『今年は注目出来るウマ娘も多いですからね!期待も高まります!』
『しかし、やはりというべきか…ドリームオブプリンセスの風格が別次元ですね…』
『果たしてこのウマ娘を超えられるウマ娘は現れるのか!』
『ゲートイン完了、出走の準備が整いました!』
『ここに居るのは強者のみ。
その強者ひしめくゲートが…今開かれた!』
『おおっと!!イッポサキヘ、ロケットスタート!かなりのハイペースで飛ばしていく!
ユアイズオールはその半バ身真後ろ。イッポサキヘを壁にして、スリップストリームでスタミナ消費を抑える体勢か』
『その後ろの集団にヒカリフライトとドリームオブプリンセス。共に先の2人を追いかける形。
ヒロイックフィリアは最後方、というよりも殿。前半は脚を溜め、後半での爆発を狙っているようだ!』
『ここまで先頭から殿までおよそ9バ身。やや団子になってる感が否めません』
『ここで800mを通過。全体の1/3を超え、先頭は依然変わらずイッポサキヘ。他の娘はまだまだ脚を溜めている状態。
ただイッポサキヘ、やや掛かり気味か?』
『さぁ1600mを通過。全体の2/3を超えたぞ、おおっと!ここでヒロイックフィリアが飛び出して来る!
それに呼応するかのように、ヒカリフライトとドリームオブプリンセスの2人もスパートを仕掛けているぞ!』
『ここでイッポサキヘの背後に潜んでいたユアイズオールも、負けじとスピードを上げて行く!
イッポサキヘ、辛そうだが必死に食い下がる!だがここが限界か!?』
『そして残り400m!先頭争いはヒカリフライト、ヒロイックフィリア、ドリームオブプリンセス、ユアイズオールに絞られた!
誰だ!?誰が栄光を手にする!?4人ともに並んだ状態でゴールへ突っ込んでいくぞ!
そしてそのまま、雪崩れ込むようにゴールイン!
ほぼ同着に見えましたが…ユアイズオールがやや体勢不利の4着か!』
『残り3人の結果は写真判定が行われています…今しばらくお待ちください…』
「頼む…勝ってくれ…フライト…」
「大丈夫だよ、モルモット君。私たちの娘は必ず勝つ。それを私たちが信じなくてどうするんだい?」
「…それもそうだな…なぁ、タキオン」
「ん?」
「ごめんな、日本ダービー…走らせらむぐっ」
「まったく…ここ数日は同じ事を言ってるねぇ…私があの時脚を壊したのは君のせいじゃないさ…ただ、こうして見ると少しは思うよ…この声援の中で走ることが叶っていたなら…とはね」
「…すまん」
「泣くなよ、モルモット君。その涙はフライトが勝った時の為に置いておきたまえ」
「あぁ…そうだな…」
「写真判定…随分時間がかかってるなぁ…」
ゴールしてから約10分が経過しても一向に結果が出ないことに言葉を漏らしたヒカリフライトの前に、
「あれほどの接戦だ。むしろ私がこれ程までに追い込まれるとは、思いもしなかった…」
「確か…ドリームオブプリンセスさん…でしたっけ」
「ドリーで良い。トレーナーからはそう呼ばれてるからな。そして同い年だ。敬語も要らん」
「あ、うん…随分な自信だね」
「伊達に海外で経験は積んでない。日本のレベルの高さは常々聞いていたからこうしてやって来たが…まさか…冠を1つ、走ることなく逃す事になるとは…」
「確か手続きがどうのって話だったっけ…けど、皐月の冠を取ったウマ娘として、やっぱり負けられない」
「私を忘れて貰っては困るのですが…」
「あ、フィリア」
「フライト…2000mの皐月賞は貴女に取られましたが…2400mは私のフィールド。誰が相手でも負けられませんから」
「…なるほど、ここにいる3人。誰も自身の勝利を疑わないか…」
「「もちろん(です)」」
『写真判定の結果が出ました!』
「「「!!」」」
『1着は…ハナ差でヒカリフライト!2着はヒロイックフィリア!そしてドリームオブプリンセス!2着は同着です!』
「私が…1着…2冠目…!」
「同着2着、か…」
「悔しい…ですね…」
3人がそう呟いた直後、しんと静まり返っていた観客が、今更のように歓声を上げる。
「悔しいが…2冠目もキミのものだ。だが『次』は負けない」
「えぇ、最後の冠だけは…絶対に渡しませんから!」
「2人とも…うん、でも次もきっと、私が勝つよ!」
そうして3人はウイニングライブへ向かう…
前に、2着ポジションでの動きが、ややぎこちなかったドリームオブプリンセスの動きの確認を、2人がかりで急ピッチで行ったそうな。
「ええっと、ここがこう…だったよな?」
「いや出す手が左右逆ぅ!」
「ここをこうして、こうです!」
「す、すまん…負ける事をまったく想定していなかった…!」
「むしろそこまでの自信が羨ましいよ!!」
「レースより疲れている気がします…」
そんな2人の苦労の末、ウイニングライブはミスなくなんとか成功したそうな。
「「次からは気を付けてね?(くださいね?)」」
「…はい…」
3人の勝負服について
ヒカリフライト→改造白衣。基本はノースリーブだが、稀に母親譲りの萌え袖白衣になったりする。タイツは母親とお揃い。ファンの癖は拗れた。
ドリームオブプリンセス→黒のゴスロリ。薔薇の装飾が施されたタイツは白で、腰に剣をマウントしている。ファンの癖は拗れた。
ヒロイックフィリア→レースとフリルたっぷりの白いミニスカドレスで、ニーソックスもお揃いの白。しかし太ももからは黒いガーターベルトが見える。ファンの癖は拗れた。
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