輝けなかったウマ娘トレーナーは芽吹く新芽に何を思うか 作:にらたま定食
投稿後、アクセス数の数字にチビりそうになりました。
読んでくださった方、ありがとうございます。
それでは、第二話です。
「ありがとうございました!」
—これからも頑張って下さいね。
二週間後。カウンセラーとしての最後の仕事を終えた。
ふう。と椅子に深く腰掛けると、入れ替わるようにウマ娘が入ってきた。
「やあモルモット2号君。調子は如何かな?」
—タキオンさんですか。そこにお掛けになって下さい。今紅茶を用意しましょう。
「いつもすまないねぇ。」
—また改良されたのですか?
「おお、見ただけで分かるようになってきたのかい?これも投薬を続けた結果だろうか……まぁそれはそれとして、前に渡した薬の効果は如何程だったかな?」
私は学園に所属するウマ娘の一人、アグネスタキオンに自ら被験体になると、過去に申し出た。
カウンセリングする相手はこれから伸びていく現役のウマ娘達だ。今の私のままでは彼女達のためにはならない。
彼女は快く引き受けてくれた。彼女の専属トレーナーには少し申し訳ない気もしたが、渋々承諾してくれたとアグネスタキオンは言っていた。
—感覚は掴めてきましたが、まだあまりうまく走れません。薬が無いとどうしてもまだトップスピードを出すのは怖くて……頑張ってみようとしても維持できるのは精々1000m……それ以上を目指そうとすると力が抜けて走れなくなってしまいます。かといって薬を服用すれば体力が持ちませんし……落とし所が難しいですね。
「……やはり、最後は精神面か。」
—大丈夫なのは分かってます……分かってるんです。
アグネスタキオンは少しバツが悪そうにティーカップを回す。
—あ、すみません。貴女が気にする必要はありませんよ?むしろ私みたいなのに付き合っていただけて助かってます。だからどうか……!
「……フフフ、その目は今も変わらないね。私の助手くんもそうだが、君も大概というところか。」
—貴女のお陰で彼女達を導いてあげられているんです。感謝してもしきれませんよ。
「そういえば、そこの机に積み上げられている紙束は何かな?」
—これですか?実はまた正規のトレーナーになってくれ〜!と理事長に言われましてね。いやはやお恥ずかしい。
「なるほど……さて、君にも準備があるんだろうから私はここらで退室させてもらうよ。私にも試したい事が山のようにあるのでね。」
—ええ、また今度。
アグネスタキオンは私の顔を見て、静かに笑った。きっと考えている事が見透かされたのだろう。
ふと自分の脚に視線を落とす。
右脚は小刻みに震えていた。
—ハハハ。今更怖がるものなんてもう何も無いのに……どうしたんだろうね、この脚は。
軽くぺしぺしと叩く。
しかし震えは止まらない。
—……今更遅いんだよ。
1回、2回、3回……叩く手が拳になったところで震えは止まった。
行き場を失った拳は静かに解かれ、机の上に置かれた。
時々、輝かしい夢に向かって走る彼女達の姿に、自分の在りたかった姿を重ねて嫉妬する。
—……今日はもう休もう。
深くため息をつく。
部屋を片付け、帰路についた。
お疲れ様でした。
タグの子逹が中々出てこず申し訳ない。汗
書き溜めはあるのでもう少しお待ち下さい…。
今後もタキオンはちょいちょい顔を出すと思いますので、よろしくお願いします。
それではまた。次のお話で。