性癖に正直に生きてたらヤンデレに追いかけられたんだが 作:鷲羽ユスラ
妾にとってフレッドリーツ・レアライヒとはどのような存在か。
憎らしい男じゃ。悩ましい男じゃ。妾を縛り、弄び、好き勝手に食らった
されど妾に敗北を与えた、唯一の存在。あやつと契約してからというもの、一度たりとも思いを馳せぬ日はなかった。
ああ、なぜお主は
お前様と出会ってからというもの、知らぬ妾が増えていくばかりじゃ。
耐えられぬ。堪えられぬ。ああ――許せるものではなかろうが。
フレッドリーツ・レアライヒ。天に立つ妾が見上げる、ただ一人の男よ。
その瞳の求める先が、妾だけであれば良かったのにのう……
小娘と父子の
そんなあやつに連れられて、二人っきりになった妾が真っ先に行ったのはあやつを押し倒すことじゃった。
仕方なかろう? ああ、仕方ないのじゃ。あのような下劣で、はしたない、妾という女をドロドロに溶かすような接吻をしながらこうも放置されたのだぞ?
体が熱くて仕方ない。胎の奥が今にも火を吹きそうじゃ。それを鎮め、いや消し去るには、こやつに勝負を挑むしかない。
許さない。許さぬとも。妾をこんな体にしておいて、何を一人で楽しそうにしておるのじゃ……!
「くっふっふっ……然しものお前様♡ であろうとも、この妾に組み敷かれては抗うことなどできぬか……♡」
「さぁ、勝負じゃ♡ 今度は負けぬぞ、負けぬからな♡ お前様♡ に勝って、妾こそが格上なのだと知らしめてやろう♡」
「ほれっ♡ ほれっ♡♡♡ 妾を貪った気概はどこへやった?♡ わ、妾が乗っただけでこうも、た、滾らせよって……♡♡♡」
「負けぬぞ♡ 絶対負けぬからな♡ 勝つのは妾じゃ♡ 妾なのじゃ♡♡♡ お、お前様♡ などにっ♡ 二度とっ♡ 負けはっ♡ せ、せぬぞっ♡♡♡」
矮小な男に我が肉体の偉大さを知らしめながら妾は嗤う。服? そんなもの暑いからとっくに脱ぎ捨てたわ。
今の妾の体には、途方もない熱が溢れ出るように巡っておる。肌を包むだけの布など着ていては燃えてしまうであろう。
こやつもそうに違いあるまい。さっさと剥ぎ取って雄々しい姿をあらわに……くっ、そうじゃった。今は小娘の力で縛られておったな。
まあ、それもこやつの意志一つ、匙加減はどうとでもなろう。その証拠に、妾が腰を下ろすその場所からは……
「くうっ……♡♡♡ あ、熱いぞ、お前様♡ な、なんじゃ、妾の肢体に見惚れてしもうたか?♡♡♡」
「そうじゃろう♡ そうじゃろうなぁ♡♡♡ お前様♡ は、妾のこと大好きじゃもんなぁ♡♡♡ でなければあんな真似、するはずもないからなぁ♡♡♡」
「じゃが、妾が上♡ 妾が上じゃ♡♡♡ 今度こそお前様♡ に勝って、妾こそが唯一の覇者に……なっ、何をっ♡♡♡」
男の肩を押さえて妾が舌を舐めずっていると、こやつは不意に妾に愛を囁いてきおった。
な、何じゃ急に、そんなこと……! 「愛してる」じゃの、「好き」じゃの、「綺麗だよ」じゃの……今更そんな言葉で怯むはずもなかろうが!
「やっ、やめろぉ……♡ やめるのじゃぁ……♡♡♡ そ、そのような、くぅん♡ 上っ面の言葉ごときで、妾が負けるわけなかろうがぁ……♡♡♡」
「わ、妾が上なのじゃぞぉ……♡ こ、ここは妾が♡ お前様♡ に♡ 立場♡ というのを♡ 分からせるところじゃろうがぁ……♡♡♡」
「きゃうんっ♡♡♡ な、なぜ妾の頬に触れられるのじゃあ!?♡ お前様♡ の腕は、確かに妾が押さえて……♡」
「か、簡単に動かせたじゃと!?♡ そ、そんなはずない!♡ こんなの幻想じゃ♡ まやかしじゃぁ♡♡♡ ど、どうせお前様♡ がまた妙な手を使ったに違いあるまい♡♡♡」
「……わ、妾から勝手に手を放していたじゃと!?♡ そんなわけが……ああっ!?♡♡♡ ち、違う♡ き、期待なぞ、期待なぞしておらぬぅ……♡♡♡」
「…………あぁっ!?♡♡♡ い、いつの間に、こんな……♡♡♡ だ、ダメじゃぁ♡ ダメじゃダメじゃダメじゃぁ♡♡♡ そ、そんな目で見つめられたら……妾は……妾は……♡♡♡」
気がつけば、妾は逆に押し倒されておった。
……いや、そんな生易しい状態ではない。あやつの腰の上に乗っていた妾は、上半身を起こした男に優しく押され、コロリと体を引っくり返された。
妾は今、平伏した犬のような格好であやつに見つめられておる。胡座をかいた男の肩に脚を引っ掛け、あやつにしか許しておらぬ場所を見せつけるようにしながら、無様に仰向けになって寝っ転がっておる。
く、屈辱! 屈辱じゃ! このような恥辱、絶対に許さぬぞ! 妾は渾身を込めてあやつを睨みつけた。
「くっ……!♡ このような恥を
「ま、待てっ!♡ 持つな!♡ 妾を持つな!♡♡♡ こ、このような、童話の乙女のように横抱きにするなぞっ……♡♡♡ ど、どこにそんな力が……♡♡♡」
「不敬♡ 不敬じゃぞぉ♡♡♡ あぅっ♡♡♡ こ、この妾をソファになんぞ座らせてどうする気じゃ!♡♡♡ ど、どうせ好き勝手貪るつもりなのじゃろうが、屈するものか♡ 妾は屈さぬぞぅ♡♡♡」
「さぁ、来るが良い、お前様♡♡♡」
「…………んん?」
「これでやっと話ができる? 危ないところじゃった? 発情されて参った参った、じゃと?」
「………………………」
「………………………………………………」
「………………………………………………………………………………………………」
「…………っ♡♡♡」
妾はそれはもうじっと見た。じっとりと睨んだ。穴が空くほどあやつを見つめてやった。
何じゃ何じゃその態度は。まるで妾だけが盛り上がっていたようではないか。ふんっ、お前様♡ がそんな態度ならこちらにも考えがあるぞ。話し合いなんぞしてやるものか。
そう不貞腐れておると、急にあやつは視線を絡めてきた。その目には、底のない欲望の海が荒れ狂っておって……
……ドキッとなんぞしとらんぞ! 胸がキュンキュンするのは錯覚じゃ! 妾はそんな安い女ではないからな! なっ!!!
あやつが「ハーレム認めたら可愛がってやるから」などとほざきおったから、むず痒い恥ずかしさを紛らわすように妾は暴れてやった。何笑っとるんじゃ! お主のせいじゃからな、こんな気持ちになっとるのは!
「まったくお前様♡ というやつは……いっそこのまま連れ去ってしまおうか?」
「どうせあの女や小娘はハーレムなんぞに甘んじるのじゃろう? なれば妾のおこぼれ程度でも満足できるじゃろ」
「うーむ、考えれば考えるほど名案な気がしてきた。じゃが、派手にやるとこやつ逃げるしな……」
「……こっそりやるか。そう、こっそりと……だ、抱きしめるふりでもすれば騙されるじゃろ……」
何やら己の知能指数が著しく低下している気がするが無視する。恋に溺れる女は愚かというが、よもや妾がそうなるはずもないじゃろし?
妾はあやつに抱きつくふりをする。も、勿論疑われぬよう、こ、恋人同士のようにだな……やはり良い体じゃのう。妾の好みにぴったりあっておる。
……もうちょっと……もうちょっとだけ……拐うのはいつでもできるのじゃ、どうせこやつに抗う術はないのじゃし……
そう侮っておったのがいかんかった。思わず見惚れてしまう顔をしておったあやつは、急に妾に手を出してきたのじゃ。
「!!??!?♡♡♡ おっ、お前様っ!?♡♡♡ 何を急にそんなっ、ダメじゃっ!♡ それはダメじゃっ!!!♡♡♡」
「あぅうっ……♡♡♡ そっ、そこは敏感なのじゃぞ……!?♡♡♡ 何のために鱗が生えとると思ってっ……!♡♡♡」
「あっ!?♡ どっ、どうしてお前様♡ はいつもそうやって妾の弱いところばかりを……!♡ 少しは真っ向から挑んで来んかっ……!♡♡♡」
「じゃあお言葉に甘えてって、あっ!?♡ ダメじゃぁ♡♡♡ それはっ♡ それはぁっ!!!♡♡♡」
「~~~~~~~~っっっ!!!♡♡♡♡♡」
……妾はすっかり疲れ切ってしもうた……ああもぅ、どうしてお前様♡ はそんなにも妾の弱点を知り尽くしておるのじゃ……♡
全身の力が抜けて荒い息ばかり繰り返すという目も当てられぬ有様の妾に、あやつは指を肌にゆっくり滑らせながら囁く。
『我慢は気持ちいいぞ、ヴァルガリエ』
その言葉だけで軽く……してしまう妾であったが、とても同意できる内容ではなかった。
我慢じゃと? 何が我慢じゃ。絶対強者、もはやその資格なき妾であろうとも、我が意志を阻めるものなぞ存在せん。
神であろうとも、妾は妾を押し通してきた。唯一ただ一人、お前様♡ を除いてはな。
なればこそ、妾に我慢なぞできぬ。してはならぬ。新たなる妾へと至るため、全身全霊を懸けて妾はお前様♡ に挑まなければならないのじゃ。
妾ははっきりと宣言した。どれほどお前様♡ に翻弄されようとも、この矜持だけは決して手放さぬと。
するとあやつはゾクゾクする笑顔を浮かべて……妾を抱き寄せて、目の前に魔力で生成された映像を流し始めたのじゃ。
そこには、お前様♡ と――あの女が、あの小娘が、分不相応にも振る舞う姿があった。
妾は激怒した。
「なっ……なんじゃこれはっ!!!」
「このような忌々しいものを、よりにもよって妾に見せつけるなぞ! 見損なったぞお前様!!!♡」
「このようなっ、このような……」
「…………こんなことまで、しておるのか……?」
「あ、あの女……涼しい顔をして、陰ではなんと淫乱な……お前様♡ も、それを満足そうに眺めおって……」
「こ、小娘めっ! 妾ですらお前様♡ を自由にしたことなどないというのにっ! そもそもそんな優しく、妾はされたことなぞ……」
「……………………」
「……お、お前様?♡ その、なんじゃ……そろそろ我慢できぬであろう……?」
「元より我慢なぞできぬから、妾を襲い貪ったではないか……妾とて鬼ではない……お前様♡ から再戦を申し出るのであれば、吝かでは……」
「……が、我慢じゃと!?♡ お前様♡ はできなかった癖に、妾には強要するのか!?♡」
「な、なればこの手を放すが良い!♡ 妾が逃れられぬよう首に腕を回して、指先を動かしておきながら……!♡ あっ!?♡ どうして妾の手を縛るのじゃっ!?♡♡♡」
「じ、自分で慰められないようにじゃとっ……!?♡ そ、そのようなことするはずがなかろうが!♡ 侮るのも大概にせよ、お前様!♡♡♡」
「んっ!?♡♡♡ んぅ…………♡♡♡ ……終わり、か……?♡♡♡」
「もっと我慢できれば、もっと気持ち良くしてやるなどと……♡♡♡ あぁ、後生じゃ……堪忍してたもれ……♡♡♡ 妾は
妾の怒りを、あやつは当たり前のようにいなす。そして妾の口から、思ってもいないことを吐き出させる。
悔しい。血が沸騰する。浅ましい。こんなこと、絶対に許せない。
それでもお前様♡ は、我慢しろと何度も何度も妾に言い聞かせた。お前様♡ に縋るのも、自らの手で衝動を抑えるのも……
……そして、お前様♡ のハーレムに加わるのも、我慢しろ、と。
「……いやじゃ……」
「…………嫌じゃ……!」
「お前様を他の女に明け渡すなど、絶対に嫌じゃ!!!」
妾はあやつを押し倒した。そうして、胸の内を曝け出した。
それは、絶対強者であった妾であれば決して行えぬ諸行であった。
そうじゃろう? 強者とは、弱さを持たぬ者。たとえそれを隠していたとしても、それさえも強さに変える者。
ましてその強者が絶対であるのならば。その存在に――妾に弱さなど、許されぬのじゃ。
ああ、けれども。今こうしてあやつに浴びせる言葉は、すべて妾の弱さそのもの。
対等ではない、下等ですらない、塵芥でしかないはずの男の全てを欲する、強欲が聞いて呆れる浅ましき願望。
妾は弱くなった。絶対強者ではいられなくなった。
妾は、妾には……お前様が必要なのじゃ。
他の誰でもなく、どこにも代わりなぞ存在しない。ただ一人だけの、ちっぽけなお前様が。
お前様という、誰よりも大切な愛するお人が――妾を満たしてくれるのじゃから。
「……ずるい男よな、お前様は……」
「…………そんなお前様に惚れてしもうた妾の敗けであるのは、逃れられぬ真実か……」
どこまでも自らを押し通すお前様に、フレッドリーツ・レアライヒに、妾は屈服した。
ああ、それはもう、そう呼ぶしかない。あやつが上で、妾は下。序列は今、決まってしもうたのじゃから。
惚れた弱みと、言うやつなのじゃろうなぁ……よもや妾が、そうなるとは思わなんだが。
――ああ、それでも、構いはすまい。
惚れた男に、身を委ねる。
存外に、それは心地よく。幸せであるのじゃから――
「…………っ!?♡♡♡」
「おっ、お前様っ!?♡♡♡ なっ、何をいきなり……!♡♡♡」
「……し、躾けの再開……?♡ ここで我慢を覚えさせる……?♡」
「あ、後でで良いじゃろう、後でで!♡ ほれ、あの女と小娘も、お前様♡ を待って……!♡」
「あっ……♡ あぁ、あぁあ、ああああぁ……♡♡♡ 卑怯、じゃぞ……♡ お前様……♡♡♡」
「妾が逆らえぬと分かって、そのような……♡」
「あぁ……まったく♡ 本当に仕方ない、
多分許されると思います(R17.9)