ギンガ団のボスになるinガラル   作:サマル

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1話

 ヒバニーは自分の巣、木のうろの中で目を覚ました。

 まとう雰囲気は陰鬱だ。

 明るく無邪気な者の多いヒバニーという種族にあって、それはひどく珍しい存在だった。

 

「八年目、か」

 

 こちらの世界、この体。

 こんなことになってから、毎日、数え続けている。

 今日で2555日目の目覚めである。

 

 がしがしと頭をかく。

 外に出れば、雨の降る前兆か、森は濃い霧に包まれていた。

 こっちに来たときもこんな霧の日だったな。そう思い、ヒバニーは眉をひそめる。霧は嫌いだった。

 ひやりと冷たい空気が赤と白の毛皮をなで、水滴を作る。

 そのことに頓着もせず、ヒバニーはあちこちの木々を揺らして回った。

 

「起きろ。朝だ」

「むにゃむにゃ……もう食べられな……ぐう」

「起きろ」

 

 食べ物の夢を見ているホシガリスを地面にたたき落し目覚めさせる。

 いったーい、という悲鳴と抗議を無視して次へ。

 

「起きろ。朝だ」

「ふふ……君は今日も可愛いね……」

「寝言は寝て言え」

 

 朝っぱらから口説いてきたタネボーに冷ややかな視線を送る。

 今日こそ一緒に遊ぼうよと騒ぐタネボーの声を無視してまた次へ。

 そんなことを繰り返し、寝坊しているポケモンがいないことを確認し、ヒバニーは長のもとへ向かうことにした。

 どこにいるかは分からない。

 長は寝床を毎日変えるからだ。

 まあすぐに見つかるだろう、とヒバニーは内心でつぶやいた。

 

 長の好きそうな寝床は長い付き合いでわかるものである。

 かつて悠久を生きたであろう大木は、枯れてなおほかの植物や動物の住処や食料、隠れ場所として機能する。

 ガルーラはそうした、倒れた老木を背に寝ていた。

 

「……長。全員の起床を確認した」

 

 ガルーラが寝ぼけ目をこすりつつ、片方の目でヒバニーを見る。

 

「ん? おお、ヒバニーか。いつもありがとうな」

「別に。8年間、ずっとやってきたことだ」

 

 ガルーラはすぅ、と目を細めた。

 

「8年……お前さんを助けたあの日から、もう、そんなになるかのう……」

「ポケモンにとっちゃそう長い時間でもない」

「……しかし、お前さんはそうは思ってはおらんようだ」

「そう見えるか。だったらそれは、長の思い過ごしだ」

 

 僕はポケモンじゃないからな。その言葉をヒバニーはのみこんだ。

 

「ふむぅ……」

 

 ガルーラが大きなため息をつく。

 

「儂に相談してはくれぬか」

「これまで何度も話しただろう、それは。誰に言ったって解決する話じゃない」

「話せば楽になるということもあろう」

 

 話せるわけない、とヒバニーは思った。

 ある日目覚めたら、『ポケットモンスター』というゲームの世界に入り込んで、ポケモンの体になっていた。

 訳が分からないんだ。ボクをあの世界に、人間に戻してくれ。

 そうわめくだけで解決できればどれだけ楽なことか。

 

「ガルーラ。あんたには感謝してる。生きる術を知らないボクに戦い方を教えてくれたこと、ここにボクの居場所を作ってくれたこと。ほかにもたくさんあるし、本当に感謝してもしきれないと思ってる」

「ならば……」

 

 ガルーラの言葉をヒバニーは遮った。

 

「だが、それとこれと話は別なんだ」

 

 もしその一線を超えてでも話を聞き出そうというのなら、ヒバニーはもうこの群れからは出ていくつもりだった。

 それが、いまだ自分をポケモンではなく人間として認めているヒバニーにとっての最後のライン。

 自分は人間であって、ポケモンではないのだ。

 冷たく言い、拳を握る。

 ガルーラは悲し気に目を伏せた。

 

「……そうか。それならば、よい。しかし、忘れるな。お前さんはこの群れの一員。いつでも頼ってよいのじゃからな」

「ああ、もちろん。頼りにしてるさ、長」

 

 気まずい空気が流れる。

 ヒバニーが口を開きかけ、しかし沈黙を破ったのは別の声だった。

 切羽詰まったポケモンの悲鳴である。

 そして続くのは騒がしく大地を叩く戦闘音。

 ポケモンが何者かに襲われているのは間違いなかった。

 

「……長。聞こえたか?」

「ああ、かすかにじゃが」

「でもうちの群れのポケモンではない?」

「違うのう」

「……」

 

 黙り込んだヒバニーに、ガルーラはその頭を撫でた。

 

「助けに行かなければならんな」

「……長。無理をするな。それにガキどもの守りがなくなる。ボク一人で行く」

「ふむう……」

「心配するな。勝てない相手だったらすぐ逃げる。戦うのだって慣れてる」

 

 ヒバニーはそう言い残し、自慢の跳躍力をもって声の聞こえる方向へと急行した。

 

 




ヒバニー
分類:うさぎポケモン
性別:♂♀
タイプ:炎
高さ:0.3m
重さ:4.5kg
特性:もうか/リベロ(夢特性)

走り回って体温を上げると炎エネルギーが体を巡り本来の力を発揮できる。

種族値:50-71-40-40-40-69

豆知識 : この小説の主人公の種族。実は30cm定規くらいの大きさしかない。


どうも、初めまして。サマルと申します。
あとがきのポケモン図鑑は怒られたら消します。
(公式のポケモン図鑑およびポケモン徹底攻略様より引用)
タイプや技の名前は原作ではひらがなですが、本作では読みやすさ重視で漢字を用います。
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