ウマ娘良バ場の愛短編集   作:レヴァナロク

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ニブチンモルモットと不器用探求者

「遺伝子について興味が湧いたよ、トレーナー君」

 

開口一番に彼女はそう言い放った。

 

彼女は私が担当するウマ娘、アグネスタキオンだ。初代URAチャンピオンにして、ウマ娘の可能性を追い求める探求者である。

 

タキオンは目的を果たす為に日々色々な研究を行っている。数多のウマ娘に話しかけては実験対象にしようとしたり、例に漏れず実験体としてトレーナーである私にも協力を要請している。

 

もっとも、実験体になって欲しいと頼まれるのはまだマシな方で、勝手に飲食物へ作成した薬品を混入させてくる。というか、大体そうやって服用させてくる。多分彼女はトレーナーの事をモルモットか何かだと思ってるに違いない。たまにモルモット君と呼んでくるあたりそうだと思う。

 

まるでマッドな科学者の様な彼女と実験体扱いの私だが、仲が悪いわけではなくむしろ良い方だと思う。一方的にタキオンが私に懐いている様にも感じられるが。

 

彼女の担当トレーナーになってすぐの頃は、正直大変だった。今では、何故そうしていたのか理解はしているが、トレーニングに顔を出さなかったり、参加希望のレースを教えてくれなかったり、ウマ娘にとってとても重要な栄養管理や休養などの生活習慣が驚く程に雑であったり、他のウマ娘とトラブルを起こしたりと、まあやりたい放題だった。

 

特に、生活習慣が酷かった。ろくに食事を取らないと思ったら、食材やらをミキサーにかけただけのスムージーと呼ぶのが烏滸がましい液体を飲むだけだし、徹夜は当たり前だし。一番信じられなかったのは、身だしなみにとんでもなく無頓着だった事だ。私もそこまで気にしているわけでは無いが、同じ女として見過ごせない。なんせ髪や肌のケア、タキオンはウマ娘なので尻尾の毛などの手入れは全然しない。(それでも十分可愛らしいから腹立つ)

更には研究に没頭して数日間お風呂に入らないなんて事もあった。

 

今では私がその辺にまで口を出して矯正させたので、ある程度改善はされた。

 

しかし、タキオンが食べやすいようなお弁当を作ってあげたら、「食事の楽しみを身に刻まれてしまったねぇ…。これは責任を取ってもらわないと」と言って毎日食事を要求される様になってしまったし、毎日お風呂に入るように説教してる時に気まぐれで一緒にお風呂に入ったら、「トレーナー君に頭や体を洗ってもらうのは随分気持ちが良いなぁ…。これからは毎日洗ってくれないかい?」とお願いされる様になった。

 

最初の頃こそ他人や自分自身を実験材料くらいにしか思っていなかったであろう彼女だが、今では丸くなり他人を思いやる様になってくれた。丸くなりすぎてる気がしないでも無いが。

 

そんな彼女は時たま思いついた様に、研究したい事や興味が湧いた事などを私に話してくれる。以前まではなんの脈絡も無しに試験管に入った薬品を飲ませようとしてきていたので、こう言った話をしてくれるのは信頼の証だと思っている。

 

 

話を戻して、今回は遺伝子に興味があるとタキオンは言った。

 

意外だった。もうとっくに遺伝子について興味を持って研究しているものだと思っていた。

 

「おや、もうとっくに遺伝子について興味を持って研究しているものだと思っていた、とでも言いたそうな顔だね」

 

なんで考えてる事がバレてるのしかも一字一句も間違わずにエスパーですか?

 

「私が今まで研究していたのは肉体改造が主だったものだよ。壊れやすい肉体を投薬や鍛錬によって壊れにくくするのが目的だった。つまりは後天的に故障のしにくい肉体を得る研究をしている訳だ」

 

確かにタキオンはことある事に薬品を飲ませようとしてくる。トレーニングについても怪我をしないのは前提条件、身体への負担を掛けずに可能な限り負荷を与えて高効率な物を求めてきた。

 

だが、それと遺伝子に今まで興味を持たなかった事への繋がりが分からない。

 

「分からない、と言いたげな表情だねトレーナー君。全く、仮にも私のトレーナー兼モル…助手なんだからこれくらい理解してくれたまえよ」

 

 助手というより実験体扱いじゃないの、今もモルモットって言いかけてたし。

 

「そんな事よりもだ。さっき投薬や鍛錬は後天的に壊れにくい体を得る為に行っていると言っただろう?ならば遺伝子はどうだい?投薬や鍛錬でどうにかなるものじゃあないんだよ。遺伝子は生まれ持った物、つまりは先天的なんだ。私が求めているものとは違う」

 

 言いたいことは分かった。じゃあなんで遺伝子に対して今更ながら興味を持ったの?

 

「もっともな疑問だねトレーナー君。もちろん理由はあるよ」

 

そう言いながらタキオンは人差し指を立てる、多分。

 

「今までの研究の成果によって、いつ壊れてもおかしくはなかった私の脚は十分な強度を得て臆することなく全力で駆け抜ける事が出来るようになった。しかしあくまで私の脚は、だ。これから先、他のウマ娘が故障しないとは限らない。私の事を懇意に思ってくれているカフェやスカーレット君、デジタル君なんかが怪我をしようものなら私も悲しいからね。おっと、話が少しだけ逸れてしまった。兎に角、今までの研究の成果を利用して、私以外のウマ娘達も怪我をしにくい肉体を手に入れて欲しいと思っているんだよ。もっとも、レースで勝利を譲るつもりは毛頭ないがね」

 

そう言うタキオンはドヤ顔を披露する。ドヤガオタキオンである。それにしても他のウマ娘も怪我をして欲しくないとは、意外だ。

 

「さて、ここからは可能性の話だよ。先程例に挙げたカフェ達や他のウマ娘であれば後天的に故障しない肉体を手に入れる事になるだろう。ではこれから誕生するウマ娘はどうだい?もちろん頑丈な健康優良児が産まれる可能性はあるが、逆に私の様に繊細すぎる脚を持って産まれるウマ娘だって可能性としては考えられるだろう。後天的に頑丈な肉体を手に入れる事だって出来るが、ウマ娘の可能性を見出すのであればスタートは早い方が良いに決まっている。そこで遺伝子の出番さ!」

 

声を大にして言いながら両腕を横に広げる。タキオン好きだよね、そのポーズ。

 

「ウマ娘が産まれる前、つまり受精卵もしくはその前の状態の遺伝子情報を改竄して故障の原因と成りうる遺伝子の削除、並びに健康優良児として産まれると考えられる可能性を持つ遺伝子の付与を行う。更にそこから優秀なウマ娘の遺伝子情報を与えてウマ娘の可能性の果てを実現する事が出来るウマ娘を生み出す、という寸法さ!」

 

 …それってさ、倫理観的にどうなの?絶対に良くない事だよね。

 

「そう、そこなんだよトレーナー君。確かに私もちょーっとだけ他人に迷惑をかけるような実験を行って来た訳だが、流石にそこまで倫理観は欠如していないよ」

 

えぇ…本当にぃー?

 

「ちょっとー、トレーナー君。何だいその目は、まるで私が倫理観のないマッドサイエンティストだとでも言いたげじゃないか。全く失礼しちゃうなぁ」

 

ぷりぷり怒るタキオン。手が隠れてもなお余りまくる長い白衣の袖を振り回す姿は、見慣れてはいるが…可愛い。

 

「まあ良いよ、この償いは後で支払ってもらうからね」

 

 えっ?何するんですか?

 

「まあまあ、そんなことよりもだ。結局、遺伝子の情報書き換えみたいな事は倫理観的にもまずい。では次の考えだよ。確かに遺伝子情報の書き換えは問題大アリだ。しかし、遺伝子操作なんて行わなくとも優秀な遺伝子を与える方法はあるんだよ。トレーナー君、何か分かるかい?」

 

 えっと…、優秀な人た…。

 

「そう!優秀な人物同士で子を成せばいい!」

 

食い気味で肯定するタキオン。更に矢継ぎ早にまくし立てる。

 

「例外もあるだろうが、父母が優秀な子供は優秀な場合が多い。それは父母の優秀な遺伝子を受け継いでいるからだと考えることが出来る。本人の努力の結果もあるだろうがね。では同じ様に優秀なウマ娘が子を成せば優秀なウマ娘が産まれるのではないかと思う訳さ。身近な例であればキングヘイロー君が良い例だろうね。彼女自身、母親と比べられるのを嫌っているみたいだが、事実彼女は優秀だ。それは母親の遺伝子を受け継いでいるからだと十分に考えられる」

 

タキオンの言いたいことは分かる。だが、それには幾つか確定できない要素がある。

 

「ただ、それでも幾つか問題はある。結局優秀な遺伝子を持つ2人が子を成したとして、その子供が優秀だとは限らない。更にその子供がウマ娘として産まれる可能性は更に低い。なにせ、ウマ娘が産まれてくる理由は科学的に解明出来ていないからね。女性側がウマ娘であったとしても、子がウマ娘として産まれる可能性はまあまあ低い」

 

 そうだね。という事はウマ娘の遺伝子を調べて、何故ウマ娘が産まれてくるのかを解明する。その上で優秀なウマ娘が産まれる可能性を求めるって事?

 

「概ねその見解で間違ってはいないよ。ただもう1つ考えている可能性があるのだよ、トレーナー君」

 

なんとなくだが、タキオンの目付きが真剣味を帯びた気がする。

 

「それはウマ娘同士の子を残す可能性だ」

 

 …え?それって無理なんじゃ…。

 

「ああ、もちろんそうだとも。子を残すには基本は雌雄一対、女性と男性が必要になってくる。ウマ娘は例外なく女性だ。常識的に考えて子は残せない。ならば女性同士で子を残せる様にすれば良いのさ!」

 

 う、うん分かったから落ち着いて?具体的にはどうすれば良いかは考えているの?

 

「ふむ、まだ細かいプランでは無いが考えている事がある。幸いにここに一人、良いモルモット君がいる。であればそれを有効活用するほかないだろう。それに生命を生み出す事を前提とした実験をするんだ、公にする事は難しいからね。私自身も被検体だ」

 

 …えっと、つまり?

 

「そう、私との子を成してくれトレーナー君!」

 

 えっ?

 

「何を驚く事があるんだい?ここまでにこの結論に至った経緯を話しただろう?」

 

 えっ、いや、それは…。

 

「ああ、確かに実験をして子供を作るというのは確かに抵抗があるか。子供は愛の結晶だとも言うしねぇ。だが、安心したまえトレーナー君、私だって好きでも無い相手との子を残そうなんて言わないさ」

 

 えっ、どういう事…?

 

「いやいや、ここまで言ったんだから分かる事だろう」

 

 いや、分かんないよ!

 

「何故分からないかなトレーナー君!私は!君が!好きだと!言っているんだよ!」

 

 えぇっ!?

 

「好きでもない相手との子供なんて欲しい訳ないと言っただろう!?つまりは好きなんだと言ってるの同義だ!」

 

 いやいや、回りくど過ぎて全然分かんないよ!

 

「ここまで察しが悪いとは思わなかったよトレーナー君…」

 

 好きって伝えるのにあれだけ言葉を重ねるタキオンが不器用過ぎるだけだよ…。

 

「ほう…言ってくれるねぇ、モルモット君のくせに…。これはどちらが上かを分からせる必要があるようだね?」

 

 な、何する気!?

 

「ん~?何簡単な事だよ。君を可愛がって上げるのさ、愛を伝えるのにはうってつけだろう?」

 

 それってつまり…!?

 

「おや、察しの悪いモルモット君でも理解したかい?ちょうどこのトレーナー室には隣接した仮眠室がある。早速向かおうじゃないか!」

 

 ストップストップストップ!待ってよタキオン!引っ張らないでー!

 

「ウマ娘に力で勝てるわけがないだろう?観念して大人しくついて来たまえよ」

 

 ダメだってば!タキオン!ちょっとー!

 

「私を怒らせるからこうなるんだよモルモット君?それにさっき仕返ししてあげるとも言っただろう?それも兼ねてるのさ」

 

 そんな事言われたって私はトレーナーでタキオンは指導すべきウマ娘なんだよ!?許されないってば!

 

「愛の前では関係ないね。ふふ…色々吹っ切れてしまったよ、あんなに恥ずかしがっていたのがバ鹿らしいね。…大好きだよ、私の可愛いモルモット君…」

 

 止まってー!タキオン!タキ…!

 

バタン!




スカ「で、アタシが生まれたって訳」
タキ「いやいや、それは現実世界の話であってウマ娘の世界線は関係ないよ。大体このネタだって既に使われまくっているだろう?」
スカ「まあ良いわ。早く私が主役のssも書きなさいよね!」
タキ「絶対原作の私はこんな性格ではないんだろうが作者君の妄想だ、許してあげてくれたまえ」

読了ありがとうございました。

ぶっちゃけ、タキオンが言葉を並べて大好きアピールした後結局そのまま好きだと言葉にする流れと、ダイワスカーレットの「で、アタシが産まれたって訳」がやりたかっただけです。後悔はしていません。

あと遺伝子云々は適当に書き連ねただけなので、「ああ、この作者の世界線の話なんだな」くらいに思ってください(炎上回避の言い訳)

今後書いて欲しい短編の内容を教えてください

  • まだ出ていないウマ娘
  • 既出のウマ娘で後日談
  • 既出のウマ娘で別世界線
  • コメ欄に要望書くから俺(私)の愛バを書け
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