ウマ娘良バ場の愛短編集   作:レヴァナロク

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無敵の帝王は恋に敗れる

「それでね?マックイーンが…」

 

隣で楽しそうに友人との出来事を話すのは、俺が担当しているウマ娘、トウカイテイオーだ。彼女はいままでの功績から皇帝シンボリルドルフをも超えた帝王とまで言われている。しかし、こうして楽しそうに話しているところは普通の女の子だ。ただ、同年代のウマ娘達と比べると若干幼さのある顔立ちではある。

 

「ちょっとー、トレーナー聞いてるー?」

 

 あ、悪い。ちょっとぼーっとしてたわ。で何?マックイーンがまた球場で叫んで、騒ぎになったって話?

 

「違うよー。それはそれで面白い話だけど、今回は違う話」

 

 え?何あの子また同じ事したの?意外と抜けてるよなあのお嬢様…。

 

「だよねー。ま、それはそれとして話の続きなんだけど…」

 

そういって他愛も無い話をしていく。こうしてテイオーと雑談をするのは日課の様なものだ。

 

 ところでさ、思った事があったんだけど良いか?

 

「なーに?トレーナー」

 

 お前、はちみー飲みすぎじゃね?

 

はちみーとはウマ娘が好んで飲む蜂蜜が使われた飲料物である。特にテイオーはこのはちみーが大好物で、しょっちゅう飲んでいる。

 

「え?そんな事ないよー」

 

 …えいっ。

 

「ぴゃあぁ!?」

 

不意を付くようにテイオーのお腹を突っつく。ぷにっとした感触が指先に伝わる。

 

「ちょっとー!?何すんのさトレーナー!」

 

 …テイオー、俺に言う事はないのか?ウエイト的な方面で。

 

「ナ、ナイヨ…?」

 

明後日の方向へ目を逸らすテイオー。

 

 本当か?

 

「ホントーダヨー」

 

 なるほど、体重が(自主規制)kgになった事は黙ってるつもりなんだな?

 

「なんで知ってるのー!?」

 

 そりゃトレーナーだからだよ。そうだな…はちみーを飲むのを抑えないならガッチガチに食事制限かけてやるか。そうすると栄養面が心配だからくそ不味い栄養剤を飲んでもらうことになるな。

 

「わーん、ごめんなさーい!」

 

テイオーに軽く脅しをかけてやったら態度を改めた。

 

 まったく、最初から素直に認めれば良かったんだからな?

 

「はーい…」

 

 はちみーに関しては今飲んでるのを飲み切るのは良い。これからは多くても週に二、三杯までな。それ以上飲みたかったら俺にしっかり言う事。分かったな?

 

「分かったよぅ」

 

 ちょっとしょんぼりとしているが、素直に頷くテイオー。素直なのは良い事だ。

 

「ていうかトレーナー!いきなりお腹突っつくなんて酷いじゃん!ボク女の子だよ?デリカシーがないんじゃない!?」

 

 そいつは悪かったよ。だが、素直に認めなかったのはテイオーだからな?そこは反省しなさい。

 

「はーい」

 

 それにテイオーは確かに女の子だが、正直妹と接してる感覚なんだよなあ。こう、頭撫でてやったりしてやりたい感じ?

 

「…ふーん、そう」

 

テイオーの声のトーンが下がる。テイオーを見ると何故か急に不機嫌になっていた。ほっぺたも膨らませていた。

 

 テイオー、なんで急に機嫌悪くしてるんだよ。

 

「ふんだ!気が付かないトレーナーが悪いんだ!トレーナーの鈍感!トンチンカン!」

 

 ええ…。…理由は分からんけど悪かったよ、テイオー。

 

「なーんで理由分からないかなー?まあ、いいや。悪いって思ってるなら、ボクの言う事聞いてよ!」

 

 無茶苦茶なお願いじゃなきゃ構わないけど…。あっ、はちみー無制限とかは無しな?

 

「そんなお願いしないよ!えっとね…?その…今度のお休みの日、ボクとお出かけして欲しいんだけど…ダメ?」

 

 お出かけ?良いけど…なんでそんなモジモジしながら頼むんだ?

 

「なんでもないよ!次のお休みの日ね!楽しみにしてるからね!じゃあボク、今日はもう寮に帰るね?バイバーイ!」

 

そう言ってテイオーは華麗なステップを刻みながら帰っていった。

 

 …急に不機嫌になったと思ったら上機嫌になって、その前には大人しくなって。一体どうしたってんだ?

 

テイオーの機嫌の上下に困惑しつつ、自身も帰路に着いた。

 

 …あっ、ついでだからあの場所に連れて行こ。テイオー抵抗しなきゃ良いが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ数日後。テイオーとの約束の日となった。俺はテイオーの住んでいる栗東寮に車で向かう。既に寮の前に立っていたテイオーに声をかける。

 

 テイオー、待たせたな。

 

「大丈夫だよトレーナー。ボクも今寮から出てきたとこだから」

 

そういうテイオーの姿は、相変わらず活発そうな私服ではあるが、珍しくスカートを履いていた。いつもはホットパンツやズボンなのだが。

 

 そうか、とりあえず車に乗り込めよ。

 

「それよりトレーナー。ボクになにか言う事あるんじゃない?」

 

 え?んー、いつも通り元気そうだな。

 

「確かに元気だけど違うよ!ほら、もっとボクの事見て!」

 

 えぇ?んー。あっ、髪切った?

 

「切ってないよ!」

 

 違うか。えーと、珍しくスカート履いてるけどどうしたんだ?

 

「たまには良いでしょ?それで?」

 

 それで?…似合ってるぞ?

 

「なんで疑問形なのさぁ!」

 

 いや、答えが合ってるか分かんなかったから。まあ、似合ってるのは事実だぞ?

 

「ふふんっ、当たり前だよね!なんたってテイオー様なんだから!」

 

元から機嫌の良かったテイオーがさらに上機嫌になる。

 

「他にもなにか気が付かない?」

 

 他?まだあんの?えー、んー、…分からん。

 

「もー、トレーナーってば…。じゃあ気が付くまでちゃんと考えててよね」

 

 しゃーない、分かったよ。

 

「よろしい!じゃあ、車に乗るね」

 

そういって車の助手席に乗り込むテイオー。

 

 そうだテイオー。お前の行きたい場所に行く前に連れていきたい場所があるんだけど、良いか?

 

「え?良いけど、何処に行くの?」

 

 んー、まあ着くまでのお楽しみってやつ?

 

「ふーんサプライズって事?」

 

 うーん、ま、そういう事だ。

 

「分かったよ」

 

 良し、決まり。じゃあ出発するぞ。

 

俺はそう言って栗東寮を後にした。

 

 

 

 

 

 

車を走らせて行くと、前方に大きな建物が見えてくる。

 

「ねえトレーナー、もしかして行きたい場所ってあそこ?」

 

その大きな建物を指差すテイオー。

 

 よく分かったな。

 

「行先になりそうな場所ってこの辺りだとあそこくらいじゃん。あれって、マックイーンのお屋敷だよね?」

 

正確にはメジロ家の屋敷だが、目的地はその通りだ。

 

「ねえトレーナー、もしかしてボクとお出かけなのにマックイーンに会おうとしてる?」

 

僅かに頬を膨らませるテイオー。

 

 いや、メインの目的はマックイーンに会うことじゃないよ。まあ、マックイーンに会うことになるのは間違いないと思うが。

 

「どういう事?」

 

首を傾げるテイオーを尻目にメジロ家の正門前で話を通し門を開けてもらう。そのまま進んでいき、屋敷前に止まる。

 

「お待ちしておりましたわ、テイオー。それにトレーナーさん」

 

出迎えに出てきていたのは、メジロ家のお嬢様メジロマックイーンだった。

 

「ねえトレーナー、やっぱりマックイーンに会うことが目的なんじゃないの?」

 

 いや違うって。てっきりじいやさんが出てくると思ってたんだけど、何故マックイーン?

 

「いえ、トレーナーさんからお話は伺っておりましたが、わたくしが案内した方が好都合かと思いまして」

 

 まあそうだな、じゃあ頼む。

 

「分かりましたわ、ではこちらに」

 

マックイーン案内の元、屋敷の中へと入っていく。

 

「トレーナー?本当に何処に行くのさー」

 

 悪いけど、どこに行くかまでは分からん。メジロ家の屋敷の中はさっぱりだ。

 

「えー、なんなのさそれー」

 

「着きましたわよ」

 

マックイーンがそう言って扉の前で止まる。扉をくぐり抜け部屋へ入る。

 

「少々お待ちください、おそらくすぐに来ますわ」

 

「なんだろー?この部屋前にも来た事ある気がする…。それでとっても嫌な思いをした記憶が…」

 

ブツブツと喋るテイオー。少し待つと一人の男性が入ってくる。

 

「主治医です」

 

テイオーが一目散に逃げようとする。それを見逃さず、マックイーンが羽交い締めで拘束する。

 

「ヤダヤダヤダー!思い出したー!」

 

「テイオー、抵抗しないで下さいまし」

 

「うわーん!酷いよトレーナー!ボクを罠に嵌めたんだぁ!」

 

 だってお前まだ年一の予防接種受けてないだろ。それ受けなきゃレースに出られないんだぞ。

 

「ボクは無敵のテイオー様だぞぉ!お注射なんかしなくても病気になんかならないやい!」

 

 そういう問題じゃない。じゃ、主治医さん、よろしくお願いします。

 

「分かりました」

 

俺が頭を下げると主治医さんは了承し、何故か登場時から所持していた注射器を持ってテイオーへ近づく。

 

「だからなんでお注射持ってるのー!?」

 

「それは私がお嬢様の主治医だからです」

 

「ダカラワケワカンナイヨー!?」

 

テイオーが必死に抵抗する。上半身はマックイーンにガッチリ固定させられているので、足をばたつかせて主治医さんを近づけさせないようにしてる。これでは主治医さんは自身の間合いにテイオーを入れられない。

 

 あっ、テイオー、パンツ見えてるぞ。

 

「トレーナーのバカ!変態!すけべ!」

 

テイオーが俺に向けて怒りの言葉を発すると共に足をキュッと閉じる。その隙を見逃さず主治医さんが間合いを詰め、プスッと注射器の針を刺す。

 

「キャーッ!?」

 

テイオーの叫び声がメジロ家の屋敷中に轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

マックイーンや主治医さんにお礼を告げ屋敷を後にし、今は車の中。

 

「ふんだ!もうトレーナーなんか嫌いっ!ボクを騙してお注射刺すし、ボクのパンツ見るし!」

 

 悪かったって。それにパンツは見てないってさっきから言ってるだろ?

 

「どーだか。トレーナー、すーぐ嘘つくもん。信用しないもんね」

 

 だからさっきから何度も謝ってるだろー?許してくれよ、なんでも言う事聞くからさ。

 

「…なんでも?」

 

 俺に出来ないことじゃなければな。

 

「もー、しょうがないなぁ、トレーナーは。そんなに言うなら許してあげよう。ボクは優しいからね」

 

途端に上機嫌になるテイオー。

 

「じゃあさ、今から遊園地に行かない?」

 

 今から?まあ、まだ昼前だから全然OKだけど。また行くのか?こないだも行かなかったっけ?

 

「いいじゃんいいじゃん。楽しいんだから!」

 

 了解、言う事聞くって言ったしな。まずどっかで飯食ってから遊園地行こうか。

 

「うん!」

 

テイオーの言う事は絶対、という訳で遊園地へ行く事になった。

 

 

 

 

 

 

 

軽く昼食も取り終わり、遊園地に入場した。

 

 テイオーが乗りたいのに乗っていいぞ。俺は着いてくから。

 

「最初からそのつもりだよ。それじゃしゅっぱーつ!」

 

 

 

ジェットコースターにて。

 

 なあ、テイオー。いきなりジェットコースターは良くないんじゃないか?もうちょっと緩いのからにしない?

 

「ここまで来て何言ってるのさ?ほら、もうすぐだよ」

 

 テイオー、俺別に絶叫系のマシン得意な訳じゃないんだよ。

 

「知ってるよー。あ、もう落ちるよ」

 

 え?ちょっと待ってまだ心の準備アアアア!?

 

「イェーイ!」

 

 

 

バイキングにて。

 

 なんで二連続絶叫系!?

 

「もちろんボクが好きだから!ゆーこと聞くって言ったのはトレーナーだからね?」

 

 うぐっ、分かってるよ。はあ、人間逆さになるべきじゃないと思うんだ。テイオーもそう思わないか?

 

「普段とは違う景色が見られるの、楽しくない?」

 

 …テイオーが楽しいなら良いや。

 

 

 

コーヒーカップにて。

 

 ああ、ゆったり出来る。

 

「トレーナー、カップ回すねー?」

 

 全力で回すのはやめろよ?

 

「振り?」

 

 違う!

 

「分かってるってばー。普通に楽しもうね」

 

 ああ、そうさせてくれ。

 

 

 

お化け屋敷にて。

 

「ぴゃあ!?」

 

 テイオーこういうの苦手だろ、なんで来たんだ。

 

「た、たまには良いじゃん。そんな気分だったの!」

 

 そうですか…。ならせめてもう少し腕に抱きつく力弱めてくれ、歩きにくい。

 

 

 

色々なアトラクションに乗り、楽しい時間を過ごした。気が付けば、辺りを夕日が照らしている時間帯になっていた。

 

 最後が観覧車ねぇ。夕日がかなり綺麗に見えるな。

 

「うん!こんなに綺麗だとは思わなかったよ」

 

笑顔で綺麗な景色を楽しむテイオー。不覚にもそんな笑顔を見せ、夕日に照らされたテイオーに見とれてしまった。そして、ふと気が付いた。

 

 なあテイオー。もしかして唇になにか付けてる?

 

観覧車の外を見ていたテイオーがこちらを見る。

 

「やーっと気付いたんだね、トレーナー。お化粧はしてないけど、リップは付けてきたんだー」

 

気づいて貰えたのが嬉しいようで耳をピコピコさせながら喜ぶテイオー。

 

 へえ、にしてもなんで?

 

「え?それはね?えーと…」

 

何故か言い淀むテイオー。かと思ったらすっとこちらに寄ってきて顔を近付ける。気が付くとテイオーの顔が目と鼻の先にあった。互いの唇が触れていた。

 

 へ?テ、テイオー?

 

「もう。トレーナーってばホントーに鈍感なんだから!」

 

少しだけ離れて、しかしすぐに触れ合える距離でテイオーが口を開く。

 

「ボクね?トレーナーの事が大好きなんだ。カイチョーとか友達に感じる好きじゃなくて、恋人になりたいって意味の好き」

 

 テイオーが俺の事を好き?

 

「そうだよ。なのにトレーナーったらボクの事妹みたいだーなんて言うんだもん。失礼しちゃうよ、…ちゃんと女の子扱いして欲しかったのにさ」

 

 そうだったのか。

 

「ねえ、トレーナーは?トレーナーは、ボクの事好き?」

 

俺は素直に思った事を言うことにした。

 

 ああ、好きだよ。ただ俺は親愛的な意味で好きだった。だけど、夕日に照らされたテイオーに見とれてた自分もいる。だから多分恋愛的な意味でも好きなんだと思う。…煮え切らない答えでごめんな。

 

「そっか」

 

テイオーはちょっと残念そうに、でも満足そうな顔をした。

 

「じゃあ、トレーナー勝負しよう!」

 

 勝負?

 

「うん!ボクがトレーナーにいーっぱいアピールするから、それでトレーナーがボクに付き合ってって告白したらボクの勝ち!今回はボクの負けだけど、次は絶対に負けないから!」

 

 ああ、分かったよ。

 

「決まり!ボクの事、ちゃんと見ててよねトレーナー!」

 

多分俺はすぐに負けるだろう。

 

テイオーが、ボクは絶対無敵のトウカイテイオー様なのだと、そう誇示する様な輝きを放つ、最高に可愛い笑顔を見せているのだから。




読了ありがとうございます。

しっとりしてないテイオーって案外珍しいのでは?と思っています。最後ちょっと駆け足ですし、今までの作品と違って付き合ってはいませんが、楽しんでいただけたのであれば幸いです。

前話を投稿したあと、日間ランキング総合12位に乗っていました。いや、もうなんの夢かと思いました。これからもこれをモチベに頑張って行きたいと思います。

感想、お気に入り、評価を頂けるとモチベが爆上がりするので是非お願いします。リクエストもお待ちしてます。

今後書いて欲しい短編の内容を教えてください

  • まだ出ていないウマ娘
  • 既出のウマ娘で後日談
  • 既出のウマ娘で別世界線
  • コメ欄に要望書くから俺(私)の愛バを書け
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