「おう、トレーナー!一緒に遊ぼうぜぇ!」
遊ばねぇよ、今からトレーニングの時間だわ。お前もだぞ、準備しろよ。
「ったく融通効かねーヤローだなぁオメーもよー。良いから行くぞー!」
おい待て!?なんだそのずた袋は!?おいまたか!?また俺を拉致る気か!おいゴル…!
俺の担当するウマ娘の一人に麻で出来たずた袋を被せられて連行される。これが俺ことトレーナーとトレセン学園随一の問題児、破天荒の権化ゴールドシップとの日常だ。
これでうちのチームのエース張って、URAファイナルズ優勝してるんだから信じらんねえよなぁ…。
俺んところのチームメンバーも馴れたもので、「トレーナーから練習メニューは貰ってるからその通りやるぞ」「トレーナーさんが後でチェック出来るようカメラの録画準備してー」「怪我しないようにしてねー、少しでも違和感覚えたら私に言ってよー」とこんな感じである。
誰も心配してくれねぇ…。
おいゴルシ!もう観念したから降ろしてくれ!
「嫌だね、せっかくだから何処に行くかはサプライズだ」
ふざけんな!おいコラ!
一応の抵抗はするがウマ娘であるゴルシに力で適うわけもなく、またこれもいつもの事だから諦めて大人しく担がれることにした。
今日は何処に行く気だ…?前は樹海に連れてかれて死と隣り合わせの隠れんぼだったな、まじで死ぬかと思った。その前はカラオケに連れてかれて12時間耐久歌合戦。あとは海に行って釣りだったな、餌は俺の私物。あーバッティングセンターも行ったなあ、ゴルシが「ピッチャー返しだ!」とか言ってピッチングマシンに打ち返して機械壊しやがったからな。しこたま怒られたし、弁償させられたなぁ…俺の金で。
と最近あったゴルシに振り回される記憶を脱力しながら思い出していると、磯臭い匂いが鼻につくのを感じる。
海は最近行ったばっかりだから当分ないと思ってたんだがな…。今度は何をする気だ?
「よう、おっちゃん!前話してた件、アタシとこいつの二人、頼むぜ」
おいゴルシ、他人を巻き込むんじゃねえ!
「安心しろって、ちょっと船貸して貰うだけだからよ」
はあ!?船!?
「おうよ!さあ、このゴルシ様を、大自然の脅威が待ってるぜ!」
そう言うなり多分ゴルシは俺のことを担いだまま船に乗り込んだらしい。船の所有者と思わしき男性の声が聞こえる。「ゴルシちゃん、本当にあそこへ行く気かい?まあ、危険な訳じゃないから別に構いやしないがよ。なんにもねえぜ?」
「何もないのが良いんじゃねえか!ワクワクするな!」
とゴルシが答えると「ハッハッハ!噂通り面白いウマ娘だな。よっしゃ!じゃあ出発するぜ!」と言って船を走らせ始める。
ちょっと待ってくれ!せめて行先を教えろ!
「さあ、出港じゃーい!」
俺の意見はガン無視かー!
どれくらい船に揺られただろうか、船に乗り続けてる間もゴルシは俺の事を担いだままだった。
体感的に船の速度が落ちている様な気がする。そしてそれは合っていたようで、船が止まったようだ。
「おっちゃん、ありがとな!また頼むぜ!」
そうゴルシが礼を告げると「おう、迎えに来るまで楽しめよ!」そう男性が言って段々と船のエンジン音が遠ざかっていく。
なあゴルシ、そろそろ降ろして被せてる袋取ってくれよ。
「そうだったな。ほらよ」
どれ程ぶりだっただろう。視界が晴れやかになる。
なっ…ここは…!?
目の前に広がる光景に驚く。白い砂浜、青い海にあと1、2時間は沈みきらないだろうが十分水平線に近づいた夕日、そして鬱蒼とそびえ立つ木々。まるでここは…。
無人島か…?
「無人島だぞ」
サラッと言うゴルシ。
「いや、でもアタシ達がいるって事は無人じゃねえな。無人島である事を確かめようにも、確かめる奴が島にいる時点で無人島じゃねえ。つまり無人島だと証明する事は不可能な訳だ。フェルマーの最終定理も裸足で逃げ出す難関証明問題だな、こりゃ」
島をくまなく探し回ってた後に人が島から全員居なくなりゃ無人島だし、証明不可能って結論が出てる時点で証明問題として成り立ってねえからフェルマーの最終定理を引き合いに出した所で意味ねえだろ…。ってそうじゃねえ!
なんで無人島なんかに連れてきた!
「そりゃオメー、無人島でサバイバルがしたかったからに決まってんだろ」
はあ!?
「あれ?もしかして知らねえの?あの伝説の番組をよ、アタシ大好きなんだよあの番組。黄金って所もこのゴルシちゃんと共通点があって好きなポイントだな!」
いや知ってるけど、それとこれとは話が違うだろーが!
「細かい事気にすんなよ、禿げるぞ。それに迎えが来なきゃ帰れねーんだから諦めろ」
禿げたら絶対ゴルシのせいだ…。クソ…しょうがねえ…。
「まあ、アタシは海の上走って帰れるけどな!」
嘘つけ!なら俺担いでけ!
「ヤダ」
こうなってしまってはもうゴルシの奇行に付き合うしかない。幸か不幸か、ゴルシの無茶苦茶に3年間以上付き合わされて来たんだ、順応性は誰にも負けない自負がある。いや、不幸だろこれ。
仕方がないのでゴルシと今後について話をするべく、ゴルシの方を向くと目を見開いた。
そこにはトレセン学園指定の制服やジャージを来たゴルシではなく、何故か水着姿のゴルシが居た。しかも真っ白ビキニである。だがこれで終わらないのがゴルシがゴルシたる所以。頭にはいつも付けてるやつに加えてシュノーケル、足には足ヒレ、手には猟銃…猟銃!?一体こいつは何を考えているのか。狩人なのか海人なのかどちらかにしろ。猟銃のせいでどっちのスタイルなのかふわふわになっている。
おいゴルシ、なんだその格好。
「これか?似合うだろー?アタシのないすばでーに見惚れちゃうだろー?」
タチ悪いのが、こんな奇抜な装飾品がなければ白のビキニがめちゃくちゃ似合うし、本当に見惚れるほど超絶美人な事だ。こんな頭がイカれた追加装備がなければ。
しかしそれでもスタイル抜群のゴルシのビキニ姿は精神衛生上良くない為、目を逸らす。
そっちじゃねえよ。お前が付けてるシュノーケルやら猟銃やらの事だ。大体なんで猟銃なんか持ってるんだよ。
「そりゃサバイバルっつったら狩りだろーが。これなら熊でも猪でも、鮫でも鯨でも負ける事はねえ!」
それはサバイバルじゃなくて狩猟だろ…。大体海の中じゃ猟銃なんか使えねえだろうが。
「はあ?別に猟銃なんかなくても首に腕回して捻ってやれば終わりだろ?猟銃なんか使わねえよ」
じゃあなんで猟銃持ってんだよ!
「それはあれだよ、フィーリング的なあれだな。大体こいつモデルガンだしな」
なんなんだよ一体!?
「まあまあ、カッカすんなよな。サバイバルの基本はまず食料だな。つー訳で、ほれ」
ああん?…釣竿?
「とりあえずこれで魚釣ってくれよ。アタシは食えそうなもんとか探してくっからよ。頼んだぜ」
そう言ってゴルシは森の中へと進んで行った。
アイツはなんで水着姿で迷わず森に行くんだよ。普通海だろ水着なんだから…。はあ…ったく、すげー楽しそうな顔しやがってよ。これじゃ楽しめない俺の方が悪いみたいじゃねえか。仕方がねえ、こうなったらゴルシでも度肝抜かれるような大物釣ってやんよ!
そう意気込み釣りを開始してから数時間が経った。太陽はまだギリギリ顔を見せているが、あと少ししたら水平線へと隠れてしまうだろう。釣果は食べる事が出来そうな魚を数匹釣り上げたが、ゴルシが度肝を抜く様な魚は釣れなかった。
釣れないよりはマシだろうが、これじゃあ絶対足りないよな…。まあ、俺は食わないでゴルシに全部食わせるか。
「おーい!トレーナー!ゴルシちゃんのお帰りだー!」
一体どこで見つけてきたのか、背中にカゴを背負ったゴルシが帰ってくる。いや、こいつの事だから作ったのかもしれない。なにせアーク溶接とかする様な奴だ、何をしたって不思議じゃない。
っておい!?お前その切り傷はなんだ!?血が出てるじゃねえか何やってんだ!?
「いやー、草木掻き分けながら進んでたからな!切っちまったぜ。まあ、アタシ頑丈だしへーきへーき。唾付けとけば治るぜ!」
バ鹿かお前!こんな訳分からん場所で怪我して、傷から変な菌が入り込んで病気になったらどうするんだよ!怪我と病気は違うだろーが!冗談じゃあ済まねえぞ!
「そ、そんな怒鳴らなくたって良いだろ?アタシが悪かったからさ。それより長い事なんも食ってないんだからトレーナーだって腹減っただろ?ほら木の実見っけたから食べよ…」
俺の事なんかよりもお前の方がよっぽど大事だわボケ!
「…ッ!」
分かったらこっち来い!
「お、おう…」
ったく、いつ準備したのか知らねえけどお前が持ってきたっぽい荷物の中に救急セットがあって良かったぜ。これからは気を付けろよ。確かにお前は頑丈だけどな、病気はそういうの関係ねーんだから。
「……ん」
おい、どうしたんだよ俯いちまって…。あっ、い、嫌だったか?ついカッとなって怒鳴っちまって、悪かった!
「い、いやそういう訳じゃねえよ?気にしないでくれ。ほら、木の実持ってきたんだよ、これ食おーぜ」
お前が気にすんなっていうなら良いけどよ…。つーか大丈夫なのかこの木の実、食えるのか?
「パラミツっつー果物だな。東南アジアとか南アジアで良く栽培されてる果物だったな」
相変わらず豊富な雑学をお持ちなよーで。つーかじゃあここ何処だよ。
「細けー事は良いじゃねえか、ほら食うぞ」
イマイチ食べ方の分からないパラミツとかいう果物だが、そこはゴルシ。しっかり食べ方まで知っていた。1個の実が相当デカい為、俺はすぐに腹が一杯になった。ウマ娘故に大食のゴルシも幾つか食べたようだが何個も食べるのは流石に飽きるようで、俺が釣った魚を食べるつもりのようだ。手際よく焚き火の準備と魚の下処理を行っている。
「トレーナーが魚釣ってくれてて助かったー。流石にパラミツは飽きた!サンキューベリーマッチ!」
そりゃドーモ。
「…なあトレーナー、一つ聞いて良いか?」
どうした急に真面目な顔して、らしくねえ。
「さっきお前、『俺の事なんかよりもお前の方がよっぽど大事だ』って言っただろ?あれって本気なのか?」
あー…、クソ、勢いに任せて小っ恥ずかしい事口にしちまったなぁ…。…本気も本気、心からの言葉だよ。じゃなきゃあんな怒鳴らねー。
「じゃあ、いつからなんだ?お前がアタシを自分より大事に思ったのは」
さあな、一体いつからそう思う様になったのかは分かんねえ。ただ一つ、これだけは断言出来る。
「なんだよ」
さっきお前の水着姿を見た時、お前は俺に「見惚れるだろ?」って聞いてきたよな?俺はそれよりも前、俺が初めてお前の本気で走る姿を見た時に見惚れてたんだよ。
「!」
噂では真面目に走ることはほとんど無いって言われていたゴールドシップっつーウマ娘が珍しく模擬レースを本気で走ってた。多分本人はただの気まぐれだったんだろうけどな。でも、あの走りを見た時俺は思ったんだ。なんてカッコよく、なんて美しく走るんだ、ってな。その時から俺はお前に魅了されてたんだよ。
「…そっか」
追加でかなりの問題児で振り回した相手は数知れずっていう噂もあった。まさか人にずた袋被せて誘拐紛いの事をする程だとは思わなかった。いや、最早普通に誘拐か。
「じゃあ幻滅したんじゃねえか?アタシが言うのもなんだけど、かなりの問題児だろアタシ」
…軽い小話だ。人を楽しませようとちょっかい出しても、相手にされねえウマ娘が居たんだ。なんで人を楽しませようとしてたかは知らねえけど、そいつはいっつも悲しさとつまらなさ半々の表情してたんだ。ある時そいつは俺にイタズラを仕掛けてきた。まあ俺も人間出来てねえ男だからな、マジになって相手をしたんだ。したらそいつはちょっと驚きながらもめちゃくちゃ楽しそうに俺の事をおちょくりだした。そんな奴相手だったのに俺は不覚にもその楽しそうな笑顔に惚れちまった。
「…!」
だからそんな落ち込んだ顔しないでくれ。人をおちょくってもどこか憎めない、そんな笑顔をするお前が好きなんだよ、ゴールドシップ。
「~~ッ!」
…って、俺は何とんでもねえ事暴露してんだ!?忘れてくれ頼む!
「…なあトレーナー、顔上げてアタシの方向いてくれ」
…えっ?ああ良いけど、一体どうし…んむっ………んんっ!?
「………ぷは。…ひひ、トレーナーの唇、奪っちまったぁ」
ななななな何やってんのお前ぇっ!?
「トレーナーがアタシに惚れたって言ったからな~。こりゃもうチューするしかねーだろ」
いや、お前、いや、まず順序ってもんがあんだろお前!
「知るかよ!両想いなら関係ねーよ!それもういっちょ!」
ちょっと待っ…んむっ~!?
「………ぷはぁ!このゴルシ様をここまで溺れさせたんだ。きっちり償って貰うまで離さねえからな!」
ちょっと待て抱きしめすぎだ!最早抱擁じゃなくて鯖折りになってるいでででっ!?
「ちなみに期間はアタシの残りの寿命分だ、覚悟しろよ!」
そう言ったゴールドシップの顔は今までで一番綺麗で楽しそうな笑顔だったと遠ざかっていく意識の中で俺は思った。
マック「そしてわたくしの曾孫が生まれたって訳ですわ」
ゴルシ「なんでここでマックイーンが出てくんの?あと前回と同じ流れじゃねえか」
マック「所謂天丼というやつですわ。まあ、作者さんはゴールドシップのssを書く時点でこういう後書きを作る気満々だったそうですわ」
ゴルシ「あっそう。それよりもツッコまないといけない箇所他にあるよな?展開早すぎだし、アタシのキャラ崩壊酷いし。これじゃゴルシちゃんファンがキレ散らかすぞ」
マック「書き終わって読み返したら酷い有様だと思ったそうですわ。まあ、元より書きたい事を勢いで書いてるだけだから良いそうですわ」
ゴルシ「これじゃマックちゃんのssとか書き始めたらキャラ崩壊待ったナシだな」
マック「ですわね…」
読了ありがとうございます。
反省も後悔もしていない(ドンッ!)
あ、待ってください囲んでフルボッコにしないでください…。
今後書いて欲しい短編の内容を教えてください
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まだ出ていないウマ娘
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既出のウマ娘で後日談
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既出のウマ娘で別世界線
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コメ欄に要望書くから俺(私)の愛バを書け