「トレーナーさん!私とバクシンして下さい!」
唐突にそう言う、僕が担当するウマ娘であるサクラバクシンオー。
えーと…バクシン?
「はい!バクシンです!バクシンしましょう!」
自分の担当ウマ娘に対してこんな評価をするのは少し申し訳ないが、バクシンオーは正直ちょっと、いや少し、…かなりのアホの子だ。本人はとても真面目でたいへん良い子なのだが、基本的に真っ直ぐ突っ走って空回りしてばかりなので周囲は苦笑いする事が多い。こういう時はこちらからリードしてあげて答えを引き出してあげる事にしている。
バクシンオー?バクシンするって、具体的にどうするの?
「分かりました!学級委員長であり優等生である私が!しっかり分かりやすく説明しましょう!」
うん、お願いね?
「以前、クリスマスの日に私とトレーナーさんがお出かけしたのを覚えていますでしょうか?」
覚えてるよ、確かバクシンオーが模範的なクリスマスを過ごすって言っていたやつだよね。
「ええ、まさしくそれです!その時トレーナーさんはデートプランの様だとおっしゃいました!」
確かに言った覚えがある。しかし、年頃の女の子にそんな事を言うものじゃなかったと若干後悔している。いくら慕ってくれているとはいえ担当トレーナーとなんか実質デートなんかしたくないだろうし。
「その時から何故か胸がモヤモヤするのです。でも嫌な感じではありません。ですからこの胸のモヤモヤを感じるようになった時と同じ事をすれば理由が分かるのでは!?と優等生の私は思いついたのです!」
つまりそれって、僕とまたお出かけしたいって事?
「その通りです!前回は模範的なクリスマスの過ごし方を実践する事を目的としていたので存分に楽しめませんでしたから、そのリベンジもします!」
正直そんなの関係無しに全力で楽しんでた様な気もするけど…。まあ、バクシンオーのお願いだから聞いてあげないとね。
うん分かった、良いよ。
「ありがとうございますトレーナーさん!では、日付や行先などはトレーナーさんが決めて下さい」
え?僕が決めるの?
「はい!お願いします!」
分かった、良いよ。とりあえず行く日は次のお休みの日にしよう。行先は決めておくからね。
「よろしくお願いします!」
そう言ってバクシンオーは勢いよくトレーナー室から飛び出して行った。少し離れた所から、
「バックシーン!」
という声と、「おい貴様!廊下で走るなと何度言ったら分かるんだ!」という生徒会副会長のエアグルーヴの怒号が聞こえる。
最近はちゃんと反省して廊下を走ることも少なくなってきたのに珍しいな。きっと一緒にお出かけするのも久しぶりだから嬉しいのかな?そうだとこっちも信頼されてるって実感出来て嬉しいな。
そんな事を考えながらバクシンオーとのお出かけプランを考え始めた。
お出かけ当日。クリスマスの時は11時集合にしていたはずなのが互いに10時に集合してしまった。その反省を踏まえて12時に集合を約束しておけば11時に集合出来るだろう。
「あ、トレーナーさん!こんにちは!」
集合場所に既にバクシンオーが立っていた。そして元気よく挨拶をしてくれるバクシンオー。余程楽しみにしていたのか、尻尾を揺らし耳をピコピコさせソワソワしている。
こんにちはバクシンオー。昨日のトレーニングでの疲れはちゃんと取れた?
「はい!実は昨日、ふと思いついた事があり実践したのです。ベッドの上で横になりながら教科書を読めば勉強をしながら疲れを癒す事が出来るのではと!教科書は勉強にもお休みにも使えます。そこに寝具であるベッドを組み合わせればより休まるはず!実際、いつも以上に休む事が出来ました!」
元々教科書を読んでいたら居眠りするくらいだし、多分ベッドの上で読んだせいでいつもより早く就寝しただけなんだろうなあ…。というかこの先これをずっと続けたら今以上に成績下がりそうだし、止めさせないと…。
そ、そっか。それは良かったね。でも、ベッドの上で勉強は行儀が悪いし止めようね?委員長が率先して行儀の悪い事をやるのはダメだよ。
「むむっ!確かにその通りです!やはり勉強は机に向かって行うのが一番!」
うん、説得出来た。
じゃあ、行こうか。
「はい!いざ、バクシーン!」
ストップストップ!走らない!
「はっ!?失礼しました!トレーナーさんとのお出かけという事でバクシン力を抑えられませんでした」
バクシン力…?
「では行きましょう!…して、どちらに?」
首を傾げるバクシンオー。お出かけのプランを考えたのは僕なので、もちろんバクシンオーは知るはずもなく。
ちゃんと僕に着いてきてね?走っちゃダメだよ?
「分かりました!」
こうして僕とバクシンオーは出発した。
ところで、バクシンオー。集合時間よりもだいぶ早かったけど何時から居たの?
「以前のクリスマスではトレーナーさんが先にいらしたので、待たせる訳にはと思い10時からお待ちしておりました!」
それじゃ11時に集合する為に12時集合にした意味がないなあと思う。しかしバクシンオーの優しさにほっこりした。
そして最初に訪れたのは全国チェーンのファミレスだ。
まずはご飯食べようか。まだ12時前だけど十分丁度いい時間でしょ。
「はい、私もお腹が空きました。そういえばクリスマスの時はイタリアンのお店をに行きましたが、ファミリーレストランを選んだのは何故でしょうか?」
不満だった?
「いえ、不満なんてありません。ですが、クリスマスの時と同じような事ではないような気がしまして…」
ほら、バクシンオーはウマ娘だからいっぱい食べるでしょ?普段はご飯の後「お腹いっぱいになりました!」とか「沢山食べて満足しました!」って言うよね?でもクリスマスの時は美味しかったとしか言わなかったから量が足りなかったのかなって。だからファミレスを選んだんだよ、いっぱい食べて笑顔で満足したって言って欲しかったからね。それにファミレスもご飯美味しいしね。
「なるほど、私の事を考えて選んでくれたんですね!流石トレーナーさん!」
僕達はファミレスに入り、満足するまで沢山食べた。ちょっとバクシンオーが食べ過ぎてたけど。
「ふぅ~、お腹いっぱいです!ちょっと苦しい位です」
沢山食べて欲しいとは言ったけど、苦しくなるまで食べる必要は無いからね?
「ええ、分かっています!ちょっとバクシン力が強くなってしまっただけですので!」
だからバクシン力って何…?
「トレーナーさん!次は何処に行くのでしょう?」
そうだなあ…ご飯食べたばっかりだしゆっくりする意味で映画にでも行こうか。
「分かりました!」
さほど遠くない場所にある映画館に着く。
じゃあバクシンオー、何かみたい映画とかある?決めていいよ。
「なるほど…、トレーナーさんも私も楽しめる映画を選ぶ…。これは責任重大ですね…!」
いや、そんなに重く考えなくていいよ。直感とかでも良いんだよ?
「分かりました!ではこれにしましょう!」
そう言ってバクシンオーが指差したのは今話題の恋愛映画だった。
恋愛映画?バクシンオーがそういうのに興味があるなんて意外だ。
「あ、いえ。トレーナーさんが直感でも良いと仰ったので、一番最初に目を向けたものにしました!」
あ、ホントに直感なんだね…。
話題になるだけあって凄く良い話だったね。
「はい!細かい事は分かりませんでしたが、とてもドキドキしました」
話題の恋愛映画なだけあってとても見入ってしまう作品だった。感動する場面も多々あり涙を流しそうになった。恋愛関連に疎いであろうバクシンオーもドキドキしたらしいし、中々良いチョイスだったのではないだろうか。選んだのはバクシンオーだが。
じゃあ、後はショッピングでも楽しもうか。クリスマスの時に行った雑貨屋とは別の所とか、ウマ娘用のレース用品とか、買うかは別にしても見るだけでも意外と楽しめるしね。
「はい!」
そんなわけでウィンドウショッピングを楽しむことにした。雑貨屋にて、
「むっ!この手帳、良いですね!」
と(自称)優等生らしく手帳やら文具やらを見て回ったり。
「ぐぬぬ…。力を込めても壊れにくいシューズを選ぶべきか、長く走っても疲れにくいシューズを選ぶべきか…」
自身の適正的にウマ娘の瞬間的な爆発力に耐えうる短距離用のシューズにするべきか、目標の長距離走破に向けて長時間長距離走っても疲れにくい軽量型のシューズにしようか悩んだり。
「おお!これなら簡単に無くしたりしないでしょう!」
お守りとして持っていた香車のコマを無くした様で、代わりになりそうなキーホルダーになっている香車のコマを見つけたり。
「トレーナーさんトレーナーさん!クレープ食べましょう!」
二人でクレープを食べたりと、とても楽しい時間を過ごし、気づけば陽がすっかり傾き周りを赤く染めあげていた。
「いやーとても楽しかったです!充実した休日を過ごせました!」
うん、そうだね。僕も楽しかったよ。…バクシンオー、ちょっと良いかな?
「おや?トレーナーさんどうしました?」
はい、これ。いつも頑張ってるバクシンオーにプレゼントだよ。
「なんと!ありがとうございますトレーナーさん!早速開けてもよろしいでしょうか?」
うん、良いよ。
彼女は僕が渡した紙袋を開封する。中に入っていたのは桜の意匠が施されたカチューシャ。サクラの名を持った彼女にはピッタリだろう。
「とても素敵なカチューシャです…。ありがとうございますトレーナーさん!大切に使わせて頂きますね!」
バクシンオーが大事そうに抱える。喜んで貰えて良かった。
「トレーナーさん。少しお話しても良いですか?」
良いけど、急に改まってどうしたの?
「ありがとうございます。いえ、ひとつ思った事がありまして…」
そういうと彼女はポツリポツリと話し始めた。普段から元気に喋る彼女とは思えないほどゆっくりと静かに。
「私が感じたこのモヤモヤの正体ですが、何か分かった様な気がします。私はトレーナーさんが好きです。もちろん友人や家族に向けるような好きという感情です。ですがそうじゃない、好きという感情がある事に気が付きました。お昼に見た映画がありました。それがヒントになり分かったんじゃないかと。あの映画では恋人同士がお互いの事を好きだと言っていました。それは一緒に居てドキドキするものであり、安心するものであると。好きな人が喜んでくれる様に頑張りたいと。いつまでも一緒にその人と居たい、一緒に過ごしたいと。それはまさしく私がトレーナーさんに感じてるものと一緒なのです」
一拍置いてさらに続ける。
「私はトレーナーさんが好きです。家族や友人に向けるものではなく、恋人同士になりたいと、そういう意味の好きです!」
バクシンオーが告げる。
そうか、バクシンオーが僕の事を好き…。ああ、そういう事だったのか。
ありがとうバクシンオー。君に言われて僕も気づいたよ。今、君が言ったずっと一緒に居たい、一緒に居るとドキドキするけど安心する、君のために頑張りたい、僕も同じ感情を抱いていた。僕も、君の事が好きだ、バクシンオー。
僕も告白する。バクシンオーは今までに無いほどに静かにそして素敵な笑顔になり、同時に一筋の涙を流した。
「え?何故涙が流れるのですか…?悲しくなんてないのに…」
それはきっと嬉しいから流れた涙だよ。
「ちょわ!?と、トレーナーさん、わ、私にハグを…!」
嫌だったかな?
「いえ、嫌じゃありません!突然でしたのでびっくりしました!」
良かった。…バクシンオー、僕の恋人になってくれないか?
「……私で良ければ是非!えー、ふつつか者?ですがよろしくお願いします!」
元気良く返事をする彼女。いつも元気で、愛おしく愛らしく、サクラの様に華やかな笑顔の彼女。そんな彼女の額に口付けをする。
「ちょわー!?はっ!?え!?ちょわー!?」
顔を真っ赤にしながらパニックになるバクシンオー。だが、その顔はずっと笑顔で幸せそのものを表す様だった。
読了ありがとうございます。
バクシンオーは可愛い。何故なら愛せるアホの子だからです。報告は以上です。エッヘン!
話は変わりまして、総UA数が1万を超え、お気に入りも90近くに登り、感想も沢山頂いて、評価までいくつか頂きました。本当にありがとうございます。
これからも心の清涼剤、愛が重くない良バ場展開のssを作れればと思います。(作品のレベルの高さもあるでしょうが、重バ場展開のssの方が伸びが良いのでそっちも書いてみようかなと思ったのは内緒)
しかし、だからこそ色々リクエスト頂いてますが、中々リクエストにお答え出来ないのが心苦しいです。数千文字近く書いて納得出来ずにボツにした話もあったりします。ですので、リクエストに答えられる納得出来る作品を作れるよう応援お願い致します。
最後に、感想&要望、評価やお気に入り登録、アンケートなどなどよろしくお願いします。励みになります。
今後書いて欲しい短編の内容を教えてください
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まだ出ていないウマ娘
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既出のウマ娘で後日談
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既出のウマ娘で別世界線
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コメ欄に要望書くから俺(私)の愛バを書け