ウマ娘良バ場の愛短編集   作:レヴァナロク

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ほんのちょっとだけ、アプリウマ娘のイベントストーリーのネタバレ(?)を含みます。ほんとに些細なものですが、気にしてしまう方は先にイベントストーリーを見ることをおすすめします。


漆黒のドレスは純白の祝福へと変わる

極限まで削ぎ落とした躯に鬼が宿る。

 

誰が噂したか定かではないが、彼女がレース中に見せる気迫は正に鬼。

 

その恐ろしいまでの気迫は、目に蒼き炎を燃やし、黒いオーラを纏っていると錯覚させる。

 

漆黒のステイヤー。彼女はそう呼ばれた。

 

ミホノブルボンの無敗のクラシック三冠、メジロマックイーンの天皇賞・春三連覇を阻み、勝利を飾った事から黒い刺客とも呼ばれた。

 

故に、一時は悪役(ヒール)と言われ、彼女はレースに出走する事を拒絶した。

 

しかし今は良きライバルであり良き友人であるミホノブルボンやメジロマックイーンの熱い激励により立ち直り、再びレースへと出走する勇気を得た。

 

彼女は強くなった、身体も、心も。

 

彼女は悪役(ヒール)から英雄(ヒーロー)へと変わった。

 

そんな彼女のトレーナーになる事が出来て、私は嬉しく、とても誇らしい。

 

そのウマ娘の名はライスシャワー。

 

沢山の人に勇気を与え、祝福を授けた彼女は今…。

 

 

「ねえねえライスちゃん!人参パン半分こにして一緒に食べよー!」

 

「え?でもその人参パン、ウララちゃんのだよね?半分こして食べたらウララちゃんが食べる分減っちゃうよ?」

 

「ライスちゃんと一緒に食べた方が美味しく食べられるから良いの!はい、どーぞ!」

 

「そう…かな?えへへ、ありがとうウララちゃん」

 

あ~、ウラライス尊い…。

 

私の隣で友人のウマ娘が半分こにした人参パンを仲良く美味しそうに頬張っていた。

 

一人は私の担当ウマ娘、そして私の最推し天使ウマ娘ライスシャワー。もう一人は最初の頃はレースに出走しても勝つ事が無かったが、目まぐるしい努力と担当トレーナーの献身の末ダート覇者にまで上り詰めたウマ娘。更には負け続けていた頃から、どんなにレース結果が悪かろうと笑顔で客席に手を振って、楽しそうに走る天使ハルウララ。

 

そんな二人の天使が私の隣で仲良く美味しそうに人参パンを食べている。あ~尊死する~。

 

「あれ?どうしたのライスちゃんのトレーナー。もしかしてトレーナーも人参パン食べたかった?」

 

「そうなの?だったらライスの分、少しお姉さまに分けてあげるよ?」

 

仲睦まじい二人を眺めていただけだったのだが、二人は人参パンを欲しがっていると誤解させてしまったようだ。二人の優しさに浄化される…。

 

 ううん、違うの!すごい二人が仲良く人参パンを食べてたから、微笑ましいなあって見てただけ。人参パンは二人で食べて?なんなら私がもう何個か人参パン買ってこようか?

 

「ホント!?うー、でも人参パン、多分売り切れちゃってるよ?すっごく美味しいからすぐ売り切れちゃうんだよ」

 

「うん。それにお姉さまに買ってもらうなんてそんな図々しい事出来ないよ。だから気持ちだけで十分…だよ?」

 

 図々しいだなんて、そんな事ないよ。担当ウマ娘が喜んでくれる事をするのはトレーナーとして当然なんだから。もちろん、担当外のウマ娘でもね?特にライスは我儘なんてほとんど言わないから、もっと私に我儘言っても良いんだよ?

 

「ホント…?じゃあお姉さまに頭、撫でて欲しいな…」

 

「あー!わたしも!」

 

それくらいお易い御用、と二人の頭を撫でてあげる。

 

「わ〜、なでなで気持ちい~」

 

「気持ちいい…わふぅ…えへへ」

 

あぁ~、癒されるぅ~。

 

三者三様、各々が考える事が違くともめいっぱい癒されるのだった。時間を忘れていたせいで、予定していたトレーニング時間を過ぎてしまう所だったが。

 

 

 

 

 

 

 

いつも通り、トレーニングを終えてライスにクールダウンするように指示を出す。クールダウンを終えてから軽く雑談をする。

 

「ありがとう、ございました…!」

 

 はい、おつかれ様。毎回毎回律儀だよね、お礼なんか要らないのに。

 

「自分にとって嬉しい事をされたら、お礼はちゃんと言わないと…。ありがとうって言葉は、有ることが難しいからそれに感謝するって事なんだよね?ライスにとってはお姉さまがトレーナーになってくれた事が有難いって思える事だから…」

 

 そう言って貰えると、ライスの担当になれたことが私にとっては有難い事だよ。だからこっちこそ、ありがとう。…って、何度も同じやり取りしてるね?お礼を言う事は良い事だから全く問題ないけど。

 

「えへへ、そうだね。ありがとうお姉さま…!」

 

可愛い。

 

 そういえば、今トレセン学園内で…いや日本全国で話題になってる事って知ってた?

 

「えっと…。確か、凄いデザイナーさんのビューティー安心沢さんが日本に来てるってお話?」

 

 そうそれ!あのビューティー安心沢が日本に活動拠点を移して、さらにビューティードリームカップを開催するって話。それに参加する為のモデルオーディションで残れば、勝負服をデザインして貰える!しかもウェディングドレスモチーフ!ウマ娘の子達的には燃えるよねえ。

 

「うん、すごいよね」

 

 ライスは応募しないの?

 

「ふぇ?ライスは…応募しないかな…。だってライスなんかじゃ、そんなにすごい勝負服をちゃんと着こなせないと思うし…。それに、そのモデルオーディションでだって残れないだろうし…」

 

 そんな事ないと思うけどなあ。ウェディングドレスモチーフの勝負服を着たライスか…。普段は黒や紺色、紫主体のドレスに青いバラをアクセントに加えた勝負服でしょ?ほぼ真逆の白基調のドレスにアクセントは同じ青いバラを付けるとして…、いやいや絶対似合うよ!

 

「そう…かな?」

 

 絶対似合う!ほらほらー、応募しよ?応募するだけならタダなんだし、しないのは損だよ。

 

「…うん、分かった。ライス、応募するね?」

 

かくして、ライスはビューティードリームカップのモデルオーディションへ応募したのだった。

 

 

 

 

 

 

ビューティードリームカップのモデルオーディション、書類選考の結果が通知された。その結果を受けた、ライスは…。

 

「書類選考…落ちちゃった…」

 

落選したのだった。

 

 レース成績なら負けるはずはないけど、ビューティー安心沢がビビっと来たウマ娘、だからねえ。それでもうちの可愛くて天使のライスのどこがダメだったんだか…。

 

私はちょっと怒り気味だった。

 

「お、お姉さま…恥ずかしいよ…」

 

可愛いとか天使とか言われたライスは顔を赤く染めて、控えめな抗議をする。可愛い。

 

 ライス、ちなみに書類選考の結果ってメールだったよね?合否以外になにか書いてたりしてた?

 

「え?えっと…見せた方が早いかな?ちょっと待ってね?……はい、これだよお姉さま」

 

ライスが見せてくれたメールの文面。内容は至って普通の合否結果だった。文体がビューティー安心沢の口調そのままなくらいで特筆する事は無かった。しかし、最後の文に合否とは関係のないような文章が追記されていた。

 

『貴女にはアタシの作った勝負服より、ビューティーになれる衣装があるわよっ☆』

 

 どういうこと?

 

「ライスにも分からないや…」

 

 ……あ!私分かったかもしれない。

 

「ホント?お姉さま?」

 

 うん。そしたら、次のお休み一緒にお出かけしない?

 

「お出かけ?どうしてかは分からないけど…、うん、良いよ。ライス、楽しみにしてるね」

 

二つ返事で了承してくれるライス。トレーニングも終えていたのでそのまま解散し、私はこっそりある所に連絡を入れた。

 

 

 

 

 

 

 

お出かけ当日。ライスを連れてとあるお店へと向かう。その店は、外からも見えるように純白のドレスが美しく飾られていた。

 

「これ…ウェディングドレス?」

 

 そう、俗に言うブライダルショップね。ビューティー安心沢デザインの勝負服ではないけど、雰囲気だけでも味わえるんじゃないかなって思って。多分ビューティーになれる衣装ってこれの事だと思うよ。どういう意図かまでは分からないけど…。それになんだかんだ勝負服着たかったでしょ?私にはこれくらいしか出来ないからね。

 

「お姉さま…ありがとう…!」

 

訪れた店へと入る。

 

 すみません、本日お願いのお電話させて頂きました、ライスシャワーとそのトレーナーです。

 

「きゃー!いらっしゃいませ!お待ちしておりました!ライスシャワーさんですね!?私ライスシャワーさんの大ファンなんです!握手して頂けませんか!?」

 

「ふぇ!?」

 

入店直後、いきなり大興奮の店員さん。ライスは戸惑いながらも握手にしっかり応じる。

 

「はっ!?すみません…ライスシャワーさんがうちにいらっしゃると聞いてからワクワクしちゃって…。トレーナーさんからお話は伺っていますので、ライスシャワーさんはこちらにお願いします。トレーナーさんはこちらでお待ちください」

 

 分かりました。ライス、待ってるね?

 

「うん」

 

そういってお店の奥へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

待つこと数十分。ウェディングドレスの着付けって意外と時間が掛かるんだなーと思いながら、持ち込んだノートパソコンで簡単な仕事を片付けながらさらに待つ。

 

「お、おまたせ、お姉さま…」

 

コツコツと足音が響き、聞き慣れた声と呼ばれ方に気が付き顔を上げる。

 

 お、ライス。戻ってきたんだね。さて、どれど…れ……。

 

言葉を失った。普段は黒いドレスの勝負服を身につけていて、それも良く似合っているが格が違った。無駄な装飾のないシンプルなウェディングドレス。腰回りからあまり横に広がらず、ストンと落ちるようなラインを作り出すスカート部分。肩を出す、いわゆるオフショルダーと呼ばれる形の上半身部分。この二つの特徴が普段から物静かでおとなしい彼女に合った儚げな美しさを与える。さらに胸元には彼女の勝負服にも起用されている青いバラ。そしてもう一つ、普段は小さな帽子をつけている場所にその姿は無く、代わりにベールを纏いそちらにも青いバラが。最後に、勝負服のライスが所持している短剣。それと瓜二つの装備品。違うのは柄の部分とケース部分は白く塗装されている点。

 

まるでライスの為に作られたウェディングドレス。それを見た私は。

 

 …すぅ、…ふぅ、…生きててよかった…!

 

感極まって、最初の言葉がこれだった。

 

「お姉さま…どうかな…?」

 

 超似合ってる!もう最高に可愛い!綺麗!

 

「えへへ…恥ずかしいけど、嬉しいな」

 

ドレスを着たライスを褒めちぎっていると、ふと思った。あまりにもライスの勝負服に寄せていると。

 

 あのー店員さん?今、ライスの着てるドレスって…。

 

「はい!お気付きだとは思いますが、ライスシャワーさんの勝負服を参考に作らせて頂きました!」

 

 つまり?

 

「特注品です!」

 

 え!?聞いてない!流石に特注品は頼んでませんよ!?それに、お金だって払えるかどうか…。

 

「ご安心ください。ウチのスタッフの有志達で作成費を出して作成したので。商品というよりはプレゼントですね」

 

 いやそういう問題じゃないですし、流石に悪いですよ。

 

「ライスシャワーさんがウチに来ると聞いてから速攻で募集かけて作ったので、受け取って貰えないとこちらが困っちゃいます。それに、有志って言いましたけどウチのスタッフほぼ全員ですから、一人あたりの出資額は大した金額じゃないんで大丈夫です」

 

ふと、ライスの方を見る。プレゼントだと知ったら恐縮して遠慮するかと思ったが、キラキラした笑顔を作ってドレスやそれを着た自分を見ていた。

 

ライスが幸せそうだから良いか、可愛いし。

 

そう思い、皆さんの好意を素直に受け止める事にした。もちろん貰いっぱなしは悪いので後日菓子折りでも持ってくるつもりだが。

 

「お、お姉さま!」

 

店員さんにお礼を言い続けていたら、唐突にライスが私を呼ぶ。

 

 どうしたの?

 

「あのね?お願いがあるんだけど…良い?」

 

 ライスのお願いならなんだって聞くよ。

 

そういうとガシッと両肩を掴まれる、店員さんに。

 

「店員さんにね、先にお願いの事話してるから付いていって欲しいの。…店員さん、よろしくお願いします!」

 

「もちろん、ライスシャワーさんの頼みですから!ささ、トレーナーさん、こちらに…」

 

 え?ちょちょ!引きずらないで!

 

私は引っ張られて、先程ライスが向かっていった部屋に連れていかれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

再び数十分が経過した。私は何故か白のタキシードを着させられていた。しかもバッチリメイクまでされて、髪まで丁寧に整えられていた。軽く困惑しながらまたもや引っ張られて、ライスのいる場所に戻る。

 

「ふわぁ…、お姉様綺麗…!」

 

ライスがキラキラした目で見てくる。突然だったとはいえ褒められる事は嬉しいので素直に受け取る。

 

 ありがとうライス。ところでどうして私にこの格好を?これって新郎の格好だよね?

 

「うん、えっとね?結婚って一番大切な人とするものでしょ?お姉さまがライスのトレーナーになってくれたのがすごく嬉しくて…。いつもライスの為に頑張ってくれるから、ライスもお姉さまの期待に応えられるように頑張らなきゃって思えるの。それって大切な人って思えるからだと思うんだ。だからお姉さまはライスにとって大切な人なんだよ?」

 

もはやプロポーズに近いライスの思い。私も自分の気持ちを話さないと。

 

 私もライスは大切な人だよ。一生懸命頑張る姿に心打たれて、私はライスに尽くしたいって思ったんだよ。だからね、ライス。私はライスの事が大好きだよ。

 

「お姉さま…!ライスも…、ライスも、お姉さまの事が大好きだよ!」

 

そう言って、トテトテと近づいてくるライス。抱きつこうとしているのか腕を伸ばしてくる。と、思っていたら首に腕を回されグイッと引っ張られる。

 

唇に柔らかい感触。

 

 !?!!??!?!?!

 

言葉にならない驚き。ライスが私の唇に自身の唇を重ねていた。思考がフリーズするが、急いで復旧させる。

 

「えへへ…お姉さま…」

 

頬をりんごのように赤くするライス。超可愛いが動揺が抑えられない。

 

 ラ、ラ、ライス?大好きってそういう意味…?

 

「うん、ライスはお姉さまが好きだよ?…お姉さまは違った…?」

 

ライスが悲しそうな目で見つめてくる。ここでYESと言える人間はいるのだろうか。いや、NO。それにそんな事言われて嬉しくない訳がない。

 

 まさかそんな!私もライスが大好きだよ!

 

ギュッとライスを抱きしめる。

 

「ライスとお姉さまは女の子同士だから、変だって言われないかドキドキしちゃったけど、良かったぁ」

 

 女同士なんて関係ないよ。そんな事、愛の前では些細な事だよ。

 

「お姉さま…」

 

この多様性の現代。愛の形は、愛の数だけ存在する。否定なんかさせない。

 

 これからもずっと一緒にいようね、ライス。そして、これからよろしくね?

 

「うん…!」

 

漆黒のドレスを纏い多くの祝福を授けた一人の英雄(ヒーロー)

 

そんな彼女は、新たに純白のドレスを身に付け、自身の名前にふさわしい祝福(ライスシャワー)を受け取ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これを人のいるお店の中でやったので、とんでもない大騒動になったが、それはまた別の話。




読了ありがとうございます。

ライスシャワーにこそウェディングドレスを着せてあげたい。そう思って書きました。反省も後悔もしない。

感想や評価、お気に入りにアンケートに投票など、してくれるとハチャメチャ喜びます。特に感想貰うと狂喜乱舞しますので、どしどし書いてください!リクエストも書いて頂ければなお嬉しいです!

今後書いて欲しい短編の内容を教えてください

  • まだ出ていないウマ娘
  • 既出のウマ娘で後日談
  • 既出のウマ娘で別世界線
  • コメ欄に要望書くから俺(私)の愛バを書け
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