貴族の娘、フローラと結ばれた主人公。

だが、彼は彼女に隠し事をしていた。

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何を書きたかったのかわからないです。


伝えられる訳がない思い

 

 妻が出来た。妻、が出来た。

 

 十年もの間、奴隷をしていた己には釣り合いもしない美人で奥ゆかしい妻だ。

 

 出会いは昔。まだ俺が苦労を知りもしなかった頃だ。父親と親子二人旅をしていた時に乗った船の上で出会った。少しだけの会話だったが、今でも思い出せる。

 

「フローラ」

 

 名前を呼ぶと彼女は嬉しそうに振り向いてくれる。

 

 何でもないと言うと彼女は少しだけ可笑しそうに笑い、また顔を俺から離す。海を彷彿させる濃い青の髪に触れてみたくて手を伸ばすも、己の手は奴隷生活で汚れている。そう思うと手を伸ばすのを止めてしまう。

 

 彼女もそれに気付いているのだろう。悲しい目を見せる時がある。あぁ、やっぱり俺に彼女なんて釣り合う筈が無いのだ。

 

 力が無いばかりに敵に人質にされ、目の前で最愛の父を失った。昔に遊んだ仲であり、一つ上のお姉さんであるとある彼女が言うには俺も父親に似てきたらしいが、そうは思えない。

 

 奴隷から脱してからは焦るように生きてきた。

 

 ふとした時に出ないように必死に内心の暗い部分を見せないようにし、親友となった王子とも手を取り合って強大な敵に立ち向かった。

 

 運が良かった。そうとしか言えない。長い奴隷生活で死ななかったのも、敵を倒せたのも。そして……彼女とも結婚出来たのも。

 

 本当は断るつもりだった。どう考えたって己の歩んでいる道は先が見えない。勇者を探せと死に際に父は言ったが、己よりも強く、逞しかった父が見つけられなかったのだ。俺に見つけられる気がしない。

 

「……ねぇ、あなた」

 

「……なんだい?」

 

 旅を続ける中、夜も遅く、立ち寄った宿で妻と借りた部屋にいた。

 

 ランプが薄明るく部屋を照らし、呼ばれた方にいる彼女の顔の輪郭をぼんやりと映す。

 

「あなたに悩みがあるのは知っています。……妻である私にはお教え頂けませんか?」

 

「……」

 

 言える訳がない。

 

 俺みたいな男に勿体ない彼女だが、俺だって男だ。初めての出会いを思い出せる程に想いは持っているし、彼女を妻に迎えられて喜びもした。

 

 ただ、やはり己という不幸としか言えない人間の人生に彼女を巻き添えにするのは心苦しくて仕方がない。

 

 黙っている俺に何時もであれば彼女の方から折れ、聞くのを止めてくる。

 

 だというのに、今日は違った。

 

 寝転がっているベットが軋む。彼女の寝相は良く、寝返りを打つぐらいでしか音を立てない。

 

 貴族の令嬢だからか、はたまた奔放な姐を反面教師にしているのか、彼女は女は男を立てるべしな性格だ。シスターをしていた過去もあり、世間知らずな彼女の好奇心は同年代の女性よりも旺盛だ。

 

 が、男女の話となると途端に控えめなモノになる。肌を重ねはしたが、手を出したのだって結ばれた夜に一度だけだった。どうしても彼女の肌に触れるのが怖かった。己の不幸を彼女にも押し付けてしまうのではないか、そう思うと無理だった。

 

「ん……っ」

 

「!?」

 

 彼女が身動ぎしたのは音と気配で分かっていた。だが、彼女がキスなんて大胆な事をするだなんて誰が想像するだろうか。

 

 視界いっぱいに広がる彼女の整った顔、鼻孔を掠める花の蜜にも似た匂い。顔を真っ赤にし、それでもキスを止めない。

 

 夫婦になったがキスも回数は多くなく、唇に触れるのは気が引け、おでこに何度かしている。毎朝、そうされると彼女が喜ぶからだ。

 

 俺が彼女にとって良き夫にはなれないのは他ならぬ己が知っている。別れが来るのも知っている。だが、それでも彼女を悲しませたくはなく、少しでも良い思い出が出来ればと彼女のささやかな願いを叶えている。

 

「きょ、今日は寝かしませんわ。あなたが私に悩みを打ち明けてくれるまでキ、キスをし続けますからっ!」

 

 ぷくーっと頬を膨らませた彼女は恥ずかしそうにしながらも宣言した。

 

 言うつもりはない。何れ別れるつもりなのだから。だというのに、決心が揺らぎそうだった。

 

 

 




今ちょうど久々にドラクエ5のDS版をやってるんですよ。デザインはフローラ、思い出はビアンカな私なんですが、やっぱり結婚イベントで止まりました。

子供たちの髪の色が青って嫌なんですよねぇ。金だとデザインもあってスーパーサイヤ人感はあるけど、青ってちょっと。今だと身勝手の極み……でしたっけ? あれがあるけど、やっぱりこれじゃない感。

父親を失い、長きにわたる奴隷生活をしていた主人公って心の闇が凄そうなんですよね。ゲームでは喋らないですけど、陰りのある笑みとか浮かべてそうな印象です。

ビアンカであれば幼い頃の思い出と、彼女の引っ張るような性格もあって早々に解決してそうな悩みですが、控えめな性格(だと思ってる)フローラ相手だとこんな感じかなってイメージで書きました。

……うし、フローラを嫁にして続けましょうか。

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