Ariadne;Yarn   作:鯨蓮根

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実状記憶のディスクレパンシー

4月4日 14:28 プラネテューヌ ラボ

 

 

 「じゃあMAGES.さん、今度また新しい発明品が出来たら教えてくださいね」

 

 「あぁ...」

 

 「まあ、今回はダメだったけど、落ち込まなくても大丈夫よ。あっ!これはMAGES.のためじゃなくて......そう!アンタが落ち込んでると、ネプギアまで落ち込んじゃうからよ!勘違いしないでよね」

 

 「むぅ...」

 

 帰り際に放ったネプギアとユニの言葉は、MAGES.には届かなかった。耳には入っているが、脳には届いておらず、腕を組み生返事を繰り返すのみ。

 

 「まさかとは思うけど、本当におかしくなっちゃったんじゃないでしょうね...」

 

 「だ、大丈夫だと思うんだけど...MAGES.さん、また遊びに来ますね」

 

 そう言って2人はラボを後に。しかしMAGES.は、そのことにも気づいていない様子だった。

 

 「ひとまず情報を整理するか...」

 

 しばらくMAGES.は椅子に座り考え込んでいたが、やがて思い出したように立ち上がると、ホワイトボードの前に。すでに書かれていた数式を消し、半分ほどまっさらな状態にして、金色の甘味作戦(オペレーション・プディング)と書き込み、それを四角で囲む。

 

 「あれは...1時間ほど前か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4月4日 13:14 プラネテューヌ ラボ

 

 

 「ではネプギア、さっき言ったとおりにケータイを操作するのだ」

 

 「はい、ええっと、この電子レンジに...」

 

 ネプギアがケータイのキーを操作するそばで、不安げなユニが声をかける。

 

 「間違えないようにしなさいよ...ただでさえどうなるかわかったもんじゃないのに...」

 

 「さっきから聞いていればユニよ、お前は私を信用していないのか?この狂気の魔術師、MAGES.の頭脳を」

 

 不満げにMAGES.が言う。

 

 「そりゃ私だって、銃の形してるリモコンみたいな発明なら文句言わないわよ」

 

 「ガン粒子砲、だ」

 

 「そこは今どうでもいいでしょ...」

 

 「よし、動きました!」

 

 2人の会話をネプギアが止め、タイムマシンがヴーンという音を立てる。

 

 「よし、これで成こ...うっ!」

 

 次の瞬間、MAGES.はとてつもない頭痛に襲われ、その場に倒れこむ。まるで脳を引っ張られているかのような、激しい痛み。

 

 「ちょっと!MAGES.!?どうしたn......」

 

 声をかけられた気がしたが、聞き取れたのは最初のみ。MAGES.の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ?月?日 ??:?? プラネテューヌ ラボ

 

 

 「...じすさん!め...さん!」

 

 耳元で誰かが何かを言っている。体をゆすられてもいる。いったいなんだというのだ、騒々しい。

 

 「今...私は...実験を...」

 

 (実験...?そうだ、私はタイムマシンの実験を...)

 

 「MAGES.さん!」

 

 「はっ!」

 

 「うわぁ!?」

 

 「む?ネプギアと...ユニ?」

 

 視界に入ってきたのは、2人の女神候補生。あたりを確認すると、そこは自分の家兼ラボ。

 

 「ちょっとMAGES.!いきなり顔上げないでよ!ぶつかるところだったじゃないの!」

 

 「よかったあ...MAGES.さん、急に倒れちゃうから、心配したんですよ?」

 

 「......?」

 

 脳が状況を把握できていない。

 

 (ええっと、確か私は、タイムマシンの実験をネプギアに...)

 

 少し時間はかかったが、自分が実験中に倒れてしまったことを思い出したMAGES.。たとえ体調が悪かったのだとしても、今狂気の魔術師たる自分が優先すべきは作戦(オペレーション)。ならばとるべき行動は1つ。

 

 「そうだネプギア、タイムマシンはどうなった?」

 

 「ほぇ?」

 

 「タイムマシン?急にどうしたのよ?」

 

 しかし帰ってきたのは、気の抜けた返事と、何のことかわからないといった表情。

 

 「タイムマシンだ、さっきまでお前たちも一緒に実験をしていただろう」

 

 「?」 「?」

 

 2人の女神候補生はともに顔を見合わせる。

 

 「ユニちゃん、私たち実験なんて...してたっけ?」

 

 「してないわよ、私たちついさっきここに来たばっかりじゃない」

 

 「ついさっき来たばかり...?いやまさかそんなはず...」

 

 目を覚ました脳が、再び混乱の渦に巻き込まれる。

 

 「今は何月何日の何時だ!?」

 

 ひょっとしたらタイムマシンの影響で、別の時間に飛ばされたのかもしれない。それならばまた新たに研究が進む。そんな思いでMAGES.は壁に掛けられているはずの時計を見る。

 

 「13時、18分...?」

 

 2つの針は、MAGES.が倒れた時間とそう変わらない時間を示していた。

 

 「なによMAGES.、頭打って記憶が飛んでるんじゃないでしょうね?今日は4月4日よ」

 

 もしや年が変わっているのではと思い確認するも、時計に表示されるのは寸分たがわず同じ日付だ。

 

 「待てよ...お前達は今、“ついさっき来た”と言ったな?」

 

 そういうと、2人は怪訝そうな顔をしながらもコクリと頷く。

 

 「フッ、なんだそういうことか」

 

 それを見てMAGES.は妙に納得したような表情。

 

 「うそをつくなら、もう少しばれないようにつくことだな、狂気の魔術師でありこの灰色の脳細胞を持つわたs」

 

 「MAGES.、あなた本当に記憶飛んだんじゃないでしょうね?」

 

 「む?」

 

 調子よく話しているところを割り込まれ、不満顔で目線を向けるMAGES.。しかしユニの顔にうそをついているような雰囲気は微塵も混じっておらず、まるで子供に言い聞かせるように話し始める。

 

 「アンタの家に行く途中、交通事故で道が通行止めになってたのよ。おかげで回り道して遅れちゃったって、来てから一番最初に話したし、メールだってしたはずよ?」

 

 「なっ!?」

 

 (おかしい、そんな話はしていなかったし、それに確かに2人は時間通りに来たはずだぞ...?)

 

 慌ててケータイ電話を取り出し、メールボックスを確認。するとそこには、確かにネプギアからの[遅れます(>_<)]という件名のメールが。

 

 (しかも返信までしている...?)

 

 「私は変身して、飛んでいこうって言ったんですけど、ユニちゃんがせっかくだから私とお喋りしながら歩こうって言ったんですよ」

 

 「なっ!?ネプギア、それ言わないって約束...」

 

 「? してないと思うよ?」

 

 「だから...私が言いたいのはそんなことじゃなくて...その...ええと...お姉ちゃんみたいな女神になるためには...そんなことのために女神の力を使っちゃいけないというか...その...」

 

 「え?でもお姉ちゃんは...」

 

 「ネプテューヌさんは一緒にしちゃダメなような...ってそうじゃなくて!」

 

 女神候補生2人により、部屋がにわかに騒がしくなるが、MAGES.の耳には入っていない。顎に手を当て、眉間にしわを寄せ思考を巡らせる。

 

 (さっき確認したとおり、今は間違いなく私が2人と約束を取り付けた日。だが交通事故などなかったはずだし、何より2人は時間通りに来たはずだ。それもこれも、ネプギアが実験のためにタイムマシンを起動させて私が倒れてから...)

 

 「ネプギア、ユニ」

 

 「はい?」

 

 「何よ?」

 

 2人の言い合いがぴたりと止まる。

 

 「本当に、交通事故も遅れたことにも、嘘はないんだな?」

 

 「だから最初からそう言ってるじゃない」

 

 「ふむ、ではネプギア、一つ聞いてもいいか」

 

 「なんですか?」

 

 「お前の姉は、昨日プリンを食べたか?」

 

 「? はい、食べましたよ。ちょうどなくなってたから、私が昨日買って帰ったんです」

 

 「!?」

 

 MAGES.は大きく目を見開き驚きの表情を見せ、すぐにケータイ電話を開き耳に当てる。

 

 「もしもし、私だ。あぁ、一時は失敗かと思われた実験が、驚くべき結果を示した」

 

 「あの...MAGES.さん?」

 

 ネプギアが恐る恐るMAGES.に話しかけるが、残念ながらこの状態のMAGES.とコミュニケーションをとることは不可能といってよい。

 

 「原因はまだ不明だが、これでこのタイムマシンの絶大なる力を再確認するとともに、新たな発見が得られたことを今は喜ぼうではないか!フゥーハハハハハ!」

 

 「ダメよ、ネプギア、なんか触れちゃいけない気がするわ...」

 

 「私はこれから更なる実験を行おうと思う。あぁ、もう少しだ、もう少しで“機関”との最終戦争(ラグナロック)が始まる。そちらも引き続き、慎重に作戦を遂行してくれ、幸運を祈る。ルクス・トゥネーヴェ・イメィグ・ノイタミナ・シスゥム・・・」

 

 「ユニよ」

 

 通話()を終えケータイを閉じたMAGES.は、何事も無かったかのようにユニに話しかけた。

 

 「な、何よ?」

 

 「一昨日までに、変えたい過去があるか?」

 




一番悩んで書いてるのはサブタイトルです...本家のセンスが良すぎる
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