今回は七深の生誕記念回をお送りします。
それではどうぞ。
季節は夏。梅雨も本格的に入り、連日の雨が憂鬱に感じるこの頃。この日の放課後は珍しくバンド練も生徒会の仕事もオフのため、息抜きとしてMorfonica全員でRiNGに併設されているカフェテリアでお茶をする事となった。しかし全員といっても、七深は自身の両親が主催する展覧会の手伝いをする為不在である。
「きょーさん!来週の日曜、みんなでおでかけしましょうよ!」
「お前は急に何を言い出すんだ?」
そしてRiNGでコーヒーやお茶菓子に舌鼓してる最中に、透子が何故かそんな事を言い出した。透子の唐突な提案はこの場にいる全員が慣れているためもはや日常茶飯事になりつつあるので、透子以外の全員は呆れてため息をついた。
「それで透子ちゃん。何処におでかけに行くの?」
「ズバリここっしょ!」
つくしに尋ねられた透子はドヤ顔をしながら先程まで弄ってたスマホの画面を全員に見せた。
「これって……ホラー映画かしら?」
瑠唯の一言でましろとつくしの顔が真っ青になった。まさか全員でおでかけに行くのにまさかホラー映画に行くとは思いもしなかったのである。
「透子ちゃん、私は行きたくないからねっ!なんで練習オフにしてまでホラー映画を観に行かなきゃならないの!」
つくしがすぐ正気に戻って、机を『バンッ!』と叩きながら透子に猛抗議をした。
「落ち着けつくし。他にも客がいるから迷惑になる。 そして透子、そう言うからにはそうする理由はあるんだろうな?」
そんなつくしを京介は注意しながら宥めつつ、透子になぜそのような事を思いついたのか尋ねた。
「だって、来週の日曜はななみの誕生日なんですよ?だったらななみの好きな事させるのは当然のことっしょ!」
透子が示した来週の日曜日は6月16日──それは七深の誕生日。確かに同じバンドメンバーの好きな事をさせてやりたいというのは透子なりの友達を祝う気持ちにはなる。
「……桐ヶ谷さん。貴女もしかして来場特典が目的かしら?」
「ありゃ、バレた?」
瑠唯はスマホで透子が先程見せたホラー映画のホームページを確認したが、よく見ると映画館とかでよく見かける宣伝ポスターをネットでアップしたものだが、右下部をよく見ると『来場者特典アリ!』と記されていた。
「……もしかしてSNSで特典をコンプリートしたのを載せたらバズるかもしれないって魂胆じゃあないだろうな?」
「あったりー!」
呆れた──。透子以外の全員が心中そう一致した。これではまるで七深の誕生日祝いが建前で、透子の目的の方が本音と捉えられてしまう。友達の誕生日を利用してまで人気を得ようとする行為は呆れを通り越して一種の尊敬とも捉えられるのは思いたくもないと京介達は感じた。
「とりあえず透子は七深の誕生日当日、逆さにして木に吊るすか?」
「「「吊るしましょう」」」
透子の主張を聞き終えた京介はとんでもない事を提案してきた。しかし(透子以外は)賛成のようで即答で同意した。
瑠唯は透子の日頃の行ないから、ましろとつくしはと透子のしょうもない主張で自分達が振り回されくない一心……といった各々の理由だが考えが合致したのだ。
「待って待って!あたし吊るされたくないから!」
「七深はいいとして此処にホラー関連がダメなのがいるんだぞ?そういうのは周りを見てから発言しろ。仮に家で見るんだったらまだ分からないが、映画館だとそうはいかないぞ?」
ホラー映画が苦手なメンバーもいるためその者の気持ちを考えると同時に、映画館は自分達以外にも人がいるから周りの配慮も考えろと透子を咎めた。
確かに家ならホラー映画を鑑賞中に最悪退室すれば話は済むのだが、映画館なら如何せんそういう事をするのはマナー違反と咎められても文句も言えない。
「しかし京介さん。桐ヶ谷さんのテンションを見る限り、彼女は絶対に引き下がらないと思います。先程思い出したのですが、この映画の特典は前々から興味があったようなので。もし此処でNOと言っても、行きたいと駄々をこねると思います」
だが瑠唯は自分なりの指摘を京介に耳打ちした。此処で透子の意見を却下しても後から五月蝿くなるのが目に見えているため渋々彼女の意見に乗る事にしたようだ。
「……仕方ない。此処は割り切ってお前の提案に賛成するとしよう」
京介も瑠唯と同じく渋々透子の意見に賛成した。その表情からは疲れとも捉えられる何とも言えないものであった。
「京介先輩、いいんですか⁉︎私は嫌ですからね!」
「駄々こねてボイコットされるよりかはマシだろ?」
当然それを聞いたつくしからは抗議の声が上がったが、却下した後の未来が容易に想像したのか、京介は額に手を当てながらその事をつくしに伝えた。
「それでしたら……私も賛成します」
「ましろちゃんまでっ⁉︎」
先程まで黙って見てたましろはつくしと同じく反対であったが、急に賛成側に移った。どうやら京介が賛成になった事で自分も賛成に掌を返したようだ。
しかし賛成になった事に変わりはないので今反対はつくしのみ。押しの強すぎる透子、先輩の京介、普段から自分より格上オーラを出している瑠唯、高一から友達になったましろ、それらが賛成に回った事によりつくしは四面楚歌となった。
「わ……分かりましたっ!行きます、行きますよ!」
こんな状態では反対意見を言い続けても無駄だと感じたつくしは意を決して自分も賛成派に鞍替えした。
「よっしゃー!さんきゅー、みんなー!」
まさかの(鞍替えがあったとはいえ)満場一致になった事で透子は腕を上げて大いに喜んだ。そんな透子の調子の良さに彼女以外の全員は呆れてため息をついたのは言うまでもなかった。
「とにかく当日が不安になってきた……」
「私も……それ以前に最後まで観れるか心配になってきました……」
しかし賛成を表明したましろとつくしであるが、完全に衝動的であるためまだ不安に感じていた。
「不安なら前日までウチでホラゲーをプレイしてある程度耐性をつけておくか?付け焼き刃だが、多少効果はあると思うぞ?」
京介のその提案でましろ達は少し驚くも、流石に当日までそのままにするわけにもいかないので今からホラゲーを始めた。最初は2人が悲鳴を上げたのは言うまでもないが、日が経つに連れて悲鳴の数や大きさも少なくなってきたのであった。
そして日は過ぎ、七深の誕生日当日──。
「いやー、晴れてよかったー!」
「そうだね。ここ最近雨が降ってばかりだったから晴れの日がありがたく感じるよ」
この日は梅雨の影響で生憎の雨…とはいかず、この時期に稀によくある晴れであった。しかも雲一つないお出かけ日和である。
目的としてはホラー映画の鑑賞であるが、上映時間を映画館のホームページで調べたが朝一番早い時間はもう満席になっていたので、唯一連席で空いていたのが昼の時間帯で予約を取った。
ここで一つ問題になったのが食事であるが、その時間なら昼食のピークを過ぎる頃になるが、映画館で軽食を買って鑑賞中に食べるのもアリだが、観るのがホラー映画のため、食が進まないのは目に見えているので、やむなく時間を少し前倒しで昼食を先に食べて映画を観る事となったのだ。
しかし、映画館のあるショッピングモールのフードコートや飲食店は日曜日という事もあってか、何処も満席状態のため、やむなくショッピングモールを一度出て、少し離れた場所で飲食店探しをしているのであった。
探し続けること約数十分後、やっとの思いで飲食店を見つけたのだが……
「『ラーメン銀河』か……」
そう。京介達がいるのは『ラーメン銀河』の前である。ここにいるメンバーの大半はお嬢様で、しかもラーメンを食べている所が想像が出来ないが、条件があったのはここくらいしかなかったのであった。
ちなみに、透子が発案で、(透子に騙された)本日の主役である七深の鶴の一言でこのような結果となった。
しかし七深が良いと言った以上そうするしかないのと、今からまた探すのも時間の無駄であるので、意を決して京介は引き戸を開けた。
「いらっしゃい!」
店内の厨房で黒の半袖Tシャツと頭にタオルを巻いているマスキングが麺を湯切りしながら出迎えた。しかも来客である京介達を見てニカっと笑っていた。
しかしマスキングと目が合った瑠唯はその瞬間、引き戸を思いっきり閉めた。そして何事も無かったように『ラーメン銀河』に背を向けた。
「どうやら準備中のようね」
「いや、ちゃんと開店してるぞ?ここに『開店中』って看板が立ってるし」
「……そういえば満席だったわね」
「いや、ちゃんと空席あったぞ。しかも6人分空いてたからな?」
「……そういえば雨が降りそうね。早くショッピングモールに引き返した方がいいわ」
「いや、今雲一つない青空だから雨の心配は無い…って、何処まで現実逃避しようとしたんだ⁉︎そんだけますきの事が嫌なの⁉︎」
「嫌です」
マスキングと鉢合わせするのが嫌だったのか、瑠唯はガラでもない現実逃避をしてこの場から立ち去ろうとしたのであった。
「彼女、色々としつこい所がありまして。しかも挙げ句の果てには『可愛くない』って文句を項垂れてくる程です」
「(それ、100パールイのせいじゃね?)」
瑠唯はマスキングに会いたくない理由を淡々と話すが、それを聞いた透子は心中で瑠唯の所為だと指摘するも、此処で言っても状況が変わらないので口を噤んだ。
その後も京介が必死に説得するも、一向に瑠唯が首を縦に振らなかった。仕方ないと感じた京介は、後日瑠唯に何かプレゼントするという約束を交わして漸く説得に応じるのであった。
そして『ラーメン銀河』に入店して注文を済ませて料理を待っているわけだが……
「瑠唯〜、せっかく私と会ったのにそっ閉じとか酷くねぇか〜?」
やはりと言うべきか、バイト中のマスキングが瑠唯の肩に手を組みながら絡んできた。先程の瑠唯の仕打ちを根に持っているようで、自分の気が済むまでやり続けるようだ。
「佐藤さん、仕事をサボってまで絡むのは関心しませんね」
「多少は融通聞いてくれるから大丈夫だよ」
しかし瑠唯は顔色一つ変えずに手で払いのけながらマスキングを一蹴した。
「そうでしょうか?周りから見たらタチの悪い店員が客に必要以上に料金を払うよう要求してくる光景にしか見えませんが?」
「……やっぱ、お前可愛くねぇな」
瑠唯の指摘に不機嫌そうな顔をするマスキングである。しかし瑠唯の一言は軽くツボに入ったのか、同じくバイト中でチャーハンを炒めてた巴と、カウンター席にいるつくしの耳に入った時は、2人は思わず吹きかけた。
これ以上は無駄だと悟ったのか、マスキングは瑠唯に絡むのはやめて仕事に戻るのであった。
「(なぁ、アイツっていつもあんな感じなのか?笑顔とか見たら評価変わんだけど…)」
「(あー、それ無理ですまっすーさん。普段笑わないから。でもきょーさんしかいない時だったら無条件で笑うけど…)」
「京介さん、あの2人を今から寸胴鍋で釜茹でにしたいのですが……」
「やめなさい」
カウンター席に身を乗り出して、マスキングは透子とヒソヒソ話を始めた。しかし瑠唯はその会話の内容は聞こえ無かったが、どんな内容であるか察していたためすぐさま私刑を執行するも、京介に止められたのは言うまでもなかった。
そして暫くすると、注文した料理が来て食べるのだが、この時七深が頼んだのは『ラーメン銀河』で一番辛いという、激辛! 麻婆ラーメンなるものであった。
それを見たましろとつくしと透子は顔を引き攣らせるも、七深は顔色変えずに箸を進めていった。この光景は周りからしたら異常であるも、七深からしたら『普通のラーメンを食べる感覚』程度としか思っていなかった。
麻婆ラーメンを食べ始めて約15分程度で完食するも、今度はおかわりを要求してきた時は店長含めた店員達や銀河の常連らしき人物達は驚きの声が上がった。店長も『あのラーメンをおかわりするなんて、もの凄いチャレンジャーだ……』と感嘆な声を上げた。
そこから暫くして2杯目の麻婆ラーメンが出されたが、七深はそれを1杯目の時よりも早いペースで食べていって、10分以内で完食した合計を見た店長は思わず腰が抜けたのは言うまでもなかった。
その後は勘定を払って、『ラーメン銀河』を後にするのであった。
「いやー、さっきのななみはすごかったなー!」
「ホントに……私も開いた口が塞がらなかったよ」
『ラーメン銀河』を後にした一行は、本日の目的である映画館でのホラー映画鑑賞に入るため、ショッピングモールに入って暫くすると映画館に到着した。
そしてチケット購入も無事におわったが、始まるまでまだ時間もあったので、透子とつくしは座席に座りながら『ラーメン銀河』であった事を中心とした雑談をしていた。
「え〜、アレが普通だと思うんだけどなぁ〜」
「アレは普通じゃないわ」
隣で聞いていた七深は真っ先に普通だと主張するも、隣で聞いていた瑠唯に即座に一蹴されて軽く落ち込んだ。ちなみに余談だが、座席は透子、つくし、七深、瑠唯、京介、ましろの順で座っている。
雑談をしてから暫く経つと京介達以外にも客が続々と入ってきたので、他の客に迷惑にならない程度で雑談を続けた。そして客もそれなりに集まった所で館内は暗くなり、上映前のマナーの注意喚起や今後上映される予告が数分に渡って流れてきて、漸く本編が開始された。
『お前の後ろに……』
『えっ……イヤァァァァァァァァァァァァ‼︎』
映画が始まって暫くは普通の学園物とは変わらない内容であったが、中盤に差し掛かる所で漸くホラーのシーンがやってきた。そのシーンは主人公とその友達が廃墟のビルで肝試しをする場面であったが、ビルの散策中が何かを見つけて指を指すと、主人公が振り返って見つけたものはこの世のものとは思えない得体の知れない化け物の姿で、当然主人公は絶叫を上げるものであった。
そのシーンを見たつくしは幾ら此処数日でホラゲーで耐性をつけているとはいえ恐怖には勝てなかったようで、涙目になりながら隣にいた透子の手を掴んだ。一方の七深は目を輝かせて映画を観ていた。しかし京介と瑠唯は七深とは逆に、冷静になりながら映画を観ていた。
「(なるほど、これは人気になるわけだ。でも……)」
「…………」
「(……怖さも比例するわけか)」
京介は冷静に分析しながら映画を観ているも、ふと隣の席にいるましろを覗き見感覚で見たら、少しばかし震えながら京介の手を掴んで観ていた。
その光景を見ていた京介は小さくため息をつくも、余計な事はしたら逆効果になると判断したようで、終わるまで黙って映画を観るのであった。
「もうやだ、もう2度と映画館でホラーゲームは観たくないよ……」
「えー、でも面白かったじゃん!」
映画が終わると、今度はメンバーがいつも行ってる七深の家のアトリエに来ていて、全員でケーキに舌鼓になっていた。
ちなみにこれは七深の希望で『バースデーケーキをみんなで食べたい』の元、急遽ケーキ屋でケーキを買って馴染みのある七深の家のアトリエまで来ていた。
ケーキを出す準備の最中、つくしは机に突っ伏しながら先程のホラー映画の怖さに未だに怯えていた。しかし、今回の発起人である透子はその逆で、ケラケラと笑っていた。
ちなみに余談だが、来場者特典は全員のを合わせたら被りが無かったのであった。これを受けて透子はSNSにアップすると、ものの数分で万バズするという快挙(?)を成し遂げた。その後は全て七深にプレゼントされたのは言うまでもなかった。
その後はケーキの準備が終わり、一度アトリエの電気を消して『Happy birthday to you』を歌いながら持ってきて、その際に事前に用意していたプレゼントを七深に渡して、彼女を驚かせたり、ゲームとかで遊んだり……と、とても充実したひと時を過ごす事ができた。
そして楽しい時間が過ぎ……
「今日はありがとうございました〜。それに片付けまでやってくれるなんて〜」
「構わないよ」
七深以外の全員が帰宅した中、京介だけは残ってプチパーティが終わった後の後片付けをしていた。
「きょーさん先輩、やっぱり優しいですね〜。広町は惚れちゃいますよ〜?」
「洒落にならんお世辞はやめときな?それと俺自身意識したわけではない」
京介が片付けしている中、七深はとんでもない事を口に出すが、京介は洒落だと判断していたからかそこまで本気にしておらず、流し聞き感覚でしか捉えてなかった。
「む〜……私は、本気できょーさん先輩が好きでしたのに〜」
「はいはい、ありがとう」
「きょーさん先輩っ!」
「だからなん…」
京介が言い合える前に途中何かが口を塞がれて最後まで言えなかった。京介の口を塞いだのは、
「……ぷはぁ、やっと聞いてくれました〜」
2人がキスをして暫くすると、七深は京介の拘束を解いた。キスをして満足したからか表情はご満悦だが、頬が少し赤かった。
「……お前、自分が何やったか理解してるのか⁉︎」
「はい、理解してますよ〜」
京介は動揺しながらも七深を尋ねるが、当の本人は何とも思ってないようで、毅然とした態度で返した。しかも、いつものよくやる間延びした感じで、である。
「……私、しろちゃんやるいるいと同じようにきょーさん先輩の事が好きだったんですよ?本気で」
「……マジ?」
「はい、マジです」
七深は再度、京介に
「以前、私が自分の事で悩んでいた時にきょーさん先輩、相談に乗ってくれたじゃないですか?」
京介は以前、七深が悩みを抱えていた際に相談に乗っていて、その時彼女は「普通」に憧れていたのが判明した。当初京介はこれについては理解出来なかったが、普段の彼女は何処かズレた発言や行動をしているのを思い出したため、周囲に溶け込んで本当の自分を隠しているのに気づいた。
しかし京介は、「今は理解しなくていい。だからいつか必ず、隠さずに本当の自分を曝け出せ。そうすれば周りも受け入れてくれるはずだ」と助言をしたのだ。
「私、あの言葉は最初理解出来なかったけど、るいるいなりの解釈を入れた時にやっと理解出来たんですよ。だからそれを知った時は感動したし、いつかその言葉を実行に移そうとした程なんですよ〜」
京介の助言はその言葉通り、時間はかかったが七深の心にいい意味で響かせる事ができたようだ。
「だからかな……きょーさん先輩の言葉一つ一つを聞くと、なんだか胸の奥が熱くなる感じがしたんですよ〜……これが『恋』だって、るいるいがモニカを一度辞める時に、るいるいを説得した時になってやっと分かったんです」
七深は京介の助言を聞いて暫くしてから、彼に対して『恋』として意識していたのだ。
「でもしろちゃんやるいるいを見ていると、2人は広町が思い描いている以上にきょーさん先輩に対して恋を抱いている現状だったんですよ。だから……私自身から潔く身を引きました」
七深の言った事が何故過去形になったのか、京介は七深の説明を受けて漸く理解した。自分に対して恋を抱いていた……それだけの事であったと。七深の想いを聞いた京介は優しく七深を抱きしめた。
「そうか……ありがとう七深。こんな俺を愛してくれて」
「正確には『愛していた』ですよ〜。でも広町的にはこの『失恋』も、一つの『青春』として受け入れているんですよ〜」
失恋…とはまたズレているが、七深にとってはこの経験がいい意味で自分にとっての成長の糧となったようだ。京介はそれを聞くと安堵していた。
「そうか……それなら七深、まだこれから時間はあるだろ?」
「はい。パパとママは展覧会の打ち合わせで明日まで家にいないんですよ〜。今ならフリーで〜す」
「なら好都合。今日の夕飯、俺ん家で食べてくか?今日は桜雪が夕飯としてシチューとロールキャベツを作るんだ」
「きょーさん先輩のお家で夕ご飯ですか〜⁉︎ご馳走になりま〜す!」
その後は京介の家で桜雪も交えて3人で夕食となった。夕食が終わった頃には20時30分を差していて、周りも暗くなったので仕方なく七深は京介の家でお泊まりのなったのだ。
しかし、遅くなる事も見据えていたのか、七深は事前にお泊まり道具も持参していたのでその辺は問題なかったが、桜雪が暴走しかけた。しかし京介の鶴の一声で渋々受け入れた。
だけど、客用の寝室は生憎掃除が行き届いてなかったため、急遽京介の部屋を使う事となった。その際七深は京介のベッドで、京介は部屋の床に布団を敷いて寝る事になった。
「それじゃあそろそろ寝るとしようか」
「は〜い」
お風呂とか済ませたその後は、京介の部屋でホラゲーを嗜んでいる2人がいた。そして夢中になる事約数時間、時刻は23時30分を過ぎていた。明日は2人とも学校があるので、此処でお開きとなったのだ。
2人は布団に入って、京介が照明のリモコンに手を掛けて電気を消そうとしたその時、七深に待ったを掛けられた。何かと思った京介だが、次の瞬間、京介は七深にキスをされた。七深はほんのりと顔を赤く染めながらも、『おやすみなさ〜い』と言って布団にくるまった。
「……やれやれだ」
そう呟くと、京介は電気を消して静かに目を閉じた。しかし先程七深の不意のキスを受けたからか、京介は1時間ほど眠る事が出来ずにいた。
しかし……
「(アレは流石にやりすぎたかな〜……?)」
自分からキスをしたのに、照れながら布団にくるまってる七深であった。彼女もまた、京介と同じく1時間ほど眠れずにいたのであった。
そして翌日、2人は遅刻せずに学校に行けたのだが、その日の放課後に七深とお泊まりした事がバレた京介はましろと瑠唯に小1時間尋問兼お説教を受けたのはまた別の話である。
まずは読んでくださった方、お気に入り登録をしてくれた方、こんな拙作を応援いただきありがとうございます!こんな拙作読んでくれるだけでもありがたいです。
今回の七深の生誕記念回は、七深の好きなものを取り入れつつ彼女が求めてる『普通の青春』を私の解釈を入れつつ話の焦点を合わせてみました。
実は『七深が京介に惚れた』は裏設定で、いずれ出そうとしました。その為、今回の七深の生誕記念回に出しました。しかし、この話で七深が京介に惚れ直したら……京介には潔く七深を受け入れさせようと思います(笑)
さて……次回の更新は未定ですが、次は別作品の予定になっております。ちなみに白き蝶は7月中旬に番外編を予定しております。楽しみにお待ちいただけたら幸いです。
それでは、また次回。
R-18の小説を……
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