白き蝶に導かれて……   作:なかムー

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 皆さまお待たせしました。

 今回は瑠唯の生誕記念回をお送りします。

 それでは、本編をどうぞ。


八潮瑠唯生誕記念回2024 正確無比な乙女に差し向ける催眠術

 あと少しで秋が終わりを迎えて冬が訪れる今日この頃。SHRが終わった教室にてましろとつくしは帰り支度をしながら談笑をしていた。

 

 「来月は期末テストだねー」

 「うん。つくしちゃんは、自信ある?」

 「ある…と言ったら嘘になるけど、今回は然程問題無いよ」

 「そうなんだ…なら一緒に勉強しない?」

 「うん。いいよ」

 

 談笑の内容は、ちょうど1ヶ月後に行われる期末テストの事が中心となっていた。時期も他校と同じくらいであるが、早い段階でそれぞれの教科の担当教員からアナウンスされていたため自主勉強に充てるには充分あるのだ。

 

 もし期末で赤点を取れば冬休みのスケジュールは大幅に変更させられるので、ましろはつくしと一緒に期末対策の勉強を計画していた。

 

 「シロォォォォォォォォォ! ふーすけぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 しかし、雰囲気をぶち壊すかの如く透子がましろ達に泣きついてきた。透子の目には涙が溢れていた。透子に遅れて七深と瑠唯もましろ達の教室に入ってきた。七深は苦笑いしているが、瑠唯は呆れながらため息をついていた。

 

 「ど、どうしたの透子ちゃん…?」

 「来週あたしらのクラス、小テストがあるんだよぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 透子の一言を聞いて2人は呆れるほかなかった。彼女が泣きついてきた原因…それは小テストのようでしかも余程ヤバイのか自信が無いのか、普段の透子とは思えないほど悲観に満ちていたのだが、その普段が元の根端であり、透子自身は勉強はどちらかと言うと得意ではないのと課題の提出も遅れる傾向があるため、自業自得といった方が正しいが。

 

 「こうなれば仕方ないわね…此処は小テストに向けた勉強をした方がいいわ」

 「イヤ!」

 「とーこちゃん、ダダこねないで〜」

 「だって面倒じゃん!ルイえもん!テスト勉強で満点取れる道具出してよ〜!」

 「そんな物、この世に存在しないわ。それと私は何処ぞの未来から来た猫型ロボットとは程遠い存在よ」

 「おや?もしかしてルイルイも知ってるの〜?」

 「常識での範囲内よ」

 

 瑠唯に小テスト当日まで勉強する事を提案されるも、当の透子はダダをこねる上に人任せに走る始末であった。

 

 「あの桐ヶ谷さん…それ以上ワガママを言うのはよろしくないかと」

 「あっ、莉々ちゃん」

 

 そんな透子の様子を近くで見ていた莉々と呼ばれた黒い髪をロングヘアにしていて、アメジストを思わせる様な瞳で前髪の所に髪留めを着けた少女…正確には白咲(しらさき) 莉々(りり)は割って入るように話に入ってきた。

 

 ちなみにこの莉々は、ましろとつくしと同じクラスの生徒で、2人はもちろん、透子達とも幼稚舎の頃から面識があるためか、普通に話かけるほど仲は良い方なのだ。

 

 「それでリリりん。なんで忠告めいた事をとーこちゃんに言うの〜?」

 「兄様の耳に入れば桐ヶ谷さんは勉強せざるを得ない状況になるからです」

 

 莉々のその一言で透子は先程とは打って変わってピシャリと固まった。莉々の言う『兄様』というのは颯樹の事で、彼女とは『義兄妹』の間柄なのである。当然莉々の耳に透子の一件が入ったのでそれを颯樹に伝えれば…莉々の言葉通り、イヤでもテスト勉強をせざるを得なくなるのだ。

 

 「ありがとう白咲さん。桐ヶ谷さんを黙らせてくれて」

 「いえ。それと、その小テストの勉強、私も一枚嚙ませてくれませんか?ちょうど数週間後に期末テストもあるので一緒に勉強した方が良いと思いまして」

 「いいわね。ではそうさせて貰いましょう」

 

 なんと莉々の方からテスト勉強のお誘いがあったのだ。時期も申し分無いためと、透子の一件もあって効率的に良いと判断した瑠唯は即座に了承するのであった。当然透子以外の全員も首を縦に振って了承した。

 

 「それでは私は京介さんに相談してみるわ」

 「私も兄様に相談してみます」

 「待て待て待て!もしかしてあの2人も誘う気かっ⁉︎」

 

 話が纏まった瑠唯と莉々はスマホを取り出して今の事を各々の人物に連絡しようとしたが、透子に待ったを掛けられた。

 

 「当然でしょう?」

 「それに、あの2人なら貴女の事もいずれ耳に入るかと。いや、私が報告するので入らざるを得ませんが」

 「奇遇ね。私も同じ事を考えていたわ」

 

 なんと元から各々に連絡する気だったようで、2人は無意識に両手を水平にした交互に行ない、左手で熱い握手を交わし、右腕を交差するように2回押し付け合い、グーにした左手に同じくグーにした左手を重ねるタッチを交互にした後、両腕をL字にして熱いグータッチをしたのだ。

 

 しかもこれらを真顔で行なっているので、周りからしたらかなりシュールな光景であった。

 

 透子も何か言おうとしたが、2人に何かされるかたまったものではないからか、ただ黙る他なかった。

 

 その後、2人は京介と颯樹に連絡を取って、お互い休日は空いているためそこで勉強会が行われるのであった────。

 


 

 そして勉強会当日。

 

 Morfonica全員と莉々は颯樹の家に来ていた。この日当初の予定通り、勉強会が行われるのだ。だが、颯樹と彼女達以外にも、京介、千聖、花音、彩の姿もあったのだ。

 

 ちなみに、京介はMorfonicaのメンバーだからいるのは当然だして、千聖達がいる理由としては、以前花咲川で行われた定期テストにて彩が見事に赤点を取ったため再試験となったのだ。

 

 しかし彩と学校側のスケジュールを合わせた結果、偶然にも透子のクラスで行われる小テスト当日と被っていたので、2人纏めて勉強を見る事になったのだ。ただ違いがあるとすれば、テストが行われるのが放課後が否か、程度であるが。

 

 そして千聖は彩がちゃんと勉強しているか見張るために付き添っているのだ。ちなみに花音も『颯樹くんや千聖ちゃんがいるなら』という理由で参加しているのであった。

 

 「申し訳ありません兄様、せっかくの休日を私達に時間を割く羽目になってしまって…」

 「いや、気にしてない。彩の事があるから『渡りに船』って感じだよ」

 

 莉々は申し訳なさそうに深々と頭を下げながら颯樹に謝罪していた。義理の兄の時間を割く事になったのか罪悪感を抱いていたのだ。しかし颯樹の方は気にしてなかったようだが。

 

 「ここにいるメンバーで全員か?」

 「いや。あとはひまりも参加するんだが、『今日は部活で他校との合同で練習があるから昼過ぎに合流する』って伝言を預かってる」

 「ひまりちゃんらしいね…」

 

 実を言うと、今現在此処にいるメンバーで全員ではないようであとはひまりも参加するのだが、予定があったため遅れて合流するようだ。京介の口から伝えられた、ひまりの伝言の内容を聞いた花音はただただ苦笑いするしかなかった。

 

 ちなみに余談だが、京介は先日までAfterglowの一部のメンバーは苗字呼びしていたのだが、とある一件で全員名前呼びするようになったのだ。

 

 「そういえば一ノ瀬の馬鹿は?アイツが一番赤点に近いだろ」

 

 ひまりの名前が出た事で、颯樹の脳裏に1人の男子生徒の存在を思い出したのか、それについて京介に指摘した。

 

 「一ノ瀬の馬鹿は蘭…間違えた、人間つけた赤メッシュに無理矢理押し付け(まかせ)ようとしたが、日菜先輩が北沢と一緒に面倒みてくれるそうだからそっちに任せた。一ノ瀬(バカ)も『そっちがいい!』って泣いて喜んでたよ」

 

 どうやら此処にいない日菜が面倒を見てくれるようだ。日菜は以前、はぐみが補習の危機に晒された時は勉強を見てあげてたようで、テストの時期になると勉強を見てくれる仲になっているようだ。それに加えて一ノ瀬の勉強の面倒も見てくれるようで、それに関しては感謝する他なかった。

 

 「あはは……さて、時間も有限だしそろそろ勉強会を始めようか」

 

 京介から聞かされた話に苦笑しながらも気持ちを切り替えて、本題である勉強会を始める事となったのだが……

 

 「透子ちゃん、そこスペルミスがあるわ」

 「マジで⁉︎」

 

 「丸山さん、そこの計算式間違えてますよ。それだと答えが大きく違ってきます」

 「うっ……!」

 

 特に問題無く勉強は捗っているものの、問題があるのは先の一件の2人…透子と彩であった。2人の勉強は京介、颯樹、千聖、瑠唯が付きっきりで監視兼指導しているのだ。

 

 「ダメだ。2人とも全然進んでない…」

 「なんだか情けなくなってくるわ…」

 

 勉強会が始まって約2時間が経過すると、颯樹と瑠唯は彩達の進捗状況を確認した。すると、従来(平均的意味と2人の勉強する平均の速度的意味で)の速さより遅いくらいであった。

 

 進捗の結果を見た颯樹と瑠唯はただただ頭を抱えるしかなかった。

 

 「もう、ダメ……」

 「限界……」

 

 しかも2人はこれ以上限界だと感じたのか、頭から煙を噴き出しながら机に突っ伏してしまった。

 

 「2人とも、流石に2時間は短すぎよ。他の子達も勉強してるんだから、貴女達ももう少し勉強しなさい……」

 「だって難しいんだもん!」

 「そーだそーだ!」

 

 その光景を千聖は頭を抱えながら苦言を呈するも、彩と透子は文句を言い始めた。しかし状況が状況なため開き直りとも捉えられるが。

 

 「ほう。難しいから匙を投げるのは関心しないなぁ…」

 

 その様子を見兼ねた颯樹はニッコリと微笑みながら2人に声を掛けた。2人は颯樹の笑顔の裏に恐怖が隠れているのが分かっていたのか声を掛けられた瞬間、ビクッと跳ね上がった。

 

 「い…いやー、そんな事ないよねー。ね、透子ちゃん?」

 「そうそう! 実はあたしら、まだ本気出してないし?これから本気出す、みたいな!」

 

 颯樹の笑顔に圧倒されながらも、彩と透子は冷や汗を掻きながら必死に弁明した。

 

 「ほう。やる気のある2人にこれらをプレゼントしようか」

 

 2人の反応を見た颯樹は更に参考書を取り出して2人の目の前に置いた。しかも一冊だけでなく、何冊もある参考書が束になって置かれたのだ。2人は血の気が引いたように顔が真っ青になった。

 

 「…皆んな、あれがよく言う『口は災いの元』よ。勉強になったかしら?」

 「ついでに言うと『自業自得』とも『因果応報』とも捉えられる。これからも目の当たりにする事になるだろうからよく頭に叩きこんどけ」

 『はーい!』

 「分かりました」

 

 そんな2人を尻目に、京介と千聖と瑠唯を筆頭に、残りのメンバーに対して今の彩達の現状の解説をセミナー感覚で行なっていた。

 

 「「裏切り者〜!」」

 

 そんな京介達に、彩と透子は恨み口を叩きつつも、逃げられないのは火を見るより明らかなので、泣く泣く参考書に取り組むしかなかったのであった。

 

 そしてそこから数時間後…時計が12時を差したので、此処で一旦昼休憩を取る事となった。

 

 お昼ご飯を作るのは、この家の主に当たる颯樹をメインに、京介、千聖、花音、つくしが担当する事となった。その際、颯樹と千聖は野菜をカットして、京介と花音とつくしは卵を混ぜていた。

 

 野菜の下拵えが終わった後は、最後は颯樹と千聖がやると買って出たので、京介達は一度リビングに戻って食器を取り出したりテーブルを拭いて昼食の準備をした。

 

 準備が終わると、キッチンから颯樹と千聖がお盆を持ってリビングまでやってきた。お盆に乗っているのはオムレツ…のようだが、上にはソースとマヨネーズ、青のりが掛けられていた。

 

 「オムレツ、ですか?でも少し大きいような……」

 「まぁ食べてみな。そこに全てを詰め込んだから」

 

 莉々は疑問に感じた事があるも颯樹に食べてみるよう促されたので、全員分の配膳が終わった後は音頭を取ってオムレツに舌鼓する事となった。

 

 「あっ、これ!」

 

 つくしが箸でオムレツを2つに分けると、中から焼きそばが出てきたのだ。

 

 「もしやオムそばか?」

 「そう。彩と透子が好きな物を足して2で割ったんだよ」

 

 どうやら彩の好物のオムライスと、透子の好物のカップ焼きそばから着想を得たようで、それらを取り組んで今回の献立にしたようだ。京介は彩と透子に勉強にやる気になってもらうように考えた末の結果であると密かに推測した。

 

 その後は全員が完食して、食休みという事で1時間の休憩が設けられた。その間、各々が気分転換に談笑したりスマホを弄って休憩を時間いっぱいまで満喫する事となった。

 

 「さて、そろそろ休憩を終わりにして勉強の続きをしようか」

 

 そして1時間が経過して、颯樹は手に参考書を持ちながら続きをするよう促していると、一冊の本が彼の足元に落ちた。

 

 「颯樹先輩、何か落ちましたよ〜?」

 「あっ、ホントだ」

 「アンタでもウッカリする事が…なになに、『誰でもできる催眠術入門』?」

 

 偶然颯樹の隣にいた京介が呆れながら落ちた本を拾うと、タイトルを見て思わず読み上げた。

 

 「その本か。実はな…」

 

 颯樹は京介からその本を受け取ると事情を説明し始めた。曰く『紗夜が没収したものだが、学校に置いておくとごく一部の生徒達の目に入ったら騒動が起こる事を懸念したけど、かと言って持って帰ると日菜の目に入ったら悪用する事は目に見えているので、預かり期間が終わるまで僕が預かる事になった』との事である。

 

 「ふーん…ルイ」

 「やらないわ」

 

 「千聖ちゃん」

 「やらないから」

 

 颯樹の話を聞き終えた透子と彩は早速試しにやってみるも、頼み込んだ相手が悪かったので即座に一蹴された。

 

 「「颯樹くん/さん!」」

 「……分かったよ。少しだけな」

 

 すると今度は間髪入れずに颯樹に頼み込んできた。颯樹は頭を抱えながら渋々了承するのであった。その際京介と千聖と瑠唯に糾弾されるも、『このまま2人が騒げば勉強どころじゃなくなる。だからサッサと終わらせて勉強に戻った方が懸命だ』と弁明を受けたのだ3人も渋々付き合う事になった。

 

 「…それじゃ、この本に書いてある簡単な『催眠誘導』ってのから実践しようか。まずはこの指を見て下さい」

 

 颯樹は本を読みながら実際に催眠術を行なった。ちなみに今催眠術を受ける側はましろと花音で、今2人は颯樹の人差し指を見ていた(ついでに言うと、ましろと花音はじゃんけんで負けて催眠術を受ける事となった)。

 

 「‪あなたはだんだん‬‪意識がぼんやりとしてきます‬。‪そのまま~見続けてください。‪ほ~ら。だんだんと‬‪意識がぼんやりしてきます~私がパンと手をたたくと‬‪あなたは‬‪夢の世界に落ちていきます‬。‪3・2・1、ハイ…って、えっ⁉︎」

 

 ましろ達が颯樹の人差し指を注視していると、颯樹は更に本を読みながら催眠術を続けた。そして最後に手を叩いた。しかし、ましろと花音はいつのまにか熟睡していたのであった。颯樹達はただただ驚くしかなかった。

 

 「ホントに熟睡してる〜……」

 「解いた方がいいな、こりゃ」

 「そうするよ。えーっと…‪それじゃあ貴女達は肩に触れられると‬‪催眠が解けます。1・2・ハイっ!‬‬」

 

 効果が効いているのか否かの状態なので、颯樹は解き方を読み上げると同時にましろと花音の肩を触って催眠術を解いた。すると、2人の目が覚めた。

 

 「あれ…えっと……颯樹さん、続きは?」

 『えっ⁉︎』

 

 目が覚めると、ましろは続きをするよう促し始めた。当然全員は驚くのは言うまでもない。

 

 「手を叩いた後に何をするの?」

 「待って下さい、2人とも!さっきまで何があったか覚えてないのですかっ⁉︎」

 「「?」」

 

 2人の発言に違和感を抱いた莉々は先程の事を覚えてないのか確認するも、2人はただただ頭に疑問符を浮かべながら首を傾げるしかなかった。

 

 「じゃあルイ、今度はやってくれ!」

 「イヤって言ってるでしょ?」

 「千聖ち「やらないから」そんな……」

 

 そんなましろ達を尻目に、またしても透子と彩は瑠唯と千聖にやるよう促すも、先程と同じ反応で返すしかなかった。しかも千聖に至っては彩が言い切る前に一蹴した。

 

 「2人とも、此処は一旦乗ってくれ。此処でこの2人が騒ぎ出すと勉強が進まなくなる。だから少しだけ付き合ってくれ、頼む」

 「俺からも頼む」

 

 この後の事を考えたのか、颯樹と京介は千聖と瑠唯に頭を下げて懇願した。2人は、流石にそこまで頼まれると拒否するのは気が引けたのか、渋々付き合う事となった。

 

 颯樹は本を読みながらまた催眠術のかけ方を実践した。しかし今度はそうも上手くいかなかった。颯樹の指を眺める事およそ約10分で漸く千聖が眠りにつくのだが、瑠唯は催眠術にかかっていない状態であった。

 

 「……京介、一旦僕と交代してくれ」

 「ハァッ?」

 「頼む。お前が相手なら瑠唯もかかってくれると思って……。此処はこんな茶番終わらせると割り切って交代してくれ」

 「……しょうがないなぁ」

 

 更に10分くらい経っても瑠唯は一向にかかってない現状に痺れを切らしたのか、一旦京介と役割を交代する事になった。

 

 「ピンチヒッター交代……それじゃあ、この指をよく見て下さい」

 「……グゥ」

 「いや、いくら何でも早すぎだろ。お前いつのまにそんなにチョロくなった?」

 

 交代して颯樹と同じ動作の台詞をした京介であるが、即座に瑠唯は眠りについた。あれだけ颯樹が催眠術をかけても効果がなかったのに、京介が実践したらものの数秒でかかるのだから驚くのも無理はない。

 

 「……待て、これルイにいろいろやりたい放題じゃね?」

 「千聖ちゃんにいろいろとやりたい放題ができるよ」

 「バカ2人がなんか良からぬ事を企んでいるんだが?」

 

 しかしこれを好機を捉えたのか、透子と彩は目を光らせた。

 

 「やめとけって、2人とも。此処で瑠唯達に暗示をかけた後に解いたら追求されるのは目に見えてるから。即座にバレて説教されるのがオチだよ」

 「「大丈夫。バレなきゃ問題無いから」」

 「此処には既に目撃者は多数いるぞ?…てかあと此処までくると清々しいなオイ」

 

 京介は説得という名の忠告を試みるも、彩と透子は彼の忠告に対して聞く耳すら持たなかったようでサムズアップで返した。

 

 「…颯樹さん。アンタからもこのバカ2人に何か言ってやってくれ」

 「…まだ何も暗示をかけてないから流石に早計だ。暫く様子を見ておこうか」

 

 確かに颯樹の言う通り、この時点ではまだ2人は何もしてないので、敢えて傍観する事となった。京介も渋々それに付き合うのであった。

 

 「『‪2人はだんだん‬‪開放的な性格になります‬』…とかはどうかな?」

 「あっ、それいいですね!それなら『理性がなくなり‬‪身も心も丸裸になってしまいます』…も付け加えるとか!」

 「…前言撤回していいかな?」

 「「した方がいい。(よ?) というか早く止めないと」」

 

 すると2人は冗談交じりでとんでもない事を言い出し始めた。颯樹も、これには思わず頭を抱えて、さっきまでの自分を殴りたくなる気持ちになった。京介といつのまにか話に割り込んだ花音に止めさせるよう促された。

 

 しかし2人はまだ気づかなかった。冗談交じりで言った時に彩は千聖の、透子は瑠唯の()()()()()()()()()()()……。

 

 すると突然、目が覚めたのか、2人は何故か起き出した。しかし2人の目には何故か目に光がなかった。

 

 「……邪魔」

 

 起き出した千聖は立ち上がると自分の上着を脱ぎ出した。しかし…

 

 『⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎』

 

 今度は立て続けにスカートを下ろした。それに連なるように瑠唯も立ち上がって、スカートを下すのであった。

 

 「待て待て待て!何故急に脱ぎ出すんだ2人とも!」

 「そういえば『開放的な性格になって‬身も心も丸裸になる』って……」

 

 目を泳がせながら、彩は気まずそうにそんな事を呟いた。その一言でその場にいた全員は心が一つになった。止めないと大変な事になると。

 

 「「それじゃあ私が肩に触ると‪催眠が解けます!‬‪1・2・ハイ!」」

 

 即座に颯樹は千聖の、京介は瑠唯の肩に手を置いて催眠術を解く暗示をかけた。しかし何故か2人は手を止めなかった。

 

 「ふぇぇ…止まってないよぉ……」

 「それじゃ、彩先輩ととーこちゃんがやってみたらどうだろ〜?」

 「「それじゃあ私が肩に触ると‪催眠が解けます!‬‪1・2・ハイ!」」

 

 七深のアドバイスを聞いた2人は早速試しに先程颯樹達がやった事と同じ暗示をかけた。しかし止まる気配全く無く、2人はついに下着姿になった。

 

 「うわっ。ルイのやつエッロいの着てる……絶対勝負下着だろコレ」

 「千聖ちゃんもだ……もしかして夜に颯樹くんを誘惑するために……!」

 「言ってる場合じゃないでしょ!早く2人を止めないと!」

 

 元凶2人は瑠唯と千聖の下着姿をマジマジと見ていると、当然のようにつくしから注意を受けた。だが状況は既に進んで、2人はブラジャーのホックに手をかけ始めた。

 

 「みんなー、お待たせー!」

 

 しかしその時、ひまりがリビングに入ってきた。どうやら部活が終わったようで、着替えてから準備をしたのか、少し汗だくになっていた。その時颯樹はひまりに事前に『玄関の鍵は開いてるから入ってきていいよ』と入れてた事を思い出したのだが、このタイミングは悪いと感じた。

 

 「って、ふぎゃっ⁉︎」

 

 リビングに入ってきたと同時に、ひまりは何故か足元に転がってた参考書に躓いてしまった。その時、彼女の手に持ってた鞄からペットボトル2本が飛び出て宙を舞った。そして……

 

ゴチンッ‼︎

 

 奇跡的…と言うべきか、瑠唯と千聖の頭にペットボトルが見事に直撃するのであった。直撃した2人は、その場から倒れるのであった。

 

 『た、助かった……ありがとう我が救世主ひまり様……』

 「えっ、何この状況……?」

 

 起き上がったひまりは何故かこの場にいた全員に称賛の言葉を浴びるのであった。理解に追いついてないひまりに、京介は何が起こったか軽く説明をするのであった。

 

 「…あれ、何で私達床で寝てるの……?」

 「私達はさっきまで……」

 

 その最中、タイミング悪く千聖と瑠唯が起き出した。しかも目に光が宿っているので催眠術は完全に解けたようだ。

 

 「あの、2人とも…起きて言うのもアレなんだけど……」

 「「?」」

 「服、着た方がいいよ…?」

 

 起きた2人に花音は身だしなみを指摘した。すると2人は身だしなみを確認すると、花音の指摘通りになったのか顔を赤く染めて咄嗟に身体を腕で隠した。

 

 「なっ、何で……⁉︎」

 「私達の記憶に存じ無いから、おそらく催眠術にかかってこのような身なりになったのかと…」

 「冷静に分析してる場合じゃないでしょ⁉︎あー…颯樹に変なところを見られ…!」

 

 千聖が今の現状に愚痴を入れようとしたが、何かに気づいたようで途中で言うのをやめた。

 

 「…ねぇ、花音?もしかしてあの2人も見ていたのかしら?」

 「えっ…う、うん。勿論見てたよ?」

 

 花音に問い詰めると、彼女からの返答を聞いた千聖はすぐさま颯樹と京介を見た。しかし2人は千聖達に視界に入らないように目を逸らしていた。

 

 「ねぇ、貴方達?」

 「「‼︎」」

 「「見てた、かしら?」」

 

 今度は瑠唯も交えて颯樹と京介に問い詰めてきた。予測していた2人は視線を合わせてアイコンタクトを取った。そして……

 

 「「この人、バッチリ見てました」」

 

 2人はお互いを指差してカミングアウトするのであった。

 

 

 「「えっ?」」

 

 暫し沈黙が入ると、お互いは間の抜けた声が出た。

 

 「えっ、何?お前そこ普通『すみません、見てました』だろ?」

 「それブーメランになってるぞ?アンタこそ何言ってるんだ?」

 「それはこっちのセリフだ!お前が先に正直に言うだろ!」

 「なんだとぉ⁉︎アンタは思いやりってもんがないのか⁉︎」

 「「グヌヌヌヌヌッ……!」」

 「お前ってヤツはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 「この、馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」

 

 颯樹と京介はお互いの意見の食い違いから、口喧嘩から本格的な喧嘩に発展し始めた。それを証拠に、2人はお互いの蹴りが交じりあった。

 

 「貴方達?何処ぞのロボットアニメのパロディはやめなさい。その反応を見るに『見てた』って解釈でいいのよね?」

 「「いやー、そのー……」」

 「み・て・た・わ・よ・ね?」

 「「み、見てました……」」

 

 2人の喧嘩に千聖が割って入ると、間髪入れずに問い詰めてきた。2人は曖昧な答えで誤魔化そうとするも、彼女の剣幕に圧倒されたのか、土下座しながら正直に答えた。

 

 「そう。それでは、私達に恥をかかせるような事を唆した愚か者は誰ですか?」

 「「あっ、それはあの2人です」」

 

 今度は瑠唯が質問をするも、2人は即座に答えながらコッソリ逃げようとしている彩と透子を指差した。しかも、蚊帳の外であるましろや莉々達(厳密にはひまり以外だが)も2人を指を差した。

 

 「そう……彩ちゃん、私達と少ぉーしだけオハナシしようかしら?」

 「大丈夫、そんなに時間は取らせないわ。逝くわよ、桐ヶ谷さん?」

 「いや!ちょっと待って、千聖ちゃ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 「待てルイ!絶対『いく』の字ちが…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 千聖は彩の、瑠唯は透子の首根っこを掴んで別室まで連行していった。その光景を見ていた颯樹や京介を筆頭とした他のメンバー達は、2人の冥福を祈り十字を切るのであった。

 

 しかしその後、彩と透子の説教は終わったのだが、『女子の下着姿を見た』罪に問われた2人は色々なモノを搾り取るオシオキをする羽目になったのだ。ちなみに京介は瑠唯、颯樹は千聖がオシオキ担当するのだが、その際、瑠唯のところにましろと七深、千聖のところに花音と莉々も加わる事となり、それ以外は特に問題なく2人のオシオキが執行されたのだった。

 

 ちなみにリビングには、何も聞いてないフリしながら勉強するひまりとつくしと、下着姿で正座させられている彩と透子の姿しかなかった。

 


 

 数日後、千聖と瑠唯のスパルタの勉強法を残りの期間で頭に詰め込んだからか、彩と透子は問題のテストを無事パスする事に成功したのだ。しかし、それだけでは終わりでなかった。

 

 先日の一件の事もあって協議した結果、彩はマネージャー業務を、透子は生徒会の生徒会業務を千聖と瑠唯の見張り付きで2週間勤める事となった。ちなみに颯樹と京介も例外ではなく、颯樹の場合は『2週間千聖の言う事を聞く』というものであった。京介の場合は…

 

 「瑠唯、少し近い…いや、近づきすぎだから離れてくれない?」

 「イヤです♪」

 

 今京介は月ノ森の生徒会室で生徒会の仕事を手伝っていた。何故そうなったのかと言うと、京介に課せられたのは『瑠唯の誕生月であるため、今月いっぱいは瑠唯のそばに出来る限りいる』というもので、そのために『人事交流』を盾に、京介は月ノ森に『出向』という名の『短期留学』ために訪れていたのだ。

 

 ちなみに此処までの手筈は瑠唯が生徒会長である優奈と交渉した結果、実現したのだ。あと此処でうるさいのは桜雪なのだが、彼女は日菜と共に『学校侵入計画』を密かに企てていたのだが、何処からか情報が漏れてたようで計画は破綻となり、長時間の説教の末、日菜とともに1ヶ月間花咲川に『出向』している最中であった。

 

 「うぇーん!ルイ、もう少し減らしてー!」

 「駄目よ桐ヶ谷さん。それが貴女のノルマよ」

 

 机に置いてある書類の山に嘆きながら透子は瑠唯に懇願するも、彼女に即座に一蹴されるのであった。

 

 「それと京介さん。今夜も激しい夜にしましょう♪」

 「Oh…マジか……」

 

 生徒会室にいる全員が書類作業に没頭しているため(透子は知恵熱で机に突っ伏しているが)周りが静まりかえっているのと仕事に集中している隙を見計らって瑠唯は小声で京介に耳打ちをするのであった。

 

 ちなみに瑠唯の言った事は桜雪が聞いたら激怒不可避な内容だが、その桜雪は優奈の道場でお世話になっているのであった。

 

 瑠唯の耳打ちを聞いた京介は、やれやれ…と言わんばかりに彼女の誕生日に何を贈るか考えつつ、目の前にある書類に目を通して、事務作業に集中するのであった。




 まずは読んでくださった方、お気に入り登録をしてくれた方、こんな拙作を応援いただきありがとうございます!こんな拙作読んでくれるだけでもありがたいです。

 毎年、話の後半に誕生日パーティで締めを括っていましたが、今年は趣向を変えてそれとは全く別の話にしてみました。

 今回は色々と他作品でやってたネタを出してしまった……。いやだって()()瑠唯が『ピシガシグッグッ』をやるなんて誰が想像つきます⁉︎誰も予想できませんぞ!

 あと後半は『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』(以降、ロシデレ)で作中やってた催眠術ネタも盛り込みました。なので少し冒険という名で誤魔化した暴走をしちゃいました(・ω<) テヘペロ

 次回の更新は未定ですが、来年の1月13日のレイヤの生誕記念回と2月19日のましろ生誕記念回は確実に投稿します。しかし今年の更新は他の小説になります事をお伝えします。

 それでは、また次回。




 ※今回は(番外編ではありますが)初登場となる、『咲野 皐月』様考案のオリジナルキャラである『白咲 莉々』のプロフィールを掲載します。

【名前】白咲(しらさき) 莉々(りり)
【性別】女 【年齢】16【学年】高校一年生
【誕生日】4月29日【学校】月ノ森女子学園
【性格】真面目で曲がった事を好まない
【身長】154cm 【体重】本人の意向により非公開
【イメージCV】鈴木みのり
【設定】
 月ノ森女子学園高等部に通う一年生で、清楚で純真で真面目な大和撫子の印象が強く、一見すれば窓際の令嬢のようなか弱さが伺えるが、名家のご令嬢というだけであり、芯はとても強く、行動に迷いを見せる事が無い。だが如何せん思い込みが激しい一面があり、それとやる気に生真面目さが空回りを見せる事が多く、失敗も多いのが玉に瑕。

 月ノ森女子学園へと通うきっかけは、一種の社会勉強として言う物。本人にその気は無く、ただ『普通の女子高生として過ごしたい』と思っているらしいのだが、家族からしてみれば、彼女が学内で何か粗相をやる気が気で気が無いからと心配との事。

 颯樹の事は『兄様』と呼び慕っており、彼の両親と自分の両親に繋がりがあるとの事を巧みに利用し、あの手この手でアピールするとか。なお、それに関しての思い切りはかなりいい。

 ……ちなみに余談だが、周りから言わせて貰えば、莉々に関しては『莉々(さん)って、もしかして重度のむっつりスケベなのでは……?』と思ってるらしい。

【服装】
 和装の確しっかりとした装いが多く、年相応のした事が颯樹の家に宿泊に行った時くらいしか無い。黒髪のロングヘアで、アメジストを思わせる眼をしている。

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