白き蝶に導かれて……   作:なかムー

18 / 50
 皆さまお待たせしました。

 今回は毎年恒例のましろ生誕記念回をお送りします。

 それでは、本編をどうぞ。


倉田ましろ生誕記念回2025 空想少女に差し伸べる看病の手

 暦上では春ではあるが、まだ冬の寒さが連日続いている今日この頃。この日は平日ではあるが、京介は学校にも行かず読書をしていた。

 

 というのも、彼が通ってる羽丘は、この時期になると3年生は卒業式まで自由登校になる上に、仮に行ったとしても自習くらいしかないのだ。尤も、卒業式のリハーサルなどは行なわないといけないので、決められた日に限って登校するのはやむなしであるが。

 

 そんな京介であるが、今期の生徒会長なのだが…次期生徒会長の後任の詳しい引き継ぎなどの打ち合わせがあったのだが、それは無事先日終わらせる事が出来たので今は休息も兼ねて登校もせずに本を読んでいるのだ。

 

 しかし普段と違うのだ。何故なら京介が今時点でいる場所は彼の自宅で無いからだ。それを証拠に、彼は座椅子に座っており、クッション代わりとはいかないが、彼には似つかわしくない程可愛いらしいぬいぐるみを傍らに寄り添っていたのだ。それと一つ変わっている所があるとすれば、京介がマスクを着けている…くらいだ。

 

 そんな京介が今いるのは…

 

 「……コホッ、コホッ」

 「大丈夫か、ましろ?」

 「はい…」

 

 読書中に小さく咳の音が部屋中に響く…とはいかなくても聞こえたのだ。咳をしたのはましろであるが、その当の彼女は顔を赤くして額に熱冷ましのシートが貼られているのだ。

 

 今現在、京介はましろの家で彼女の看病に徹しているのだ。何故そうなったかというと、数時間前まで遡った。

 

***

 

 数時間前……

 

 「よしっ、予約はコレで完璧。あとは当日を待つのみだ」

 

 この日京介は普段学生が行かないような繁華街…所謂銀座に足を運んでいた。周りを見渡すと…老舗と思わせる寿司屋や高級ブティックなど、学生の身分である京介が浮いているように感じた。

 

 しかしそんな京介であるが、何故普段行かないような所に足を運んだのかというと、目的は銀座にある洋菓子店にあるのだ。

 

 近日、ましろの誕生日が迫っており、先日Morfonica全員でお泊まりした際にテレビのバラエティで銀座の特集を放送していて、その中でも此処にある洋菓子店のケーキに目を輝かせながら見惚れていた上に「誕生日にこのケーキが食べたいのですけど、いいですか…?」と尋ねられたのだ。

 

 ましろは一般家庭なのもあってか普段からそういったものには手が届かないのか、あるいは羨望しているようにも捉えられるのだ。

 

 その後の本人以外全員集合の誕生日パーティの会議で真っ先にこの一件について議論する事になったが、満場一致でOKが出たので誕生日当日にそこのバースデーケーキを出す事となったのだ。

 

 そして自由登校である京介が自ら来店、予約をしたのだ。

 

 「さて。予約も終わった事だし、夕方の練習までまだ余裕があるからこの辺で昼飯にするかねぇ」

 

 予約も無事に済ませた後は、普段は行かない場所であるため、此処は少しだけ背伸びしてこの付近で外食してから午後の用事に臨もうとするのであった。

 

 しかし何を食べるか考えている最中に突然彼のスマホから着信音が鳴り響いた。相手を確認すると、ましろの母親であったのだ。

 

 ちなみに余談だが、京介は一年程前からましろの母親とは連絡先を交換しており、ましろ関連で何かあると個人的に連絡が来るのだ。しかし数回もすれば慣れるので、何一つ表情を変えずに電話に出るのであった。

 

 「はい、もしもし」

 『もしもし。京介くん、今ちょっといいかな?』

 「なんでしょう、おばさん?」

 『もう、『おばさん』はやめてって言ってるでしょ?正しくは、義母(かあ)さん、よ♪』

 「は、はぁ…」

 

 しかし顔色一つ変えない京介でも、ましろの母親にだけは頭が上がらずじまいである。通話やましろの家にお邪魔した際には一回は必ず『お義母さん』呼びをするように言ってくるのだ。これには京介も正直タジタジなのだ。

 

 だがましろの母親からしたら京介は『娘の彼氏』といっても過言ではないので、本人からしたら内気な娘が高校に通って一年も満たずに彼氏が出来たと報告されたら嬉しいと思うのは至極当然であるが。

 

 「それで()()()()()。俺に用事があって連絡してきたんですよね?何かあったのですか?」

 

 京介はやれやれと言わんばかりであったが、このままだと話の論点がズレるどころか進まなくなる危険性を悟ったようだ、すぐさま訂正して話の軌道修正を図るのであった。

 

 『そうねぇ…実はましろちゃん、今日風邪を引いちゃったのよ。その話は知ってるかしら?』

 

 その話は京介も今朝聞いたばかりだ。朝イチにましろから電話が来て、「風邪を引いたから今日の練習は来れそうにない」と言った主旨の内容の連絡を貰ったのは記憶に新しい。

 

 「当然知ってます。それがどうしたのですか?」

 『実は今さっき夫の友人が入院したって連絡が来たのよ。夫は今出張中だから、私が夫に代わってお見舞いに行かないといけなくなっちゃったのよ。だから私が留守の間にましろちゃんの看病を貴方にお願いしたいの』

 

 それはましろの母親からの、娘の看病の申し出であった。確かに急用が出来てしまったのなら、内容次第では其方を優先しなければならないのだ。

 

 しかし何故自分が自由登校なのをましろの母親は知ってるのか疑問に思うも、先日透子とましろの家にお邪魔した際、透子がお茶を飲みながら大きな声で『自由登校って羨ましいなー』って愚痴を入れていたのを思い出した。その時にましろの母親もリビングで小耳に挟んだようで、おそらく今日も自由登校だろうと予想して自身に連絡を入れたのだと推測するのであった。

 

 「……分かりました。俺が彼女の面倒を見ますよ」

 『ホントに⁉︎ありがとう、京介くん♪』

 「大丈夫ですよ。では色々準備しなきゃならないので少しばかしお時間を貰えると助かります」

 『大丈夫よ、気にしないでね』

 

 そういうとましろの母親は電話を切った。通話を終えた京介はすぐさま行動を開始した。

 

 まずは一度家に帰って、看病に必要な道具や私物をショルダーバッグに詰めて、使い捨てマスクを着けてましろの家に行く事となった。

 

 その後はましろの家に行く前に近くのスーパーやコンビニで足りない物を買い足しも含める事およそ数十分後、目的地であるましろの家に到着すると、まずは家のインターホンを鳴らしてましろ以外誰かいないか確認した。

 

 すると1分もしないうちに玄関のドアが開かれた。するとそこにはましろの母親がいて、京介を出迎えてくれたのだ。

 

 「お待たせしましたおば…お義母さん」

 「大丈夫よ。こっちも急なお願いを聞いてもらったから。さぁ、上がってって?」

 「失礼します」

 

 京介がそういうと、ましろの家に入っていった。その後はましろの母親が直接、ましろの部屋まで京介を案内するのであった。そしてましろの部屋に入ると、まず目に入ってきたのは額に熱冷ましのシートとマスクを着けてベッドで寝込んでいるましろであった。

 

 しかも熱が高いのか、咳は止まる傾向は無く、顔は真っ赤に染まっているのであった。

 

 「ましろちゃん、大丈夫?」

 「お母さん…?」

 「今京介くんが来てくれたの。ましろちゃんの看病をしてくれるって」

 「京介さんが…?」

 

 母親に言われて顔を上げると、京介の姿を確認したのか、安堵に近い表情を浮かべるのであった。その後はましろが飲む薬を京介に渡して、どのタイミングだったり、どうやって飲ませるかを詳しく教えるのであった。

 

 「じゃ京介くん、あとはお願いね?」

 「はい、分かりました」

 

 一通り教え終えると、ましろの母親はお見舞いに行くための準備を手早く済ませた後はそのまま外出するのであった。京介はそれをただ見送る事しかできなかったが。

 

 「さて、具合はどうだ?ましろ」

 「まだ治ってま…ゴホッ、ゴホッ」

 「分かったからとりあえず寝てな…と言いたいが、まずは体温を測ろうか?」

 

 ましろは京介にそう呼び掛けられると、身体を少しだけ起こすも咳をし始めた。此処は無理をさせずにいきたいところであるが、まずは体温を確認してから次どうするか考えること事にしたのだ。

 

 数分後、体温計の測り終える音が鳴った。体温計に表示されたのは、37.6℃とまだ熱は高かった。

 

 「これじゃまだ無理そうだな…とりあえず寝てないとな?」

 「分かりました…」

 

 体温を測り終えると、ましろは布団の中に潜り込んだ。京介も立ちっぱなしのままではなんなので、ひとまずましろに一瞥して部屋の座椅子に座ると、バッグから本を取り出して読書を始めるのであった。

 


 

 ……といった事がこの数十分の間で起こったのだ。まさか急にましろの看病をやるとは思いもしなかったようで、まだ戸惑い気味であったのだ。

 

 咳が一旦止んだようで、安堵のため息をついてまた読書に入ろうとしたその時、突然空腹感を抱いたのだ。

 

 時間を確認すると、昼の12時を過ぎていたので、読書を一旦止めて、瑠唯とつくしに『ましろの家で看病する事になったから来れそうにない。だから今日は個人練習だと伝えてくれ』と一報を入れてキッチンに向かうのだ。しかし昼食を作るのはあくまでもましろの分である。

 

 一応、薬の説明の際に『冷蔵庫の物は好きに使ってもいい』とは言われたが、流石に自分の分まで作るのは烏滸がましいと感じたようで、自身は此処に来る前に立ち寄ったコンビニで買った弁当で済ませるのだ。

 

 一応冷蔵庫の中を確認すると、ネギや卵、うどんがあったので此処はお手軽に作れる鍋焼きうどんにするのであった。

 

 ネギと…同じく冷蔵庫にあった油揚げを1人前カットした後、土鍋に水を入れて沸騰したらうどんを茹でて麺がいい感じにほぐれたらカット済みのネギと油揚げを入れた後調味料で味付けして溶き卵を入れて暫く煮込んで出来当がるのだった。

 

 作り終えると、鍋敷きを置いたお盆に乗せて再度ましろの部屋に向かうのであった。一応ノックして入ってもいいか確認を取って部屋に入ると、テーブルに先程作った鍋焼きうどんを置いた。

 

 「ましろ、昼飯作ったが食べれるか?」

 「はい、大丈夫…です」

 

 確認を取った京介はましろ優しく抱き抱えるとゆっくりと体を起こしてテーブル前に降ろした。

 

 その後は京介に食べさせて欲しいとましろにせがまれたが、一度断ろうとするも上目遣いで訴えかけてきた(しかも熱で顔が赤くなっていたので色気が感じ取れる事あったのもあったが)ので渋々彼女に食べさせる事となった。

 

 数十分が経過すると、ましろは昼食を完食した後、薬を飲んで暫く寝る事となった。京介も、ましろが眠るのを見届けると少しばかし遅い昼食を取る事となった。

 

 そしてゴミを自分のバッグに仕舞い、洗い物を終えると少しばかし休憩するため昼寝をするのであった。座椅子に寄りかかって暫く休息する事およそ数十分、京介は一度目が覚めてましろを確認すると、彼女はまだ寝息を立てていた。

 

 まだ起きてこないと踏んだ京介は、ましろを起こさないようにコッソリと部屋を抜け出して一度キッチンに向かった。そして先程立ち寄ったスーパーで買ってきたリンゴを水でサッと洗い、皮を剥き始めた。しかしそれだけでは面白味がないので、ウサギさんカットにして皿に並べるのであった。

 

 それをお盆に乗せて部屋まで運んだ。そして部屋に入ると、上半身を起こしているましろの姿があった。

 

 「どうだましろ?身体の調子の方は」

 「大丈夫です。ただ…」

 「ただ…なんだ?」

 「汗が凄くて…」

 

 毛布や布団にくるまって長時間寝ていた事もあって、ましろの身体は汗で蒸れているようであった。

 

 「それで京介さん…身体を拭いて貰えます、か…?」

 

 それに立て続くようにましろがそんな事を頼み込んできた。流石にそこまではする気の無かった京介であるが、上目遣いで尚且つ熱で顔が真っ赤になっているためなかなか断りにくいのだ。しかし先程の光景とデジャヴであるが、今回の場合は意味が違っているので、躊躇いが生じるのだ。

 

 しかしいくら断ろうと、京介が「はい」と言うまで頼み続けるのは目に見えていたので、『背中だけなら。他は自分で出来るところまで』という条件の元、了承してくれた。

 

 のだが…

 

 「あっ、あぁぁん♡

 

 京介が背中を拭く度にましろから嬌声と捉えられるものが飛び交うのであった。しかも背中を露出している状態のため、それが年齢以上に艶やかに見えるのであった。

 

 ましろの背中を拭いてあげる事およそ数分後、漸く背中を拭き終えた。しかし今度は立て続けにましろはパジャマの上を勢いよく脱ぎ出したので、京介は慌てて今のましろを視界に入れないように咄嗟に後ろを向いた。

 

 そこから暫くすると「拭き終わりましたよ」と言われたので京介はましろの方を振り向いた。しかし…

 

 「はい、捕まえました♡」

 「ハイィィィィィ⁉︎」

 

 急にましろに抱きつかれたのだ。しかもこの時のましろは上半身を露出している状態で京介に密着しているのだ。しかし彼女の言っている事に嘘は無かったようで、汗はちゃんと拭かれていたのだ。

 

 「ま、まままままままままましろちゃん⁉︎何やってるのかな?」

 「ナニって…お礼です♡」

 

 京介に尋ねられるも、ましろは彼の身体に擦り寄りながらそんな事を言っていた。しかも頬も赤くしているので何処か官能的であった。

 

 「あのな、ましろ。今は流石によそうな?」

 「前はちゃんと抱いてくれたのに、ですか?」

 「今はそんな事言うんじゃありません」

 

 熱のお陰(せい)で色々と可笑しくなっているようだ。京介は心中ため息をついてどうするか考えていた。

 

 「ねぇ、キス…しましょ?」

 「えあっ?」

 

 ましろが突然そんな事を言い出したのだ。しかも普段は器用ではない方なのに、今回に限っては抱きつきながら京介のマスクを片手で器用に外してきた。

 

 「あ、あのましろ!ましろさん!ましろちゃん⁉︎」

 

 京介は呼び方を変えて呼び止めるも、ましろは一向に止まる気配は無かった。そして京介とましろの顔があと数センチにまで達した。しかし…

 

 「ただいま〜、ましろちゃんに京介くん。ましろちゃんは体調はどうかし…あらっ♪」

 

 部屋の扉が急に開かれて誰かが入ってきた。そこにはましろの母親がいたのだ。片手には紙袋を持っており、見舞いが終わって帰宅してきたのは窺えるが、今の2人の姿を見て何処か微笑ましい表情で2人を見ていた。

 

 「それじゃあ、ごゆっくり〜。私はその間に孫の名前でも考えておくから」

 「ちょっと待ってお母さん!

 「それは流石に気が早すぎます!

 

 母親に勘違いさせたましろと京介は慌てて制止に入るのは言うまでもなかった。

 

***

 

 「だからましろちゃん、あんなに寝込んでたんですか…」

 「シロ、やるぅー!ねー、きょーさん!」

 「2人とも、その話はそろそろやめてくれ…」

 

 ましろの母親が帰宅してから1時間程が経過して、他のMorfonicaのメンバーがお見舞い目的で来訪してきた。上がった際にましろの母親から先程の事を聞かされたのか、つくしは苦笑いしながら、透子はニヤニヤしながら京介に問い詰めていたのだ。

 

 京介も思い出したくなかったのか、やれやれと言わんばかりに2人に制止をした。ましろも、自身がやった事に恥ずかしさを感じているようで、つくしの指摘通り今も布団にくるまっている。

 

 しかしそれを不服そうに瑠唯と七深が布団にくるまっているましろと京介を交互に見ていた。

 

 「あの瑠唯さん、七深さん。アンタらは何故俺と…ましろの方を見ているのでしょう?」

 「今度、私達にもやって貰えませんか?」

 「しろちゃんだけズルいですよ〜」

 「君らは病人じゃないでしょ…」

 

 ましろが羨ましいと感じたのか、今度は自身にもやってほしいと懇願し始める2人であった。京介と呆れながらため息をついた。

 

 「それなら今度お風呂に入ったらどう?」

 

 しかしその光景に透子が横槍を入れるように口を挟んできた。そんな事をされた京介は内容が内容のため、たまったものではないのであった。

 

 「ナイスアイデアだよ、とーこちゃん!」

 「桐ヶ谷さんにしてはいい考えね?」

 「あのアンタら、俺抜きで話をトントン拍子に進めないでくれない?」

 

 そんな中、透子のアイデアに七深と瑠唯はサムズアップをしながら賛成してきた。しかし京介は困惑しながら突発的な話の上に話の進み具合に対して指摘するのだ。

 

 「私も、京介さんと一緒にお風呂に入りたい、です…」

 

 このタイミングでましろが布団から顔を出して、この上とんでもない爆弾発言をするのであった。当然七深と瑠唯は目を光らせるのであった。

 

 「いくら病人とはいえ、それは流石に感化出来ないわ」

 「ホントそうだよ〜。しろちゃん、限度ってものを知ろう?」

 「それは今関係無いよ?」

 

 七深は黒いを浮かべて、瑠唯はましろに対して睨みつけていた。一方のましろも負けじと睨み返した。京介が止めに入る状況ではないが、透子はニヤニヤしながら傍観しているのだ。

 

 「あー、もう!こうなったら全員同時で京介先輩と入る!それで収まって!リーダー命令だよ!」

 

 しかし怒ったつくしがとんでもない爆弾発言を投下するのであった。一瞬時が止まったが、すぐさま現実に戻るのであった。

 

 「それはいいね〜、つーちゃん」

 「二葉さんの言う事に一理あるわ」

 「うん。つくしちゃん、アドバイスありがとう」

 「あの皆さん⁉︎それでいいのっ⁉︎」

 

 だがつくしが出した提案に対して、先程まで歪み合ってた3人だが、すんなりと掌を返して、それに乗っかるのであった。当然3人は満面の笑みを浮かべてサムズアップして返すのであった。

 

 《x xsmall》「……つくし、今度オシオキを執行するから覚悟してろよ?」《/xsmall》

 「……はい」

 

 八つ当たり気味に京介は提案者のつくしに耳打ちするのであった。今後の未来に対して色々悟った彼女は涙目でその事実を受け入れるしかなかった。

 

 その後は時刻が6時という事も相まって、そのまま倉田家で夕飯をご馳走になった後は、ましろ以外の全員帰路に着くのであった。ちなみに余談だが、翌日ましろは元気に登校する姿が目撃されたとかされてないとか────。

 


 

 そして数日後、ましろの誕生日当日────。

 

 「ましろ、誕生日おめでとう」

 「ましろちゃん、お誕生日おめでとう!」

 「しろちゃん、お誕生日おめでとう〜」

 「倉田さん、お誕生日おめでとう」

 

 「ありがとう、みんな…!」

 

 この日の主役であるましろは風邪を引いた数日前から今日まで、病気怪我をする事無く、無事誕生日を迎える事が出来た。

 

 場所は当然、普段からバンドの練習で使われている広町家のアトリエで、テーブルには先日予約注文したケーキとましろの好物であるビーフシチュー、ローストビーフやオードブルといったものまで並べられていた。豪勢とまではいかなくても、ましろの誕生日を祝う気持ちは充分にあるのは明白である。

 

 「シロー、誕生日おめでとうー…」

 

 しかしそんな中、1人だけテンションが違っていた。透子は真っ青になりながらましろの祝福をしていたのだ。普段からテンションの高い彼女は、こういった催し事には率先して祝うのに、今回に限っては後手になっているのだ。

 

 「透子ちゃん、大丈夫?」

 「昨日夜更かししたからちょっとな…」

 

 不安そうにつくしは尋ねるも、本人は大丈夫と言い張った。しかし、京介と瑠唯と七深の目は光っていた。

 

 「…瑠唯、七深。至急透子を取り押さえろ」

 「了解致しました」

 「ラ〜ジャー〜で〜す」

 「えっ、ちょっ、まっ⁉︎」

 

 何かを感じ取った京介は瑠唯と七深に透子の身柄を取り押さえるよう指示を出し、当の透子は両腕を抑えられて身動きが出来ない状態であった。その直後、七深は何処からか体温計を取り出して透子の口に無理矢理咥えさせた。数分後、体温を測り終える音が鳴ると、京介は透子の口から体温計を引っ張って取った。

 

 「熱は38.1℃…凄い熱じゃないか」

 「いやー…シロの誕生日を祝わないといけないし、ご馳走とか無駄になるから…」

 「絶対後者が目当てだろ」

 

 高熱であるのにも関わらずましろの誕生日に参加していたのだ。そうしてまで誕生日パーティに参加するのは呆れる他ないが、此処まで来ると褒めてしまいたくなる複雑な気持ちになる一同であった。

 

 「とりあえず2人とも。透子をすぐさま家に帰すから、逃げないように自宅まで同行しろ。それと電車だと逃げられる事もあるから、タクシーに乗れ。タクシー代は俺が払うから。あと透子の家族には俺が一報入れておいてやる」

 「了解致しました」

 「りょうかいで〜す」

 「待て、みん…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」

 

 京介からタクシー代を受け取ると、瑠唯と七深に引き摺られて透子は無理矢理連行されるのであった。

 

 「もしもし、透子さんのお祖母様ですか?お孫さん、熱が高いため今から送り届けます…えぇ、えぇ、はい。たった今お孫さんの学友が2人、同行して其方に向かってますので、帰宅次第彼女をロープなり鎖なりで拘束して逃げ出さないようにしても構いません。えっ?元よりそのつもりだって?はい、はい…分かりました。お時間取らせて頂きありがとうございます。また後日其方にお伺いしますので、それでは」

 

 透子が連行されるのを見届けた京介は、すぐさま透子の祖母に連絡を入れて事情を説明して、後日改めて来訪する約束を取り繕うのであった。ちなみに余談だが、京介は透子の祖母とも連絡先を交換しており、その事を知ってるのは、Morfonica内に限れば、透子以外の全員である。

 

 透子の祖母に一報を入れた数十分後、透子を(無理矢理)送り届けた瑠唯と七深が戻ってくると、少し遅くなったがましろの誕生日パーティが始まるのであった。その後はご馳走に舌鼓になったり、腹ごなしの余興としてボードゲーム等を充分に楽しむのであった。

 

 一方、その頃……

 

 「お祖母様ァー!病人に対してこんな扱いはないでしょー!」

 「透子!五月蝿いですよ!」

 

 透子は自宅にて、布団に簀巻きにされているのであった。帰宅直後、祖母の指揮の元で呉服店の従業員達に布団ごとロープで締め上げられて部屋で強制的に寝かされている状態であった。

 

 当然透子は不服を申し立てるも、祖母に一蹴されるのでした。




 まずは最新話の読了とお気に入り登録をしてくれた皆様、ありがとうございます。こんな拙作にお付き合いいただいた事に感謝感激です。

 次回の投稿日は未定ですが、そろそろ本編の投稿をしたいなと思います。ちなみに時期は早くても4月中になります。理由としましては、『舞い狂う仮面の人形と孤独の獅子の咆哮』の執筆に集中したいからです。せめてアニメ本編までの箇所は終わらせてから他の小説の執筆に励みたいと思いますので、その点はご了承ください。

 それでは、また次回。

R-18の小説を……

  • 投稿してください、お願いします!
  • しなくていいよ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。