今回は七深の生誕記念回をお送りします。
それでは、本編をどうぞ。
梅雨も真っ只中、雨もあって蒸し暑くなる今日この頃。Morfonicaがバンドの練習で使用している広町家のアトリエにて、七深とつくしが先に来ていた。
この日は、ましろ達がクラスの集まりがあるため遅くなるとの事だ。あとは京介なのだが、今日は生徒会の仕事はオフであるが、あいにく日直の仕事があるため、2人よりましろ達より早く来れるがそれでも遅れて来る事に変わりはないのだ。
しかし幸いな事に、今日は先日行われたライブの反省会と、夏休みにどの日に練習やライブを入れるかという打ち合わせなので、今日は練習は完全にオフとなっているのだ。
だから七深とつくしは全員が来るまで各々の自由時間を取っていた。それまで何をしようか考えたつくしだが、今日の授業で数日後に提出の課題のプリントがあった事を思い出したためすぐに着手した。
その後は着々と課題に取り組むつくしであったが、同時に今この場にいる七深の事がふと気になったのだ。チラリと横目で七深を見た。視線の先には何故かイーゼルに置かれたキャンバスの前でデッサンの姿勢を保っている七深の姿があった。
そういえば課題に取り組む前に、七深も参加するというコンクールで絵を出展する事を思い出したつくしであった。一体どんな絵を描いたのだろうか、そう好奇心を抱いたつくしは覗き込むようにキャンバスを見た。
しかしキャンバスには何も描かれていなかった事に驚くつくしであった。それと同時に、今の態勢で七深の顔が間近にあるため、今の彼女の状態がすぐに気づいた。
「…………」
今の七深はどこか上の空で、ボケーっとした状態で固まっていた。その視線はキャンバスか被写体として置かれている果物の入った籠かその後ろの壁か定かではない状態であった。
「七深ちゃん?」
「…………」
流石に心配になったつくしは肩を優しくチョンチョンと
「……な・な・み・ちゃん⁉︎」
「うわっ⁉︎」
業を煮やしたにやしたつくしは少し乱暴気味なのは承知の上であるが、七深の肩を叩いた。しかしやっと反応したようで、七深は慌てた表情を浮かべた。
「アレ?どうしたの〜、つーちゃん?」
「『どうしたの〜』、じゃないよ‼︎七深ちゃん、なんか変だよ?」
つくしに呼ばれていた事に気づいた七深は平静を保ちながら返すも、その表情からは焦りとも捉えられる表情であった。
「変じゃないよ〜。広町は平常運転です〜」
「とか言ってるけど手に持ってるのは鉛筆じゃなくて消しゴムだけど?それと利き腕が逆だよ」
七深は平然としながら絵を描こうとするも、つくしの指摘通り、
「……七深ちゃん、何があったのか私に話して」
「えっ、いや〜…その……」
「は・な・し・て?」
「わ、分かったよ〜……」
そんな七深の姿を見ていてもたってもいられなかったのか、つくしは何があったか問い詰めるも、当の本人は目を泳がせながら躊躇し始めたので、凄い剣幕で睨みつけた。
「わ、分かったよ〜。ちゃんと話すから怒らないで〜」
流石に
「実はね〜、つーちゃんになら言える事なんだけど…広町は今、病気にかかってるのかもしれないんだよ〜」
「び、病気っ⁉︎」
七深の口から語られたのは、衝撃の一言であった。つくしも目が飛び出るほど驚く始末であった。
「どこが悪いのっ⁉︎頭⁉︎お腹⁉︎それとも違うところ⁉︎」
しかし自分から尋ねた事なのでそのままにするわけにもいかず、つくしは慌てながら七深の病状を尋ねた。もし何かあれば自分が率先して病院とかを七深に通う事を薦める事が出来ると踏んだのだ。
「ううん。胸が苦しいの〜」
「胸っ⁉︎もしかして肺炎かなにか患った⁉︎」
「いや、肺炎のような症状は起きてないかな〜?」
すると七深は何処が悪いか告白した。つくしは真っ先に思いあたる病状じゃないか尋ねるも、七深にそれではないと返された。その後もスマホで胸の病気を調べてから七深に症状とか問い詰めるも、どれも該当するものはなかった。
「……それじゃ、どんな時に胸の痛みが出始めるの?」
「きょーさん先輩の事を考えた時」
思いあたる事を全て聞き終えたつくしは最後に症状の発生を最後に尋ねたが、七深は即答で返した…が、それを聞いたつくしは目が点になった。
「きょーさん先輩、来るの遅いなー…って考えてたらいつのまにか手が止まっちゃって作業に集中出来なかったの〜。しかも数ヶ月も前から起き始めたんだ〜。これはもしかしたら
七深は申し訳無さそうに謝るも、つくしは彼女の症状を聞いた時絶句した。しかもそれは呆れを通り越して、だ。まさか七深が恋煩いを患っていたのは驚きはしたものは、七深はそれに気づかずに病気と思い込んでいたのだ。
確かに七深は京介に好意を抱いている時期はあったが、おとなしく身を引いたまでは頭の片隅に置いてはいたが、まさか目の前の彼女は惚れ直した事までは無自覚であるのはある意味で驚いたが。
「…あのね七深ちゃん。それは恋煩いだよ」
「恋煩い?広町は誰に恋したっていうの〜?」
「京介先輩だよ」
「きょーさん先輩に?」
「うん」
「それを広町が惚れたってこと〜?」
「うん」
つくしとのやりとりを経て、七深は理解したのか顔を真っ赤に染めた。
「でも恋煩いとは限らないよ〜?だってきょーさん先輩がしろちゃんやるいるいといる時、羨ましいと感じる時もあるけど」
七深は顔真っ赤にしながら否定するも、その際自ら恋煩いを決定付ける墓穴を掘ってしまった。
「いや、七深ちゃん。それを恋煩いって言うの」
そんは七深に対してつくしは冷静に指摘した。一方の七深はつくしの指摘が正論と感じたのか何も言い返せなかった。それどころか顔を耳まで真っ赤に染めてショートしていた。
「…分かったよ。七深ちゃんの恋の手伝いはサポートしてあげるから安心して」
「ホントにっ⁉︎」
「喰いつくのが早いよ…」
七深自身、こういった事に関しては未経験である事、そしてその相手が一度身を引いた人物という事が合わさったからか勝手が分からなかったようなので、つくしが助け船を出す事にしたのだ。
しかしつくし自身もそういった事に対して経験が皆無なのでこれ以上の大口を叩く事は出来ないが、目の前の友達のために人肌脱ぐ事にしたのだ。
こうしてつくしは助力を求めるべくスマホを取り出してとある人物に連絡した。本来ならバンドメンバーに相談といきたかったが、そのうちのメンバー2人…ましろと瑠唯は恋のライバルのため必然的に相談対象の候補に外れ、透子は話せばましろ達の耳に届く事も恐れがあるのと、ある事ない事も脚色する危険もあるため除外したのだ。
連絡を取ると、七深の経緯を説明すると了承してくれたのであった。その後は京介やましろ達もアトリエに到着したため、暫しの休憩を挟んで打ち合わせをするのであった。
数日後……。
広町家のアトリエに、京介と七深はいた。この日は日曜日で、バンド練もオフで全員で何処か遊びに行こうと計画したが、生憎京介と七深以外は予定が入っていたため仕方なく別の日に行く事にしたのだ。
しかし七深の方もコンクールに出す絵のモデルをちょうど探していたため、
そのため、今現在七深は京介をモデルとしてスケッチしているのだ。しかも今京介は一丁前のスーツに身を包んでおり*1、椅子に足を組みながら座っていた。その他には、手にティーカップを持っており、紅茶を嗜んでいるような体勢であった*2。
七深はいつもより真剣な表情で京介や絵を交互に見ながら筆を動かしていた。キャンバスには今モデルとなっている京介が描かれており、完成まであと2割程度といったところである。
本来であれば此処までの完成度に達するのに時間は要するが、七深自身はあらゆる分野で高い才能の持ち主*3で、絵画を描くのに遅くても半日もあれば描き上げられるレベルであるのだ。
そして京介を、絵を交互に見つつ筆を動かして、少し色合いが合わなかったら絵の具の配合を少しずつ調整して修正を施す…といった作業を延々と繰り返すのであった。
そこから約1時間が経過して、七深は筆を動かしている手を止めたのであった。
「ふぅ〜…やっと完成しました〜」
「お疲れ様、七深」
「ありがとうございます〜。きょーさん先輩もお疲れ様です〜」
漸く完成したのか、七深は筆を置いて汗を拭った。京介もティーカップを机の上に置くとスーツを脱いでネクタイを緩めた。流石にもうスーツでいる理由は無いので一度私服に着替えようとした。
しかしその際、京介は七深の描いた自身の自画像に目が入った。キャンバスに描かれていたのは、写真と見間違えても疑ってしまう程の出来栄えで、『実は数時間前まで下絵すら描いてませんでした』と言っても誰もが疑うほどの完成度である。
「よく出来てるな…」
「ありがとうございます〜。実は広町も渾身の出来栄えだと自負してますよ〜」
普段は普通と言って謙遜する七深であるが、今回ばかりは自信があるようでドヤ顔で誇っていた。
「そうか…それなら準備して行こうか。ライブまでまだ余裕はあるけど早く片付けていこうか」
「そうですね〜」
普段は滅多に見たい七深の表情に京介は内心ドキッとするも、これからの予定を思い出したので、片付けをするよう促した。
実は京介は予定が空いている…といったのは正確にはつい先日の事で、実はこの日行われるRoseliaのライブに招待されたのだ*4。
その後は無事にチケットは確保したのだが、手違いが発生したのか
そして着替えを済ませた京介は、まだ片付けている七深の手伝いを経て、ライブ会場に向かうために広町家のアトリエを後にするのであった。
広町家のアトリエを後にして数十分後、2人はバスや電車で経由してライブ会場のある場所まで無事到着した。しかし肝心のライブの時間*6までまだ余裕があるので会場付近にあるショッピングモールで時間が来るまで散策する事にしたのであった。
しかし京介達がショッピングモールに向かう際、背後の物陰から2人組が彼らを覗き見していた。
「時間通り来ましたね」
「えぇ、そうね」
物陰からつくしと千聖*7が京介達を覗き見をしていた。
実は七深の話を受けたつくしは、相談相手として頼ったのが千聖で、彼女も七深の手伝いをする事にしたのだ。相談場所として利用していた羽沢珈琲店で相談兼打ち合わせをしていた最中に、偶然リサと友希那に話を聞かれたので事情を説明すると2人もサポートを買って出る事となったのだ。
その際、今日のRoseliaのライブが控えていたので「どうせならライブに行かせたら?」という提案を受けて、今回のライブに京介達を招待したのだ。
その後リサ達はスタッフ達に頼み込んで席を確保して貰って、京介に偶然を装ってチケットを渡した事により今回の一件が実現したのだ*8。
そして京介達は昼食をまだ済ませてなかったので、モール内にある飲食店でお昼を取る事にしたのだが…
「う〜ん、とても美味しい〜!」
「嗚呼。少しパンチは効きすぎているがな」
京介と七深は今ショッピングモール内にある本場の四川料理が味わえる中華料理屋でお昼を取る事にしたのだ。その際、2人は激辛麻婆豆腐を注文したのだが、汗は多少掻いている程度でそれ以外は特に無かったのだ。
「あの2人、よくこんな劇物を平気そうに食べるのね…」
一方、京介達の席から離れている千聖達は2人と同じ物を注文のだが、予想外の辛さで悶絶しかけていたのだ。普段は冷静な性格な千聖でさえも、口元をハンカチで抑えてはいるが、顔に辛いと出る程であったが、ちゃんと完食するのであった。
同席しているつくしは一口でほぼノックダウン状態であったが、流石に残して店を出るのはマナー違反であると捉えたのか、ヒィヒィ言いながらも千聖より遅く麻婆豆腐を完食した。
「千聖先輩。あの2人、おかわり頼んでるみたいです…」
「えっ⁉︎」
時間は多少掛かったが漸く完食したつくしが京介達がおかわりしている事に指摘した千聖は思わず驚いた。だがつくしの指摘通り、おかわりしたのであろう2杯目が2人の目の前に置かれた。どうやら自分達が麻婆豆腐と格闘している最中におかわりを注文していたようで、その奇行に2人はドン引きするしかなかった。
「お待たせしました、おかわりです」
しかし2人が放心状態になっている最中、突然2人の前に先程と同じ激辛麻婆豆腐が目の前に出されたのであった。
「あの…私達、頼んでいませんが?」
「あちらのカップルからです」
注文した覚えが無いので千聖が尋ねるも、店員の口からとんでもない一言が出た。千聖は我に返って京介達の座席を見た。すると、京介と七深は麻婆豆腐を食べているためか、千聖達を見ずに左手をピースマークを作って此方に向けていた。
「「(や、やられた…!)」」
此処で漸く千聖とつくしはあの2人に尾行していた事を気づかれてしまったのだ。だからこのような警告とも捉えられる行動を敢行したのだ。そして出された物を残すと碌な事が起きないと知っている2人は、泣く泣く激辛麻婆豆腐を口にするのであった。
「大丈夫かしら、つくしちゃん?」
「だ、大丈夫です…」
店を出ると、千聖は
「千聖先輩、どうします?あの2人がどこに行ったか分かりませんよ?」
「仕方ないわね…会場前に先回りして張り込むしかないわね」
「何処に張り込むって?」
「だから会場前に…⁉︎」
これからどうするか考えていた矢先、2人の背後から誰かが声を掛けてきたが、2人はこの人物に心当たりがあるのだ。2人が恐る恐る背後を振り向くと、そこには颯樹が腕を組んで此方を睨みつけていた。
「な、何故颯樹が此処にっ⁉︎」
「何故もないよ。たまたまここら辺に用事*9があったんで、それついでに見えたから声掛けたんだけど……何をやってたんだ?」
颯樹に睨まれた事もあって、千聖は渋々事情を説明するのであった。
「つくし、ちーちゃん…アイスでも食べて口直ししようか」
事情を聞かされた颯樹は口直しを提案してきた。颯樹も自身がやられる立場になった時をイメージしたようで、多少同情したようだ。
「でもその前に2人にお説教といこうか?」
「へっ?なんでですか⁉︎」
「当然だ。いくら手伝いを買って出たとはいえ尾行する理由にはならないからな」
だが飴と鞭をきっちりと使い分けているのか、アイスを食べに行く前におしおきタイムを宣言された。経緯の都合上、2人に非があるのは確かであるが。
「でも僕は鬼じゃないから2人に選択肢をやろう…今この場でお説教をしこたま貰うか、大人しく引き下がるか…どちらが良かとかな?んん?」
颯樹なりの慈悲があるのか、選択肢を2人に提示するも、それは一つしか選べないものであった。千聖とつくしは一度アイコンタクトを取ると一度頷いた。
「「大人しく引き下がります」」
「ならよし。それじゃ、アイス屋に行こうか」
その後颯樹は2人を連れてアイス屋に向かうのであった。その際、颯樹もRoseliaのライブに行くと知ってからは、3人でライブに行く事になったのは言うまでもなかった。
「楽しかったですね〜!」
「嗚呼、そうだな」
数時間後、Roseliaのライブ観賞を終えた2人は、少し遅めの夕食を終えてから七深の家に向かう最中であった。七深はもちろん京介もライブの余韻に浸っていた。
「広町達もあんなに大きい会場でライブしたいですね〜…」
「俺達なら出来るさ、いずれ…」
余韻に浸りながらも、2人は今後のバンドの活動や目標に思いを寄せていた。そんな話をしながら2人は帰宅していると、いつのまにか広町家の近くに到着していた。
「此処からなら1人で大丈夫ですので〜」
「いいのか?せめて玄関前まで送っていくよ」
「今日はもう遅いですし、きょーさん先輩も学校あるでしょ〜?」
本来なら自分が七深のお目付け役なのに逆に気を遣わせてしまったので内心複雑になる京介であった。
「それときょーさん先輩〜」
「ん?なんだ…⁉︎」
そこに、不意に七深に呼ばれた京介であるが、尋ねようとしたが最後まで言えなかった。何故なら、七深の唇で京介の口が塞がれてしまったからだ。その後は七深に抱き締められた状態でキスが数分続いた。
「……プハァ。それじゃきょーさん先輩〜、良い夢を〜♪」
そう言って七深は自宅の方向に走り去るのであった。
「……やれやれ」
これ以上考えて無駄だと悟った京介は踵を返して自身も帰宅する事にした。しかし七深にキスされたからか顔がほんのりと赤かったのは此処だけの話である。
一方…
「う〜ん……あれはやりすぎたかな〜?」
家に帰って自室に篭ると、七深は自身の行動に後悔しながらベッドの上で悶絶していた。
「…でも広町は絶対きょーさん先輩に想いを伝えますよ〜!」
だがそれを自身のこれから為すことに必要な自信と捉えた後は、誰もいない中で決意を固めるのであった。その後はお風呂を済ませてから眠るのであった。
しかし翌日、ましろと瑠唯に京介と七深がデートに行っていた事を追及してきたのはまた別の話である────。
まずは読んでくださった方、お気に入り登録をしてくれた方、こんな拙作を応援いただきありがとうございます!こんな拙作読んでくれるだけでもありがたいです。
今回の生誕記念回で、七深もヒロインに加わる事になりました。毎年七深の誕生日に短編1話投稿してるから結構愛着が湧いてきたのかもしれません(苦笑)
あと、今回のRoseliaのライブの描写は、実際誕生日前日の6月15日にRoseliaのライブ【Sei stark】に参加する事になりまして、会場やその付近の建物をそのまま反映させました。しかし執筆当時はまだライブ会場には訪れていないのでネットで調べただけですが(苦笑)
本作の次回の更新はまだ未定ですが、今はAve Mujicaメインの小説かポケモンの方に集中したいと思います。落ち着き次第、此方や他の作品も執筆並びに投稿したいと思います。
それでは、また次回。
R-18の小説を……
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