実は今回の話、構想するのが結構難産して閃いたのがちょうど二週間前になりました。そして締め切りに間に合うよう、ペースを見ながら試行錯誤した結果、つくしの生誕記念回を書き終える事が出来ました!
あと今回はRASのメンバーが本編に先駆けて登場します。
それでは、どうぞ!
「うーん、困ったなぁ……。」
夏の暑さも和らぎ季節も秋に変わりつつあるこの頃、放課後のCiRCLEのカフェラウンジで京介がいた。京介が座っている席にはコーヒーの他にノートを広げており、何やらそのノートとにらめっこしながら考え事をしているようだ。
「オッス京介!」
「巴か……。」
そこに偶然、京介の親友とも言える人物…巴が声を掛けてきた。
「どうしたんだ? アタシが話しだけでも聞こうか?」
何やら京介が考え事をして気になったようで声を掛けてきたようだ。そして巴は京介の隣りの席に座った。
「嗚呼、実は今度Morfonicaのライブの打ち上げで食事をする事になってな……それでまず全員にリクエストを聞いたんだが、その時に好き嫌いの話しになってしまってな。話しが大きくズレてしまった。」
「なるほど……。」
悩んでいた事は京介がマネージャーを務めるバンド…Morfonicaの事で、ライブ後に行われる打ち上げの手配に悩んでいたようだ。
まず打ち上げの経緯は、先日透子が『今度のライブが終わった後に打ち上げしたい!』と言い出した事が発端で、ほぼ全員が賛成の意見が出たが……案の定瑠唯が参加しないと意思表示して透子と言い争いになって京介が説得して全員参加の打ち上げをすることになったのである。
そして打ち上げの手配を京介がする事になったのだ。しかしマネージャーという立場上仕方ない事なので、京介も京介なりに打ち上げのセッティングをする事にしたのだ。しかし……
「で、とりあえずまずはMorfonica全員の嫌いな物を聞いてどこにするか検討するわけだが……。」
「意外と嫌いな物が多い……とかか?」
「半分正解。厳密には……。」
そう言って京介は先程まで自分が見てたノートを巴に見せてきた。
「何々……『にんじんやほうれん草、ピーマンetc……。』、『緑の野菜』、『ミント系のガム』、『味の濃いもの、主張の強い物』……随分と個性的だな。蘭たちのようにバラバラだぞ。」
「言うな……。」
巴がノートを見ると、見事にMorfonicaのメンバー全員の嫌いな物がバラバラであった。コレを聞いた巴も心当たりがあるのか京介に同情したようだ。そこに……
「あれれ〜どうしました〜、きょーさん先輩に巴先輩〜?」
「七深か。」
「オッス七深、偶然だな!」
偶然Morfonicaメンバーの一人である七深が通りかかって京介達に声を掛けてきたのだ。
「ノートとにらめっこしてどうしたんですか〜? もしかして補習か何かあるんですか〜?」
「残念、俺は補習とは縁遠い。正解は……」
補修と勘違いした七深に京介は自分が先程見てたノートを七深に見せた。
「ふむふむ……しろちゃんとつーちゃんが嫌いな物が多いんですね〜……。」
「な。 それと透子はともかく、瑠唯も瑠唯で癖があるだろ。」
「否定はできんな。」
ノートの中を見た七深は素直に感想を言った。それを聞いた京介と巴もウンウンと首を縦に振って肯定した。
「あれ?珍しい組み合わせだな?」
「どうも皆さん、こんにちは。」
「あ、颯樹先輩に千歌先輩だ〜。」
そこに偶然颯樹と千歌が通りかかってきて京介達に声を掛けてきた。
「それで何か悩んでいる事があるんですか?」
「実はカクカクシカジカ……」
「……なるほど、大体の事情は理解できたよ。」
千歌に何事か尋ねられると京介は大まかにだが軽い説明をした。説明を受けた颯樹達は事情を理解してくれたようだ。
「なら僕達もその話しに乗ろう。千歌も問題無いよな?」
「えぇ、構いませんよ。」
話しを聞いた颯樹も協力してくれるようで、颯樹の隣りにいる千歌も構わないと言ってくれた。
「でもいいんすか? アンタ達にはメリットが無いだろ?」
「いやこのくらいなんて事ないよ。 それにお前には千聖が出演するドラマとかの撮影の代役を任せたり日菜の件で世話になってるからな。日頃のお礼だよ。」
そして颯樹達もメンバーに加わったわけだが、京介にメリット云々を指摘された。しかし颯樹は京介に対しての『日頃のお礼を返す』という名目で協力を申し出たのだ。
こうして颯樹も加わり『Morfonicaメンバーの嫌いな物克服会』を結成したのだった。
結成間もなくして、京介達はどの日に実行するか等のスケジュール調整を行なった。そして話しはスムーズに進んで、ほぼ全員がどの日でも空いているので予定が決まればあとは実行できるところまで済んだ。しかし……
「実は此処最近忙しくて、空いている日はこの日くらいしか……。」
颯樹は自分のスマホを見ながらスケジュールの確認をしたがバツが悪そうにした。千聖のマネージャーである上、スケジュールの日程に難があったようだ。そして全員にスマホの画面を見せながら唯一スケジュールに空きがある日付に指を差したのであった。
「その日は……」
颯樹が指差した日は9月15日であった。京介の呟きに疑問があったのか七深以外の全員が頭に疑問符を浮かべた。
「颯樹先輩の言った日は実はつーちゃん…同じモニカのメンバーのつくしちゃんの誕生日なんですよ〜。」
この中で唯一事情を知っている七深が京介の言った呟きに対して補足をした。それを聞いた全員も納得してくれた。
「……だったらきょーさん先輩〜。」
「どうした七深?」
「広町にいい案がありますよ〜?」
「……聞くだけ聞こう。」
『つくしの誕生日』と聞いて何かを思いついた七深は京介に一つ案を申し出た。
嫌な予感しかしないので本来は却下したいところだが七深はまだ何も話してないので、京介はとりあえず話しを聞いてからでも問題無いと感じたのか話すよう彼女に促した。
そして七深は自分が提案した事を全員に話した。
「あー、なるほど……サプライズねぇ。」
「それならつくしも大いに驚くが……」
「えぇ。しかしそれだと他のMorfonicaのメンバーも二葉さんのようにターゲットになってしまいます。」
バースデーのサプライズは基本的に誕生日の人物に対して行われるわけだが、それだと千歌の言う通り京介と七深以外のMorfonica全員も対象に入るのだ。
「いや……これならいけるかも。」
しかし京介は何か思い付いたのか呟いた。そして全員の頭に疑問符が浮かんだ。何か考えがある素振りをして全員に耳打ちをした。
「なるほどな。」
「確かにそれなら〜。」
「悪くない案ですね。」
すると京介の案に賛成なのか全員が納得した。その後はどんな内容にするか綿密に計画を立てるのであった……。
________________________________________________
そして9月15日、つくしの誕生日当日。
「しかしきょーさん、あたしらに呼び出しとか珍しいな……。」
「そうだね〜、こんな事滅多に無いし〜。」
Morfonicaのメンバーは学校が終わった直後、全員に京介から連絡が来たのだ。
『全員で同封されてる地図の場所に来てくれ。』というメッセージと共に地図が送られてきたのだ。
そして今は全員で地図を頼りに目的地まで向かっているのであった。
「もしかしてあそこじゃないかな……?」
「え、あれってもしかして……」
するとましろが目的地を見つけたのかその場所を指を差した。それにつられてましろの指差した方向を見たつくしだが途中で言葉が止まった。何故なら……
「あの家って……」
「……おそらく弦巻さんのご自宅ね。」
言葉が止まったつくしに疑問に思った透子と瑠唯もましろが指差した方向を見た。するとそこには一つの豪邸が目に見えた。
瑠唯の指摘通り、そこはこころの自宅であった。それを証拠に表札には『弦巻』と書かれていた。しかし此処で考えても仕方ないと感じた全員は無言で弦巻邸に足を運ぶ事にしたのであった。
弦巻邸の門前に着くと何処からともなく黒服の人が現れて『こちらです。』と言って案内をされ、弦巻邸の中に入った。そして黒服の人に案内される事数分、とある部屋の前で全員が止まった。
「この部屋です、お入りください。」
黒服の人はそう言って部屋の扉を開けて全員にMorfonica全員に入るよう促した。そして促された全員は黒服の人に従って部屋に入った。
「此処って……。」
「暗いわね……。」
入った部屋は電気が点いてないようでとても暗く、部屋の様子が分からない状態であった。
何があるか分からない状態なため、全員が立ち往生してた。しかしそこに……
パッ!
「えっ、何⁉︎」
「急に電気が……⁉︎」
突如として部屋の電気が点いたのだ。その光景に瑠唯以外が慌てふためいた。そして……
「よう、待ってたぜ。」
「「「京介さん(先輩)・きょーさん⁉︎」」」
部屋でMorfonica全員が来るのを待っていただろう京介が出迎えて来た。そして京介の背後には彼の妹である桜雪の他に巴や千聖とこころと薫、颯樹と千歌と優奈も彼と同じく彼女達を出迎えていたのだ。
「京介先輩、コレって……?」
「嗚呼、ちょいとした企画だ。」
「「「企画?」」」
疑問に思ったつくしは京介に聞いたが『企画』と返してきた。それを聞いた瑠唯と七深以外は鸚鵡返しになった。しかしお構いなしに京介は話しを進めた。
「それと七深、全員を連れてきてくれてありがとう。こっちに戻ってこい。」
「ど〜いたしまして〜、きょーさん先輩〜。」
「ななみもグルだったの⁉︎」
京介の呼び掛けに七深は応えて彼の元まで歩いて行った。まさか七深も京介のグルとは思わなかったようで透子は驚愕した。
ちなみに余談だが、七深は一連の流れは皆んなに演技をしていたのであった。
「それで京介さん、私達を呼び寄せて何をなさるつもり何ですか?」
「実はお前達の嫌いな物を克服会を今するんだ。」
「「「克服会?」」」
先程から疑問に思ったのか瑠唯は京介に質問した。その問いかけに京介は正直に答えた。
「この前言ってたライブの打ち上げをしようってなった時に好き嫌いを尋ねたが七深以外は嫌いな物がある上に多いからなぁ……だから今回の企画を立てたんだ。」
京介が何故このようなことを企画したのか経緯を話した。そして全員がバツが悪そうにした。ましろ達はともかく瑠唯までも頬を少し赤く染めて顔を晒してしまった。
「で、でもあたしらの打ち上げだし「お前は他のバンド…知り合いはともかくとして見知らぬバンドと打ち上げするってなったって時にまず自分が嫌いな物が出たって聞いた時キャンセルするのか?」うっ……!」
透子が反論をしようとしたが、京介にことごとく一蹴された。即座に論破された透子は苦い表情をした。
「いいか?俺は『完全に』とは言ってない。 だから少しだけでもいいから喉に通すんだ。それだけでも立派な『進歩』だ。人生やバンドも進歩が無ければ成長しない……違うか?」
「「「……!」」」
「「…………。」」
流石に理想まで追求していないようで少しだけでもいいから進歩をしろとMorfonicaのメンバーに説得した。
京介の言う通りなのかましろ達が感銘を受けた。七深や瑠唯も顔に出さなかったが彼女達と同じようだ。
「……皆んな表情が変わったな。よしそれじゃあ早速始めるが、いいか?」
「「「はい!」」」
「私も大丈夫です。」
「よし分かった。」
そして再度やる気はあるか再確認したが、全員が即座に参加の意思表示をした。全員が真剣な表情になったのを見て京介は感心したようにウンウンと首を縦に振った。
「でもまず準備があるから、その前に食べる順番を決めようか。 優奈さん、会場のスタンバイをお願いします。」
「分かりました。 では皆さん、お願いします。」
しかしすぐにとはいかず、会場の準備があるので最初は順番を決めてから始めるようだ。そして京介は優奈に会場のスタンバイをお願いした。それを聞いた優奈は了解してその場にいた全員に会場のスタンバイをするよう指示を出した。
それを見た京介達は邪魔にならないよう一旦部屋に出たのであった。
「そういえば何故弦巻さんの家を借りれたのですか?」
「京介があたしに直接家の敷地内を借りられるか交渉しに来たの!」
「でもその条件として俺をハロハピに入れるよう提示されたが、颯樹さんと千聖さんのお願いで今度俺がハロハピのライブに行くことで妥協してくれた。」
「「「「な、なるほど……。」」」」
何故こころの家を借りる事が出来たのか瑠唯は疑問に思ったのか、どうやら京介が直接こころに交渉したようだ。
しかし、こころの交換条件もあったようでましろ達は苦笑いしたのであった。何故ならこころによるハロハピの勧誘が絶えないからだ。
「あたしは京介がハロハピに入ってくれた方が嬉しかったわ。」
「弦巻さんいえどそれは出来ない相談です。」
こころは残念がってぼやいていたが、瑠唯はそれに対してすぐ一蹴した。
________________________________________________
そして数十分後……
会場のスタンバイと順番決めが終わり、七深以外のMorfonica全員がテーブルに座った。ちなみにテーブルにはフォークやナイフ、スプーンなど、テーブルマナーでよく見かけるセッティングが施されているのであった。
ルールとしては、まず最初の一人が食べて、一定量まで行ったら次の一人が食べて……の繰り返しである。
ちなみに順番は、
透子→ましろ→瑠唯→つくし
となったら。
「私最後だ……。」
「トリじゃんふーすけ! ま、あたしは最初だから早く終わるんだけどなー。」
順番が最後になったつくしは緊張していた。一方で透子は最初なので早く終われるのか余裕の笑みを浮かべた。
そこにクローシュを片手に料理を運びに来た桜雪が透子の席まで来た。
「まずは透子さん、貴女の料理です。」
「悪いですねー、桜雪さん!」
桜雪は透子の目の前にクローシュを置いたのだった。そして間もなくしてクローシュを開けたのであった。
「おー…………
って、アレ?」
透子が何が出るのか期待したが中を見た瞬間間の抜けた声が出た。それは……
「はい、ミント系のガムだ。」
京介の言った通り、クローシュの中にミント系のガムのボトルが入っていた。瑠唯と七深以外が目が点になったのは言うまでもなかった。
「あのー、きょーさん。これって……?」
「見ての通り、お前が嫌いな『ミント系のガム』だ。もちろんお前はコレを食べてもらうぞ……いや、噛んでもらうが正しいか。 ちなみに俺もそこまで鬼じゃない。このボトル一個分の半分噛み終えた時点で終了とみなす。」
そう言って京介は透子の前にボトルを突き出した。その行動で透子はコレを口に含まなければならないと察したのであった。
「(そうだ、少し噛んですぐ出しちゃえば……)」
「ちなみにすぐ出したらその時点で個数を二倍にする上にボトルも二倍にするからな。」
「!」
透子はズルをしようとしたが、京介に見透かされた。そしてペナルティを聞いた時点で透子は苦い表情になった。
「さぁ桐ヶ谷さん、噛んでください?」
一向に進まない透子に業を煮やしたのか千歌が黒い笑みを浮かべて彼女に早くするよう催促した。
「い、いただきます……。」
流石の透子も根負けしたようで恐る恐るガムを口に含んで噛み始めた。先程までの余裕の表情は地獄にいる気分までにダダ下がりであった。
「さて、流石の透子もペースが遅いから同時進行でましろにも食べてもらおうか。」
「そうだな……ましろ、準備はいいか?」
「は、はい!」
透子のペースがいつもより遅くなっているのを見た颯樹は次のましろにもやらせる事を提案した。
京介も颯樹に賛成のようでましろに確認をとるとましろ本人も承諾した。
ましろの意志を確認した颯樹は両手を叩くと、クローシュを片手に持った桜雪……ではなく千聖が現れた。
「あれ千聖さん、桜雪は?」
「ああ、桜雪ちゃんはましろちゃんが食べる料理に毒を仕込んだり、料理を出す前にましろちゃんを仕留める為のナイフを用意してたから優奈ちゃんに組み伏せられて今裏でお説教中よ。」
「「「何考えてるんだろう、あの人……。」」」
何故千聖が出てきたのか疑問に思った京介だが、千聖は桜雪がましろの暗殺を企てている事を喋った。それを聞いたましろ達は呆れながら呟いた。瑠唯も呆れているようで無言で溜め息をついていた。
「話しを戻すわ……それでは、これがましろちゃんの料理よ。」
関係ない方向に話しが進んだため、千聖は話しを戻してましろの前にクローシュを置いて蓋を開けた。するとそこにはナポリタンが載っていたのであった。
「このナポリタンは……?」
「何でも作った人曰く『ましろちゃんの為にアレンジした』そうよ。」
そう言われてましろはナポリタンを見た。すると千聖の言った通り、玉ねぎやピーマン、ウインナーと言った一般的な具だけでなく、切られたほうれん草が乗っていたりカレー風味(匂いでカレー風味だと気づいた)にしたりとアレンジが施された。
そして所々トマトの皮も混じっていたので、ケチャップの代わりにトマトを使用してたのが分かる。
「さぁ、どうぞ♪」
「いただきます……。」
そう言ってましろはナポリタンをフォークの先で巻いて一口分にして口に入れた。すると……
「お……おいしいです!」
「そう、よかった♪」
好き嫌いの多いましろにも好評のようで、一口食べたらまた一口と…口の中に入れていったのであった。その様子を見た千聖は子供っぽいと思いながらも母親が子供を見るような目をしていた。
「(京介くん、人が悪いわ。素直に自分が作ったって言えばいいのに……。)」
「(それは神のみぞ知る、ですよ……)」
千聖はましろが料理に夢中になっているのを見ているとこっそり京介に近づいて彼にしか聞こえないように耳打ちをした。千聖の言う事は図星なのか京介はバレないように適当に受け流した。
ちなみにましろに出したナポリタンは京介が作ったもので、下準備も京介がしたものだ。
余談だが、桜雪が毒を仕込んだ料理は優奈が桜雪の行動を予期して事前に本物とすり替えた偽物であったのでましろに危害は加わってなかったのであった。
「さて次は瑠唯だな、いけるか?」
「はい。」
透子が終わりそうなのとましろのペースが予想以上に早かったため、次は瑠唯に順番が回ってきた。
「それで私は何を食べるのでしょうか?」
「少し待て、もうすぐで来る。」
京介が言った事につくしは頭に疑問符を浮かべて首を傾げた。その時……
「ちわーっす!ラーメン一丁お待ち!」
急に掛け声と共に部屋の扉が勢いよく開いた。
部屋の中に入ってきたのは女子の中で長身に入る部類で、黒のインナーに可愛らしいプリントが施されているスカジャンを羽織っており黒のロングスカートといった恰好の金髪ショートの目つきが鋭い…俗にいうヤンキー風の女子であった。
その女子の左手にはラーメンの出前でよく使われている岡持ちを持っていた。
「マスキング先輩⁉︎」
「お、ますき。予定より早かったな。」
「おうよ。 瑠唯にとびっきり美味いラーメンを食わせたいために早く作って此処まで来たぜ。」
ヤンキー風の少女…
余談だが、マスキングは人によってはマスキングやますきと呼び方は変わっているが、つくしは『マスキング』、京介は『ますき』と呼んでいるようだ。
マスキングはそのまま瑠唯のいる席まで向かった。そして岡持ちからラーメンを取り出して瑠唯の前に出した。
「はいよ瑠唯、ラーメン濃いめ一丁お待ち!」
「もしかして私が食べるのはこのラーメンですか?」
「そうだ。 お前は味の濃い物が嫌いだろ?」
瑠唯はマスキングの元気ある声を無視して京介に自分が食べるのはコレかと尋ねた。すると瑠唯の問いに京介は肯定した。
「そうですか……ではいただきます。」
そう言って瑠唯は箸を手に取り、表情を変えずに黙々とラーメンを食べてた。
「なぁ瑠唯……美味いラーメン食っても表情一つ変えないのか?」
「無駄話はやめて下さい、ラーメンが伸びてしまいます。」
「お前、やっぱ可愛くねーな。」
マスキングの問いかけに瑠唯はいつもと変わらぬ表情で彼女に返した。瑠唯の自分に対しての塩対応にマスキングは可愛くないと呟いた。それを間近で見た京介と巴は事情を知っているため苦笑いするしかなかった。
そして数分後……
「か、噛み終えた…。」
「ご馳走様でした……。」
「ご馳走様です。」
透子、ましろ、瑠唯がちょうど完食をしたようだ(しかし透子はガムの為、噛み終えただが)。三人の顔は何処か達成感に満ちていた。
「最後は私か……。」
「頑張れふーすけ! あたしだっていけたんだぞ!」
「つくしちゃん、頑張って!」
「此処まで来たからにはやり通しなさい。」
「皆んな……!」
自分の番まで回ってきた事に対してつくしは再度緊張したが、ましろ達から激励の言葉が贈られた。それを受けたつくしは感激したのか涙目になっていた。
「京介先輩、お願いします!」
「はい分かった。では料理をお願いします」
京介がそう言うとクローシュを片手に持った薫が現れた。
「さぁ子猫ちゃん、君が食べるのはコレだ。」
薫はつくしの座っている席に着くと同時にクローシュを彼女の目の前に置いてそして開けた。すると中には焼けたピーマンが載っていた。
「焼いたピーマンですか……?」
「盛り付けが少し不恰好になってしまったが、コレはピーマンの肉詰めハンバーグさ。確認するといいさ。」
薫にそう言われてつくしはフォークを使って目の前の料理を確認した。すると薫の言う通りピーマンの中にちゃんとハンバーグが入っているのが確認出来た。
「ホントだ……もう食べてもいいんですよね。」
「もちろんだ。」
「分かりました。 では……」
京介に確認を取ったつくしは『いただきます。』と言ってフォークとナイフを使って料理をピーマンの肉詰めハンバーグを一口サイズに切り揃えてそのまま自分の口に運んだ。
「お、おいしい……! ピーマンってこんなに美味しいとは……。」
「喜んで何よりです♪」
料理を一口食べたつくしは自分の嫌いな物がこんなに美味しくなる事に対して絶賛した。それを見た千歌が笑みを浮かべた、どうやら彼女が作ったことが窺える。そして……
「ご馳走様でした!」
つくしが食べ始めて数分後、出された料理を残さずに完食した。
「さて、終わったようですね……広町さん、宇田川さん。準備はよろしいですか?」
「は〜い。」
「もちろんです!」
つくしが食べ終わったのを確認した千歌は七深と巴に耳打ちをした。そして二人は制服のポケットから何かを取り出してつくしにこっそりと近づいた。
「よし行くぞ、七深。」
「了解で〜す。せーの……」
パーン!
「えっ!何々⁉︎」
突然つくしの近くで破裂音が聞こえたと同時に紙吹雪やらテープが舞った。それに対して驚いたつくしは辺りを見渡した。すると、近くにいた巴と七深に気がついたが、二人の周りに紙吹雪やらテープが散らばってた。
「「おめでとう、つくし・つーちゃん!」」
「へっ……?」
突然二人に祝福の言葉をかけられたつくしは間の抜けた声を上げて呆けていた。
「すまないつくし、コレはお前を驚かすためのサプライズだ。」
「サ、サプライズですか⁉︎」
京介から突然の事実を突きつけられたつくしは驚きを隠せなかった。
「そうだ……まず打ち上げの事もあるが、それ以前にまず今回の企画を考える内につくしの誕生日が近い事を思い出したな……颯樹さん達のスケジュールの都合上そうなったんだ。」
「そうだったんですね……。」
まず京介は何故今回のような企画を立ち上げたのか、つくしに簡単に経緯を話した。
「そして俺はその時つくしが最近リーダーとして頼りない事を思い出してな……。」
「それは言わないでくださいよぉ……。」
続けた京介は率直につくしの悪い点をあげた。するとつくしは俯いてしまった。しかし京介は『だから……』と言って先程の言葉を続けた。
「……俺なりにMorfonicaを進歩させたい為に企画したんだ。そしてまずはリーダーであるつくしを勇気づける為に背中を押したんだ。」
「き…京介先輩〜!」
そして最後に言った京介の言葉に感動したのかつくしは感極まって彼に抱きついた。
「俺から改めて……誕生日おめでとう、つくし。」
「ありがとうございます!」
一旦つくしから離れて、京介は彼女に誕生日おめでとうとエールを贈った。それに対してつくしは笑顔で返事をした。
「さて、実は別室でパーティーの準備をしてるんだ。 お前の誕生日を祝う為にこころがセッティングしたんだ、彼女に感謝しろよ?」
「分かりました!」
そう言って京介はつくしの手を取り別室まで案内するのであった……。
まずはお気に入り登録をして下さった読者様、こんな拙作にして下さいましてありがとうございますm(_ _)m それだけでも感謝します。
今回の生誕記念回、いやー、正直に言うと結構アイデアに悩みました。
さて、今回は《新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)》でお馴染みの『咲野 皐月』さんから承認を得て『盛谷 颯樹』くんと『水澄 千歌』さん、『長瀬 優奈』さんが登場しました。感謝感激です!
それと今回は《RAISE A SUILEN》…通称RASのドラム担当の佐藤 ますき…マスキングが本編先駆けで登場しました!本来なら登場はまだ先にしたかったけど、原作のイベントストーリーでマスキングと瑠唯のやりとりが好きなのと登場させたいという気持ちが高まって登場しました。
ちなみに作中で出てきた『クローシュ』というのはレストランでよく見かけるあの銀色の丸い蓋です。用途としては食べ物の温かさや鮮度を保つために皿にかぶせるためです。なお一部では『クロッシュ』と呼ばれることもあります。
さて、最後の次回予告は…本編の幕間を予定しております。数話やってからRASが登場する章に入りますので皆さまお楽しみに♪
それでは……ありがとうございました♪
※ちなみに今回のアンケートの締め切りは来週の9月21日 0:00を予定しております。投票していない方がいましたら気分転換程度で構いませんのでご協力のほどよろしくお願いしますm(_ _)m
R-18の小説を……
-
投稿してください、お願いします!
-
しなくていいよ