この残酷な大地の上で   作:Rinvre

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1-3 邂逅

「……ろ!人の足跡だ。血痕もある。」

「天災前の物じゃないか?」

「いや、ごく最近のものだ。」

「でもまだ天災が収まって5日だぞ!こんな所に人が来るわけ無い。」

誰かの声で目が覚めた。

 

全身が怠いし痛い。それに左腕の傷が熱を持っているような気がする。しかしその感覚も外に誰かが居るという事に対する驚きと恐怖で直ぐに消えてしまった。

 

(外に誰かいる……!見つかったら何をされるか分からない……。こ、怖い)

 

私はそっと洞穴の奥に移動する。

 

(見つかりたく無い……!)

 

しかし話し声は段々とこちらに迫ってくる。

 

「足跡はこの洞穴の中に続いている。」

「入って見よう。」

「分かった。警戒は怠るな。」

 

私は見つからない様に体を縮めたが、無駄だった。

 

「人がいるぞ。まだ子供みたいだ。怪我をしている。しかもかなり怯えている様だ。」

「……話しかけてみろ。」

 

入って来たのは、二人の男性だった。片方はサングラスをかけてガスマスクのような物を付けている。腰には剣が下がっていた。もう一人は特徴的な見た目をしている。くすんだ茶色の色の服を着ており、その上から透明なビニールの様なコートを着ている。そしてその頭から垂れ下がっているのは、紛うことの無きウサギの耳だった。二人とも腕にチェスの駒の様なシンボルをつけている。

 

そしてサングラスをかけている方が私に近づいてきた。

 

「こんにちは。お嬢ちゃん。俺の名前はコンパスだ。ロドス製薬のオペレーターだ。こっちは……」

「……エアースカーペだ。ロドスで護衛任務をしている。」

「お嬢ちゃん、君の名前を教えてくれるかい?」

「こ、こっち来ないで!」

「拒絶している。どうする?」

「どうするもこうするも保護するしか無いだろう。お前が説得しろ。俺はそういうのは苦手だ。」

 

怖かった。大人の男二人がこっちを見ているのだ。

 

(製薬会社?私を捕まえて実験台にするつもりなの?い、嫌だ……)

 

「嬢ちゃん、俺たちと一緒に来てくれれば安全な寝床を提供することができる。それにしばらくは食事もタダだ。必要とあれば鉱石病(オリパシー)の治療も受けられる。それにここに居てもじきに死んでしまう。俺たちと一緒にこないか?」

「なんで……」

「なんでって……それが仕事だからさ。」

 

嘘だ。そんなうまい話なんてあるものか。どうせ私を監禁するつもりなのだろう。しかし、ここに居たらすぐに死んでしまうというのも確かだった。それに、心の何処かで、もしこの話通りだったら。と思ってしまう。

 

(どっちに転んでも、死ぬのは確かだ。なら、この人達に付いて行くのもありかも知れない。それに、彼の言葉通りなら、この痛みを和らげるものもあるかもしれない。)

 

私は意を決して立ち上がった。コンパスという男が、ほっとした声でい言った。

 

「来てくれるかい?なら決まりだ。エアースカーペ。」

「分かった。なら直ぐにレオンハルト達の所に戻ろう。」

「お嬢ちゃん歩けるかい?」

「うん……」

「よし。じゃあ付いて来て。」

 

脚はまだ痛んだが、歩けないことは無かった。私は彼らに続いて外に出た。

 

しかし外に出ると、そこには異様な光景があった。

 

カサカサ、カサカサ。

 

そこには昨日の虫たちが大量にいた。思わず昨日の死闘の記憶がフラッシュバックし、血の気が引く。

 

「チッ、オリジムシの群れだ。アシッドムシもいる。数はおよそ20。コンパス、やるぞ。」

「分かってる。嬢ちゃん、隠れとけ。直ぐに終わるから。」

 

私は急いで岩陰に隠れた。そっと顔をだして様子を伺う。

 

(あの二人、ほんとにあの虫たちを倒すつもりなのかな……?もしかして私を置いて逃げる気じゃ……)

 

そう思うと鳥肌がたった。しかし、すぐに戦闘が始まった。

 

コンパスは、剣を抜くと虫の群れに向かって突進した。それと同時にエアースカーペが腰のバックから妙な物を十個ほど取り出し、放り投げた。するとそれらは彼の周りに浮遊し、一斉に敵の方を向いた。

 

コンパスに気付いた虫たちは、一斉に彼に襲い掛かった。その内何匹かは毒液を飛ばした。しかし、彼はそれをすべて避け、飛びかかって来る虫に切りかかった。何匹かは彼の側面から攻撃を仕掛けたが、そいつらはエアースカーペの奇妙な武器の放った光線に貫かれた。そしてコンパスはどんどん虫たちを屠っていく。

 

(か、かっこいい……)

 

私は戦いに見入っていた。特にコンパスの剣さばきに。

 

(世界にはこんなに強い人がいるんだ……)

 

コンパスの言った通り、戦闘はすぐに終わった。

 

「嬢ちゃん、もう出てきていいぞ。」

 

私は岩陰からでて、彼らの方に行った。

 

「そういえば嬢ちゃん、まだ名前を聞いて無かったな。なんていういうんだ?」

「名前は覚えてない……いや……」

「ん?どうした?」

 

(名前は覚えてないけど……)

 

私はシャツの下からペンダントを出した。そこにはCamileと書かれている。

 

「カミル。」

「カミルか。いい名前だな。」

「コンパス、カミル、早く戻ろう。あいつらを待たせてしまう。」

「そうだな。よし、出発だ。」

 

(すぐ死ぬはずなのに名前なんて……)

と思ったが、名前があると何かと落ち着くものだ。取りあえずそのままにした。

 

そして私は、二人に付いて二人の仲間がいる所に向かった。

 

 

 

 

 

 

そこにはあの泉からそう遠くない場所だった。二台の車が止めてあり、機材が並べられている。

 

その中に二つの人影がある。

 

片方がこちらに気付き、手を振ってきた。

 

「エアース、遅かったじゃないか。おや、その子はどうしたんだい?」

「近くの洞穴の中にいた。かなり拒絶されたが、何とか説得して保護した。戻って来る途中オリジムシの群れに遭遇したが、問題なく処理した。」

 

その人は金髪碧眼で、頭から生えているのはウサギの耳だ。そしてこの場に似つかわしく無い服装。防護服の様なエアースカーペやコンパスの服とは対照的に、街を歩いていても違和感が無いお洒落な服装だ。脇には不思議な形の槍を抱えている。

 

「こんにちは。俺はレオンハルト。君の名前は?」

「……カミル。」

「酷い怪我じゃないか。応急手当だけでもしておかないと。」

「…………。」

「凄い警戒のしようだねぇ。大丈夫。俺たちは君に危害は与えないよ。」

 

レオンハルトと名乗った彼はそう言ったが、私は信じれなかった。

 

もう片方の人もこちらに気付いた様で、こっちに近づいてきた。

薄紫の髪に蜂蜜色の瞳。頭からはオオカミの様な耳が生えている。そしてその腰から生えているのは、1mは越しているだろう巨大な尻尾だ。

 

「二人ともお疲れ様~って誰その子!」

「近くで拾った。応急手当をお願いしても良いか?。」

「良いよ。君、こっちおいで~。」

「…………。」

「警戒するのは分かるけど、早くその傷を手当てしないと。大丈夫、変なことはしないから。」

 

本当だろうか。でも傷は今もズキズキと痛んでいる。私は仕方なく手当を受ける事にした。

 

彼女は私を座らせると、救急箱を持ってきて私の傷を手当し始めた。

 

「僕はプロヴァンス。天災学者だよ~。君の名前は?」

「カミル。」

「カミル。よろしくね~。それで君は、どうしてこんなところに居たの?まだここの天災が収まって5日しか経って無いのに、そんな恰好で外に居たら危険だよ。」

「……分からない。」

「分からない?覚えていないってこと?」

「そう……かな……。」

 

私自身も何故ここにいるのか分からない。しかし、ここは地球では無い事は分かる。彼らの体に付いている物を見れば明らかだ。ならばここは何処なのだろうか。

 

「はい。終わったよ。今できるのはこれくらいかな。ロドスに戻ったらちゃんと医者に診てもらわないと。」

「あ、ありがとう……。」

 

簡単な処置だったが、随分楽になった。

 

グ~~。

 

その時、怪我が楽になって緊張が解けたのだろうか。私のお腹が大きな音を立てて鳴った。猛烈な空腹感。思えば、もう2日も何も食べていなかった。

 

「お腹が空いたの?携帯食料しか無いけど、食べる?」

 

私は彼女が差し出してきた袋に手を伸ばし……止める。

 

(毒が入っているかも知れない。それに、何故見ず知らずの自分にこんな優しくするのだろう。何か裏があるかも……。)

 

しかし、本能に抗う事は出来なかった。私はもうどうにでもなれと、袋を受け取って開ける。仄かに甘い香りがして、思わずよだれがでる。中に入っているのはショートブレッドの様な物だ。夢中でかぶりつく。味は悪くない。

 

「ちょっ。そんなに慌てて食べたら喉に詰まるよ。はい水。」

 

あっという間に全て食べてしまった。

 

少し気持ちが落ち着いたが、さっきの疑問がずっと頭の中で渦巻いている。

 

私は意を決して聞いてみる事にした。

 

「プ、プロヴァンス?」

「ん?な~に?」

「なんで、私みたいな見ず知らずの人にこんなに優しくしてくれるの?そっちには何の利益も無いのに。」

「なんで、か。そうだね……荒野のルール、かな。」

「荒野のルール?」

「そう。荒野では、困っている人がいたら助けてあげる。その逆も然り。荒野では、何でもお互い様なんだ。助けても報酬は求めないし、助けられても何も渡さなくていい。そうとでもしないと、人間なんていとも容易くこの大地に呑まれてしまうからね。後は、純粋に人助けかな。困っている人を助けるのが僕の仕事だし、生きがいだからね。」

「……。」

 

正直信じられない。こんな考えの人がいるなんて。でも、この人達は私を助けてくれた。まだ信用は出来ないが、悪い人達ではなさそうだ。

 

「納得できた?」

「う、うん。ありがとう。」

「お礼は要らないよ。さ、レオンハルト達の所に戻ろう。」

 

私達は3人の所に戻った。彼らは車に荷物を積み終わったところの様だ。

 

「終わったかい?もうこの地域の調査は一通り終わったし、今日はもう帰ろうか。」

「そうだね。カミルもいるし、早く帰るに越したことはないよ。」

「よし。じゃあ俺とエアースはこっちの機材が積んである方に乗るから、プロヴァンスとコンパスとカミルはそっちの車に乗って。」

「オッケー。さあ、ロドスに帰るよ。二人とも乗って~。」

 

私は言われるまま車に乗った。どうやらプロヴァンスが運転する様だ。

 

車が発進する。私は車に揺られている内に、怪我や疲労も相まって寝てしまった。

 

 

 

 

 




すこし投稿に間が空いてしまいました。ここらで登場人物紹介を少し。

カミル:主人公。周りに虐げられ続けて自殺したが、テラに転生した。人間不信の状態で
    プロヴァンス達の優しさに触れて困惑中。
    カミルはカモミールを縮めたもの。カモミールの花言葉は、「逆境に耐える」「逆
    境の中で生まれる力」。

プロヴァンス:優秀で優しい天災トランスポーター。もふもふ。

レオンハルト:レム・ビリトンでは名の知れた優秀な天災トランスポーター。

エアースカーペ:レオンハルトの護衛。とても変わった武器を使う。

コンパス:ロドスの一般オペレーター。オリキャラではない。すぐにどこで出てきたか分か
     った人は凄い。
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