「……ル。カミル。もうすぐ着くよ。」
プロヴァンスの言葉で目が覚める。
既に日が沈もうとしている。
「……え?」
自動車の窓から見える光景に目を奪われる。そこにあるのは夕陽に照らされている巨大な車両。……いや、車両と呼ぶには巨大すぎる。まるで小さな町が丸ごと移動している様なスケールだ。武骨な見た目をしたそれは、荒野の中にある種の荘厳さを纏って佇んでいる。
「移動都市を見るのは初めて?まあロドスは移動都市って程の大きさではないけど。」
「移動都市?」
「うん。その名の通り移動する都市だよ。普段は止まってるけど、天災が近づくと避ける為に移動するんだ。移動しない都市もあるけど、少数派だね。基本的には、そういう都市は天災がほとんど来ない場所にある。移動都市も知らないなんて、カミルはどこに住んでたの?」
「…………。」
「あ、ごめん。嫌な事聞いちゃったかな?」
「い、いや、大丈夫。」
私達の乗る車は、その移動都市の中に入っていった。
「よし。着いたよ~。」
私達は車を降りた。ここは駐車場の様だ。
「エアースとコンパスは機材を倉庫に運んでおいて。俺とプロヴァンスはカミルを医療部に連れて行くよ。」
「い、医療部?」
「大丈夫大丈夫。その怪我を診てもらうだけだから。それに医療部の人達はみんな優しいから、そんなに警戒しないで?」
「…………。」
私達はエレベーターに乗って上の階に移動する。エレベーターを降りて廊下をまっすぐ行くと医療部と思しき部屋が見えてきた。
「おーい。誰かいる~?」
「はーい。今行きます!」
プロヴァンスが声をかけるとすぐに返事があり、中から紫の髪で頭に2本の黒い角がある女の子が出てきた。年齢は私と同じくらいだろうか。
「こんにちは、プロヴァンスさん、レオンハルトさん、何かご用ですか?」
「こんにちは、ハイビスカス。調査に行った先で保護したんだけど、この子を診てくれる?」
「分かりました。こっちに来て下さい。大丈夫ですよ。痛いことはしませんから。」
私はハイビスカスと呼ばれた子に付いてその部屋に入る。そこは病院の様な場所で、沢山のベッドが並べられ、壁際には大量の薬品が詰まった棚がある。
彼女は私を診察台に座らせると、傷を治療し始めた。
「かなり酷い炎症ですね。うわっ、左腕の傷は化膿してる。どうしてこうなったか教えてくれますか?」
(確かあの虫の名前は……オリジムシとアシッドムシだったけ。)
「オリジムシとアシッドムシに襲われました。腕は噛みつかれて、それ以外は毒液をかけられました。」
「いつ頃のことですか?」
「昨日の午前中です。」
「うーん。プロヴァンスさん達が応急処置をした様ですけど、それでも半日以上放置されていたという事ですね。それにオリジムシに嚙まれたなら感染リスクがあります。明日の朝検査をしましょう。」
(感染…?オリジムシは何か菌を持っているのかな?傷口が腫れてるのはそのせい?)
「よし、終わりました。寝る前に、この薬を炎症が起こっている所に塗っておいて下さい。こっちは痛み止めです。もし傷が痛む様でしたら飲んで下さい。それと、シャワーを浴びる時は、腕のガーゼを外して浴び終わったらこのテープで留め直して下さいね。」
「あ、ありがとうございます。」
「いえいえ。お大事に~。」
私は薬を受け取って、プロヴァンスとレオンハルトの所に戻る。体はだいぶ楽になったし、傷の痛みも引いてきた。
「お疲れ様~。傷は良くなった?」
「うん。だいぶ楽になった。」
「良かった。じゃあケルシー先生に会いに行こう。」
「ケルシー先生?」
「ケルシー先生は、ロドスのスリートップの一人で、医療部門の責任者だよ。俺も何度かお世話になったことがある。本当に凄い人だよ。」
レオンハルトの説明を聞いている内に私は不安になる。間違いなく何故あそこに居たか聞かれるはずだ。何と答えればいいのだろう。本当の事を言って信じてもらえるのだろうか。私はこれからどうなるのだろう。
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