IS×UC~可能性の獣は無限の成層圏を駆ける~   作:ガノタなエクセル

10 / 10
前回の更新から約半年といったところか……ごめんなさい


それでも

シャルルとの秘密の共有、千冬との会合から数日が経った。

あれから学園内での生活の変化などはほとんどない。あるとすれば異性だとわかったから、寮の部屋ですごす際に遠慮ができたことだろうか。

あと、強いて挙げれば一夏とシャルルの2人で行動することが増えた。

千冬から今はまだシャルルが女だとバレないようにしてほしいと言われている。なのでバレないようにする為にもなるべく他の人と関わらないようにした方がいいだろうと考えた結果がそれだ。

元々やっていたISの特訓も3人には断りを入れて、シャルルと2人でやるようにした。

3人からはその後、自分不機嫌ですオーラを発しながら睨まれていたが、背に腹は変えられないし無視。

そして今日も今日とてアリーナで練習をする為に一夏とシャルルは2人で歩いていた。

 

「一夏もだいぶ射撃が上達してきたね。」

 

「シャルルの説明が上手いからな。今のところ止まったまま動かない的を撃ってるだけだけど。」

 

「それだって本来数回なんかで完璧にできるもんじゃないんだよ?一夏は本当に才能があるよ!」

 

「ははは…まあありがとう。評価は素直に受け取っておくよ。」

 

シャルルはあれ以降憑き物が落ちたのか随分と明るくなった。それでもなお他の人と比べて大人しいのだが、今までの他人行儀さがなくなり、距離感が近くなった為、だいぶ変わったように感じる。

 

2人で穏やかに、ゆっくりと歩いて特訓の為のアリーナに向かっていると、数人の女子が後方から慌ただしく廊下を駆け抜けていった。

 

「今、第3アリーナで1年の専用機持ち3人が戦っているんだって!」

 

彼女達の会話が耳に入り、一夏はすぐさま走り出した。

 

 

第3アリーナに着いた頃にはもう既に決着はついていた。少なくとも一夏にはそう見えた。なにせ鈴もセシリアも纏っている元のISの原型がわからないほどに破壊された装甲を纏った状態で倒れ伏しているのだ。誰もが無傷のISを身につけた状態で立っている1人(ラウラ・ボーデヴィッヒ)の勝利を確信しているだろう。

だが、彼女は止まらない。未だに意識を保たせながら相手を睨みつける鈴の元へその歩みを進める。そして《シュヴァルツェア・レーゲン》に搭載された武装の1つであるワイヤーブレードを巧みに操りながら鈴の首を掴み、乱雑に持ち上げた。ワイヤーが食い込み、少女の細い首を折らないようにするギリギリの範囲で力が込められていく。ISとて無敵ではない。絶対防御こそあるものの、衝撃を殺すことなどできず、何よりあのように少しずつ圧力をかけていけば防御は作動しない。その特性を知っている者であれば鈴が死にかねない状況であることは誰からみても明らかだ。だからこそ一夏の行動は早かった。《ユニコーン》をその身に纏った一夏は禁止兵器となっているビームマグナムを構える。

 

「ちょっと一夏、何をするつもりなの!?」

 

「ピットまで行ってたら間に合わない。だからアリーナのバリアを破壊して突入するんだ。」

 

突然の行動にシャルルは焦るが一夏は止まらない。そのまま流れるように引き金を引く。放たれたビームはバリアなど元から展開されてなかったかのように一切の減衰なく直進していき3人がいる壁際とは逆方向の地面に激突、程なくして爆発した。それを確認するよりも早く、先ほど撃たれたビームの2倍ほどに広がったバリアの穴を潜り抜け一夏はラウラの元へ接近する。その手には既にビームサーベルが握られていた。

呆気に取られるシャルル。だが、一夏は止まらない。一直線に空を翔ける《ユニコーン》。その身体はまるで搭乗者の怒りに呼応するかのように赤く発光していた。

 

 

「うおおおおおおお!!」

 

スラスターの燐光を残しながら目標(ラウラ)に向かって飛翔する。相手はまだ接近に反応しきれていない。ならばとその手に握ったビームサーベルを振り翳した。

狙いは鈴の首を締め付けるワイヤーブレード

一瞬の抵抗の後に金属ワイヤーを溶断し、鈴の救出に成功した。

振り切る勢いそのままにラウラを蹴り付けその反動で離脱する。

 

「いち…か…ごめん…」

 

ISのハイパーセンサーでようやく聞き取れるほどに微かな声で紡がれた言葉。

意識を落とす彼女。

その間際に感じられた後悔は一夏の怒りを静かな敵意へと変えた。

 

「あんただけは落とす!」

 

ビームサーベルをより強く握りしめる。

その握力(怒り)に呼応して出力を増した刃を振りかざし、一角獣は駆けだした。

 

 

立ち昇る砂煙。

その奥から飛来するワイヤーブレードに一夏は足を止めざるを得なかった。四方八方から襲い来る刃の軌道こそわかるもののブラフを用いた巧みな操作に回避行動をとることしかできない。

 

「ようやく戦う気になったようだな!織斑一夏ァ!」

 

「なんで……なんでそうまでして俺と戦いたいんだよ!?男性操縦者の実力を測ってこいって上官から言われたのか!?それとも始末しろって国から命令されたのか!?」

 

「安心しろ。貴様は国から命を狙われてなどいない。そう、これは私怨だ。」

 

「私怨だって?」

 

「ああ、そうさ!貴様のような無能が織斑千冬の心を惑わせ、無知蒙昧のガキども相手に教鞭を取る屈辱を味合わせている!だから私は貴様をここで殺し、目を覚まさせるのさ!教官がいるべき場所はこんな姦しさしかない場所では無いとなあ!」

 

「そんなことのためにセシリアを、鈴を殺そうとしたのか!自分の怨みのために人を手にかけて、あんたそれでも軍人なのかよ!」

 

「軍隊を持たない国の一般人が何を言うか!」

 

「軍人って言うのは守りたい者を守るために心を殺して歯車になって!それでもそのことに意地やプライドを持って戦える人間だろ!」

 

歯車には、歯車の意地がある。お前もお前の役割を果たせ。

 

大きな手に背中を押される

 

ここが知っている……自分で自分を決められるたった一つの部品だ。無くすなよ。

 

自身の胸からあたたかさが広がっていく

 

《ユニコーン》はラウラに向かって一直線に翔けていった。ワイヤーブレードによる被弾を全て無視していき肉薄する。ダメージの一切を無視し、ビームサーベルを振り上げた先にいるラウラ・ボーデヴィッフィの口元は僅かに釣り上がっていた。

 

 

「う……動かない」

 

ビームサーベルを振り上げた状態で動きを止めた《ユニコーン》

まるでその場に固定されたかのように身動ぎひとつとることもできないことに一夏はマスクの奥の表情を歪める。

 

「感情に任せて突っ込むことしかできん愚か者が!だからこうして簡単に引っ掛かる!」

 

AIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)

 

ISの飛行に用いられる基本システムであるPIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)発展形であり、対象を任意に停止させるという兵器として転用されたシステムである。

 

この一対一の状況ではまさに反則とも言える武装により動きを止められた一夏にレールカノンの砲口が向けられる。

 

「織斑千冬に貴様のような汚点はいらない。姉の足を引っ張ることしかできなかったことを後悔しながら死んでゆくがいい。」

 

俺はずっと千冬姉に守られてきた

そんな自分が酷く惨めで嫌いだった

だから俺は誰かを守れる人間になりたかった

自分がISに乗れるとわかった時は嬉しくなった

ようやく皆を守る力を手に入れることができたんだ

けど俺はまだ変われないのか

姉の後ろで縮こまることしかできないのか

 

たとえどんな現実を突きつけられても

『それでも』と言い続けろ

自分を見失うな

それがお前の根っこ

 

声が聞こえた

女の人の声

ぶっきらぼうだけど優しい声

 

光に身体を抱かれた

女の人の形をした光

虹の輝きを持つあたたかな光

 

その後、光はラウラ・ボーデヴィッフィの中に溶けていった。あの声が、光が、いったいなんだったのかはわからない。

けれど自分がなすべきことがわかった。どうしようもない現実に打ちのめされることなんかじゃない。

 

「……でも。」

 

「れ……でも。」

 

「それでも!」

 

自分の可能性を信じ、残酷な現実にそれでもと反発することなのだ。

一夏の決意に感応し、バイザーの光が強まる。愛機を叫ぶ声に身体全体が更に輝く。そして数拍の間を置き、白き一角獣は結界からその身を解き放った。振り下ろしたビームサーベルが肩のレールカノンを溶断する。だが、続けて振るった横薙ぎは後方に飛ぶことで躱された。

 

「停止結界が……!?貴様、調子に乗るなぁ!」

 

怒りで我を忘れたラウラが両椀のプラズマ手刀を展開し、突撃する。それに対し、一夏も背中のスラスター光を強めた。剣を構え近づく二人。

 

ガキン

 

「全く……ガキどもの馬鹿に付き合う大人の身にもなってほしいものだな。」

 

生身でIS用の刀を構えた織斑千冬が《シュヴァルツェア・レーゲン》のプラズマ手刀を受け止めていた。突然の介入者に戦闘を止めざるを得なかった。

 

「専用機持ち同士、訓練をするのは構わんが、アリーナのバリアが破壊される事態にまでなるのであれば話は別だ。」

 

「これからクラスリーグまで一切の私闘を禁止する!解散!」

 

こうして戦いは終わった。アリーナに集った野次馬も次々と帰っていく。

 

「きょ、教官!私は!」

 

「ボーデヴィッヒ、これ以上騒ぎを起こすのであればお前を退学処分とする。わかったら大人しく部屋に戻れ。」

 

「……はい。」

 

親に叱られた子供のようにしょぼくれた状態で帰るラウラ。彼女の低い身長を加味してもなお小さく見える背中を織斑姉弟は見送る。

 

「織斑、ビームマグナムを使ったようだな。」

 

「……ああ。」

 

「ビームマグナムは使用を禁止したはずだ。それを使えば退学処分とすることもな。」

 

「それでも俺は後悔なんてしていない。そうしなければ二人を助けることなんて出来なかったと思うから。」

 

「……はぁ。ある程度の状況はわかっている。ビームマグナムの使用に正当性があることもな。」

 

「今回は特例として反省文二十枚と三日の謹慎で許してやる。後始末は私がやっておくからお前ももう帰れ。」

 

千冬との会話も終わりアリーナを立ち去る一夏

 

「ラウラのこと頼んだ。」

 

すぐそばで聞こえるかどうかの小さな声。だが、はっきりと聞き取ることができた。聞こえてなお何も言わずに歩き去る。しかし千冬も弟が何を言わんとしているかわかるからこそ安心した笑みを浮かべ作業を始めた。




サイコフレームって結構なんでもありなところあるからAICも自力で破れる!ってことでいいよね?もしダメそうだったらプランBに書き換えときます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。