IS×UC~可能性の獣は無限の成層圏を駆ける~ 作:ガノタなエクセル
時が経ち、タッグマッチの開催日となっていた。
タッグマッチにあたって一夏はシャルロットとペアを組むことを千冬から強制された。表向きの理由としては男とペアを組みたいごときに不要な争いを生まないようにするためだが、実際はシャルロットが男装していることをバレないようにするためである。一夏としては元からシャルロットとペアを組むつもりであったし、他の女生徒達もそれで納得しているようだったため問題は起きなかった。シャルロットと組むことを宣言した際に聞こえた《一シャル》だとか《シャル一》というのはなんなのかよくわからなかった。
対戦相手は当日発表となっているためまだ決まっていない。そのため参加者は対戦相手が誰になるのか緊張しながら待ち侘びることとなるのだ。それは一夏とシャルロットも例外ではない。
男性用となっている更衣室にて一夏とシャルロット、そして何故かセシリアと鈴がいた。2人が急に来た時はシャルロットが着替え途中だった為にシャルル・デュノアは実は女性だったということがばれてしまったのではないかと肝が冷えたが2人が特に騒いでいないということはきっと杞憂だったのだろう。
「それでは!ただ今より学年別トーナメントを開催します!」
備え付けのモニターから開会の合図が流れ、全員の意識がそこに向く。そこでは1年の部のトーナメント表が発表されていた。一番左の枠に織斑一夏・シャルル・デュノアの名前がある。つまり1回戦、早速自分達の出番が来たというわけだが、その隣のペアに驚きを隠すことが出来なかった。
「ラウラ・ボーデヴィッヒと篠ノ之箒!?」
「なんで箒はあのドイツの代表候補生なんかと組んでいるのよ!?」
「そんなのわかりませんわよ!一夏さんは聞いておりませんの?」
最早、因縁の相手ともいえるラウラ・ボーデヴィッフィ。その彼女と箒がタッグを組んだという事実にこの場にいる全員の心が騒めく。それは一夏も例外ではない。けれども
「わからない……でも、きっと箒なりの譲れない思いの為にボーデヴィッフィと組んだんだと思う。」
「けど、譲れないものはこちらにもある。俺たちは俺たちにできることをやっていくしかないんだ。」
そう言い残しピットに向かう背中。それだけで覚悟の強さを知らしめていた。
※
「怖気付かずによく出て来たな。」
「覚悟ならできてる。なら逃げるわけにはいかないだろ。」
「フッ、死ぬ覚悟か?」
煽りの言葉に何も反応せずにラウラの隣に目線を向ける。その先では《打鉄》を纏い毅然と立つ箒がいた。いや、この状況になったことを申し訳なく感じている。付き合いのある一夏だからこそそれがわかったのだ。
「一夏……私は。」
「大丈夫。その先は言わなくてもいい。」
「それにさ、これは試合であって戦争なんかじゃないんだ。だったら互いに全力でやろうぜ。」
「ありがとう……ならば一夏!デュノア!私の剣、とくと見よ!」
先程までの沈んだ気持ちは霧散し、普段の篠ノ之箒へと戻っていた。アリーナの宙を飛ぶ4人の戦意は最高潮へと達していく。その空気を感じた周囲の観客も騒めきを止め、固唾を飲んで見守りだした。
四人の異なる想いがぶつかり合う。戦いの火蓋が切って落とされた。
※
「シャルル!」
開始の合図の直後、先に動いたのは一夏・シャルルペアだった。
一夏の呼びかけに対してシャルルはライフルを高速で展開し、それを一夏に投げ渡す。そしてライフルを受け取った一夏はラウラへと弾丸を放ちながら後退し始めた。
「君の相手は僕だよ!」
そして滞りなく行われた一連の動きに未だに行動を起こせれないでいた箒に高速で展開されていたマシンガンの弾が降り注ぐ。
「チッ!小癪な、だが好都合!」
一夏達が取った作戦は
それもどちらの
《シュヴァルツェア・レーゲン》から展開されたワイヤーブレードを躱しながらラウラがレールカノンを撃つ、もしくは接近するそぶりを見せればライフルの引鉄を引き相手を牽制する。直撃はさせられないが相手の行動を中断させ、回避を行わせることができれば十分なのだ。シャルルが合流して2対1になれば勝利が濃厚になる。それを信じて努めて冷静に回避と威嚇射撃を続けていく。
ラウラもそれがわかっていた。わかっているからこそ、この膠着状態を打ち破らなければならない。しかしそのきっかけも隙も見出すことができなかった。初心者を相手に翻弄されているだけの自分が許せなくて、捨てられてしまうのが怖くて、溢れ出る焦燥感から気がつけば言葉が出ていた。
「貴様ァ!私を馬鹿にして、それで楽しいか!!」
「いったい何を…?」
「わざわざライフルを他人から借用せずともアリーナのバリアすら破壊した高火力兵器を使えば私を殺すことなどできたはずだ!それをせんで、馬鹿にするでなかったらなんだ!」
「馬鹿になんてしているものか!していないからこそ俺たちの全部を使って勝とうとしているんだろ!」
「全部だと?相手を殺す気すらないくせに!」
「生死を決めることだけが戦いじゃないだろ!」
「私にとってはそれが戦いだ!」
「そんなの悲しすぎる!」
2人の攻防は更に激しさを増していく。しかしそれでも互いに致命の一撃を与えられないでいた。均衡を破るためには外部からのアクションが必要となっている。そしてそれは
※
もう一方の戦いは、当たり前のことだがシャルル・デュノア優勢で動いていた。豊富な種類の火器を適切に使用した正確無比な射撃は相手を容易に近づけさせない。しかし撃ち続けていれば銃弾は無くなってしまう。シャルルは弾切れ後の隙を自身の特技である
あと何秒だ、あと何発だ、自分の
瞬間箒は《打鉄》を加速させる。相手が反応できない速さで刀の間合いへ、
「切り捨て、御免ーーーー!!!」
そうして振り下ろした刀は
光の刃に焼き切られた。
箒の頭が白く染まる。相手の攻撃を凌ぎ続け漸く訪れた反撃の時。ここから戦いの主導権を自分が握るはずだった。ならば目の前の光景は何だ。その左手に持っているものは何だ。何故お前が持っている。それは一夏が持っているもののはずだろう。反撃の刃を受け、地へと落ちていきながら箒はもう1つの戦場を見た。左手にビームサーベル、右手にライフルを携えながら戦う《ユニコーン》の左腕にビームサーベルは無かった。
「私は……私では……」
自分を倒した相手に抱えられ退避しながら箒はそう呟き続けていた。
※
「一夏ぁーーーーー!!」
意識外からの攻撃は普段のラウラであれば余裕で対処できるものだった。しかし、既に精神的余裕のなくなっている彼女では弾丸を甘んじて受け入れるしかない。周囲を見渡せば既にISが解除されている自分のペアが、ついつい自分の相方の無能さに舌打ちが出てしまう。だがそうしたところで事態は好転しない。1対1の状態ですら膠着していた戦闘で相手が2人になれば当然、自分の不利という形でそれは崩れる。ビームサーベルを構えながら突撃してくる《ユニコーン》に対し、AICを咄嗟に発動する。そのまま流れで反撃をしようとしてこれが敵の罠だという事に気がついた。だが気づいた時にはシャルル・デュノアの
このままでは負ける
負けたら処分される
教官の顔に泥を塗ってしまう
教官に見捨てられてしまう
私の未来が虚無に覆われてしまう
嫌だ嫌だいやだ負けたくない死にたくない負けたくない捨てられたくないひとりになりたくないたすけてまけたくないまっくらいやだひかりがほしいまけたくないまけたくないたすけてまけたくない
力が欲しいか
声が聞こえた。男の声だ。
どこか悪意を感じるがどうしてかこの声に身を委ねてしまいたくなる。
ああ、これはきっと悪魔との契約なのだろう。
だが、どうせ捨てられる命ならば悪魔に捧げてしまっても良いのかもしれない。
「よこせ力を。比類なき最強を!」
※
勝った。
ラウラは既に戦意を失い《ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ》の攻撃を受け続けている。
このままエネルギーが切れるまで続ければ
「ッ!!」
突如プレッシャーが背筋を撫でた。
今までラウラが出してきた突き刺すようなものとは違う。身体に纏わりつき呑み込むようなネバついた殺気に当てられ、意識する前に口から言葉が出る。
「シャルル離れろ!」
シャルルが一夏の警告に反応し、咄嗟に離れた直後、
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
ラウラの咆哮と共に《シュヴァルツェア・レーゲン》の形が変わっていく。いや、あれは咆哮ではなく、苦悶の叫びだった。《シュヴァルツェア・レーゲン》だったものが膨張しラウラの体を呑み込んでいく。その時の此方を見つめるラウラの目は救いを求める者のそれだったのだ。先程までは彼女を倒すことだけを考えていた。しかし、あのような表情をした人を見捨てることなど一夏にはできない。
「彼女は助けを求めてる。千冬姉からも託された。ならやるしかないだろ。」
ラウラを救う。その決意を固めて前を向く。
目の前の敵は既に変身を終えていた。
それはまるで垂れ下がった蕾だった。漆黒の装甲は深緑に変わり、下に尖った楕円の身体はよく見ると4つの切れ込みがあり、4枚の巨大な物体がまるで雄蕊雌蕊を守るように周りを囲んでいることがわかる。
その花弁が開かれ、隠されていた体が露わになった瞬間、全員が言葉を失った。腕も脚も胴体もそして頭に至る全てが装甲に覆われていたのだ。その姿を見た者全員が察する。あれは《ユニコーン》と同類のものだと。
グポン
《シュヴァルツェア・レーゲン》だったなにかの顔にモノアイが浮かぶ。
それは右へ左へと動き、一夏達を捉えた。
ピーマンの方がわかりやすいだろうけどそれだと……ね?