IS×UC~可能性の獣は無限の成層圏を駆ける~   作:ガノタなエクセル

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ユニコーンの日(下)

《ブルー・ティアーズ》がカウンターとして放ったミサイルビットの爆発に飲み込まれる《白式》。

観客の多くが一夏の無事を心配するなか、彼の唯一の肉親である織斑千冬だけは違った。

 

「ふっ、やっと終わったか。このまま負けてしまうかと思ったぞ馬鹿者が。」

 

届いたのがギリギリだったせいで《白式》の初期化(フィッティング)はまだ終わってない。

こんな物語のような完璧なタイミングで一次移行(ファーストシフト)したのだから物語のように逆転でもしてみせろ。

そう考えながら一次移行によって()()()()()()()()()()()()()弟の姿を見ようとし、爆発の煙が消えた先にある少年を目にして言葉を失った。

 

 

 

 

セシリアは勝利を確信していた。

確かに四基あったレーザービットを全て斬られたのは予想外だったが、ブルー・ティアーズはまだミサイルビットが二基ある。

それによる奇襲は成功し、ミサイルが直撃した。

まだアナウンスがなっていないため勝ち切ってはいないのだろう。

だが、相手のシールドエネルギー残量は少ないはずだ。慢心はしないが少し張り詰めた気を落ち着かせ、手に持つスターライトmkⅢをミサイルの爆発地へ構える。

暫くして煙が晴れるとそれはいた。

 

人体の全身を覆っている純白の装甲

顔の装甲ですらバイザーに覆われその瞳すら見えない

そしてなによりも目立つのは頭頂部に聳え立つ一角

 

「あなた……織斑一夏ですわよね?なんなんですのそれは……」

 

セシリアの口から自然とこぼれた言葉はまさにこの光景を目にした者たちの総意だった。

 

「人間だけが、神を持つ。可能性という名の内なる神を。」

 

「は?あなた何を言ってますの?」

 

「俺はまだオルコット、お前に勝つことをあきらめていない。可能性の獣……ユニコーンなら!」

 

「ああもう!面倒ですわ!」

 

あまり会話になっていない一夏の返答に業を煮やしたセシリアはブルー・ティアーズからミサイルを放ち、一夏は体を迫りくるミサイルを見ながら後退していく。

 

「先ほどから思っておりましたがなんて回避性能なんですの!」

 

セシリアが一夏の回避能力に辟易しながらもミサイルビットの操作を行っているなか、一夏は迫りくるミサイルから逃げながら武装の確認をしていた。

武器はバルカンとビームサーベルだけ……正直言って心許ない……それでも!

 

一夏は反撃に出た。

頭部バルカンでミサイルを爆発させながらブースターを噴かし前へと進む。

そして左前腕部のホルダーからビームサーベルを抜き目の前のミサイルを一閃。

さらに振り返りながら背後から奇襲をかけようと飛んできたミサイルを切り裂いた。

 

ものの数舜で残りの全弾すべてを使ったミサイルを破壊され動揺するセシリア。

こちらを見つめる純白の顔からはその表情を伺えず、自身の恐怖を駆り立てる。

スターライトmkⅢを構えることもできないセシリアに対し無機質な獣はその手に持つ光刃を突き立てようと迫っていく。

 

 

「山田先生。あのISの解析を頼む。」

 

「え……?あ、はい!わかりました!」

 

惚けていたな山田先生……だが、その気持ちもわかる。

私だって《白式》が一次移行をしてあそこまで見た目が変わるなど信じられん。

あれ程見た目が変わっているんだ。性能もそれなりに変わっているに違いない。

 

「織斑先生!解析完了しました!……これは!?」

 

「どうした山田先生?」

 

山田先生の突然の驚愕に困惑する千冬。

解析結果が出た瞬間に驚くほど《白式》の性能が変わってしまっているのか?一体どれほどのものになっているのだろうか……

どのような結果であろうと受け止めよう、驚かないようにしよう。

そういった千冬の覚悟をあざ笑うかのように衝撃の言葉が紡がれた

 

「型式番号RX‐0 《ユニコーン》……」

 

「……は?」

 

何を言っているんだこの人は?《ユニコーン》?なんだそれは《白式》ではないのか?

ISというのは一次移行して名前すら変わるなどあり得るはずがない。

 

「武装は頭部バルカン砲とビームサーベル……他にもなにかあるようですがどうもプロテクトがかけられていて現状ではまだ確認はできません。」

 

山田先生が《ユニコーン》の性能について話しているが千冬の耳に入っていかない。

 

「この試合が終わった後に織斑くんのISを預かって解析に回したほうがいいと思いますが……織斑先生?」

 

「……」

 

「織斑先生!」

 

「はっ!すまない山田先生、少し現実逃避をしていた。そうだなそれがいいだろう。」

 

軽い漫才を行っている二人に対して異を唱える者はこの場にいなかった。

 

 

「インターセプター!」

 

少女の悲痛な叫びがアリーナにこだまする。

セシリアは代表候補生であるが、普段はスターライトmkⅢやブルー・ティアーズを用いた遠距離射撃しか行わないため接近戦用のショートブレードであるインターセプターは呼び出すために名前挙げなければならない。

だが、咄嗟にこの判断ができたのは流石代表候補生だろう。

ビームサーベルとショートブレードがぶつかり合い火花を散らす。

だが、インターセプターはビームサーベルの熱線に焼かれその刀身を溶かしていく。

それに気が付いたセシリアは剣を手放し後退しながらライフルを構えてレーザーの弾丸を放つ。

 

「見える!見えるぞ!俺にも動きが見える!」

 

一夏はその弾丸を躱し、時にビームサーベルで相殺していきながら近づこうとするが、セシリアの放つ正確無比な射撃になかなか近づくことができない。

埒が明かない……ここは多少の被弾をしてでも!

一夏はその手に持つビームサーベルをしまいバーニアを全開にして直進する。

 

「速い!ですがそんな直線的で、当ててくださいと言ってるようなものですわ!」

 

レーザー弾を食らっていくが彼は止まらない。

そしてセシリアのもとへ辿り着き、鋼鉄の体を少女の華奢な体躯にぶつける。

そしてそれだけでは終わらない。

一角獣は背後のスラスター光を更に強く輝かせる。

 

なんとか逃れようとするが身じろぎすることしかできず、瞬間、背後からのしかかってきた衝撃に悲鳴を上げた。

アリーナのバリアに自分の体を押し付けられている!

エネルギーとエネルギーの反発により自分のシールドエネルギーは着々と減り続ける。

このままでは自らの敗北が決まってしまうがブルー・ティアーズも破壊された今、彼女が打てる手はもうない。

そんなセシリアは自分を敗北に追い込んだ憎っき男を睨むだけでもと見た時その変化に気が付いた。

 

純白だけで構成された装甲の継ぎ目に真紅の光がまるで血管のように浮かび上がり明滅を繰り返されており、バイザーに隠された双眸は強き光を放つ。

セシリアはそれに力強さを、そしてまるで父に手をつながれている時のような安心を感じた。

 

 

 

 

セシリア・オルコットは男という生き物が嫌いだ。

オルコット家はイギリスの名門貴族であり、実家発展に尽力していた母のことを尊敬している。

しかし、父親は婿養子として家に嫁いできたからか母親に対して卑屈でいつもペコペコと頭を下げている。

ああ、男とはなんと弱い生き物なんだろう。矮小で、卑屈で、頼りない。母のような女性に導かれなければ生きていけないどうしようもない存在。

それがセシリアが子供ながらに抱いた男へのイメージだった。

 

それだけで済んでいた。

 

両親が死んだ。

横転事故が起こった列車に二人で乗っていたのだ。

私は悲しみに暮れ泣き叫びたかったがそうはいかない。

オルコット家は名門中の名門であり、遺産も莫大にある。

それに興味を示さない人間などいない。

自分のもとへ何人もの大人たちが来た。

その魂胆はすべて両親が遺した遺産を独占するためにだ。

私はセシリア・オルコット。両親の一人娘、現オルコット家当主としてこの遺産を守る義務がある。

そうして彼らの申し出を断ると決まって舌打ち、悪態をつきながら帰っていく。

中にはそれでもなお諦められずあの手この手で自分のものにしようとしてきた者もいた。

最初は皆、両親の死を弔い。私を心配し、労るのに。

 

男とは弱いだけだと思っていた。

けど、違ったんだ。

男は弱いだけでなくどこまでも下衆な存在なんだ。

普段はペコペコと頭を下げながら女を建てようとするが、その裏では刃を研ぎ寝首を搔こうとする。

そんな卑劣な生物なんだ。

私は男など信じられない。

 

だが、目の前の男は本当にそうなのだろうか?

顔は一角の装甲に覆われてその表情をうかがうことはできないが、どんな絶望的な状況であっても諦めない心の強さが今までの行動にはあった。

一次移行した直後に言っていた”可能性”というものを信じていたのだろう。

その結果こうして今、自分は着々と敗北に近づいてきている。

私は男について今まで勘違いしていたのだろうか。

私が今まで出会った男は皆どうしようもない者達ばかりだった。

だが、男全てが俗物というわけではないのかもしれない。

少なくとも今、目の前にいる織斑一夏、彼はそのような人物ではないのだろう。

私の知らない男 私が憧れた男

彼ならば少しは信頼を持ってもいいのではないだろうか……

 

けどそれはそれとして初心者なんかに負けたくない!

彼が信じる”可能性”がこれほどの力を持つというのなら……

私もここから逆転するという”可能性”を信じる!

 

 

 

 

一夏は突如、背筋が凍った。

セシリア・オルコットから敵意を感じる……彼女はまだあきらめてない!

するとセシリアは体を丸め、淑女にあるまじき叫び声を上げながら《ユニコーン》の腹部装甲に押し当てた足を一気に突き出す。

結果一夏はセシリアに突き放され仕切り直しとなった。

 

「はあ……はあ……さあこれから第2、いえあなたが一次移行した後が第2ラウンドでしょうから第3ラウンドといきましょうか!」

 

「オルコット……ああ!だが、俺は勝ってみせる!」

 

また試合は再開された。

セシリアは一夏から距離を離しながらスターライトmkⅢの引き金を引く。

それに対し一夏はレーザーを躱しながらセシリアを追い掛ける。

また続くかと思われた拮抗はすぐに崩れた。

セシリアは疲労から射撃に正確さが失われている。

その隙をついて一夏はセシリアに追いつき、ビームサーベルを振り下ろすが、セシリアはスターライトmkⅢを盾にし受け止める。

インターセプターのように溶断されるがそれでも構わない。

即座にスターライトmkⅢから手を離し振り下ろされた腕を全力で蹴りつける。

セシリアは普段そんな戦い方をしない。

それこそ近づかれる前に撃ち落とすことを意識しているため近接武器をほとんど使わないどころか格闘を振ったこともない。

だが今のセシリアは例え泥臭くとも勝ってみせるという気概をもって戦っている。

そしてその行動により、一夏は手に持っていたビームサーベルを手放してしまった。

 

「しまった!」

 

「あの武器を回収させませんわよ!」

 

そう叫びながら一夏へ腕を振りかぶるセシリア。

これはただの悪足搔きだということはわかっている。

だが、先ほどのように何もしないまま終わりたくはない。

最初はがむしゃらにこちらを殴りつけるセシリアに面を食らいなすがままだった一夏だが、彼女は今まで人を殴ったことがないお嬢様。

速くも何ともない大振りの殴打など気を落ち着かせれば対処など余裕である。

一夏はセシリアの一撃を躱し距離を取り、また新たなビームサーベルを右前腕部のホルダーから取り出しその光刃を少女の体に突き立てようとスラスターを噴かす。

 

「試合終了。勝者、セシリア・オルコット。」

 

そのアナウンスが鳴ったのはセシリアのシールドをビームサーベルが焼く直前だった。




急に倍以上の文字数……ちゃんと書けているのかわっかんないしセシリアのキャラちょっと変わってるし……今後どうしよう……
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