人か喰種か両方か   作:札幌ポテト

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ラボ襲撃編
17話


オッガイを用いたCCGの攻勢により、グールの大半が東京から姿を消した。

めぼしい地上での戦闘も、一ヶ月前に起こったRN特別指定犯の捕縛作戦以ない。

着実に、少しずつ、グールを追い詰めている。

くだんの指定犯達の住処、その痕跡も既に見つけている。

こちらも時間の問題だ、ゆえにいつかどこかで黒山羊や彼等は動く確信が旧多にはあった。

 

「ラボより入電!現在攻撃を受けているそうです!」

 

平日の真昼間、指令部にその伝令は届いた。

 

「数は?」

 

「確認出来ていませんが、少数とのこと。既に警備兵は壊滅したとのこと」

 

冷静に問いかける局長としての旧多、だが予期していた事もあり心も冷静だ。

 

「(少数……忘れ物を取りに来たとは思えないし、来るなら白虎か)」

 

2ヶ月前、Rc抑制剤と亜門鋼太郎の奪取に黒山羊の数名が乗り込んできた事があった。薬の用途は不明であるが、余裕を持って退散したことから目的は達したと予想される。

 

故にこの襲撃はそれとは別の意味を持つ。

 

「(ただ目的がなーんも分からないなぁ、いや何を取りに来てるのかは分かるけど)」

 

しかし、その目的らしき物はラボに侵入した時点で看破している。

 

「(あの薬、副作用もまぁまぁ大きいしそもそも白虎の彼ぐらいしか使う必要もないし、使うのは愚策でしょ。今取るのは無意味に近いんですが)」

 

つい数週間前、流島の調査中の捜査官ぎ正体不明の存在に攻撃を受け船舶がいくつか沈められる事件があった。

直ぐに援軍を送ったが、到着時には退散済みでありその意図や目的は不明であった。

 

しかしそれが白虎達によって行われたのなら、流島から持ち出された薬が目的なのは明らかだ。

しかし、それがわかったからと言ってそれを何故求めるのかが読めない。

 

「(そもそもこの状況全てが布石で、目的はピエロみたいに防衛を散らす事?それとも意趣返し?それだけなら流石に浅はかだしなぁ)」

 

だがここまで旧多からしてみればわかりやすい策を講じるのか、意図がわからない。

囮にして本来の目的が別にある、ならば別働隊が居てもおかしくないのだがその様子もない。

 

「成ですね」

 

入電から間もなく、伊丙がやって来ると確信を持って答える。

 

「まだ首謀者は分かっていませんが…」

 

局員は一人が呟くも、それに対して彼女は首を振る。

 

「クインケを治しに行くにはちょっと大胆過ぎですし、そんな感じの誘い方じゃないんで……多分ですけど、私が誘われてますね〜」

 

彼と最も付き合いの長い捜査官は彼女だ、何かを感じ取っているのかもしれない。

 

そもそも彼女の言う通り、クインケは使い物にならなくしている。

流島で強奪されたという情報もなく、補充がされているとは思えない。

そのような施設があれば、多少なりとも勘づける。

それはグールとして情報を握るピエロであり、局長としては実権を握る旧多ならば可能だ。

 

「クインケは新しいのでも準備してるんでしょ、で今度は殺しに来るつもりって感じでしょうか」

 

だが、伊丙の読み自体は悪くない。

少なくとも何かしらの備えをしている、それが心の備えということもあるだろう。

 

「まぁ、準備してたのが向こうだけと思ってるのが癪に障りますけど」

 

だが、備えていたのは彼等だけではない。

 

「行ってきて良いですよね、局長」

 

「えぇ、任せますよ。伊丙上等は先行して彼等の殲滅を、S2班は取りこぼしの出ないように包囲網を張ってください」

 

オッガイの小隊を抱え、彼女は先に行く。

たなびかせた白髪、歩くだけで漂う風格、そのどれもが最強の捜査官を想起させる。

新たな黒い0番隊を率いて、死神部隊が向かっていった。

 

 

地上で転機を迎えようとしている頃、その一報は地下にいる黒山羊の方にも届いていた。

 

「成さんから、手紙ですか」

 

「あぁ、地上の監視隊伝いで準備していたようだ」

 

平子は渡された手紙をそのまま金木へ渡す。

久方ぶりの連絡だ、そもそも生存しているかどうかも不明な状態であったのでまずは生きている事にほっとする。

 

「まさか、成までこっち側とは思いもしなかったぞ」

 

その様子を見て、真戸暁も大きく溜息を吐く。

彼女は滝澤、今はグールのオウルを庇った影響で捜査官ではなくなり、生死を彷徨っていたが、金木達が奪取したRc抑制剤のおかげで普段通りの生活を送れるまで回復している。

 

「あいつがいつまでも一等捜査官にいた理由がよく分かる、ただあそこまで周りを寄り付かせないのも演技だったとはな」

 

暁にとって成は父の教えを受けた一人であり、20区での梟戦後では数少ない精神的な支えにもなっていた捜査官でもある。

それが、まさかグールとの架け橋になろうとしていたとは全く気づかなかった。

それだけ、この時に全てをかけていたのだろう。

 

「いや、あれは素からだな」

 

「……今度、少し優しくしてやるか」

 

ただ少しも己を見せていないわけでもないようなので、信用は多少なりともあったのだと暁は前向きに捉える事にした。

他意はない。

 

「内容は?」

 

「見た方が早い」

 

話を戻し、金木は受け取った手紙を開く。

長ったらしい文はなく、簡潔に内容は纏めているようだが、金木の表情は少しばかり困惑が混じっている。

 

「……成さんって、こんなやんちゃする人でしたっけ?」

 

「案外、今までのフラストレーションが溜まっているのかもな」

 

先に目を通している平子は軽く受け流す、それを聞いて暁も「見せてくれ」といい覗き込むが、思わず目を見開く。

 

「犯罪者どころか、これじゃテロリストですね」

 

「あの馬鹿は、とことんやらかすつもりか……」

 

捜査官に戻る気ないだろと暁は呟き、金木もそれに対して苦笑いで答える。

どうやらもうやらかした事も書いてあるようだが、これからやらかす事を見るに「この人やっぱり有馬さんの部下だなぁ」と金木は察する。

 

「あいつの選んだ事だ、任せれば良い」

 

座して吉報を待てとは言うが、平子のそれはあまりに様になっているのであった。

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