人か喰種か両方か   作:札幌ポテト

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23話

「作戦はこれでいきます。何か疑問は?」

 

作戦施行1週間前、完成させた作戦の流れを示した成をみてエトは作戦としては成り立てていると感じながらも、違和感をいくつか感じている。

 

「これ、私が戦う必要があるか?」

 

人とグールの共闘を演じる、その為に戦う理由が分からない。いや狙いは分かる、成遼太郎という捜査官が認める事に意味を持っているのだが、認める存在が問題だ。

 

「隻眼の梟を出す必要は無いだろ、赫者化する必要が見当たらん。むしろ捜査官からの反感を買うだけだぞ」

 

認める事で、グールと捜査官が関係を持つ事例をただの庇護下にある存在でなく仲間として認識をさせることができる。

グールを人として扱うという価値観を示す、だがそれを芽生えさせるのに隻眼の梟という存在は強烈過ぎる。

 

「……分かってます、でもします」

 

赫者化してまで伊丙を格納する必要もない、捜査官を蹴散らす事はノーマルな状態で可能、むしろ成遼太郎という存在の印象を悪化させる愚策だ。

 

「……意地悪な事を言ったな、理由は分かっている」

 

しかし、その真意は分かってしまう。

成にこういった策謀を授けたのは、彼女でもあるから。

 

「私は人を殺し過ぎた、ここでそれの大義名分を示す場を与えて、少しでも全て終えた後の行動をしやすくする為だろう?」

 

演説を隻眼の梟が行い、人殺しを致し方ない犠牲にする事で捜査官や被害者の憤りの収める理由にさせる。

 

『もしかすれば隻眼の梟とは、皆の考えるような悪魔ではないのかもしれない』

 

そんな考え方をさせた時点でこの策は成功する、ただそれだけでしかない。

 

「君は色々と気を遣い過ぎだ、君自身のその後はどうする」

 

これを行ったのは、成がエトを生かした責任を感じているからだろう。

だから彼女がこれから生きていくのに必要な事として、歪みになろうが作戦に組み込んだ。

 

エトが死んでいれば、意味は作れてもやる必要のない行動だ。

 

「伊丙を地下に送るが、そこにいるのは有馬を殺した金木だ。私とて多少なりとも不和を生む存在だ、隻眼の王に都合が良いとは思えんぞ」

 

そして伊丙を拉致する決断をした成であるが、その後が致し方ないとしても不都合がある事は変わらない。

少なくともグール達にとっては気が気でない存在だ。

 

「分かってます。ただ……伊丙も被害者です、そしてグールについて何も知らない。エトさんだって被害者の側面もある。旧多も加害者に見えるだけの被害者かもしれない」

 

世の理不尽に皆巻き込まれた、その理不尽に抗った結果が今の成であり、旧多もその1人である。

ただ望んだ結果が異なるだけだ。

 

「Vは潰します、あれは……歪んでました。でも他は自分の目で見極めてから判断します」

 

Vは今の世界の明確な歪みだ、それは倒さねばならない。

だが一方向だけで見た正義が、大義を持っていても正しさを持っているとは限らない。

 

「なので旧多を知る為に、少しだけ地上に残ります。地下の人達は、お願いします」

 

だから確かめる、戦線を深くした上で、あれだけの事をしでかした存在の真意を覗くために。

 

「君は甘いな、それが美徳でもあるんだが……何かを失ってからでは遅いぞ」

 

エトとて色々失ってきた。

タタラやノロといったアオギリのグール達、母親、小説家として世話になった塩野、全員失った。

もはや気を許した関わりを持つ存在は成が唯一の者となっている、それだけの代償を払ってきている。

 

「エトさんは伊丙にグールを教えて下さい、彼等が人間と変わらない事を知って欲しいです」

 

そして彼は伊丙のその後の為に、地下に下ろすのもエトは分かっている。

彼女は命の重さを知らない、グールが人と同じ心を持った生物である事を無視してきた人間だ。

彼女が変わる事を願い、その手助けをする。

 

「お代は高く付くぞ」

 

「つけといてください」

 

これからの世界で生きていけるようにする、それが色々と作戦や思惑を歪ませ、その歪みの修正を個人で行おうとしている。

そして、その意思は変わらない。

 

「そのつけを払わずに死ぬなよ、成」

 

だからエトは邪魔をしない。

 

「むしろこっちの方があるんじゃないですかね」

 

「体で払ってやろうか?」

 

「冗談キツ……すいません、許してください」

 

舞台上っているが脇役として、そこで踊る役者を特等席で見ることしか許されない。

共に踊れば、誰かを失うと分かっている。

 

それが次は、成遼太郎である事も。

 

 

4月m日

作戦は概ね上手くいったので、後は経過を待つのみだ。

ただ私は地上でまだやる事があるので待機する事になった。

なので手紙を2人に握らせて分かれた。

 

4月n日

無事、というかあれだけ大きな事をしたおかげで丸手特等にコンタクトを取れた。

S2班と戦ったのは打撃を与えるためでもあったが、彼らとのコンタクトを取る為である。

ピエロ戦あたりからそういった気配は何度も感じており、その先頭に立つのが彼であるのも察してはいた。

打倒旧多の為に動いており、草薙と砂塵、それと鎖骨の修理も依頼した。

現在旧多は様々な人間の処刑を断行しようとしており、それを止める為に彼等は動いている様だ。

 

ただ打倒旧多を掲げる者達であって、グールと和平を結ぶ者達では無い。

ほぼ門前払いみた形になったが、もう少し粘りたいと思う。

 

 

4月o日

 

戦局を有利に進めるための私は交渉をしにきたわけだが、予想よりあっさり通った。

想定では1ヶ月はかかると思ったが、5日で終わった。

私が手土産に持ってきた薬『夙成』を応用してグールを人間に近い食事が出来るかもしれないと科学者達が3日ほどかけて調べたからだ。

どうやらグールの細胞そのものにも多少は影響を与えるそうで、誤差の範囲ではあるが成分抽出を繰り返すとある程度の効果が見えたそうだ。

 

詳しい事は分からなかったが、グールでもある程度の食料を吸収しやすく出来る酵素のような働きをするらしい。

 

ちなみにこの科学者は嘉納の部下で何故か手を貸してくれており、中にはグールとの和平を望む者もいた。

どこかのタイミングで旧多のいる本局に乗り込むそうなので、そこに同行する運びとなった。

 

一息つけると思いたい。

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