人か喰種か両方か   作:札幌ポテト

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竜戦編
24話+紹介文


 

ため息を吐いて仰ぐ空は、空じゃない。

茶けた土と少し暗く照らされた世界、それが24区の地下5kmにある中層階だ。

伊丙が訪れてから1週間ほど経つが、起きた出来事と言えばオッガイの密偵であるハジメが現れた程度で他には何も起きていない。

 

周りには大量のグールがお腹を空かせ、子供がそこら中を駆け回っているだけの世界。

 

「どうした、グールの生活には慣れたんだろ?」

 

ため息を吐く彼女の隣に、エトは座り込む。

成の手紙を王に渡してから放任されている2人は、ずっと地下の生活を眺めていた。

他にやる事もないからだ、そして彼等の当たり前だけを見ている。

 

「慣れますよ、食事以外何も変わりませんし」

 

暇な時は棒を振りまわし、捜査官の動きを忘れない程度の鍛錬をし、たまに寄ってくる子供達をあしらい、少しだけ顔見知りになった同年代の子とたまに話し、また眺めるだけになる。

 

「グールは人と変わらない、それを教える為だけに地下へ連れてきたって言いましたよね。嫌ってほど分かりましたよ」

 

彼等が人と変わらない、変わっているのは食事ぐらいだという事が分からせられた。

人とグールが分かり合えない本質は食事だ、食う側と食われる側が仲良く出来るほど世界は単純ではない。

 

だが、その争いを辞めさせたいという考えに理解が出来てしまった。

 

「でも有馬さんを殺した琲世がわからない、なんで成がついて行ったのかも」

 

しかしその上で、なぜこの行動に移ってきたのかが分からない。

 

「殺したくないから和平を結ぶ、その為にどれだけ血が流れるのか分かっている筈なのに、人のままでいれば幸せになれたんじゃないですか?」

 

何もしないのが、何も変わらず少なくとも成遼太郎の平和ではありそうなのだ。

力はある、頭もそれなりで少なくとも何もしないという選択肢が浮かぶ程度はある。

それが何故、この選択に縛られているのがわからない。

 

「正直、ここまで乗り気になってくれたのは意外だった」

 

そしてその見解は、エトも同じである。

 

「力はあるが殺す事は好まず、傷つける事すら億劫になる。捜査官は天職でも、中身は真逆なのがあの男だ」

 

半ば強引に誘ったという事実はある、だがここまで協力的になってくれたことには意外に感じている。

有馬の意志を継いだからだろうか、その火種を託されたゆえに責任を感じてしまうような男なのだ。

 

「だったら捜査官なんか、辞めればいいのに」

 

「辞めれんさ、私と同じでな」

 

辞めたくても辞めれない、そういった流れが終わったとしても変わらない。

 

「新しい居場所を作れるほど、あいつは器用じゃないからな」

 

それ以外を知らない人間は、変わる事ができない。

変わる手段も場所も知らない故に、そこで生きていくしかない。

 

それを分かった上で、伊丙やエトを生かした彼は残酷な人間なのだろう。

 

 

【成遼太郎】

 

性別:男

身長:172cm

体重:67kg

14歳→23歳

 

14歳の時に偶々襲いかかってきた喰種を倒してしまいCCGにスカウトされ、半ば強引に0番隊へ入れられた少年。

最初の0番隊時代は自身が何故か赫子の使える半喰種なのに気付き、出来るだけ目立たないように生きて来たおかげがあまり目立った成果は出していない。

その3年後、真戸呉緒上等捜査官の部下になり2年ほど囮役など無茶を強行されていき階級を二等捜査官に上げる。

その時に合同とはいえSレートも討伐しており、そのクインケも譲り受けている。

 

そして19歳になり、黒磐特等の班に合流する事となる。

またこの時にアオギリも活発化しており、梟と対峙し生き残ったりなど目に見える戦果は出さないが目立ちたくない気持ちとは裏腹に特等の間で話題に上がる人物となる。

 

そして数ヶ月後、0番隊に再度所属し有馬貴将のパートナーを任せられるようになる。

またこの後に隻眼の王である事を明かされ、特訓を受けさせられるようになる。

隻眼の梟である芳村エトとはこの時から付き合いが多くなり、グール側の事情についても学んでいくことになる。

 

20区の梟戦後は新設されたS1班で宇井郡の部下となり、その後2,3年ほど在籍したが有馬貴将が殺された少し後に離反、CCGから追われる立場となる。

 

Rc細胞が勝手に増える体質の影響で喰種並の身体能力と赫子の発現が出来る存在、しかし基本的に喰種としての力は隠し通している。

捜査官としての実力は有馬貴将には劣るものの、梟と戦える程度の実力を有しており、赫者化すれば全盛期ほどではないにしろ有馬貴将の領域に届く存在に変化する。

 

存在そのものが奇跡的であり、両親が庭の出身者という条件でありながら半喰種として生まれ食事も人間と変わらないものになっている。

 

将来の夢は特になく、何不自由ない生活を望んでいる。

 

【クインケ】

 

大和:羽赫

レート:S

真戸呉緒と共に討伐したSレート喰種から作り出されたクインケ。

片手で持てるバズーカ型のクインケであり、威力はナルカミに並ぶ。

ただ弾の数に問題があり、長時間戦闘には向かないクインケ。

 

草薙:甲赫・尾赫

レート:SS

過去に有馬の討伐した喰種から作り出されたクインケを譲り受けた物、両刃のある西洋剣が柄の部分で繋がったようなクインケであり、分離して二刀流にする事も可能。

IXAのように赫子を地面に這わせて攻撃する事が可能である一方、盾のようなギミックは存在しない。

 

鎖骨:尾赫

レート:SS

14歳の時に地下で遭遇した喰種から作られた太刀型のクインケで、刀の背にあるブーストギミックにより斬撃威力を底上げできる。

しかし威力が高過ぎるので並の人間が使えば最悪、片腕が吹っ飛ぶ事もあり得る玄人向けのクインケ。

成遼太郎が使う事を前提に作られており、後述する砂塵と併用した変則的な5刀流で戦う場合が多い。

 

砂塵:尾赫

レート:SS

鎖骨同様の喰種から作られた小刀のようなクインケで、4振ある。

ギミックとして刀身がチリのようにバラけて中距離での攻撃も可能となるクインケ、ただしそのようなギミックなので消耗が激しく長時間の戦闘には適さない。

 

【赫子】

 

尾赫と甲赫を合わせて持つ、天然の複合型。

尾赫は棍棒のような猫を思わせる形をしており、それを地面や壁に叩きつけて高速での移動を可能にする。

また甲赫は両肩から先が三つに分かれた爪のような形をしており、基本的に使われる事が少ない。

 

赫者になる事も可能であり、エト曰く喰種としての才能は天才的と称されている。








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