人か喰種か両方か   作:札幌ポテト

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決戦編
35話


本局に戻った2人は、ある異常な光景を目にする。

忙しなく働く局員達の他に、医療従事者が大量に控えている光景だ。

そしてその医者達も、非常に忙しなく動いている。

 

原因は言わずもがなである。

 

「これがグール化、ですか?」

 

「だろうな、ただこの数は恐ろしいが…」

 

患者が大量に運び込まれており、その何人かは眼が赤く染まっている。赫眼の発現だ、しかも全員人間であるのは臭いから察せられる。

そんな人間が今見えるだけでも数十人、これからも増え続けていくだろう。この惨状に対してどうしたものかと、気圧されていると2人に気付いた研究員が駆け寄ってくる。

 

「2人共、ご無事でしたか」

 

「一応はな。外で落とし児と戦った、それが原因だとは思うが状況を教えて欲しい」

 

「分かりました。ただその前に検査を受けて下さい。2人も影響があるかもしれません」

 

2人はそのまま研究室、と言っても臨時で作られたラボに比べれば簡素な施設へと連れて来られる。

採血を行うと、研究員はそのデータを調べるようだ。

10分もかからないと言われ別室で待たされる、しかし何もせずに待つというのも2人、特にエトは耐えられそうにない。

 

現在進行形で仕掛けられているのだ、行動全てが10分ラグが出来ると考えればその気持ちは分からなくもない。

 

「すぐに結果は出ますが、その間にこちらをご覧下さい」

 

だが2人を見かねてか、はたまた戦力として数えてか、そう言って待機中の2人に端末を渡す。自動的に映像が再生される、背景はどうやら東京らしい。

 

「旧多か、それに落とし児?」

 

そして、旧多が自衛隊と落とし児の戦闘を配信している。自衛隊が劣勢であり、無惨にも食い散らかされている。

だが驚くべきはそこではない、自爆した落とし児の解説だ。

 

「……想像より不味いな」

 

「ちなみにどこら辺が?」

 

「奴等が直接手を下していない」

 

そしてエトが本気で思案を始める、それだけ余裕がない状況という事だ。

今の捜査官が手一杯になっている現状、敵は自由に動かせる駒がVとピエロで最低二つ存在する。

この二つをどうにかできる程、今のCCGは強くない。少なくとも、同時進行で全てを解決できる余力は存在しない。

 

「先手を取られ過ぎている、このまま行けば……」

 

破滅する、とでも言うつもりだったのか。しかしそれは駆け寄って来た研究員を気遣って止める。

基本的に受け答えなどを他人に任せず自分で行うエトでも今は消耗しているのか、無言で考え続けている。

 

その様子に研究員は少し躊躇しているので、成が対応する。今のエトの邪魔はしない方が良いと考えての事だろう。

 

「この動画、見せたって事は裏は取れてるんですよね」

 

一応、確認の為に成は聞く。

この動画がただの混乱目的の作成では無いと感じているが、それを本職の者達へ確認を怠ってよい理由にはならない。

エトの思案に少しでも役立てば良いという問いであったが、その顔を見るに残念ながら事実のようだ。

 

「元局長の言っている事は恐らく正しいです、捜査官でもクインクスの米林さんが発症しました。現在CCGは病院と連携を取りつつこのグール化と落とし児について対応中、ですが少しパンク気味です」

 

毒を振り撒く、自爆した際に威力は低いとは感じていたがその真意は仲間作りであった。

東京に多数配置されている卵管、そこから生み出された怪物はまだまだ増え続けているだろう。

この対処は極めて難しい。毒は広範囲ではないとは思うが、空気中にも散布されているのでその場にいるだけでグール化は進行していく。

つまり戦闘を行なったものを全員、グールにする。

 

クインクスの捜査官ですらこの影響を受けるのだ、グールも無影響とら考えられない。

 

そして、成はこの毒を浴びている。最悪隔離されるかと、成も考えていると資料を片手に別の研究員がやってくる。

 

「結果出ました!」

 

2人の結果が出たようだ、ただ数値上の結果を見ても分からないので資料を簡単に意訳していく。

 

「エトさんは問題ありません。ただ成さん、貴方はROSを発症してます」

 

やはりか、成はその結果に納得する。起きたばかりの時の検査結果と比べられるとその数値の差は明らかであり、ROS……つまりグール化が進行しているという事に他ならない。

 

ならない、のだが。

 

「……してる筈ですが、異変は無いんですか?」

 

成は少なくとも、自身をコントロール出来ないほどの状況に陥っていない。

担架に固定される程の影響が見られない、少なくとも大多数の患者とはまるで様子が違う。

 

「赫子の出が良過ぎたぐらいですかね、問題ないです」

 

成自身が体に感じた異変はその程度だ、平時とさして変わらないように見える。

人間の肉を見ても美味しそうと感じていないので、食欲的にも問題はない。

 

「グールであっても許容値があると思うのですが、流石にこの数値は……」

 

そう言って資料をめくっていく研究員だが、頭を抱えている様子だ。ただでさえ今の状況に混乱しているというのに、例外が現れてくるのだから。

 

一応まだ2人には告げられていないが金木には耐性がある、竜の核となっていたのだからその結果は不自然ではない。

だが、成は竜と戦いこそしたものの半グールでしかない。それならばクインクスもほぼ同じ条件の筈だ、影響がないわけがない。

 

「……ワクチンは作れそうに無いですね」

 

しかし、資料を読み続けた研究員の答えは、あまり良く無いものらしい。

 

「恐らくですが、成さんはRc値を完全に掌握しています。それでROSによる不規則なRc細胞の発現もコントロールしている……のかもしれません」

 

推測でしかない、Rc値のコントロールが正確に出来ているという情報ぐらいしかデータからは分からない。

だが耐性があるわけではないのだ、むしろ耐性はグールよりも弱い。人間として考えれば多少は強いがそれまでだ、金木のパターンとは異なる。

 

「正直言ってなんでそんな事出来てるのか、どうやってるんですか?」

 

「……なんとなく、かな。正直意識した事があまりないから」

 

成自身、特別な何かをした覚えはない。

感覚的に捉えているだけなのだ、捜査官としては頭を使って技術を体に叩き込んだがグールの技術に関してはそうではない。

ほぼ独学で行って来たというのもあるとは思うが、理屈で考える前に体が順応してしまうと言ったほうが適切だろう。

 

「こいつはナチュラルな天才だ、あまり理屈めいた答えは事グール関係では期待しない方がいいぞ」

 

その言葉に「これだから意味の分からないタイプの研究が難しいのに……」と愚痴を漏らす研究員。

ただでさえ頭が絡まっていそうな彼らへ、成は心の中で謝っておくのであった。

 

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